女流棋士のキャリアパス・結婚後の生活
女性の棋士の現状
将棋の棋士は制度上、男女の区別がないため、男性女性関係なく同じステップで棋士になることができます。
しかし現在160人〜170人ほどいるプロ棋士は全員男性で、女性の棋士はひとりもいません。
その原因は将棋自体が女性に普及しておらず、プロ棋士を志す人がいても、棋士になるための養成機関である奨励会で実力が及ばず、勝ち抜くことができないからです。
奨励会に入会している人も、ほとんどが男性で、女性自体が珍しい状況となっています。
しかし2020年3月に行われた第66回奨励会三段リーグでは、西山朋佳三段が好成績を残したことで話題となりました。
三段リーグでは、上位2人が四段に昇段しプロ棋士になることが認められますが、西山三段は惜しくも3位の成績だったのです。
西山三段は年齢制限まで残り3回を三段リーグで戦うことができるため、期待が寄せられています。
現在は女性の棋士はいませんが、将来誕生する日も近いかもしれません。
また女性棋士がいない状況から、女性への普及なども考えて「女流棋士」という新しい制度ができました。
「女流棋士」は女性のみのプロ制度で、「マイナビ女子オープン」「女流王位戦」などの7つのタイトル戦と、「YAMADA女流チャレンジ杯」の一般女流棋戦を戦います。
2019年時点での女流棋士の人数は、現役・引退合わせて70名ほどです。
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女性の棋士の強み・弱み
女性の棋士の強み
女性の棋士の強みは「華」になれることで、男性の愛好者が将棋界では、将棋のイベントや指導教室、普及活動、講演に女性の棋士が来てくれることが喜ばれます。
また女性棋士は知的でなルックスからタレントとして活動する人もいて、その仕事の幅はさまざまです。
女性の棋士の弱み
一方、女性だから苦労するところは、「女流棋士」は「棋士」ではないという考え方があったことです。
日本将棋連盟では長らく女流棋士には正会員としての待遇を与えず、対局料などにおいても棋士とはかなりの格差がありました。
たとえば女流棋士の年収や賞金ランキングは非公開となっていますが、トップの里見香奈女流棋士でも推定1,500万円ほどといわれています。
男性棋士の2019年の獲得賞金トップの豊島将之棋士の7,157万円と比べると、その差が明確にわかるでしょう。
実際将棋の対局だけで生活できる女流棋士はほんのひと握りであり、アルバイトをしながら将棋を続ける女流棋士も少なくありません。
そんな中、女流棋士に日本将棋連盟から独立する動きがあり、その結果一部の女流棋士が新たに「日本女子プロ将棋協会」という組織を立ち上げました。
現在では日本将棋連盟でも所属女流棋士にも一定の条件を満たせば「正会員」となることができる体制となり、待遇改善が少しずつ進みつつあります。
棋士の結婚後の働き方・雇用形態
棋士は、結婚してもそのまま続ける人がたくさんいます。
棋士や女流棋士は個人事業主なので、自分で休場期間を決められる働き方です。
しかし出産とタイトル戦が重なり不戦敗となる事態が相次いだことから、2016年6月に「女流棋士総則」が改定されました。
これは産前6週間・産後8週間を「産休」と位置づけ、女流棋士は女流公式戦を含む公務に参加しなくてよいとした制度で、何人もの女流棋士が活用しています。
出産してからすぐに復職している棋士もいれば、ギリギリまでお休みをして復職する棋士もいるなど人それぞれです。
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棋士は子育てしながら働ける?
棋士は、子育てしながら働ける仕事です。
「クイーン名人」の称号を持つ中井広恵女流六段は、3人の子どもを育てながら、史上初の女流棋士通算400勝を達成したり、日本女子プロ将棋協会の初代代表理事に就任するなど、多方面で活躍しています。
また矢内理絵子女流五段は、2019年に産休育休から2年半ぶりに復帰しましたが、通算4年に及ぶ休暇からの復帰は将棋界初だと話題になりました。
女流棋士が増加したことで、日本将棋連盟も安心して子どもを産み育てられる制度を整えています。
先輩の女流棋士たちも大いに活用しているため、これからさらに子育てしやすい環境になることが期待できそうです。
もちろん育児と対局の両立は大変なことですが、家族の協力を得ながら働き続けることは可能でしょう。
棋士は女性が一生働ける仕事?
棋士は女性が一生働ける仕事ではありますが、実力勝負の世界であるため、負け続けて降級すると引退しなければいけません。
または65歳を過ぎてから降級が1つでもつくと、引退となってしまいます。
しかし対局以外にも、指導や解説になどにおいて女流棋士の役割が大きくなりつつあり、幅広い層への将棋の普及という観点からも女性棋士の重要性が再認識されています。
女流公式戦は男性よりもマイナー競技な分、対局数が少なく、収入面で不利になることは否定できませんが、自身の才能を生かして活躍できた人ほど、愛好家からのニーズは高くなるはずです。
引退後も、将棋の経験を活かした指導や講演会などのオファーが続くかぎり、一生働くことができるでしょう。