私が福祉の仕事を約10年続けられた7つの理由
ある日、知人に「どうして福祉の仕事を続けられるの?」と聞かれました。
・・・なぜだろう?
私が大学を出て社会福祉士・精神保健福祉士となり、福祉業界で仕事をするようになって約10年。(浪人しているのでいくらか回り道しています)
思えば、精神科クリニック、作業所、相談支援事業所、児童相談所など、福祉業界のなかであちこち飛び回ってきました。(転職・異動含む)
これまでの仕事の日々は、楽な道のりではありませんでした。
「しんどい」
「つらい」
「悩ましい」
投げ出したくなる時もありましたが、今もなお私は福祉の現場に身を置いています。
少し立ち止まり、私が福祉の仕事を約10年続けてこられた理由7つ、ありのままにお話しします。
理由① 給料・年収が安定している
現在、新型コロナウイルスによって日本経済が打撃をうけていますが、福祉の仕事をしている多くの方は、安定的に給料をもらえていると思います。
わたし自身そうです。
(感染リスクを抑えるため、業務上の負担は増えていますが・・・)
約10年、不景気・好景気によって給料がアップダウンした記憶はなく、安定的に給料をもらっています。
世間が好景気で、大企業等ではベースアップが実現されたというニュースを耳にした時は、少し取り残された気がしましたが(笑)
「でも、福祉の仕事は収入少ないでしょ?」と思うかもしれませんが、社会福祉士・精神保健福祉士の給料・年収には改善傾向が見られます。
公益財団法人社会福祉振興・試験センターが行った「令和2年度社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査」によると、以下のことがわかります。
①社会福祉士の平均年収 404万円
②精神保健福祉士の平均年収 403万円
5年前の同センター調査結果と比較すると社会福祉士・精神保健福祉士ともに平均年収が増えていますし、資格手当にも改善がみられます。
福祉の仕事は高収入ではないことが多く、生活に工夫はいりますが、私自身は景気変動はどこ吹く風で、失職の心配も特にせず、「食いっぱぐれは無い」安心感とともに続けてこれました。
理由② 福祉以外にしたい仕事・業界が無くなった
後ろ向きな理由ですみません!(でも、ありのまま申し上げます)
私が10代の頃、興味があったのは福祉業界ではなく音楽業界でした。
当時の私は反抗期まっさかりで、ギターを弾いたり作曲したり、友人たちとバンドを組んで演奏するなか、バクゼンと「音楽が好きだから音楽で食べていきたい」と思ってのめり込んでいました。
でも、芸大受験に落ちたことや、音楽で生計を立てる難しさから、音楽の道を泣く泣くあきらめ、2番目にやってみたいと思ったのが福祉業界でした。
なにも劇的なきっかけがあったわけではありません。
「人のためになることがしたい」「社会をより良くしたい」という思いが、これまたバクゼンとあったくらいです。
社会人になって福祉の仕事を始めた当初は、まだ音楽業界に未練がありました。
けれど、働くうちに音楽業界への未練は薄れていき、今はときどき音楽を聴く程度。
もはや、仕事で音楽がしたいと思うことはありません。
おそらく私は、人とつながりたかったのです。人とつながる手段が、音楽から福祉へと変わったのでしょう。
福祉業界に根を張るようになって、福祉業界で人とつながれたので、他の業界で仕事をしたいと思うことがないくらい満足しているのだと思います。
理由③ 人とのつながり
人とのつながりを求めるのは人の真理だと思います。
私は福祉の仕事を通して、たくさんの人と一緒につながってきました。
職場内の人だけでなく、関係機関の人たちとも。
困難な支援をするなかで共に悩んだり、共に達成を味わうことで、年月が経っても「あの時は苦労したよな」「良い支援ができたよな」と振り返ってかみしめることがあります。
特に、クライエント(利用者・患者さん等)との関係において、私は救われてきました。
クライエントとの関係は、クライエントの支援を目的とした関係であって、自らが助かるための関係ではないです。
でも、支援を通して関わる中、(結果的に)人とのつながりができて、私自身が救われてきたのは紛れない事実です。
職場内外の仕事関係の人たち、そしてクライエントの方々とのつながりに支えられて、私は福祉の仕事を続けてこられました。
福祉の仕事をしなければ、これだけ多くの人と、深い関わりをすることは無かったでしょう。
理由④ 自分で決めた業界だから
私は福祉の業界で働くことを自分で決めました。
「福祉の仕事の方が良いんじゃないか」と紹介してくれたのは、大学で心理学を教えている先生でしたが、最終的に決めたのは自分です。
苦しい時、投げ出したくなる時があっても「でも、自分で決めたことだからな」と思えます。
もし誰かに決められた仕事だったなら、辛い目にあった時「あいつのせいで!」と人の責任にしていたでしょう。
これでは反省・改善することはできず、前向きに考えられなかったと思います。
自分で決めた道だから、選択した責任をもってやり通そうと思って、続けてこられたと思います。
理由⑤ 気合と根性
「なんだ精神論か?」と思うかもしれませんが、気合・根性は欠かせませんでした。
社会福祉士・精神保健福祉士の仕事の特性上、そして、組織に雇われて働く以上、思うようにならないことは多々ありました。
どうにもならない支援困難ケース、批判・攻撃されてつらいケース、関係機関からのプレッシャー等、たくさんのストレスを越えてきました。
また、「もっと利用者さんに必要な支援がしたい」「経営のことばかり考えて支援したくない」と思っても、組織の方針に従わざるを得ないこともありました。
才覚ある人は、根性や気合などといった原始的なものに頼らず、うまくやっているかもしれません。
でも、そうした方は稀でしょう。
私が経験してきた福祉業界は、生易しくはありませんでした。
楽しいことばかりならハッピーなのですが、グッと耐えることも必要でした。
つらいことも幾度とありました。
かと言って、「気合と根性でがんばろう!」をオススメしているのではありません。
気合・根性が役立つのは短期間です。
気合と根性だけで長期間やり通そうとすると、心身にムリが生じやすいです。
根本的には、運動したり、よく眠ることが大切ですし、知識の習得も必要です。
それでどうにもならなければ、場所(仕事)を変えるのも選択肢だと思います。(私も転職経験があります)
理由⑥ ブログで記事にできたから
ここ数年、私はブログで福祉現場についての情報を発信しています。
役立つ情報を発信するには、辛酸なめつくすほど良いと感じます。
特に、思い悩んだ経験ほど、人の役に立つようです。
例えば、私が精神保健福祉士として精神科デイケアで働いていた頃、患者さんに薬を渡して飲んでもらう"配薬"という業務がありました。
「○○さん、薬飲みましょうか」と声をかけていくのですが、嫌がる方、断固拒否する方、怒る方、こっそり飲まない方などなど、思うようにいかず苦戦しました。
薬の必要性を伝えたり、なだめすかしたり、タイミングを見計らったり、人を代えたり・・・あの手この手で"配薬"という業務を完遂させるのでした。
嫌がる方にうまく"配薬"を完遂できる職員は、職員間で賞賛されたりしていました。
と同時に、私は「精神保健福祉士ってこういう仕事だっけ・・・?」と悩むようになりました。
この悩みに対する私の答えは、"配薬"は精神保健福祉士としての役割というより、医療機関職員としての役割ということです。
私たちは現場で働くとき、いくつかの役割を同時に担っているので、混乱してしまいやすいのですね。(これは社会福祉士も同じ)
ブログでこのポイントを解説したところ、たくさんの方に閲覧いただけました。
その時には「苦しんだ甲斐があったなぁ・・・」としみじみとした心地になりました。
これ以外にも、ブログを見てくださる方々に幾度と救われてきた経験があります。
苦しんだ経験が人の役に立つと、救われるし、嬉しい。
私にとっては、その媒体がブログだったということです。
要は、つらい時期を乗り越えるには、仕事の悩みを吐き出したり、アウトプットする相手や場が支えになるのだと思います。
理由⑦ 心から共感できる人を支援する喜び
福祉の現場では、クライエントが「嫌なタイプ」「共感できないタイプ」であっても、自己覚知してプロとして支援することが大切です。
そうは言っても、私自身、心から共感できる相手の方が支援して嬉しく、やりがいを感じます。
こうした気持ちは自然と湧き起こってくるので、止めようもありません。
私が一人の凡人である以上、変えようのないことでしょう。
例えば、私は精神障がいのある方、知的障がいのある方、高齢の方、虐待を受けた子ども、虐待をしてしまう保護者など、いろんな立場や経過、性格の方々と関わってきました。
そうした関わりにおいて、私の心には「腹たつー!」という感情がわきあがることが(たくさん)ありました。
いっぽう「この人には幸せになってもらいたい!」と心底思える時もありました。
いち支援者としては、こうした感情を把握して、吟味して、「プロとしてどうすべきか」を言動に移すことになります。
そうは言っても、プロとしての仮面をかぶる前の個人としては「心から共感できる人」を支援する方が嬉しいです。
「どんな人でも好き」「人を助けるのがやりがい」とキレイごとは申せませんし、聖人君子でもありません。
私は「心から共感できる人」を支援できる喜びに支えられて続けてこられたと思います。
これから福祉業界で働くにあたって「どの分野で働こう?」と迷っている方は、「心から共感できる人」がたくさんおられる分野を選ぶと、やりがいを感じやすいと思います。
そのためには、就職するまでにボランティアでもアルバイトでも良いので、気になる分野を体験してみることをオススメします。
1日体験するだけでも、かなりのことがわかるでしょうし、一生ものの価値があるはずです。
新たな環境に飛び込むのはちょっと勇気がいります。
けれど、迷うことはやってみた方が後悔しないと思います。
ぜひチャレンジしてみてくださいね!
以上、私が福祉の仕事を約10年続けられた理由7つという話題でした!
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