【チョコレートソムリエ】「仕事がキッカケでチョコ好きに」世界最高峰の品評会で審査員を務めるーーさつたにかなこさん

(読了時間:9分54秒)

好きを仕事にしてる人を紹介するインタビュー記事。
今回は、チョコレートの輸入販売会社を経営し、世界最高峰のチョコレート品評会では審査員を務める、チョコレートソムリエのさつたにかなこさんからお話を伺います。

「チョコレートソムリエ」について

「チョコレートソムリエ」とはどのような肩書きでしょうか?

チョコレートの品質と個性を見極め、お客さまにご紹介します。

ほかにも、お客さまの用途やお好みをうかがい、要望に合うチョコレートをご提案する仕事です。

ワインのソムリエさんが予算やシチュエーション、ペアリングなどを考え、最も適切なワインをお客さまへ紹介するのと同じ。

チョコレートをお客さまへ紹介するため、「ソムリエ」の肩書きを使用しています。

具体的な活動内容について教えてください。

まず、世界中にあるチョコレートの中から日本へ紹介するべきブランドを選びます。

そして、選んだチョコレートの作り手、生産の背景を理解し、日本へ紹介。

お客さまとチョコレートを繋いでいく活動です。

また、単に商品を左から右へ流すような流通だけでなく、チョコレートを販売しながら「カカオとチョコレートの文化」など生産の背景の啓蒙活動をしていくことも主軸の活動となっています。

高品質なチョコレートの底上げをしたいと思っているため、インターナショナルチョコレートアワード(年に一度開催される世界最高峰のチョコレート品評会)の審査員にも参加。

すぐにビジネスへ直結はしませんが、カカオ生産者やチョコレートメーカーへのフィードバックをし続けることも重要な活動の一つだと考え、活動しています。

「チョコレートソムリエ」に関する活動のスケジュール

どのようなスケジュールでお仕事をされているのでしょうか?

365日何かしらの仕事をしていますね。

といっても、仕事内容は独自のものなので、ルーティンワークのようなことはしておらず…年間通して同じ仕事をしているわけではありません。

同時にいろいろな仕事を複数走らせて活動しています。

ある日は冷蔵庫のような事務所でもくもくと輸入用の書類を作成していたり、ある日は百貨店の店頭販売をしていたり、ある日はショコラティエ(チョコレートをつくる人)に同行してカカオ産地でジャングルにもぐり込んでいたり……

時差のある世界中の人たちとやり取りをするので、夜中でも関係なくメールや電話、メッセージのやり取りをしていることが多いです。

仕事の合間にカカオ生産者から近況報告のメッセージが届いたので、そのままコミュニケーションを取っていると真夜中の3時になっていることも(笑)。

そんなことが日常茶飯事です。

どれくらいの頻度でチョコレートを食べられているか教えてください。

インターナショナルチョコレートアワードの審査員をしているときは、審査のテイスティングだけで1,000~3,000種類になることもあります。

なので、多い日だと一日200~300審査でテイスティングしています。

少ないときは、仕事で販売している商品チェックのために、少しだけテイスティングをする感じです。

チョコを使った料理やお菓子の試作などをすることも多いので、さまざまな形で毎日チョコレートを摂取していると思います。

「チョコレート」に関する活動を始めたキッカケ

子どもの頃から「チョコレート」がお好きだったのでしょうか?

一般的に子どもが好きというレベルで好きではありましたが、特別チョコレートホリック(中毒)ではありませんでした。

「昔からチョコレートが好きだったの?」とよく言われますが、実は全く違います(笑)。

もともとはお茶とイギリスが大好きで、お茶を紹介する仕事がしたいと思い、イギリスのお茶を扱っている輸入商社の人材派遣の仕事に就きました。

そのあと、日本一のチョコレートの売上のあるチョコレートショップの店長が急遽退職されることになり、私はそこの店長になりました。

とはいえ、全くチョコレートのことは知りませんし、好きで食べていたわけでもなかった。

それまではチョコを買う習慣もありませんでした。

一粒数百円もするチョコレートをするために、どうやって価値を伝えたらいいのか、とチョコレートの勉強をスタートし、勉強を独自に深めていきました。

「チョコレートがすごく好き」という理由で今の仕事をされているわけではないのですね。

昔からチョコレートが好きでこの仕事をしているのではなく、目の前のお客さまに喜んでもらうことを考え続けた結果、チョコレートの魅力を深く知るようになり、ソムリエになっていた感じです。

「好きだから仕事をする」ではなく「仕事をするうちに好きになった」と、一般的に好きな仕事をしている方とは好きになる順番が逆かもしれません。

現在の働き方に行き着いた経緯

「チョコレートソムリエ」の肩書きを使い始めたキッカケを教えてください。

2014年、阪急うめだ本店で開催した板チョコレートばかりを紹介するイベント『タブレットミュージアム』の監修にたまたま携わることになりました。

そのとき、肩書きがあった方が分かりやすいのでは?と思ったことがキッカケです。

さまざまなブランドを網羅して紹介するということだったので、「チョコレートソムリエ」にしたら分かりやすいかもしれないと思い、使い始めました。

チョコレートに関する活動を始めてから、すぐに収入へ繋がりましたか?

活動が本格化したのは2014年からです。

20年前、チョコレートショップの販売員をしていたときから、独学でチョコレートについて勉強をしてきました。

そこで勉強した内容をアウトプットするためにブログを書いていたのです。

当時はチョコレートを仕事にしよう、なんて思っていませんでしたが、同じような活動をしている人がいなかったのでさまざまな相談事が入ってくるようになりました。

そこで、2013年に現在の会社『トモエサヴール』を立ち上げることに。

そして、前述した阪急うめだ本店の『タブレットミュージアム』の集積コーナーをつくることから、直輸入の事業をスタート。

そこから収益化するようになったと思います。

その後、チョコレートのテイスティングの経験値を認めてもらい、インターナショナルチョコレートアワードの複数の審査員の方から推薦をいただき、審査員になりました。

「チョコレートソムリエ」の楽しさ、つらさ

「チョコレートソムリエ」の活動をする上で、どんな場面に楽しさややりがいを感じていますか?

お客さまに共感され、賛同していただけたときや、チョコレートの「美味しさ」を理解して感動していただけたとき、とてもうれしい気持ちになります。

また、私が世界中のチョコレートを日本紹介することで、世界中のショコラティエが日本のものと出会い、そして新しい商品が生まれる。

そんな化学変化を起こしてくれることがあります。

そういったキッカケづくりができたときもうれしく思います。

そして、カカオ産地の人たちが私を信頼してくれていることを実感するときは、彼らが幸せになれるようにもっと頑張ろう!と思うことができます。

逆につらいな、大変だな、と思うことはありますか?

体力的・精神的に、かなりタフではないとできない仕事だと思います。

言葉や文化の違う人たちとコミュニケーションを取り、日本への輸入に必要な書類を揃えてもらうことが、最初の難関です。

根気強く理解してもらい、つくってもらいやすくしていくことが大変。

コミュニケーションを取る上での言語もさまざまです。

英語・スペイン語・フランス語…仕事をするだけでなく、語学の勉強も常にし続けています。

仕事の空き時間も無駄にはできません。

日本にいるときのデスクワークの量の多さも想像以上に大変です。

とにかく書類の量が多くて……。

食品の法律も頻繁に変わるため法律には常に意識したり、文化の違う国の商品を扱うための表示にも気を配ったり。

デスクワークとはいえ、さまざまなことに気を配らなければなりません。

また、カカオ産地に足を運ぶこともあるので、命にかかわる危険と隣り合わせでいることは、肉体的にも大変です。

カカオ産地には、治安の悪い場所であったり、熱帯地方特有の感染症のある場所であったりします。

そして、チョコレートは意外と重たい!輸入した1トンくらいのチョコレートの荷物は一人で運搬作業しています。

こんな重労働を女性がしているの…!?とびっくりされることもあります。

力がないとできない仕事なので、たくましくなる必要がありますね。

バレンタインの時期は年々会期が伸びている影響で、2ヵ月くらいお休みが全くなくなってしまいます。

スタッフには数日おきにお休みを取ってもらいますが、私自身は店頭のワークショップなどがあるので…想像よりはるかにハードな仕事かもしれません。

「チョコレートソムリエ」としての目標

どのような想いを持ってチョコレートに関する活動に取り組んでいますか?

私が紹介しているショコラティエのみなさんは、チョコレートという一つの“ツール”で世界をより良くしていきたいという考えのもと、情熱を持って活動している人がほとんどです。

みなさんのメッセージを温度感をそのままにお伝えしていきたいと思っています。

お茶にコップを注ぐと10度温度が低くなると言われています。

そんな風に、どんどん温度が下がっていくのは嫌なので…私の方がショコラティエ以上であるくらい熱い情熱を持ち、同じ温度感でショコラティエの想いを熱く語り続けていきたいです。

今後、「チョコレート」の活動で目指していることを教えてください。

私が紹介しているチョコレートは素晴らしいのですが、まだまだ知られていない魅力もたくさんあります。

お客さまへもっと分かりやすく、興味を持っていただけるように紹介していきたいと考えています。

常備食として高品質なチョコレートを手元に置いて、カカオパワーで健康にそしてハッピーな方が日本に増えるといいなぁと思います。

また、今はカカオ料理に力を入れていて、オンラインでカカオ料理教室も開催しています。

カカオは「甘いチョコレート」としてだけでなく、スパイスや調味料などの可能性を持つ食材です。

その可能性をどんどん広げて、料理の世界の方たちとコラボレーションもたくさんしていきたいですね。

好きを仕事にしたい人に向けてメッセージを

最後に、好きを仕事にしたい方へメッセージをお願いします。

「マニア」でいることと「プロフェッショナル」であることの違いを感じています。

というのも、「好き」の気持ちがあると自分の方へベクトルが向いてしまいがちだからです。

「好き」は自分をハッピーにしてくれるから、自分でだけ消費して終わってしまおう、という状態です。

それでは仕事になりません。

なので、仕事にするには「プロフェッショナル」になることが重要です。

プロフェッショナルになるには、少し俯瞰して「好き」を見つめる必要があると思います。

ベクトルを自分の外へ向けるのです。

誰を「好き」で幸せにできるだろうか?どうやって「好き」で幸せにさせられるだろうか?と問いを深くし続ければ、いつか仕事になるのではないでしょうか。

仕事とは「人を幸せにすること」だと思います。

どんな仕事でも、まずはそれをしっかり意識するのが一番大切です。

また、質問とは真逆かもしれませんが、「好きなこと」や「夢」がなくてもいいとも思っています。

「今置かれた環境で咲けばいい」ということです。

今、目の前にあることを最大限好きになってみること。

それを深く考え、問い続けているうちに、魅力に気づき、奥深さを知る。

すると、人間的にも成長し、プロフェッショナルになっていくのではないかと思います。

だから、好きなものがない人も焦らなくて大丈夫です。

私のように、それまでなかった仕事が生まれる(生み出せる)可能性はいつでもありますから。

さつたにさんに聞く、チョコレートの3つの魅力

1. カカオを通して、さまざまな出会いを運んでくれる
カカオは「神様の食べ物」と呼ばれています。

カカオ産地の神々しい景色を目の前にすると時々、私はなぜ今ここにいるのだろう?と不思議な気持ちになることがあります。

今までも、たくさんの先住民族の人や普通の人生では出会えるはずもなかった人たちとたくさん出会わせてもらいました。

それは、カカオの神様のお導きとしか思えないと感じています。

2. チョコレートを通して、さまざまな国の文化と触れ合うことができる
世界中、どの国に行ってもチョコレートやチョコレート菓子があります。

そして、それらは各国の産品と仲良しになり、独自の文化をつくっています。

例えば、台湾では桜エビのチョコ、カナダではメープルシュガーのチョコ、シンガポールではサテソース(東南アジア諸国で親しまれているソース)のような味わいのチリピーナッツなど。

訪問したことのない国でも、各国の文化を知り、興味を持つキッカケにチョコはなりえるところ、単純にチョコを食べるだけで世界を旅した気分になれるところが素敵だと思います。

3. 美味しくて健康にも良い!
なんといってもチョコレートは美味しいです。

香りにも癒されます。

また、最近では医療分野の先生方がカカオに関するさまざまな臨床実験の結果を報告しています。

カカオポリフェノールの健康効果、カカオが持つ体にいい効果がたくさん分かってきたのです。

その昔は、王侯貴族の薬として珍重されただけあり、現代でも食べる美味しいサプリメントのようにエナジーを与えてくれます。

スナック菓子を食べるなら、代わりにチョコにしてもらった方がいいかも…と思います。