ダンサーになってよかったこと
私は社員1万人の一部上場企業から、ダンサーへと大きくキャリアを変えました。
その中で感じたこと(会社員との対比)も交えて体験をお伝えします。
ダンサーといえば華やかなステージで踊っているイメージがありますが、その陰には努力の積み重ねがあり、かつ何の保証もなく不安定な世界です。
その代わり他の仕事では得難い達成感や喜びがあるのも事実です。
だからこそやめられないし、それがダンサーとして生きる喜びです。
ステージに立ったら自分が主役
ステージに上がったら例えばソロで踊る場合、頼れるのは自分一人です(フラメンコの場合、伴奏者=ギターと歌い手もいますが)。
その分プレッシャーや緊張感も大きいですが、そこは誰にも邪魔されない自分一人の空間で、紛れもなくその舞台の主役です。
これは会社員をしているとなかなか味わえない感覚です。
もちろんプレゼンなどで自分一人に視線が集まることもあるでしょう。
たた、プレゼンの内容はあくまで会社の商品であって、主役もその商品です。
ダンサーは自分自身が主役であり、商品です。
言ってみれば結婚式などで浴びるような視線を常に受けるし、「生きている」実感を日常的に味わえる職業です。
100回のリハーサルより1回の本番、とよく言いますが、そのくらいライブには特別な力があります。
例えばボクサーが、入場する時のスポットライトを浴びる感覚が忘れられない、と言いますが似たようなものかもしれません。
またスポーツ選手は寿命が短いですが、ダンサーの場合、ジャンルにもよりますが、比較的長いこと続けられるのが特徴でしょう。
濃密な瞬間を味わいたいと思ったら、これほど適した職業もなかなかないと思います。
直接感動を伝えられる
ステージ終了後にお客さんから、「直接感動を与えられるって素晴らしいですね!」と言われて、確かにそうだなと思いました。
ステージを見て踊りを始める人もいるかもしれません。
あるいは日常のストレスが溜まって意気消沈している人に元気を与える時もあります。
人に感動してもらえることで、踊っている方も元気をもらえるし、嬉しいものです。
小学校で踊るときなどは終わってから感想文を読むのが楽しみです。
ダンスではないのですが、和太鼓を習って披露したときに、「感動した!」と言われて、こんな自分でも人を感動させることができるのだと思ったのがステージに立とうと思った原体験かもしれません。
日常生活で感動できる場面はそう多くはありません。
だからこそ、感動できる体験は貴重だし、ましてやそれを与えることができるとは、贅沢な職業だと思います。
もちろん、感動を届けるために日々の努力と精進は欠かせませんが。
好きなことで働く幸せ
会社員時代はオンとオフをはっきり区切っていましたので、オフの日に会社関係の連絡が来るのがすごく嫌でした。
ダンサーである今、土日年末年始関係なくステージがあれば仕事なので、明確なオンとオフはありません。
深夜でも作業をしたりすることがありますが、疲れこそするものの、苦痛には感じません。
それはきっと好きなことをしているからだと思います。
時間を提供する(犠牲にする)対価として賃金をもらうのが古典的な労働の定義です。
実際に会社員で働いている時の私はそういう感覚でした。
でも今は時間を犠牲にしている、という感覚はありません。
むしろたくさんの人がライブに来てくれるために、一生懸命良い企画を考えて、宣伝活動を頑張ろうという感じです。
証券会社では好きでもない商品を売っていましたが、今は自分自身が商品です。
その分、売れない時はへこみますが、頑張った分は全て自分に帰ってきます。
一芸に秀でていると尊敬される
初対面の方にこの方は〇〇ダンサーですと紹介されると、珍しいので興味をもたれるし、印象にも残ります。
名刺もステージの写真にしているので、一度渡したら忘れられることもありません。
つい最近、大学の卒業25周年記念事業で、卒業生代表として踊る機会をいただきましたが、一気に同期の有名人になりました。
大学時代はあまり積極的に学校内で活動するタイプではなく交友関係も狭かったのですが、一気に知り合いが増えました。
さて、ダンサーになってよかったことを書きましたが、もちろんいいことばかりではなく、会社にいけばとりあえず給料がもらえる会社員はいいよな、などと思うこともあります。
すべて一長一短ですが、自分の体一つで生きている、と実感できるのは紛れもない事実です。