流行の仕掛けを作り、お客さまにたくさんの感動とワクワクを!

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バイヤー松村 佳美さん

1985年生まれ。群馬県前橋市出身。2007年3月、立教大学社会学部卒業。同年4月、株式会社伊勢丹へ入社。スタイリスト(販売員)、アシスタントバイヤーとして経歴を重ね、2013年4月より婦人雑貨統括部のバイヤーとして活躍中。

まずは入社してから現在までの職歴について、簡単に自己紹介をお願いします。

大学卒業後、新卒で株式会社伊勢丹(現:株式会社三越伊勢丹)へ入社し、2年目までは新宿店でスタイリスト販売員)として勤務していました。

当初、配属されたのは「BPQC」という伊勢丹独自のライフスタイル提案型ショップです。そこでは、主に化粧品、食品、洋服など「ナチュラル」や「オーガニック」をテーマにした商品を扱っていました。

入社3年目から、ビューティアポセカリーのアシスタントバイヤーとなり、合計4年間勤務しました。

そして2014年度、入社7年目でバイヤーに昇格し、初めて婦人靴部門へ配属。2015年度の現在は婦人靴の担当3年目で、社歴としては8年目になります。

「アシスタントバイヤー」とは、どのような役割を担っているのですか?

基本的には、バイヤーの代行業務を担当します。

上司に言われていたのは、「バイヤーは未来のことを見て、アシスタントバイヤーは今のことを見る」ということです。

たとえば、バイヤーが3カ月先のことを計画したら、それを遂行するために今どう動き、実行するかを考えるのがアシスタントバイヤー。

バイヤーと、商品を販売する店頭の橋渡し的なポジションともいえます。

ただ、「アシスタント」とはいっても裁量は大きかったです。入社3年目から、自分で見つけた商品については自ら取引先と商談することもありました。

松村さんはなぜ百貨店に就職しようと考えたのですか?

私の就職活動の軸は、「人の生活を豊かにしたい」ということでした。

そのためには、人生の転機だったり、何か新しいことをするというときに、その場に立ち会える仕事がしたかったんです。

ですから、実は百貨店以外にも、人材派遣やホテルなど、さまざまな業種の会社を受けていたんですよ。

百貨店にいらっしゃるお客さまは何か特別なものであったり、非日常的な「ワクワク感」を求めていらっしゃる方が多いです。

そういう期待を抱いている方の力になりたいと思ったことが、私が百貨店で働こうと決めた理由です。

なかでも、伊勢丹へは幼い頃から母や祖母と一緒に足繁く通っており、スタイリスト(販売員)の方に良くしてもらった印象が強かったので、ずっと第一志望にしていました。

それでは、もともと「バイヤー」という職業そのものを目指していたわけではなかったのでしょうか。

はい。そうなんです。実際に、入社試験では面接官から「バイヤーとマネージャーのどちらになりたいか?」と問われたのですが、私は「マネージャー」と答えていました。

というのも当初、お客さまの喜ぶ顔を間近で見られるのは、店頭の責任者であるマネージャーだと考えていたんです。

でも、実際アシスタントバイヤーになってみると、バイヤーこそお客さまの声を聞かなければならず、店頭に出る機会を持たなければならないことがわかりました。

今はバイヤーの仕事にとてもやりがいを感じています。

それでは、バイヤーとしての現在の仕事内容を教えてください。

バイヤーの主な役割は、お買い場(売り場)にどのような商品を置けばいいのか、6ヵ月後や3ヵ月後の計画を立て、品揃えをすることです。

具体的な仕事内容は大きく分けると2つあり、そのひとつは「計画業務」というものです。

「お客さまが何を求めているのか?」「どんな価格帯のどのようなものを入れるべきか?」「どれくらいの量が必要なのか?」など、店頭スタッフの話を聞きながら品揃えの計画を立てていきます。

そして、その計画に基づいた形で、お取組先と商談をしたり、海外へ買付に出かけたりします。

もうひとつ、「企画」することもバイヤーの大事な仕事です。

お取組先と話したり、展示会などのイベントに出向いたり、日々流行やさまざまな情報を追いながら、たとえばキャラクターとのコラボや新ブランドの展開など、お客さまに喜んでいただける新たなコンテンツを考えていきます。

展示会について少し詳しく教えていただけますか。

各ブランドの展示会は、「FWシーズン(秋冬)」と「SSシーズン(春夏)」でそれぞれ2回ずつ、「プレコレクション」と「メインコレクション」というものが開かれます。

つまり年に4回、展示会ラッシュの時期があるわけです。その時期は、私も1回で40〜50社ほどは回っています。

ちょうど現在(3月下旬)は、今年のFWシーズンの展示会ラッシュで、昨日も4社回りました。

1日の大体のスケジュールについて教えてください。

それでは、今日、水曜日のことをお話しましょう。水曜日は伊勢丹全館で「立ち上がり(新しい展示や企画がスタートする日)」となっています。

9:30に出社し、メールチェックをします。10時に店頭に出て、立ち上がりに問題がないかチェックをし、朝礼に参加して、30分くらいはお客さまの様子を見ます。

11時にバイヤー室に戻ると部内のミーティング。12時からは1時間お昼休憩をとります。

日中は、商談あるいは外出をしていることが多いです。

18時前後に社内に戻ってからは資料作成をしたり、席を外している最中に起こった出来事についてアシスタントの子から報告を受けます。

だいたい19:30くらいに業務終了です。

海外出張には頻繁に行かれているのですか?

はい、国内の展示会が始まる少し前に、ミラノコレクションやパリコレクションが開催されるので、その時期に買い付けに出かけます。

海外の展示会も「FWシーズン」と「SSシーズン」があります。

それぞれのシーズンで「プレプレコレクション」「プレコレクション」「メインコレクション」という3つの展示会があり、すべてに出かけます。

1回の出張は12日間となります。

海外出張中は、どのように過ごしているのですか?

出張中は、ブランドのショールームを1日8社ほど回るのでとても忙しいです。でも、少し空いた時間を使って現地の美術館を回ったり、百貨店に足を運んだりしています。

私たちの出張は、海外の流行を追ったり、日本では見られないものを見たり…といった市場調査も兼ねています。

ちなみに、行先は基本的にパリとミラノですが、靴に関してはドイツにも工場があるので、そちらでお取組先と商談をすることもあります。

海外では外国語を使って商談するのですか?

いえ、必ずしもそういうわけではありません。

現地にお取組先の日本人スタッフがいるケースもありますし、弊社の場合、パリオフィスとミラノオフィスを構えていますので、現地駐在のスタッフがアテンドしてくれています。

ただ、頻繁に出かけているので、簡単な日常会話くらいは使うようになりますね。

バイヤーの仕事の魅力、やりがいはどんなところにありますか?

自分たちで計画をしたこと、仕掛けたことの反応が、ダイレクトに見えるところです。

もちろん、すべてがうまくいくわけではなく、予測していたような反応が得られないこともあります。

それでも、弊社は若くてもどんどん挑戦していける社風なので、自分で考えて、形にしたことに対する反応を自分の眼で確かめられるというのは、大きなやりがいですね。

「売上」という数字に表れる部分はもちろんですが、お客さまからの小さなお声一つひとつを励みにしながら、お客さまにもっと感動を与えられるもの、満足いただけるものを提供できるよう頑張っています。

お仕事をするうえで大切にしていることはどんなことですか?

店頭のスタイリスト(販売員)や、他のスタッフとの連携をしっかりととることです。

とくに靴に関しては、正直履いていただかないとわからないところも大きいので、お客さまの感想をよく汲み取る必要があります。ですから、スタイリストとは普段から密に連携をとっています。

ちなみに、海外で買い付けをする際には、自分が「良いな」と思う靴を見つけたらその場で写真を撮り、LINEでスタイリストに送って率直な意見をもらうこともあります。

別の職種であっても、みんなお客さまのことを考えているのは共通です。一致団結して、良いお買い場を作っていこうという雰囲気を大事にしています。

松村さんの部署に、婦人靴のバイヤーは何人いらっしゃるのですか?

私が所属する「商品統括部」は、基幹店3店舗(伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店)を統括しており、6人のバイヤーが在籍。

そのうち、私は新宿店と銀座店で、3万円以上のラグジュアリーな価格帯の靴を担当しています。

ちなみに、伊勢丹新宿本店の婦人靴売り場で展開している商品は約8,000種、平場としては日本一の規模を誇ります。

各バイヤーの下にはアシスタントバイヤーが付き、私も3人のアシスタントバイヤーと一緒に働いています。

最近では女性のバイヤーも少しずつ増えているのですが、この部署のバイヤーは私以外男性です。

お休みの曜日は決まっているのですか?

私は木曜日と日曜日が固定でお休みです。

連休に関しては年次によって違うのですが、私の場合は半年間の中で2回、一週間の連休を取ることができます。ただ、元旦以外の年末年始などは休みになりません。

展示会がない時期など、自分の仕事のスケジュールに合わせて取得しています。

普段のお休みは友人と会って話したり、連休中は同期と旅行に出かけることが多いですね。

仕事ではヨーロッパばかり出かけているので、プレイベートはもっぱらハワイなどのリゾート中心です(笑)

バイヤーに向いているのは、どんな人だと思いますか?

私自身、昔はバイヤーに対して、「流行への感度が高く、ファッションセンスがある人。新しいものを見つけるのが得意な人」といったイメージを抱いていました。

もちろん、そこも求められる部分ではあるのですが、それ以上に、この仕事は「人を巻き込む力」が大事だと思います。

自分が考えたこと、企画したことがあっても、誰かに伝えなければ何も動き出しません。

ですから、いかに思いを人と共有して、形にして、最後までやり遂げられるか。そういう「発信力」「影響力」みたいなものも大切ですね。

私はもともと、そういうところに長けているタイプではなかったのですが、バイヤーになってからは思い付いたことは必ず誰かに話すようにしています。

誰かに話せばフィードバックがもらえますし、新しいアイデアも生まれていきますから。

松村さんの、今後の目標を教えてください。

これからも婦人靴のバイヤーとして成長して、将来的には、もともとやりたかった売り場を統括するマネージャーにもなってみたいです。

あとは、これから先、結婚や出産をしたとしても、ずっと仕事を続けたいですね。実際、社内には家庭と仕事を両立しているバイヤーもいますので、私も頑張っていきたいです。

若い子が将来バイヤーを目指すために、今のうちにやっておいたほうがいいと思うことはありますか?

仮説を立てる癖を付けておくといいかもしれません。

たとえば、アパレルショップでも何でも、皆さんが足を踏み入れたお店が、とても居心地良かったとします。

そこで、ただボーっと過ごすのではなく、「このお店は何で居心地が良いのだろう?」と考えてみたり、「この商品は、きっとこういうお客さまに向けて置いてあるのだろう」といったように、お店をつくる側の立場に立つつもりで考えて、自分なりの答えを出すようにしてみてください。

最後に、バイヤーを目指す人に向けてメッセージをお願いします!

「バイヤーになりたい!百貨店で働きたい!」という人は、きっとライフスタイルを豊かにすることに興味があったり、ファッションが大好きだと思います。

私たちの仕事は、そういったものを通じてお客さまや世の中に喜びや感動を与える仕事ですから、熱意はとても大切です。

仕事に必要なスキルは入社後に学べるので、学生の間はまずいろんなものを見て、アンテナを張って、将来自分がバイヤーとして「お客さまにこういう提案をしたい!」「こういう風に働きたい!」という気持ちを高めていってください。

そして、いざこの仕事に就いたときには、その気持ちを思いきり爆発させてほしいなと思います。

(取材・文:石原 桃子)