A&Rの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「A&R」とは
新たな才能を発掘して育成し、アーティストとして世に送り出す
A&Rという職業を知っている人は、音楽業界や芸能界に興味がある人が多いようです。
A&Rは、Artists and Repertoire 「アーティスト・アンド・レパートリー」を省略した言葉です。
その名の通り、アーティストを発掘して育成し、その才能を発揮できる楽曲制作のサポートをするのが仕事です。
芸能界では、モデルや俳優の卵をスカウトしたりオーディションを受けさせたりして世に送り出すマネージャーがいることはご存じでしょう。
そのマネージャーの音楽業界版と考えると、イメージしやすいかもしれません。
A&Rが担当する仕事の内容は、企業やアーティストによって異なります。
また、歌手、シンガーソングライター、バンド、とそれぞれの活動内容によってサポートの内容も変わります。
主な仕事としては、アーティストが楽曲を制作するときにどんな作詞家や作曲家、アレンジャーと一緒に作るかを決めること。
プロモーションビデオやミュージックビデオの方向性を考え、ロケやレコーディングの段取りをすること。
世間で話題になるためのタイアップやSNSでの宣伝を仕掛けること。
アーティストの出演するメディアや取材媒体を選ぶことなどです。
自分が担当するアーティストのために、才能や魅力を最大限発揮することができる環境を創り出す。
それこそがA&Rの大切な使命といっても過言ではないでしょう。
「A&R」の仕事紹介
A&Rの仕事内容
アーティストの音楽活動を全面的にサポート
A&Rは、レコード会社に所属しながら仕事をしています。
担当する仕事の内容は人によって異なりますが、発掘から育成、楽曲制作からCDのプロデュースまで全てを引き受けることがあります。
一例として、地方で話題になっているシンガーソングライターをデビューさせるまでの活動を見てみましょう。
まず、「福岡のライブハウスで大人気のシンガーソングライターがいるらしい」という話を耳にするとします。
このような音楽シーンに関連するうわさ話は、A&Rにとって宝のように貴重な情報です。
すぐにネットでSNSや動画サイトに演奏動画がないかどうかを調べます。
そして「才能がある」「原石かもしれない」と感じれば、現地に行って本人とコンタクトを取ります。
交渉次第で社内のスタッフと協力しながら、レコード会社に所属してもらい、育成やCDデビューの方向性について話を進めていくことになります。
ここで最も大切なのは、本人の才能や個性、魅力を最大限に引き出せる方法を模索することです。
「ルックスがよいからアイドル路線で売り出そう」と考えても、本人が楽曲制作にしか興味がなければ実現は難しいでしょう。
「カラオケでよく歌われるようなノリのいい曲を作ろう」と提案しても、バラードしか作れないこともあります。
単純に数字の売り上げだけを重視してしまうと、アーティストの可能性を潰してしまうこともあるのです。
楽曲のアレンジ、ブランディング、レコーディング、CDジャケットのデザイン、ミュージックビデオの内容、メディアの出演の有無。
全ての仕事において、アーティスト本人の意向を大切にしながら、自分にしかできない提案や企画をしていくことがA&Rの役割です。
A&Rになるには
レコード会社に就職
レコード会社は、音楽業界を目指す人にとって憧れの就職先です。
そのなかでも、A&Rは、まさに花形として知られている職業です。
「自分の手で新たな才能を発掘したい」「日本の音楽シーンを変えていきたい」「世界に通用するアーティストを育成したい」。
そんな夢や希望を持って、この職業を目指している人がたくさんいます。
しかし、この仕事に就くのは決して簡単なことではありません。
まずは、大手のレコード会社や音楽関係の事務所に就職しなければいけませんが、採用数が少ないので狭き門といわれています。
採用されるためには、学生時代から知識や能力を磨いておくことが大切です。
高学歴の人も多く活躍している業界なので、できれば大学には進学しておいたほうがよいでしょう。
一般的な大学ではなく、音大からレコード会社への就職を目指す人もいます。
音楽の専門学校出身の人もいますが、大手企業の正社員の場合は大卒の学歴が必須となることもあるので注意が必要です。
音楽経験に関してはマストでありません。
しかし、音を聞き分けることができる耳のよさは求められます。
この他にも得意な楽器があったり、海外の音楽に造詣が深かったりするとアピールしやすいでしょう。
中途採用の場合は、A&Rの経験者はもちろん、音楽プロデューサーやマネージャーなど、近しい職業の経験者を求めることが多いようです。
専門性の高い職業なので、一般企業で事務仕事をしていた未経験者が中途採用でA&Rに採用される可能性は低いというのが現実です。
A&Rの学校・学費
四年制の大学や音大に進学
世界に通用するアーティストを送り出すA&Rになりたいのであれば、大手のレコード会社に就職するのが何よりの近道です。
しかし、大手レコード会社は人気が高く、新卒で採用されるのが非常に難しいことで知られています。
就職を目指すのであればまずはレベルの高い大学で自分の得意分野を学ぶこと。
そして一般教養や語学なども身につけておくことが大切です。
それにプラスして音楽の歴史や知識を学び、楽器や歌などの演奏スキルも磨いておくとよいでしょう。
もっと専門的に音楽のことだけを学びたいという人は、音大に進学するという道もあります。
最近は、音大にも音楽ビジネスやプロデュースについて学べる学部や学科があるようです。
大阪音楽大学の「ミュージックビジネス専攻」、名古屋音楽大学「音楽ビジネスコース」、昭和音楽大学の「サウンドプロデュースコース」など。
興味のある人は調べてみるとよいでしょう。
A&Rの資格・試験の難易度
資格よりもセンスが問われる
A&Rとして仕事をするうえで、必要となる資格や免許はありません。
魅力的なアーティストを発掘し、最良のプロデュース方法を考え、その才能を世に送り出す。
そんなクリエイティブな仕事だけに、資格よりも観察眼や審美眼、センスこそが問われます。
人によっては、幼少期から音楽教室に通っており、音楽的なスキルが高いこともあるようです。
音大の出身者で楽器や合唱のコンクールの出場経験がある人もいます。
趣味の活動として、楽曲制作のコンテストで受賞経験があるというケースもあります。
留学や海外での生活を経験していて、海外の音楽に非常に詳しいという人もいます。
特定の資格よりも、センスや豊富な経験があるほうが、仕事に生かしやすい職業です。
A&Rの給料・年収
大手レコード会社は安定の傾向
A&Rが所属しているのは、レコード会社です。
ソニーミュージック、ポニーキャニオン、ワーナーミュージック。
このような大手レコード会社の名前は、聞いたことがあるという人が多いのではないでしょうか。
一般的には、大手の場合は収入は安定している傾向があります。
たとえば、ソニーミュージックグループの新卒採用の場合。
2022年の新卒採用サイトによると、大卒・大学院了の人の年俸は385万円+業績賞与 (平均415万円)とされています。
これは初任給なので、キャリアを積み重ねることで給料は上がっていくと考えてよいでしょう。
ただし、小規模なレコード会社は経営が不安定で、業績によっては賞与が出ないこともあります。
音楽業界は流行の影響を受けやすいという一面があるため、娯楽の多様化とともに経営が厳しくなっている企業もあります。
現代社会では、昔のように、レコードやCDが飛ぶように売れるわけではないのです。
また、災害やコロナのような不測の事態が起きると、アーティストのライブ活動や楽曲制作にも大きな影響が及びます。
景気が悪くなったときにも、いかにエンターテインメントにお金を落としてもらえるか。
CDが売れなくても、サブスクと呼ばれる音楽聞き放題のサービスや楽曲配信サイトなどを通して、いかに売り上げをキープできるか。
レコード会社としても生き残りのために戦略を練らなければいけません。
業界全体としては安定しているとはいいがたいので、本当に情熱がある人こそが目指すべき業界でしょう。
A&Rの現状と将来性・今後の見通し
新たな時代を切り開くために
かつて、音楽を聴くためにはレコードやCDを買うことが当たり前でした。
好きなアーティストの新譜を手に入れるため、お小遣いや給料を貯めてCDショップに行ったのです。
しかし、時代の移り変わりとともに、音楽の楽しみ方が変化しつつあります。
サブスクと呼ばれる聞き放題サービスを利用する。
無料の動画サイトでミュージックビデオだけ見る。
アルバムは配信サイトで好きな曲だけ選んで買う。
顧客の意識や購買行動が、昔とは全く違うものになっているのです。
レコード会社や大手CDショップにとっては、従来の常識にとらわれず新たな売り方を探っていかなければいけない時代です。
A&Rとしても、アーティストの売り出し方や宣伝の仕方に工夫をする必要があるでしょう。
A&Rの就職先・活躍の場
レコード会社に就職
A&Rは、レコード会社の社員として働いています。
音楽プロデューサーやマネージャーのように知名度が高くないのは、日本国内においては比較的新しい職業だからでしょう。
大手レコード会社であるソニーミュージックでも、A&Rの仕事が確立したのは2000年代に入ってからといわれています。
この頃から、他のレコード会社でも、A&R担当のスタッフを採用する流れができてきました。
人気のある就職先として、ソニーミュージックやポニーキャニオン、ワーナーミュージックなどが有名です。
ただし、採用数は決して多くはないので、就職が狭き門であることは間違いありません。
小規模なレコード会社や音楽事務所でもA&Rを募集していますが、即戦力となる経験者を求めていることが多いようです。
A&Rの1日
深夜までのハードワークになることも
音楽業界は、ハードワークであることで知られている業界です。
大手レコード会社に所属するA&Rも、朝から晩まで多忙な日々を送っています。
ここでは、売り出し中のバンドグループを担当しているA&Rのスケジュールをご紹介します。
A&Rのやりがい、楽しさ
素晴らしい音楽を世に送り出す誇り
A&Rを目指す人は、音楽が大好きな人ばかりです。
自分が本当に魅力を感じる音楽を、多くの人に聴いてもらいたい。
そしてたくさんの感動や喜びを届けていきたい。
そんな願いを持って仕事をしています。
実際に、自分が育成したアーティストの楽曲が大ヒットすると、とても誇らしい気持ちになります。
ファンからの「感動した」「共感した」「元気が出た」という声は、アーティストにとってもA&Rにとっても宝物になるのです。
また、新しいジャンルの音楽を切り開けたときや、音楽業界の流行を創り出せたときにも、仕事のやりがいを感じられます。
日本の音楽シーンに残り続けるような名盤を生み出したA&Rは、アーティストからも絶大な信頼を得ることができるのです。
A&Rのつらいこと、大変なこと
結果がすべての厳しい世界
A&Rとして働く人は、自分の手で発掘したアーティストを世に送り出すことを目指しています。
この「世に送りだす」というのは、単純にCDデビューさせるだけではありません。
ヒットチャートの上位に入るような名曲を作り、有名な音楽番組に出演し、ドームでコンサートする。
そんな人気アーティストへと導くことを夢見て仕事をしています。
しかし、音楽業界は流行の移り変わりが激しく、実にシビアな業界です。
一曲目は売れたけどそれ以降は全く売れない、というケースも珍しくありません。
自分の手掛けたアーティストが結果を出せないときは、A&Rにとっても非常に苦しい瞬間です。
精神的にタフで粘り強く頑張れる人でないと、続けていけない仕事といえるでしょう。
A&Rに向いている人・適性
音楽的なセンスがあり、時代を読む力がある人
A&Rという職業に向いているのは、音楽的なセンスがずば抜けている人です。
J-POPはもちろんのこと、ジャズやヒップホップ、ロックやヘヴィーメタル、クラシックや海外の音楽。
さまざまなジャンルの音楽に親しんでおり、知識があり、楽曲の魅力を理解することができる。
そんな人であれば、他の人にはないような才能を持つアーティスト発掘することもできるでしょう。
また、音楽業界で働く人には常に新しいものを生み出す力が求められます。
今すでに流行している音楽のテイストを後追いするのではなく、まだ多くの人が知らない音楽の魅力を伝えていくこと。
それこそがA&Rの使命といっても過言ではないでしょう。
この他にも、楽器経験があったり絶対音感があったりすると、A&Rとして適任です。
A&R志望動機・目指すきっかけ
日本の音楽業界の未来を生み出したい
A&Rになりたいと思う人の志望動機は、どのようなものなのでしょうか。
一般的に最も多いのは、「日本の音楽業界の未来を自分の手で生み出したい」という思いです。
A&Rを志望するのは、もともと音楽が大好きという人ばかりです。
さまざまな楽曲を聴いているうちに、音楽の新しい時代を切り開いていきたいという気持ちが芽生えるのでしょう。
また、「ジャズが大好きだから日本の若者にもっとジャズを聴いてもらいたい」とか「J-POPをもっと世界に売り出したい」という志望動機もあります。
「才能あふれる若者を発掘してトップアーティストに育てたい」という夢を持つ人もいます。
自分が大好きな音楽を多くの人に届けたいという強い願いが、A&Rの原点となっています。
A&Rの雇用形態・働き方
レコード会社への就職が基本
A&Rは、レコード会社に就職して働いています。
彼らの仕事は、才能あるアーティストを発掘して育成し、世に送り出すこと。
これはまさにレコード会社の命運をかけたプロジェクトであり、失敗は許されません。
ですから、基本的にA&Rは責任ある立場の人が行うことになります。
正社員であることが多いのですが、「中途採用で試用期間の場合だけ契約社員」というケースもあります。
「アルバイトやパートのA&Rとして働けないのか」と考える人もいるかもしれません。
しかし、前述のように非常に責任の大きい仕事なので、社員以外に任せることはないと考えておいたほうがよいでしょう。
ただし、長いキャリアと実績があるA&Rが独立した場合は、フリーランスとして活躍できることもあります。
A&Rの勤務時間・休日・生活
ハードワークを乗り越える毎日
A&Rが勤務しているのは、レコード会社です。
音楽業界は忙しいことで知られており、A&Rもハードワークになることが多いようです。
勤務時間はフレックス制になることが多く不規則になりがちなので、柔軟に働ける人が向いているでしょう。
たとえば、才能ある若手を発掘するために、全国各地のライブハウスを飛び回ることがあります。
アーティストとしてのブランディングや楽曲のアレンジの方向性を決めるために、夜遅くまで話し合いを重ねることもあります。
曲のレコーディングやロケに入れば、休日も返上して付き合わなければいけません。
クリエイティブな業界だけに、一度決めたことに修正が入ったり方針を転換したりすることも日常茶飯事です。
プライベートを優先させたい人は、両立への工夫が必要です。
A&Rの求人・就職状況・需要
新卒も中途採用も採用は少ない
A&Rは音楽業界で働きたい人にとって憧れの職業であり、この仕事を目指している若者はたくさんいます。
しかし、実際の求人状況はというと非常に厳しいものがあります。
ソニーミュージックやポニーキャニオンなどの大手レコード会社では毎年採用を行っていますが、新卒採用はかなりの狭き門です。
大学卒業後にこの仕事に就ける人はほとんどいないのが現状でしょう。
中小規模のレコード会社の場合も、自社でマネージメントやプロデュース業を経験した社員にA&Rを任せる傾向があります。
中途採用も行っていますが、どちらかというと経験者を求める傾向があります。
アルバイトやパートで働けるような職業でもないので、この仕事を目指す人は学生時代からしっかり努力することが大切です。
A&Rの転職状況・未経験採用
業界経験者であれば採用の可能性も
今は別の仕事をしているものの「A&Rに転職したい」と考えている人もいるかもしれません。
しかし、この仕事は非常に専門性が高いので、ある程度は業界の経験者でなければ厳しいでしょう。
音楽業界でアレンジやプロデュースに携わっていた人。
芸能事務所でスカウトやマネジメントをしていた人。
テレビ局で音楽番組の企画や演出をしていた人。
あるいは自身が楽器やボーカルの経験者で、ミュージシャンやアーティストを目指していたけれど諦めた人。
このような経歴がある人達であれば、自身の経験を生かしてA&Rに転職することも可能かもしれません。
レコード会社の中途採用の情報をこまめにチェックして、チャレンジしてみましょう。