執事の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「執事」とは
邸宅に仕える使用人の筆頭として家政全般を取り仕切り、主人やその家族へ給仕を行う。
執事とは、お屋敷などに仕える使用人の筆頭として、家政全般を取り仕切ったり、主人およびその家族への給仕をしたりする人のことをいいます。
執事として働くために特別な資格は必要ありませんが、富裕層の方がお客さまとなるため、高いレベルでの一般常識やマナー、接遇能力、英語力などが求められます。
お客さま宅に常駐し、朝晩関係なくお客さまに付きっ切りで働くこともあるなど、やや特殊で大変な仕事といえます。
しかし全幅の信頼を寄せられた執事は、年収1000万円を超えるような高額な収入を得ることも可能です。
日本には執事の仕事について専門的に学べる学校がないため、もし学校で学びたいと思った場合には、執事発祥の地である英国をはじめ、世界各国の執事学校への留学を検討する必要があります。
「執事」の仕事紹介
執事の仕事内容
主人に仕えて家事全般や身の回りのサポートをする
執事の仕事は、主人(雇用主)に仕える使用人の筆頭として、家政全般を取り仕切ったり、給仕をしたりすることです。
執事の具体的な仕事内容は、お茶や料理の給仕、貴重品の管理、他の使用人の監督、屋敷や土地の管理、家族のサポート業務、来客対応などです。
執事は「究極のサービス業」ともいえ、自分の主人が何をしてほしいのか、どのようなサービスを望んでいるのかをしっかりと汲み取り、常に先回りして喜んでもらえるサービスを提供しなくてはなりません。
そのため、サービスの内容は、基本的に臨機応変な対応が求められ、マニュアル通りの仕事というものはありません。
ときには、主人の子・孫の世代まで仕えて長く仕事をすることもあり、世代を超えてその家族と付き合う執事も少なくありません。
日本では「家政婦」のほうがなじみ深い
執事は英国が発祥の職業です。
このため、日本では執事として働く人は決して多くなく、どちらかというと「家政婦(ハウスキーパー)」のほうがなじみ深いものとなっています。
家政婦は、お客さまから依頼を受けて、お客さまの代わりに、一時的に掃除や片付け、料理、洗濯、買い物などの家事を行う仕事です。
従来の執事のように住み込みで働くケースはあまり多くありませんが、時代の流れとともに、家政婦が提供するサービスの内容や範囲も変わりつつあります。
執事になるには
養成機関で学ぶのが近道だが数は少ない
富裕層のお客さまに仕える執事は、ある意味、非常に特殊な職業だといえます。
臨機応変に主人の要望に応えていく究極のサービス業であり、ときには自らを犠牲にしても、主人のために尽くさなくてはならないのです。
執事として働くためには相応の知識や技能が求められるため、プロとして働く執事の多くは専門の養成機関を出ています。
専門の養成学校を卒業した後、求人のあるお屋敷に直接雇用されたり、執事を専門に派遣するサービス会社などに就職したりするのが一般的とされています。
海外で働くことも視野に入れる
日本では執事という職業自体がなじみ深いものではないため、執事を目指すための学校も、勤務先も決して多くありません。
昔ながらの執事のイメージを理想とするならば、むしろ英国など海外へ留学し、執事サービスを専門的に学んだり、そのまま働き口を探したりするほうがよいでしょう。
日本で執事の勉強をしても、海外ほど執事の需要がないことから、仕事はハウスキーピングや家事代行サービスのようなものしか見つからない場合もあるため、その点は注意が必要です。
ハイレベルなサービスのスキルを生かしたいということであれば、高級ホテルのコンシェルジュや豪華客船のサービススタッフを目指すといった道も考えられます。
執事の学校・学費
海外には専門の執事養成学校も
執事は、もともと英国発祥の職業であり、養成学校もイギリスを中心にオランダ、カナダ、アメリカ、オーストラリアなどの世界各国に存在します。
現在のところ、日本で専門的に執事そのものを養成する学校はなく、もし養成学校できちんと学びたいと思う場合には、留学を検討する必要があります。
執事には年齢はさほど関係なく、若ければ18歳程度から、上になると60代の人でも執事を目指しているようです。
海外の執事養成学校には求人も多く集まるため、世界で通用する執事になりたいのであれば留学を検討するのもよいでしょう。
留学には抵抗があるという人であれば、ホテルや観光系の専門学校などに通うことで、ホスピタリティやサービスに関する知識・スキルを学ぶことは可能です。
ただし、卒業後はホテルや観光業への就職を目指すのが一般的であり、従来の執事の仕事とは、少し異なるキャリアを歩むことになるかもしれません。
関連記事日本に執事になるための学校やスクールはある? バトラー養成学校とは?
執事の資格・試験の難易度
特別な資格は必要ないが、サービス力や英語力は重要
執事になるために特別な資格は必要ありません。
ただし、ホスピタリティやサービス、清掃など執事の仕事に関わる資格は多く存在しています。
執事として活躍したい、自分の強みをアピールしたいという方はチャレンジしてみてもよいでしょう。
また、執事として活躍できるチャンスを広げたいのであれば、英語力を高めておくのがおすすめです。
海外の執事学校に通うならば英語力は必須となりますし、国内でも、執事を求めるような富裕層のお客さまはグローバルに活躍しているケースもあるからです。
絶対ではありませんが、英語ができることが強みとなり、執事として働く数少ないチャンスをモノにできるかもしれません。
執事の給料・年収
使用人としては高額な収入が得られる
執事の給料は、その人の執事としての能力や、経験、またお客さまからの信頼度によって大きく異なります。
「使用人」として働く人は大勢いますが、なかでも執事は求められる能力のレベルが高く、業務内容も多岐にわたるため、得られる収入は比較的高額となります。
執事として長く働いて信頼を集めたベテランになればなるほど、高額な収入を得られる傾向も見られます。
日本国内にも執事サービスを提供する企業がありますが、そこでは、能力や経験などによって給料が決まるのが一般的です。
勤務実績がよかったり、お客さまから認められたりするようになると、ボーナスが支給されることもあります。
働き方も収入も人それぞれ
執事は、お客さまと直接契約を結んで働く人もいます。
この場合、言ってしまえばお客さまの考えひとつで給料は決まります。
そこまで能力が高くなかったとしても、お客さまとの相性が非常によく、高い信頼を寄せられていれば大きな収入を得られるかもしれません。
企業に勤める場合のような福利厚生は期待できませんが、住み込みで働く場合は生活費がほぼかかりません。
そして、人によっては一般的な会社員よりもだいぶ高収入を得ているケースもあるようです。
関連記事執事の年収はいくら? 日本・海外の給料についてくわしく解説
執事の現状と将来性・今後の見通し
本格的な執事を目指すのであれば海外も視野に
執事は、主人となるお客さまとの信頼関係が何よりも大切な仕事です。
お客さまごとに異なる要望に確実に応えていく臨機応変なサービスを提供するため、誰しもが一朝一夕でできる仕事ではありません。
日本ではあまりなじみのない職業ではあるものの、富裕層を中心に、執事のようなサービスを必要とする人は少なからず存在します。
今後も一定の需要があり続けるビジネスだといえるでしょう。
近年はラグジュアリーホテルや高級マンションなどでも、お客さまの細かな要望に応えていく専門スタッフのニーズがあります。
ただ、本場の英国的な執事を目指したいということであれば、日本では活躍できる場が少ないため、海外で生きる道を模索するのがよいかもしれません。
お客さまのあらゆるニーズに応えられるハイレベルな執事は、国内外の幅広い場所で活躍できる可能性があります。
執事の就職先・活躍の場
執事サービスを提供する会社がある
日本においては、執事(バトラー)という職業自体があまり馴染みのないものであるため、執事として働く人も決して多くありません。
ただ、執事サービスを専門的に提供する会社がわずかながら存在しており、そうした会社に採用されることで、執事の仕事ができるようになります。
ただ、実際の仕事内容は本来の執事とは少し異なり、家事代行サービスのようなものである場合もあるため、少し気をつけて確認したほうがよいでしょう。
高いレベルの接遇能力が求められるホテルや豪華客船でコンシェルジュとしてサービスの経験を積み、執事的な仕事をしていく人もいます。
数は多くありませんが、老舗のクラシックホテルでは、特別なゲストに仕えてサービスを提供する「バトラーサービス」を提供するところもあります。
執事の1日
主人のスケジュールに合わせて働く
執事の1日の過ごし方は、どのようなお客さまに仕えるかによって異なります。
また、お客さま自身の日々のスケジュールによっても執事の行動は変わってくるため、一概に執事のスケジュールを表すことは難しくなっています。
要望があれば早朝や深夜でも勤務をすることがありますし、逆にお客さまが長い間不在となる場合は、自身も休日となることもあります
ここでは、住み込みで働く執事のある1日を紹介します。
関連記事執事の1日のスケジュール・勤務時間や休日についても解説
執事のやりがい、楽しさ
主人のパートナーとして信頼される喜び
執事は、富裕層のお客さまを相手にするために、高いレベルの教養やマナー、気遣いなどが求められます。
時間をかけて地道に主人と強い信頼関係を築き上げながら、食事の好みやこだわり・生活スタイル・人間関係など、あらゆることを熟知した存在を目指さなくてはなりません。
主人も自分をわかってくれる執事には全幅の信頼を寄せるようになりますし、そうなると、もはや家族のようになくてはならないパートナーとなります。
単に言われることをやるだけの使用人ではなく、「この執事がいれば安心だ」「困ったら執事に相談したい」などと思われるようになることが、執事にとっての喜びです。
こうした信頼を得られるように、執事は日々仕事に取り組んでいます。
執事のつらいこと、大変なこと
常に完璧な気遣いを求められる
執事は、常に依頼人の要望に対して完璧に応え、そのうえでプラスアルファの気遣いやサービスを提供しなくてはなりません。
しかし、人はそれぞれさまざまな価値観や嗜好を持っており、決まりきった正解のようなものもありません。
その場の状況や主人の気分によって執事に求められることも変わってくるため、マニュアル通りの仕事では、執事の仕事はとても務まりません。
ときには無理難題と思えるような要望、わがままをぶつけられることもあるでしょう。
それでも、常に主人のことを考え、臨機応変な対応をしながら完璧なサービスを目指さなくてはならない執事は、よほどこの仕事が好きでなくては続かないものだといえます。
執事に向いている人・適性
相手のことを一番に考えられる人
執事の仕事では、相手のことをまず一番に考えなくてはなりません。
執事は主人のどのような依頼事項に対しても、何かしらの答えを出していく必要があるからです。
言われた通りに動くこともありますが、もし叶えられない要望であれば代案を提案するなど、常にプラスアルファの要素を提供します。
こういった行動がとれなければ、信頼を損ねてしまい仕事を辞めさせられることもあります。
執事は、主人にとって不可欠な存在ではありますが、あくまで「仕える」存在です。
ときには自らを犠牲にしてでも、主人のために尽くせるような人、忠誠心の強い人でなければ、この仕事を続けていくことは難しいでしょう。
執事志望動機・目指すきっかけ
究極のサービス業を目指して
執事を目指す人で多いのが「究極のサービス業に就きたい」という志望動機です。
執事は、もともとサービス業に関わっていた人が、転職を目指すことも多い職業といわれています。
その背景には、不特定多数のお客さまにサービスを提供するよりも、一人のお客さまに対して徹底的に尽くし、喜んでいただきたいという強い忠誠心があります。
サービスの手ごたえが得やすい仕事であること、また信頼されればその分収入にも跳ね返ってくる点に魅力を感じ、執事になりたいと思う人もいるのでしょう。
また、近年では執事を題材にした漫画や映画作品などに影響を受けて、この仕事に興味をもつ人も増えています。
ただ、実際の執事はエンターテインメントで描かれる姿とはやや異なりますし、とくに日本では、本来の執事のような活躍がしづらい面もあります。
この点には注意して執事になる道を考えていくとよいでしょう。
執事の雇用形態・働き方
直接雇用か会社に所属してサービスを提供するか
執事には「主人に直接雇用されるケース」と、「執事を派遣する会社に所属して働くケース」の大きく2つの雇用形態があります。
主人に直接雇用されるケースは、お屋敷と直接契約を結び、住み込みで常駐して働く場合がほとんどです。
24時間体制で主人と、その家族のサポートをしていくことになり、待遇も主人の裁量で決まります。
一方、執事を派遣する会社に所属して働くケースは、お客さまのニーズに応じて仕事をします。
この場合は、あくまでも所属先の会社の従業員の立場であり、複数の主人を担当したり、さまざまな現場をかけもちで働いたりする場合もあります。
執事の勤務時間・休日・生活
主人の要望を最優先にして働く
お客さまの家庭で働く執事の勤務時間は、一般的な会社員のように明確に決められているわけではありません。
執事サービスを提供する会社から派遣される場合には、1日に数時間だけ出勤して仕事をしたり、複数のお客さま宅を掛け持ちして働いたりすることもあります。
一方、主人と直接契約を結んで住み込み勤務をする場合、24時間ほぼ付きっ切りという形で過ごすこともあるなど、場合によってさまざまです。
休日に関しても、働き方や主人のスケジュールによって変わってきます。
住み込み執事の場合、主人と生活を共にしている人が多いため、仕事とプライベートの線引きがやや難しくなります。
あくまでもお客さま最優先で動く職業であることから、状況によっては、自分の自由を犠牲にしなくてはならない場面もあると考えておいたほうがよいでしょう。
執事の求人・就職状況・需要
国内での求人数は圧倒的に少ない
執事の雇用形態はさまざまですが、日本には執事サービスを提供する会社や、お客さまのリクエストを受けて執事をコーディネートする会社があり、それらに応募して採用されることによって、執事の仕事ができるようになります。
「人に仕える」という特殊な職業であることから、高いレベルのサービス力やホスピタリティ精神、一般常識などを兼ね備えていることが必要です。
このため、未経験者がいきなり執事になりたいと思っても、なかなか採用されることは難しいと考えておいたほうがよいでしょう。
本格的な執事の仕事のニーズは、英国をはじめとした海外のほうが多くあります。
海外では、各国の王室や富豪、資産家の個人に仕える執事も多くおり、海外の執事学校を卒業して、そのまま現地で働き口を探すのも一つの方法です。
執事の転職状況・未経験採用
高いレベルのサービススキルや気遣い力をどう発揮できるか
執事の仕事は経験がモノをいうため、サービス業やホスピタリティが必要とされる仕事から転職を目指すケースが少なくありません。
未経験であっても、高いレベルでそれらを兼ね備えている人は活躍のチャンスがありますが、現実的には厳しいでしょう。
執事は、主人から圧倒的な信頼を寄せられるようになれば、長期にわたって雇用契約を結んでもらえる一方、ひとたび信頼を失えば、わずか数ヵ月程度で切られてしまう可能性もあります。
そのため「信頼も含めた実力」をつけることが何よりも大事です。
地道な気遣いの精神やサービススキルを磨き上げ、実績を積み上げていけば、サービス業のプロとしてさらにステップアップすることができるでしょう。
女性でも執事になれる?
海外では女性執事のニーズが高め
あまりイメージが湧かないかもしれませんが、執事は男性だけでなく女性も就ける職業です。
実際、世界の執事養成学校に通う人のうち、25%程度は女性だといわれています。
ただ、日本の場合はそもそも執事が職業としてあまり定着していないこともあり、女性は「家政婦」や「メイドさん」として働くケースが多いのも現実です。
一方、海外であれば、日本以上に女性の執事が活躍しやすいと考えられます。
たとえば、イスラム諸国では宗教上のルールで「親族以外の男性が女性に触れてはならない」と定める地域が多いため、女性の執事が活躍する割合が高めです。
また、ハリウッド女優などは男性執事とのスキャンダルの噂を避けるために、あえて女性の執事を求めることもあります。
日本でも、女性が執事として働ける可能性はもちろんあります。
しかし、そもそもの求人数が少ないことから、執事として生きていきたいという強い気持ちがあるのなら、海外で活躍する道を考えるのもおすすめです。