食品業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説





食品業界とは

食品業界は、菓子、冷凍食品、レトルト、乳製品などの加工食品と、清涼飲料水、アルコール類、調味料や小麦粉などの食品原料を製造し、小売店に卸して消費者に販売する業界です。

日本国内の食品業界市場は、現状は成長を維持していますが、もともと食品は生活する上で必需品であり、業績が大きく変化することがない業界です。

成長率に関しても、なだらかな増加であり、爆発的に増加しているという状況ではありません。

また、成長しているのは食品メーカーであり、外食産業に関してはややマイナスの成長となっています。

景気の回復に伴い消費者の食品に対する消費も積極的になっており、勢いを盛り返してはいますが、人手不足による仕事量の増加や退職者の増加によるサービスや品質の低下という問題を抱えている企業も少なくありません。

また、将来的に国内市場は人口減少により、食品の消費量が徐々に減っていくという見通しになっています。

そのような状況の中で、消費者に選んでもらえる食品を開発していくことが急務となっています。

食品業界の役割

人は、ライフステージが進むにつれて食の好みや、志向は変化していきます。

特に日本では、高齢化が進んだことで、健康食品が注目され、ニーズが高まっています。

食が細くなったお年寄りでも、少ない量で充分な栄養素が摂取できる食品も登場しています。

また近年は、未婚率が上がっていますが、独り暮らしに適したサイズの食品が売られるなど、ライフスタイルに合ったバリエーション豊かな商品を開発提供してくのが、食品業界のミッションといえます。

また、食の安全性を確保することも、食品業界の重要な役割のひとつといえます。

各企業は、生産工程を追跡できるトレーサビリティ・システムの導入を進め、より安全に生産、供給できる仕組みの確立に注力しています。

異物混入による消費者の健康被害が発生した場合は、社会的な影響が避けられない面もあり、安全性と品質の確保、価格のバランスを安定させることも食品業界の重要な役割となります。

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食品業界の企業の種類とビジネスモデル

食品関連の産業は、農業、漁業、畜産などの第一次産業、食品の加工、卸を行う食品工業、商社・卸売り業者などの流通業、外食産業などが該当します。

流れとしては、食品メーカーが自社や商社、卸売り業者から国内外の原料を仕入れ製造を行い、食品卸売業者を通して外食産業、小売業に販売します。

例外的に卸売業者や商社を介さない商流もありますが、ほとんどの場合は食品メーカー、卸業者、小売店、消費者という流れで商品が共有されていきます。

食品メーカー

原料仕入れ、製造、出荷までを担う、食料供給の商流の中では中心的なポジションです。

企業の規模としては大中小さまざまあり、多品種を大規模に製造する大企業から単品製造を行う小規模な企業まで多数存在します。

大手企業としては、アサヒグループホールディングス、キリンホールディングス、サントリー食品インターナショナル、明治ホールディングスなどよくスーパーなどで商品を目にする企業があります。

商社、卸業者

前述した通り、食品の大まかな商流は商社などから国内外の原料を仕入れ、製造、食品卸売業者を通して、外食産業、小売業に流れていきます。

食品メーカーが直接、小売店に商品を供給することは稀です。

その理由としては、食品という性質上、多品種少量かつ頻繁に納品する必要があるためで、商社や卸業者などの食品中間流通を担う業者が集められて一括で配送されます。

各メーカーが自社商品を個別に頻繁に納品するよりは、卸業者に集約して納品してもらう方が効率的だからです。

商社、卸業者の代表的な企業としては、三菱食品株式会社、伊藤忠食品株式会社、加藤産業などがあります。

外食、小売業者

直接消費者に食品を提供する役割を担う業界なので、私たちの生活にも深く関わっています。

近年は、外食だけでなく、家にいながらレストランのような食事が食べられる「中食」も急成長しており、バリエーションが豊富になっています。

外食産業の大手は、すかいらーくホールディングス、サイゼリア、日本マクドナルドホールディングスがあります。

また、食品を販売する小売店の大手としては、イオン、セブン&アイホールディングスなどがあります。

食品業界の職種

食品が消費者に届くまでには、さまざまな企業が関わります。

それらの中で、代表的な職種について解説します。

研究、開発

研究、開発職は新しい商品を生み出すための、基礎研究や応用研究を行う職種です。

原材料メーカーであれば、野菜などの食材のもととなる種や苗木の品種改良を行います。

また、食品メーカーですと、新商品の開発や既存商品のマイナーチェンジなどの研究を行う職種になります。

研究、開発分野については、メーカーにとって新しい商品を生み出すための重要な機能となりますので、大手メーカーを中心に研究施設を所有するなど、注力している職種でもあります。

その分、開発納期が決まっていることも多くあり、成果を求められる職種であります。

また、基礎知識だけでなく、知識を応用して研究成果につなげるための、スキルや能力を日々磨く必要がある職種ともいえます。

生産、品質管理

生産、品質管理は、実際に商品を製造する場合の、工場や商品全般の管理を行う職種です。

生産管理は、安定的に生産ラインが稼働し、スケジュール通りに生産が進んでいるのか、納期までに必要数量が確保できるかなどの、工程全体を管理します。

また、作業員が安全に作業できているかを管理監督するのも生産管理の需要な役割です。

食の安全性が重要となっている現代においては、生産工程で異物混入などの問題が起こらないように、品質を安定的に保つことが必須となっており、それをチェックするのが品質管理の役割となります。

工場の生産工程と密接に関わる仕事ではありますが、製造の実作業や単純作業を行うというよりは、数値管理や商品チェックなどの複合的な業務を担当します。

マーケティング

市場調査を行い、新商品の開発や既存商品の改善策を練ったり、販促などのプロモーション企画を考える職種になります。

集めたデータを正確に分析し、消費者ニーズの洗い出しを行います。

ここから得られた分析結果が商品の研究、開発に活用されるため、高度な分析スキルと市場を読む力が必要になる職種です。

食品業界のやりがい・魅力

食品業界のやりがいとしては、人の生活になくてはならない「衣食住」の「食」に関わる仕事ができるという点です。

さまざまな食品を開発し、販売することで、人びとの食生活を豊かにすることもできるでしょう。

また、機能性食品や介護食など社会的なニーズを反映した食品の開発を通して、社会貢献できるという点においても、非常に意味のある業務に関わる機会があります。

加えて、自分が開発や販売に携わった商品が、テレビで特集され世間的に注目される可能性があったり、小売店で購入されるところが見られるなど、自分の仕事の成果が目で見えるという点もやりがいにつながりやすいといえます。

食品業界の平均年収は、580万円前後といわれています。

国税庁の2017年民間給与実態統計調査から日本の平均年収は432万円であるのに比べ、比較的高い水準であることがわかります。

ただ、食品業界の大手企業だけをみると平均年収が880万円前後になるともいわれており、企業によって年収に大きな差があることを把握しておくことが必要です。

また、今後は国内需要が伸び悩むことを理由に、アジア圏を始めとする海外市場での事業展開に注力している企業も多くあります。

国内にとどまらず、海外でのビジネス経験を積みたいと考える方にもチャンスのある業界です。

食品業界の雰囲気

食品業界は、歴史のある業界のため、企業で働く人も勤続年数が長い人が多い傾向になります。

また、年功序列の文化が残っているところもあり、若いころは営業職などで現場で経験を積み、スキルが付いたら本社勤務などの中枢機能で働くというケースが多いようです。

食品業界自体は決してなくなることがない業界で、急激に需要が減少したり増加することもないことから、安定した業界であり、その中で働く人も安定志向の方が多い傾向にあります。

結果を求めてひたすら激務をこなすというよりは、アットホームでみんなで協力し合う文化が根付いている企業も多いようです。

そのため、残業時間は他の業界に比べると比較的少ないといわれています。

また、食品は品質のいいものを安定的に供給することが大前提となるため、堅実な社風の企業が多く、コツコツと真面目に作業し安定的な供給体制を構築し、実直に事業を展開するという特徴があります。

食品業界に就職するには

就職の状況

大手企業を中心に、毎年新卒採用を行っています。

前述した通り、業界自体が急激に減退したり増加したりすることがないため、求人自体も安定しています。

ただ、大手企業になると給与待遇だけでなく福利厚生も充実しており、安定的な社風で長く働けますので、就職希望者が非常に多く競争が激しい業界でもあります。

そのため、自分の強みをアピールできるように、自己分析を行い面接の準備をしっかりとしておくとよいでしょう。

就職に有利な学歴・大学学部

食品メーカーや商社では、大手企業を中心に、募集条件に「大卒以上」と限定している傾向があります。

外食産業では、調理師免許を持った専門学校卒業生や高校の食物科を卒業した人を募集している場合もあります。

就職に有利な学部は、生産現場での業務を希望する場合は、機械系の学部を卒業すると有利になります。

また、研究・商品開発に関しては、食品科学、分析科学系の学部の専門知識があれば、現場で活かすことができます。

ただ、製造管理や研究開発などは、豊富な分析スキルと経験が必要となる職種のため、新卒でダイレクトにこれらの職種に就けることは少ないようです。

まずは、営業等で業界の仕組みを学び、経験を積んでから就く職種となります。

ただ、営業現場においても、機械や食品の知識を活かして営業成績を上げている人は大勢いますので、ビジネススキルを強化するという意味でも、よい経験が積めるでしょう。

就職の志望動機で多いものは

食品業界の志望動機で多いものは、

・人の生活に必要不可欠な食品に携わることで社会貢献したい。
・機能性食品や健康食品など、人の生活の質を向上させ、役に立つような、新しい食品を開発したい。
・食べることが好きで、食品に興味が深く、自分自身が開発した商品を、多くの人に食べてもらいたい。

などがあります。

どの志望動機も、食への興味関心がもとになっていますが、なぜ自分が食品に興味があるのか、その理由を具体的に説明するようにしましょう。

また、今まで自分が学んできたことを、どう活かして貢献するか、なぜその企業でなければならないのかも詳細に説明できると良いです。

そのためには、業界研究だけでなく、志望する企業の研究や情報収集を普段から行っておくようにしましょう。

食品業界の転職状況

転職の状況

食品業界における中途採用は不定期ですが、「ある」状況です。

業界自体に大きな増減の波がなく、業界に一度入ると長く同じ企業で働く人が多いことから、大量募集をしたり事業拡大のための増員募集をするというよりは、欠員に対する募集が多い傾向にあります。

中途採用も新卒採用と同様に、大手企業を中心に条件のいい企業の競争率が激しく、内定を勝ち取るために自分の経歴を棚卸し、面接時にそれをアピールできるように対策をしっかり行うことが重要となります。

転職の志望動機で多いものは

志望動機として多いのは、

・食品業界で働いていた人が、他社の食品の開発力や、技術力、事業戦略に惹かれ、事業に関わりたいと思い、転職を希望する。
・現職の企業では、事業展開していない食品事業があり、自分のスキルアップのために、それらを扱っている他社に転職する。

等があります。

業界での経験があるからこそ、他社の優位性や自身のスキルアップを動機として、転職する人が多いようです。

転職で募集が多い職種

募集が多い職種としては、営業職や生産管理、商品開発職があります。

営業に関しては、多数の取引先にルート営業で継続的に取引をすることが多いため、人員が必要となり、一定数の中途採用があるようです。

また、生産管理や、商品の開発職も求人があり、業界経験者を中心に採用されているようです。

企業は、経験を活かし即戦力となってくれることを期待して採用しますので、前職での成果が大きなアピール材料となります。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

商品メーカーへの転職を考えている場合、異業種であったとしても、製造業での経験があると、中途採用の面接時のプラスの要素になります。

例えば、日用品の製造工場での管理経験があることを理由に、食品製造工場の生産管理職に応募したり、営業経験やその実績をアピールすることで、食品営業への転職を希望する場合が考えられます。

生活に関わりの深い食品であるからこそ、自分の経験やスキルとうまく結びつけてアピールするとよいでしょう。

食品業界の有名・人気企業紹介

日本ハム株式会社

 
本社は大阪市北区、大手食品加工メーカーで東証一部に上場しています。

ハム・ソーセージを製造する大手メーカーの一つで、業界首位に君臨します。

1942年に創業し、プロ野球チーム北海道日本ハムファイターズの親会社でもあります。

日本ハム株式会社 ホームページ

明治ホールディングス株式会社

東京都日本橋に本社を置き、日本の大手食品会社である、株式会社明治を傘下に持つ持ち株会社で、東証一部に上場しています。

2016年に創業100年を迎えた、歴史のある会社です。

明治ミルクチョコレートなどの菓子製品や、ヨーグルトなどの乳製品で多くのブランドを豊富に展開しています。

明治ホールディングス株式会社 ホームページ

味の素株式会社

東京都中央区に本社を置く日本の食品メーカーで、東証一部に上場しています。

「味の素」は同社が生産する調味料で、商標登録もされており、広く認知されています。

また、日本国内だけでなく、世界各地にグループ企業の工場を持っており、化粧品ブランド「Jino」などのアミノ酸生産技術を活用したケミカル事業や、医療品事業など、多角的に展開しています。

味の素株式会社 ホームページ

食品業界の現状と課題・今後の展望

国内市場は少子高齢化による人口減少により、市場の成長が鈍化することが予想されています。

そのため、国内市場だけでなく、発展途上国を中心とした市場の成長率が高い国に事業を展開する企業が増加しています。

食品メーカーが海外で工場を建設し、現地で日本品質の食品製造の事業を展開したり、食品商社がグローバルなネットワークを利用して日本食材の輸出事業を行うなど、伸びしろのある市場への参入を積極的に行っています。

海外での日本食ブームも追い風となり、低カロリー低脂肪な食品は海外でもファンを増やしています。

ただ、日本市場での事業が消極的になっているというわけではなく、高齢者の増加に伴い、健康食品や機能性表示食品、特定健康用食品などの分野は、多彩な製品が開発されています。

例えば、食事後の血糖値の上昇を緩やかにする効果のある飲料や食物繊維やビタミンなどの有効な栄養素を、一日分摂取できる食品などです。

今後も社会構造の変化に合わせて、このような機能性のある食品の開発や販売がますます盛んになると予想されます。

また、食品のインターネットショッピングも、近年急減に普及したチャネルの1つです。

従来は、冷蔵品を配達で依頼するのは、品質維持や手数料の問題で敬遠する人が多い状況でした。

近年は、流通網の発達により欲しい時に欲しい分だけネットで注文し、届けてくれるサービスが発達し利用者も増加しています。

また、食品メーカーが、商社や卸を通さずに、直接消費者に販売する方法が増えてきており、製造だけでなく流通機能も強化し多機能化している点で注目を集めています。

今後も、食品業界は食品の安定的な供給はもちろんのこと、社会的にニーズのある食品の開発や流通網の構築、海外進出など、変化しながら成長し続けていく業界といえます。

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