ガス業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説





ガス業界とは

ガス業界に属する企業では、主にガスの「供給・販売」に関わる事業を展開しています。

ガスは「都市ガス」と「プロパンガス(LPガス)」に分かれ、それぞれで業界内の主要企業も異なっています。

まず、「都市ガス」は地下の専用の供給管を通じて利用者に供給されているガスです。

一方、「プロパンガス」は充填したガスボンベを入れ替えることによって利用者に供給されるガスです。

ガス業界の大きな転換期としては、2017年から始まった「都市ガス自由化」が挙げれれます。

これにより、以前までは一部の都市ガス会社が独占的に供給・販売を行なっていましたが、自由化以降は新規参入の会社も都市ガスを販売できるようになりました。

このように新たな会社が参入してきていることや、環境問題が原因で世界的にもエネルギー分野への注目度が高まっていることもあり、ガス業界においても時代の流れに沿った適切な変化が求められるといえるでしょう。

ガス業界の役割

ガスは「電力」や「道路」などと同様に人々の生活に欠かせないものであり、今後も各家庭や企業に対して安定的に供給していくことがガス業界には求められています。

同時に、ガスは取り扱い方を誤れば大きな事故に繋がる危険性も持ち合わせているため、ガスの安全対策の徹底や利用者への情報提供もガス業界の役割といえるでしょう。

また、東日本大震災時に起こった大規模停電をきっかけに、一般家庭においても非常時に使える発電設備の需要が高まっています。

この需要の高まりに対して、ガス業界ではガスを燃やして発電する「ガスタービン発電」や、ガスに含まれる水素を利用して電気をつくる「エネファーム」の普及拡大など、非常用発電設備への展開も活発化しています。

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ガス業界の企業の種類とビジネスモデル

ガス業界内の企業の種類とビジネスモデルについても確認しておきましょう。

ここではガス業界を3つの種類に分けて、それぞれ代表的な企業を挙げながら紹介していきます。

都市ガスをメインに取り扱う企業

都市ガス業界の代表的な企業としては、「東京ガス」「大阪ガス」「東邦ガス」「西部ガス」の4社が挙げられます。

この4社は都市ガス市場の中でも非常に大きな勢力を誇っており、「4大都市ガス会社」と呼ばれることもあります。

都市ガス会社の主な事業内容は、輸入した液化天然ガスをガス管を通じて一般家庭や企業に供給・販売していくことです。

2017年の「都市ガス自由化」によって、これまでガスを取り扱っていなかった企業も新たに都市ガス事業に参入しており、今後も競争の激化が予想される分野となっています。

プロパンガスをメインに取り扱う企業

プロパンガス業界の代表的な企業としては、「岩谷産業」「エネサンスホールディングス」「日本瓦斯」などが挙げられます。

プロパンガスは地下の配管を利用する都市ガスとは異なり、「LPガスボンベ」と呼ばれるガス専用の容器によってお客さまのもとへガスを供給しています。

プロパンガスは、ガスボンベに加えてガス管・ガスメーターなどの簡単な設備があればどこでも使うことできるのが大きな特徴です。

より安価な都市ガスの普及はプロパンガス業界にとって逆風といえますが、都市ガスの供給管が未整備の地域はまだまだ多いため、今後も生活インフラの一部を担う重要な存在だといえるでしょう。

電力事業からガス事業に参入してきた企業

ガスの自由化により、大手の電力会社がガス事業に参入するケースも出てきました。

「東京電力」「関西電力」「九州電力」などがこれにあたります。

大手電力会社がガス事業へ進出する背景としては、もともと火力発電用の液化天然ガスを大量に持っていることから、それを原料にガスを生産できるためガス市場への参入障壁が低いことが挙げられます。

すでに電力販売で契約しているお客さまも多く、「電力とガスのセット割引」を主力商品の一つとして展開しています。

ガス業界の職種

ガス業界の主な職種を3つ紹介していきます。

どれもガスの安定的な供給のためには欠かせない職種となっています。

施工管理

一般家庭や企業でガス設備の工事を行う際に、その工程を取りまとめるのが施工管理の仕事です。

ガス設備を導入したいお客さまの要望を取りまとめ、工事のスケジュールや予算管理、工事会社との打ち合わせなどを行います。

工事を行う職人や技術者を適材適所で配置し、一度決めた完工日までに間に合うようにスケジュールを管理していく必要があり、施工管理は工事現場の司令塔としての役割を担っているといえるでしょう。

保守・点検

すでにガスを使用してもらっている各家庭や企業において、ガス管などの点検・管理を行います。

ガス管からガス漏れが起こっていた場合、火災や爆発などの大きな事故につながってしまう恐れがあるため、定期的な点検作業は非常に大切な仕事の一つです。

お客さま立会いのもと、部屋の中に入ってガス設備の全般的なチェックを行うこともあり、老朽化などが見られれば設備改善の提案なども行います。

営業

一般家庭や企業を訪問し、自社で取り扱っているガス商品の提案活動を行い契約につなげることがメインの仕事です。

新規契約以外にも、すでに取引のあるお客さまに対して困りごとがないかを伺うことや、状況に応じた適切なアドバイスを行うことも営業の仕事となります。

また、住宅展示場などでガスの新商品に関するイベントが開かれていることもありますが、そのようなイベントについてもガス会社の営業が企画・運営を行なっています。

ガス業界のやりがい・魅力

人々の生活に欠かせないものを取り扱う仕事

私たちの生活において、ガスの存在は欠かせないものです。

お風呂を沸かす際の給湯器や、料理の時に使うガスコンロ、冬にはファンヒーターの燃料としてもガスの利用は不可欠です。

こういった人々の生活に密着した部分に携わることができるのは、ガス業界で働く大きなやりがいといえるでしょう。

とくに、2011年に発生した東日本大震災をきっかけに、一般家庭においてもエネルギーの取り扱いに関する注目度が上がっています。

震災時には停電も度々起こったことから、「電力」に対するマイナスイメージが多少なりとも広がってしまっているのも事実です。

このような背景から、今後も人々の生活を支えるエネルギーの分野はますます注目されていく業界であり、時代のニーズに合ったものを提供していくことがガス業界でも求められています。

今後もガスは、人々のインフラ部分を支えていく上で無くてはならない存在だといえるでしょう。

正社員が働きやすい業界

ガス業界は、正社員の働きやすい業界としても魅力です。

企業口コミサイト「キャリコネ」が2019年に発表した「正社員が働きやすい業界ランキング」では、「電気・ガス」業界が1位となっています。

その中でも「東京ガス」の評価は高く、「20時以降の残業禁止」「在宅勤務」「フレックスタイム制」を導入するなど、正社員が働きやすい環境に力を入れています。

ガス業界は「社会のインフラ」として安定した企業運営が求められており、そのためには従業員の働きやすい職場環境を整えることも非常に大切なことです。

このような意識の表れとして、福利厚生や社員のワークライフバランスに力を入れている企業がガス業界には多くみられます。

ガス業界の雰囲気

ガス業界は「大手のグループ会社」と「地域密着の独立系の会社」で雰囲気は異なります。

「大手のグループ会社」の場合、経営層は親会社やグループ会社からの出身者によって構成されているケースがほとんどです。

そのため、指示系統としてトップダウンの風潮が強いことや年功序列の仕組みなど、会社の雰囲気としては一般的な日本企業に近いといえるでしょう。

一方、「地域密着の独立系の会社」の場合は親族経営のスタイルをとっているケースも多いです。

この場合は創業者の経営方針によって会社の雰囲気は大きく異なるため、就職先として選ぶ際はこの点もよく確認しておくと良いでしょう。

また、地域密着の会社であれば転勤などもほとんどないため、同じ従業員と長年一緒に働くことになる点も特徴の一つです。

ガス業界に就職するには

就職の状況

ガス業界は、学生の就職先として人気の高い業界の一つです。

大手のガス会社であれば、そのほとんどが新卒の採用を毎年実施しています。

大卒で募集の多い職種としては「総合職」での採用で、営業・管理・供給など幅広い仕事領域を任されるのが総合職の仕事内容です。

募集はそれほど多くないものの「事務職」の採用も行なっており、こちらは各事業所単位で採用を行なっている場合が多くなります。

また、高卒採用も行なっているガス会社もあり、専攻内容によってはガスの生産部門や情報システムなどの技術系で採用されるケースもあります。

以上のように、ガスを安定供給していく上で多くの人手が必要であることから、それぞれの職種において毎年一定数の採用数を確保したいと考える企業が多い業界です。

就職に有利な学歴・大学学部

大手ガス会社の総合職として入社を希望する場合は、大学を卒業していることが必須条件といえるでしょう。

ガス会社によっては高卒の採用も行なっていますが、大卒の採用枠と比べると数は少なく、職種も限定して採用しているケースがよく見られます。

また、大学の学部については、応募する職種によって有利かどうかが変わってくる部分です。

例えば総合職や営業職、事務職などの募集については「学部・学科不問」としている求人がほとんどであり、出身学部によって評価に差が出ることも基本的にはありません。

ただし、生産や技術開発に関わる職種の場合は理系学部出身を中心に採用されています。

具体的な学部としては、機械系、電気・電子系、情報工学系などがこれに該当する学部となっています。

このように、どの職種で応募するかによって求められる知識が異なりますので、技術系の職種に進みたい場合はその点も踏まえて学部学科を選択すると良いでしょう。

就職の志望動機で多いものは

ガス業界を受けるときの志望動機としては、「ガス業界の持つ社会的役割の重要性」という部分を前面に出す内容がよく見られます。

ガス業界は人々の生活を支えるインフラ産業であるため、そこに魅力を感じて志望する人が多いようです。

しかしながら、「ガス業界が人々の生活を支えている」という部分は誰もが感じていることであり、ありきたりな志望動機として受け取られてしまう可能性も十分にあります。

そこで、例えば「今のガス業界に求められている点」や「ガス業界の中で今後どんなことを達成していきたいのか」などの自分なりの考えを志望動機に盛り込むことで、他の人との差別化を図るのもおすすめです。

当たり前な事実だけではなく、自分自身の考えを軸に志望動機を伝えることが大切です。

ガス業界の転職状況

転職の状況

ガス業界は、多くの企業で転職者の受け入れも積極的に行なっています。

国内のどこに住んでいても生活する上でガスは必要不可欠な存在であることから、地方で中途採用の募集を出しているケースもあります。

ただし、大手ガス会社の総合職の募集については中途の求人数が少なく、業界としても「安定」のイメージが強いことから高倍率になる傾向があります。

業界全体の動向や志望先企業の状況をよく研究し、転職における本気度をいかにアピールできるかが重要になるといえるでしょう。

転職の志望動機で多いものは

新卒の志望動機と同様に、こちらも「社会的役割の大きい業界で働きたい」「公共性が高い仕事がしたい」といった内容が多くなっています。

また、それほど規模の大きくない地域密着のガス会社であれば、「地域に貢献できる仕事がしたい」という理由で応募する転職者もいます。

いずれにしても、「社会貢献度が高い」という部分だけで志望動機を考えようとするとありきたりな内容になってしまうので、「入社した後、自分はその会社に対してどう貢献できるのか?」を志望動機に入れ込むのも有効な手段の一つです。

転職で募集が多い職種

ガス業界では文系・理系問わず幅広い職種で中途採用が行われていますが、その中でも募集が多いのは個人・法人向けの営業職や、ガスの配送や検針、点検作業を行うスタッフの採用です。

これらの職種はお客さまと直接関わっていく仕事になるため、転職の面接試験でも「お客さまと良い関係を築いていけるか」という点が採用基準の大きなウエイトを占めています。

そのため、これまで別の業界での営業や販売としての経験がある方は「前職でのお客さまとの関わり方」を上手くアピールすることで、面接での高評価に繋げることができるでしょう。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

ガス業界へ転職する場合、営業や事務などの文系の職種については同業界での業務経験は問われないケースが多いです。

これらの職種では業務経験や持っているスキルよりも、コミュニケーション能力を中心とした「対人関係力」が求められる傾向があります。

ただし、生産や開発などの技術系の職種については、専門的な知識やスキルがあることが前提での募集となるでしょう。

また、学歴については新卒の採用と同様に「大卒以上」としている会社が多くなっています。

ガス業界の有名・人気企業紹介

東京ガス

1885年創業、連結売上高19,623億円(2018年度)、従業員数6,708名(2019年3月31日時点)

関東地方の1都6県の主要都市を営業範囲とする、ガス業界の国内最大手企業。

都市ガス事業に加えて、電力などを組み合わせた「マルチエネルギー供給」の確立を目指し事業分野を拡大している。

東京ガス ホームページ

大阪ガス

1897年創業、連結売上高13,718億円(2018年度)、従業員数20,224名(2019年3月31日)

近畿地方を中心に展開する、都市ガス販売量国内2位の大手企業。

海外市場への事業拡大も加速させており、エネルギーの供給や資源開発など多種多様な事業を手がけている。

大阪ガス ホームページ

岩谷産業

1930年創業、1945年年設立。連結売上高6,707億円、従業員数1,236名(2018年3月31日時点)

プロパンガス業界で国内トップの総合エネルギー企業。

大阪に本社を置き、ガス事業に加えて調理器具や健康食品なども事業範囲としている。

岩谷産業 ホームページ

ガス業界の現状と課題・今後の展望

競争環境(国内・国外)

ガス業界を含めたエネルギー関連分野の動向は、近年大きな変動が見られる業界となっています。

2016年に電力の「全面自由化」、さらに2017年には「都市ガス自由化」が始まりました。

このような制度変更に伴い、ガス業界においても「ガスと電力のセット販売」に力を入れる企業が増えており、業界内で顧客を取り合う形で競争が激化している状況です。

また、日本のガス業界は海外企業の参入がほとんど見られないことも特徴の一つとして挙げられます。

これは日本のガス関連機器に求められている安全基準が非常に高く、海外企業にとって参入障壁の高い市場であることが理由となっています。

最新の業界動向

少子高齢化の影響により売上げ維持が厳しくなっている業界は少なくありませんが、ガス業界もその一つといえるでしょう。

少子高齢化により日本の人口が減れば、それに伴い日本全体でのエネルギー使用量は減少していきます。

そのため、今後長い目で見れば国内の市場は減少していくことが見込まれており、ガス業界においては新たな収益の柱を確立していくことが求められています。

こういった背景から、まだまだ攻め入る分野の残っている海外市場に目を向ける企業が増えており、海外のガス企業を買収する動きも見え始めています。

業界としての将来性

ガスの自由化による競争激化や少子高齢化によるエネルギー消費量の減少など、現在の状況はガス業界にとって決して追い風といえるものばかりではありません。

しかしながら、海外のエネルギー市場への事業展開や、新エネルギーの開発に着手するなど、新規分野に対して積極的に投資をしている企業も出てきています。

業界の現状を正確に理解し未来を見据えることで、いかに新規分野に事業の柱を立てていけるかがガス業界には求められているといえるでしょう。

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