教職大学院とは

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専門職大学院の1つに「教職大学院」があります。

大学の教育学部の人はもちろんのこと、将来教員を目指したいと考えている人は進学先として検討しているケースもあることでしょう。

教職大学院とはどのような機関なのか、学べる内容や通うメリット、入試や学費などについてまとめました。

教職大学院に興味のある人は、ぜひ参考にしてください。

教職大学院とは?どんなことを学べる?

教職大学院は2008年4月より開設された専門職大学院です。

専門性の高い教員の養成を目的として設置され、教科指導や生徒指導における教育実践を理論的に研究することに主眼が置かれています。

教職大学院はなぜ設立されたのか、どのようなことを学べるのかなど、概要について理解しておきましょう。

教職大学院が設立された背景

教育をとりまく環境は刻々と変化しています。

とくに近年では、学級崩壊やいじめ問題など、教員・児童生徒の双方にとって解決しなくてはならない問題が山積しつつあります。

また、ICT教育の導入や道徳の教科化、小学校での英語必修化といった変化に伴い、教員に求められる知識・技能はさらに高度なものになっています。

こうした教育現場が抱える課題や社会の変化に対応するには、従来以上に専門性を備えた教員を要請する必要があることから、教職大学院が設立されることとなりました。

教職大学院の特徴と取得できる学位

教職大学院には、大きく分けて2つの機能があります。

1つは大学の教育学部からの進学者を対象とする教育機能、もう1つは現職の教員を対象とした研修機関としての機能です。

標準的な修学年限は2年ですが、1年以上2年未満の短期履修コースや2年以上の長期履修コースを設定することもできます。

また、大学の学部で教職課程を履修していない学生を対象とする、教職科目を履修可能なコースを設置している大学院も存在します。

つまり、教育学部出身者でなくても教職大学院に進学できる仕組みになっています。

教職大学院を修了するには2年以上の在学と45単位以上の取得が必須条件とされています。

教職大学院を修了すると教職修士(専門職)の学位が授与され、教員免許状のうち専修免許状を取得することができます。

教職大学院に行かなくても教員になれる?

学校の教員になるには、教職員免許状を取得し、教員採用試験に合格する必要があります。

別の見方をすると、教職大学院に行かなくても教員免許を取得し採用試験に合格すれば教員になることができます。

大学の学部で教職課程を履修することなく卒業した場合でも、社会人になってから通信制大学で教職課程を履修して教員になることは可能です。

このように、教員を目指すにあたって教職大学院への進学は必須ではありません。

「教職」という名称のため、教職員免許を取得するために必要な教育課程のように誤解されることがありますので注意が必要です。

教職大学院に進学するメリット・デメリット

教職大学院に進学するメリット

教職大学院では大学の教育学部以上に専門性が高く、教育現場における実践的な事例や課題について学ぶことができます。

教員として現場に立ち、困難な状況に遭遇した際にも、教職大学院で習得した知識や技能を生かして対応できるなど、教員としての能力を向上させられる可能性があります。

また、教職大学院修了者は専修免許状を取得できるため、校長など管理職に昇進する際に有利になる場合があります。

教職大学院に進学するデメリット

教職大学院に進学するには学費がかかりますので、大学を卒業した時点からさらに学費が必要になり、経済的な負担が大きくなるというデメリットがあります。

教員免許状の取得そのものは教職大学院を修了しなくても可能であるため、教職大学院で理論を学ぶ時間を教員として経験をより多く積むための時間に充てたほうがよいと考える人もいます。

実際、教職大学院を修了していることを理由に教員として採用される時点で待遇が良くなるわけではないので、進学したことによるメリットをすぐには実感しにくい面があります。

教職大学院の入試と学費

教職大学院に入学するには入学試験に合格する必要があります。

教職大学院ではどのような入試が行われるのか確認しておきましょう。

また、教職大学院の学費はどの程度かかるのか、気になっている人もいるはずです。

国立・私立の教職大学院ごとに、目安となる学費についてまとめました。

教職大学院入試で行われる試験

教職大学院の入試では、研究計画書などの書類審査のほか、口頭試問(面接試験)、論文試験、専門科目の筆記試験が行われます。

論文試験では、教育学の知識や教員としての素養、専門分野に関する事項、事例問題などが問われます。

専門科目の筆記試験では、専門とする科目の授業や指導計画作成、評価において必要とされる知識が身についているかどうかが問われます。

これらのうち、とくに論文試験は合否を分ける重要な材料となるケースが多いといわれています。

教職大学院への進学を目指すのであれば、教育現場における実践事例や最新の教育現場の動向について情報収集を行い、口頭試問や論文試験に備える必要があります。

教職大学院の学費

国立大学の教職大学院の学費

国立大学の教職大学院は入学金・授業料が一律で決まっており、どの教職大学院に進学しても学費は基本的に同額です。

《国立大学の教職大学院 学費(初年度)》

入学金 282,000円
授業料(年間) 535,800円
初年度納入金 817,800円

私立大学の教職大学院の学費

私立大学の教職大学院の場合、進学する大学院によって学費が異なります。

同じ大学の学部から進学する場合、入学金や施設設備費など学費の一部が免除または減額されることがあります。

専門職大学院の中でも、法科大学院や経営専門職大学院では学費が高額になりやすい傾向がありますが、教職大学院の場合はそれほど高額な部類には入らないことがほとんどです。

《私立大学の教職大学院 学費(初年度)の一例》

帝京大学 立命館大学
入学金 200,000円
※出身者は半額
200,000円
※出身者は免除
授業料(年間) 600,000円 912,600円
その他費用 142,000円 44,000円
※出身者は14,000円
初年度納入金 942,000円 1,156,600円

教職大学院で奨学金は利用できる?

教職大学院においても一般的な大学院と同様、奨学金制度を利用することができます。

第一種奨学金の貸与を受けた場合、とくに優れた学業成績を収めたと認められると貸与期間終了時に奨学金の一部または全部の返還が免除されることがあります。

また、各大学院で独自の奨学金制度や特待生制度を設けていることがあるほか、教員育成を目的とした民間奨学金を活用できることもあります。

経済的な理由で教職大学院に進学すべきかどうか迷っている人は、奨学金制度の活用を検討しておくといいでしょう。

教職大学院に進学する際の注意点

現代の社会において求められる教育を体現する教員を目指す人にとって、教職大学院は高度かつ実践的な内容を学べる優れた機関です。

ただし、教職大学院に進学するにあたって注意しておくべき点もあります。

とくに次に挙げる2点については、教職大学院への進学を検討する際にしっかりと理解しておくようにしましょう。

教職大学院に入学できても修了できない場合がある

教職大学院での研究は、教育現場での実践を踏まえたデータに基づいて行われます。

言い換えると、研究を進めるにあたって学校現場に協力してもらうことが必須となります。

しかし、学校現場は多忙を極めており、学術的な研究の協力要請に快く応じてもらえることばかりではありません。

むしろ、現実的には研究に協力できる学校・教員はかなり限られてしまうのが実情です。

そのため、教職大学院での研究が思うように進まず、結果的に修了できなくなる可能性もないとは言い切れません。

附属小学校や附属中学校を併設する教育大学であれば、教職大学院での研究に比較的協力してもらいやすい環境が整っていることがあります。

このように、教職大学院に進学後、実際に研究をどのように進めるのかという点もしっかりと考慮して進学先を決定する必要があります。

教職大学院修了者でも教員採用試験に合格できるとは限らない

教職大学院の修了者は、高度かつ実践的な教育の専門知識を持つ人材であることに間違いありません。

ただし、公立校の教員になるには各自治体の教育委員会の採用試験に合格する必要があります。

私立校であれば、各校が実施する採用試験に合格しなければなりません。

仮に教職大学院を修了したとしても、肝心の採用試験に合格できなければ教員になることは不可能です。

教職大学院を修了したことは採用試験においても加味してもらえるはずですが、教職大学院を出ているからといって必ず教員になれると約束されているわけではありません。

近年では教員のなり手が減少傾向にあり、かつてほど狭き門ではないといわれているものの、依然として採用試験は一定のハードルになっていることを理解しておきましょう。

教職大学院は現代の教育現場で求められる高度な専門性を持つ教員を養成する機関として期待されています。

多くの課題を抱える教育現場において、最前線で活躍できる教員として必要な素養を身につけるには最適な機関といえるでしょう。

教員としての能力をより高めておきたい人はもちろんのこと、将来的に管理職を目指したい人は、教職大学院への進学を検討してみるのも1つの方法です。