速記者の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「速記者」とは
特殊な符号を用いて発言を素早く記録し、誰もが読むことのできる原稿に仕上げる仕事。
速記者は、略化された符号を用いて発言をありのまま素早く記録する「速記」を駆使して、誰もが読むことのできる原稿に仕上げる「反訳(はんやく)」を行う仕事です。
速記の知識や技術は専門学校やスクール、通信教育で学ぶことができ、出版社・新聞社、速記会社に勤務するか、フリーランスの速記者として一般企業や速記会社と契約して仕事を請け負います。
会社員となる場合の平均年収は400万円程度、フリーランスの場合は案件量によって収入が変動しますが、1時間の文字起こしで5,000円から2~3万円程度を得ている人が多いようです。
国会速記者の廃止や裁判所速記官の新規採用および養成の停止、地方議会速記者の減少など、今、速記者をとりまく状況は大きく変化しています。
デジタル時代に即した新たな速記者の姿が模索されています。
「速記者」の仕事紹介
速記者の仕事内容
簡略化された符号を用いて発言をありのまま素早く記録する「速記」を駆使して、誰もが読むことのできる原稿に仕上げる「反訳(はんやく)」を行うのが速記者の仕事です。
行政・立法・司法・地方自治の公的機関や出版社・新聞社などの民間機関で活躍してきました。
日本語速記法としては1882年に田鎖式が考案されました。
さらに
・中根式(1914年)
・早稲田式(1930年)
・衆議院式(1939年)
・参議院式(1947年)
という4大方式と呼ばれる速記方式が生まれ、ほかにも
・小谷式(V式)
・佐竹式(1958年)
などがあります。
出版社・新聞社、速記会社に勤務するか、フリーランスの速記者として一般企業や速記会社と契約して仕事を請け負います。
現場に同席する場合もありますが、録音速記(文字起こし)が増加しています。
速記者になるには
速記の知識や技術は専門学校やスクール、通信教育で学ぶことができます。
中根式や早稲田式などいずれかの速記方式をベースに約2年間、1,500時間以上の速記符号(速記文字)による書き取りの練習が必要といわれています。
まずは基本文字の書き方を覚え、速記文法、速記文型、省略法、簡字、連綴(れんてつ)、要約速記などを習得することが重要です。
速記者になるために必ず取得しなければならない公的資格はありません。
ただし公益社団法人「日本速記協会」が実施する「速記技能検定」(1級~6級)を受験し、1級または2級の「速記士」という民間資格を取得する人が多いでしょう。
その後、出版社や新聞社、速記事務所に勤務するか、フリーランスになるのが一般的です。
速記者の給料・年収
速度や正確性など総合的な熟練度が最も必要とされる衆議院・参議院の各国会速記者は平均年収500万円程度でした。しかし現在は廃止されています。
出版社や新聞社、速記会社に勤務する速記者は初任給20万円程度、平均年収は400万円程度でしょう。
フリーランスの速記者は会議などに同席して「速記」を行うことは少なくなりました。
その代わりICレコーダーで録音された音声データをテキストにする「文字起こし」のことを「反訳」と言うようになり、増加傾向にあります。
1時間の文字起こしで5,000円から2、3万円程度が相場です。
反訳する音声の録音状態や専門性、請け負う速記者の能力により幅がありますが、時給換算すると1500円から2000円程度になるように設定されていることが多いようです。
速記者の現状と将来性・今後の見通し
国会速記者の廃止や裁判所速記官の新規採用および養成の停止、地方議会速記者の減少などの現状を直視すると、速記者という職業に将来性はあるのかどうか不安にもなるでしょう。
録音反訳者へと移行する傾向にありますが、文字起こしを必要とする音声データがなくなったわけではありません。
さらに機械化が進んでも操作するのは人間です。老舗の速記会社が最新のデジタル技術と手書きのアナログを駆使して発展している現実もあります。
また、テレビ番組の制作現場で活躍するステノキャプショナー(字幕速記人)という仕事もあります。今後はさまざまな映像に字幕(キャプション)を施す業務も増えるでしょう。
デジタル時代に即した新たな速記者の姿が模索されています。
速記者に向いている人・適性
速記者は速記符号(速記文字)を覚えなければ仕事になりません。
プロとして活躍するためには「日本速記協会」認定の「速記技能検定」1級または2級に合格し、「速記士」という民間資格を取得できるレベルがふさわしいでしょう。
通常の日本語の文字とは異なる速記符号(速記文字)を識別し、分速280~320字というスピードで人の話を記録することになります。
大小長短、太い細い、曲線・直線、水平・斜めで区別される幾何学的な符号を根気強く身につけることができる人は適性があります。
最終的には誰もが読むことのできる文字で原稿を仕上げます。長時間、人の話を聞いても集中力が途切れない人、正確な文章を書くことができる人は速記者に向いているでしょう。
速記者の勤務時間・休日・生活
出版社や新聞社、速記会社に勤務する速記者は一般的な正社員と同様の生活になります。
おおむね9:00~18:00の8時間勤務、土日祝の週休2日制、夏季・年末年始の休日あり。交通費支給の手当や昇給、賞与、退職金制度などの福利厚生も充実しているでしょう。
ICレコーダーによる録音が増えていますが、録音機材の不調に備えて速記者が現場に赴き録音取材を行う重大な会議もなくなったわけではありません。
また納品を急ぐ場合など会議中にインターネット上で音声データを受信しながら文字起こしをすることもあります。
フリーランスの速記者は現場に出向く録音取材を請け負うこともありますが、在宅勤務の録音反訳者としての仕事が増加しています。
女性の割合が非常に高く、家事や子育てと両立して働く主婦もいます。
速記者の求人・就職状況・需要
長らく活躍してきた国会速記者や裁判所速記官。しかし、2010年の音声認識システムの導入に伴い、手書きの国会速記者および衆議院・参議院の各養成所は廃止されました。
また裁判所速記官も1998年以降、新規採用や養成が停止されています。
さらに地方議会の速記者も録音媒体からのリライト業務への移行が加速しており、経費削減のため減少傾向にあります。
残る砦となる出版社や新聞社、速記会社も老舗の大企業をのぞいて採用人数は減少しており、就職難易度は高いでしょう。
現実的には速記者の半数以上が一般企業や速記事務所と契約するフリーランスという実態があります。
録音取材で現場に立ち合う場合もありますが、在宅勤務の人が多いでしょう。最低限の能力があれば契約には至りますが、仕事量や収入は実力次第になります。