ヘルスケア業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
ヘルスケア業界とは
少子高齢化が進行する日本では、高齢化により保険料が増大する一方、人口減による税収の減少で医療費や介護費用の公的負担の増加が課題となっています。
そのため、健康寿命をいかに伸ばすかということについて、国をあげて議論されています。
そして、この分野の中心的な役割を果たす産業がヘルスケア業界で、成長市場として注目されています。
ヘルスケア業界は、高齢化、平均寿命の延伸、健康ブームなどを背景に拡大を続けていますし、ヘルスケア業界とは関連のない業界が参入したりコラボレーションすることで、新しいビジネスが日々生まれています。
ヘルスケア産業は、
- 健康の維持・増進に働きかけるもの
- 患者さんや要支援・要介護者のの生活を助けるもの
に大きく分けられます。
1は健康食や、リラクゼーション、フィットネスなどの健康関連サービスがあり、2は医療保険、介護施設などが含まれます。
健康に関連するさまざまなサービスがこの業界に含まれるため、市場規模は2016年に25兆円規模となっており、2025年には、33兆円に昇る見込みです。
ヘルスケア業界の役割
人生100年時代といわれて久しい日本では、健康的に長生きをすることへの関心が集まり健康ブームが続いています。
また、最期まで自分らしく生きるための多様なニーズに応えるため、介護・医療サービスへのニーズも高まっています。
そして、これらのニーズに応えるためにさまざまなサービスを展開しているのがヘルスケア産業です。
国民の誰もが人生を最後まで幸せに生きることを実現させる「生涯現役社会」を目指し、健康を保つためのサービスを提供したり、病気の治療や介護が必要になった場合に適切なケアサービスを提供します。
そのため、ヘルスケアサービスの提供を通して、生活や人生と豊かにしたり、充実したものにすることが社会的なミッションといえます。
また、健康状態やさまざまな病気の症状は個人差があるため、一人ひとりに寄り添うヘルスケアサービスを提供することも業界の役割です。
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ヘルスケア業界の企業の種類とビジネスモデル
ヘルスア業界と一言でいっても、提供するサービスは多種多様にあります。
例えば、製薬、医療機器、健康保険は、何かの病気にかかったり、介護が必要となった場合に必要なサービスを提供しているヘルスケア業界の一種です。
また、フィットネスジム、リラクゼーション、生命保険等は今後も変わらず健康に過ごせるように利用するサービスであり、将来のリスクに備えるサービスです。
このように、ヘルスケア業界にはさまざまなサービスがありますが、その中でも代表的なものを解説します。
製薬メーカー
製薬メーカーは、医薬品を製造し、その薬を必要とする患者に提供しています。
薬には、処方箋が必要になる処方薬と、ドラッグストア等で購入できる市販薬があります。
処方薬は医師の指示が必要となるため、医薬品メーカーは製品を医療機関に提供し、そこから報酬を得るというのがひとつのビジネスモデルです。
市販薬は製薬メーカーが製造し、直販ルートで消費者に販売するか、ドラッグストアなどの小売流通に納品し消費者が購入します。
薬品メーカーの代表的な企業としては、武田薬品工業株式会社、アステラス製薬株式会社などの国内企業、ファイザー、MSDなどの外資企業などがあります。
医療機器メーカー
医療機関で使用する機器を製造、販売する企業も、ヘルスケア業界の一種です。
製造した医療機器を医療機器卸業者に納品し、必要としている医療機関に販売します。
こちらも、最終的に医療機器を使用するのは患者ですが、医療機器メーカーの顧客は、医療機器卸や医療機関ということになります。
医療機器は、人の生命に関わる場合に使用されることがあるため、その製造や販売に関しては、メーカーが国からの許可を取得し、安全に製造販売する必要があります。
代表的な企業としては、日系のオリンパス株式会社、テルモ株式会社、外資系ではジョンソンエンドジョンソンなどがあります。
ヘルスケア関連企業
健康を維持するサービスを提供する企業にはさまざまあり、前述した健康食品メーカー、リラクゼーション、フィットネスサービスを提供する企業や、近年はICT企業の参入も目立っています。
ICT企業が提供するサービスとしては、体調管理アプリや、遠隔地診療サービスの提供、新薬の研究開発にAIを活用するなど、幅広い分野で参入しています。
医療ITの代表企業は、グーグルやアップル、フェイスブックなどの日頃からよく耳にする企業が挙げられ、大中小様々な企業があります。
ヘルスケア業界の職種
ヘルスケア業界に関わる企業はさまざまあり、多様な職種があります。
この章では、ヘルスケアに関わる職種の中で、代表的なものをご紹介します。
研究開発
製薬メーカーでの研究開発職では、新薬を作り出す研究を行ったり、開発された薬品の臨床実験、効果・安全性の評価を行っています。
医薬品は人の命にかかわるものもあるため、効果と安全性の実証が不可欠であり、その開発にかかるコストは数千億となる場合もあります。
MR
MRは、他の業界の営業職とは異なり、多くの場合、「MR認定証」を取得してから医療機関などの現場で営業活動を行います。
これは、営業先の医師に対して自社の医薬品や医療機器の有効性、副作用を正確に伝える専門知識が必要となるためです。
専門性の高い職種ですので、通常の営業職よりは待遇がいい場合が多いのが特徴の一つといえます。
MSL
メディカル・サイエンス・リエゾンの略で、MRよりも高度な医療知識を提供する職種です。
医学的・科学的なエビデンスや専門知識とともに、医薬品の情報提供を医師に行い、医師の研究対応、論文投稿や臨床研究支援など、さまざまな形での支援を行います。
プロダクトマネージャー
担当製品のマーケティングに携わる職種で、製品の研究、開発、生産、販売までのすべての工程に関与する職種です。
自社製品をどのような販路で、誰に、いくらで販売するのが適切であるか、製品を広く知ってもらうためにどのような販促施策を行えばよいか等のプランを立案し、実行します。
また、販売後の評価も行い、次回の改善点を洗い出す業務も行います。
事業開発
さまざまな事業を展開するためには、時には他の企業や官公庁などの組織との連携や提携が必要となる場合があります。
それらの他業界とのネットワークを構築したり、実際に提携や投資の交渉を行います。
また、調査や分析を行い、自社が参入すべき事業であるかの検討をする場合もあります。
業界や医療に対しての深い知識だけでなく、事業を展開するためのビジネススキルも必要となる職種です。
ヘルスケア業界のやりがい・魅力
ヘルスケア業界でのやりがいは、何と言っても人の健康に関わる製品やサービスを提供することで、人生を健康で豊かなものにできる点です。
人が平和で豊かな生活を送るためには、健康であることが最も重要となります。
また、病気になった人に対してもその治療法を提案したり、最期まで人間的な生活を送ることを可能にするのもヘルスケア業界の製品やサービスが重要となるためです。
また、実際の業務の中では、医療製品やサービスの開発、製造、販売などのプロセスに関わり、その製品が利用されているところを実際に目にする機会があると、やりがいを感じることができるでしょう。
自分が携わった仕事が形になるのは、この業界で働くことの大きな魅力であり、特徴のひとつといえます。
加えて、ヘルスケアに対するニーズは年々高まりますので、今後もますますサービスや製品の開発が進むため、動きが早いという点も業界の特徴といえます。
ヘルスケア業界の平均年収は前述した通り、この業界に関わる企業がさまざまであるため、一概には言えませんが、例えば製薬メーカーですと大手企業では年収が1000万円以上となる場合が多いです。
国税庁の2017年民間給与実態統計調査から、日本の平均年収は432万円であるのに比べ、製薬メーカーは高い水準であることが分かります。
例えば平成30年の武田薬品工業株式会社の平均年収は、1094万円、アステラス製薬は1071万円となっています。
ただ、待遇は、企業によりさまざまである点と、ヘルスケア業界にはさまざまな収益構造の企業があるため、一概にすべての企業の年収が高い水準ともいえない状況です。
興味がある企業に関しては、個別に待遇面を確認しましょう。
ヘルスケア業界の雰囲気
ヘルスケア業界の雰囲気としては、医薬品メーカーや医療機器メーカーですと、医療機関と関わる関係上、真面目で堅実な社風を持つ企業が多い印象です。
また、医療業界は日々研究や開発が進む分野であり、新薬を販売するための研究論文などに関わる機会も多いです。
そのため、常に最新の医療に関する研究情報や専門知識を学ぼうとする勉強意欲や向上心のある人が多く事業に携わっています。
一方、ヘルスケア分野に関わるICT企業やフィットネス、リラクゼーション系の企業になりますと、雰囲気は変わり、比較的自由な社風の企業も多くあります。
例えば、医療IT分野の企業であれば、ICTの技術、知識だけでなく、医療の知識も幅広く持った人材に出会うこともできるでしょう。
前述した通り、どの分野のヘルスケアに関わるかで、さまざまな企業がありますので、それぞれの企業が、独自の社風で運営されています。
ヘルスケア業界に就職するには
就職の状況
ヘルスケア業界の求人状況は、新卒の場合は定期募集が一般的で、大手製薬メーカーや医療機器メーカーをはじめ一定数の新卒採用が行われています。
今後もニーズが高まっていく業界のため、毎年定期的な採用で人材の採用と育成を行っていく企業が多い状況です。
大手製薬メーカーなどの有名企業になると、給与だけでなく福利厚生も好待遇の企業が多く、毎年多くの学生が採用試験を受け、競争率が高い状況となっています。
また、ヘルスケア業界の中で特に医療業界に関わる場合、関わる職種によっては資格が必要になる場合もあるため、ヘルスケア業界で具体的にどのような仕事に関わりたいのかを予め決めておきましょう。
就職に有利な学歴・大学学部
前述した通り、ヘルスケア業界には様々な企業があります。
企業や職種によって必要となる専門知識が違いますので、まずはどのような仕事に携わりたいのかをイメージしましょう。
例えば、製薬メーカーの研究開発職となる場合は、薬学部や理工学部など医薬や化学、工学についての知識を学べる学部がよいでしょう。
研究開発職の場合、企業によっては薬学部や理工学部卒業を条件として募集を出す企業もあるため、製薬メーカーでの就職を考えている人は、進学の選択肢としてこれらの学部を視野に入れておきましょう。
また、研究開発職以外の職種であっても、医学、科学などの知識が役に立つ職種が多く、例えば医療専門の営業職であるMRは、医師が顧客となる場合が多いため、これらの知識が役立つ場合があり、選考時、有利になる場合があります。
就職の志望動機で多いものは
ヘルスケア業界の志望動機として多いのは、
- 人びとの健康を守る医療機器やヘルスケア用品に関わることで、生活を豊かにしたい。
- 研究開発職に就き、治療法がまだ確立していない病気を治癒できる新薬を開発したい。
- 医師不足や遠隔治療などの社会的な問題に対して、ICT技術などの最先端技術を活用して、解決していきたい。
などがあります。
動機の根本となっているのが、人の役に立ちたい、人の人生を豊かにすることで、自分の喜びや達成感につなげていきたいというものです。
加えて、個別の企業に対しての志望動機として、その企業で何がしたいのか、その企業のどのような点に共感したのかなど、具体的な理由を付けている志望動機も多いです。
ヘルスケア業界の転職状況
転職の状況
中途採用に関しては、不定期ですがあります。
ヘルスケア業界は、医療や医学、薬学などの基礎知識だけでなく、経験も重要となる職種が多く即戦力となる人材を求める企業が多いです。
また、近年増加する医療ITの分野でも、医療の知識とシステムを開発するプログラミングの知識など、業界をまたいだ経験と知識がある人材は重宝される傾向があります。
転職の志望動機で多いものは
転職の志望動機として多いのは、
- 他社の医薬品の開発技術や事業展開に惹かれて、事業に携わりたいと思い、転職を決意した。
- 人の健康に貢献できるヘルスケアを展開する事業に関わりたいと思い、転職を決意した。
などです。
前職も同じヘルスケア業界で、同業であるからこそ他社の事業に魅力を感じ転職をする人が多いようでした。
また、職種によりますが、業界未経験であっても、ヘルスケア業界に携わりたいと希望し入職する人もいるようでした。
転職で募集が多い職種
募集が多い職種としては、MRがあります。
医療機器の営業は、医療機関や卸売会社が顧客となります。
近年は、技術の進歩によって、以前よりも低コストで医療機器が販売できるようになりました。
厳しい価格競争が起こる中、取引先と強固な信頼関係を構築できる知識と経験のある営業人材を必要としている企業が多いためです。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
重視されるスキルや経歴としては、やはり医療に対する知識や経験です。
医療業界での営業活動や事業の展開は、専門知識や専門用語が多数出てくる場合がありますし、ヘルスケア業界の慣習を理解していることが、採用の前提となる場合が多いためです。
ですから、業界経験を重視した中途採用を行う企業が多いのが現状です。
しかし、近年はICT業界などの一見ヘルスケアとは直接関連のない企業の参入も目立つため、それらの企業が必要とする人材が業界経験者に限らない場合もあります。
転職を希望する企業の意向を確認しましょう。
ヘルスケア業界の有名・人気企業紹介
武田薬品工業株式会社
日本の製薬メーカー大手で、東証一時に上場しています。
代謝性・循環器系疾患、癌、中枢神経系疾患、免疫・呼吸器系疾患、消化器・腎臓系・その他疾患、ワクチンの6つを重点事業としています。
新興国、アメリカ、欧州などグローバルに展開している企業です。
大塚ホールディングス株式会社
大塚製薬、大鵬薬品、大塚化学等を傘下に持つ、東証一部上場企業です。
大塚薬品では、医薬品関連事業と、健康食品、化粧品などの事業を展開しており、予防から医療までのトータルヘルスケアサービスを展開しています。
研究や臨床のネットワークを、米国、中国などに持ちグローバルに展開しています。
アステラス製薬株式会社
2005年に、業界3位の山之内製薬と、5位の藤沢薬品が合併して誕生した、東証一部上場企業です。
合併により、国内の製薬メーカーでトップの売上を誇る企業となりました。
癌、泌尿器、移植領域などの既存の医療領域に加え、IPS細胞などの再生医療などの新技術の開発事業も行っています。
ヘルスケア業界の現状と課題・今後の展望
ヘルスケア業界は、高齢化や、人生100年時代の到来といわれている日本では、ますます需要が高まる業界です。
医療費の高騰が問題となっている日本では、健康寿命の延伸のための予防医療や、病気にかかった後もそれを悪化させないための治療薬の開発などの医療分野に対して、政府が成長を促進させようとしています。
その中で、新しい医療サービスの提供や新薬の開発など、ヘルスケア業界に関わる企業の開発競争は激しさを増している状況があります。
安心、安全を大前提とした業界であることから、それらを実証するための研究開発に注力する企業も増えています。
日系企業であっても国内にとどまらず、海外に研究施設や臨床試験のネットワークを構築したり、外資系企業と提携し日々研究開発を加速させている状況です。
ヘルスケア業界自体は古くからある歴史のある業界ですが、近年の健康ブームや医療サービスへの注目度の高まりから、爆発的なイノベーションが起こっている業界でもあります。
異業種から医療業界に参入する企業も多く、それぞれの業界でのノウハウを活用しつつヘルスケア業界でのサービスを展開し始めています。
今後も、この状況は加速することが考えられ、特にICT技術を活用したことによるスマート医療の加速などは、さらに事業が成長してく領域と考えられます。
また、日本に限らず、今後は新興国や途上国においてもヘルスケア事業へのニーズが高まっていくと予想され、海外市場への進出も加速するでしょう。
ヘルスケア業界は、従来からの人の健康を守るという使命感に満ちた価値観はそのままに、さまざまなイノベーションが起こることで、市場が広がり、成長し続ける業界といえます。
参考:経済産業省 平成29年度健康寿命延伸産業創出推進事業調査報告書
参考:経済産業省 次世代ヘルスケア産業協議会の今後の方向性について
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