評論家の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「評論家」とは
豊富な専門知識を持ち、鋭い考察と批評で世論を動かす
テレビのニュース番組で、評論家が出演しているのを見たことがある人は多いのではないでしょうか。
特定の分野に関して豊富な専門知識を持ち、鋭い考察や批評をするのが評論家。
一般の人が知りたいと思う疑問に対して丁寧に答えることが求められる仕事です。
政治の評論家、経済の評論家、金融の評論家。
他にも、スポーツの評論家や文芸の評論家、音楽や美術などの芸術の評論家もいます。
評論家になるためには資格や学歴は必要ありませんが、その分野に関しては誰にも負けないスペシャリストであることが大前提です。
もともと有名なアスリートだった人がスポーツの評論家になったり、受賞経験のある作家が文芸の評論家になったりするケースは珍しくありません。
政治経済、金融などの分野に関しても、大学教授でありながら評論家として活躍している人がたくさんいます。
評論家の仕事は、得意な分野について解説したり多くの人に伝えたりできるというやりがいがあります。
ときには世論を動かすほどの大きな影響を与えることもあるでしょう。
その一方で、評論家という名前の通り、何かを批評する機会も多いので、褒めてばかりでは仕事になりません。
厳しい意見を述べなければいけないこともあるので、物事をシビアに判断できる人のほうが向いているでしょう。
「評論家」の仕事紹介
評論家の仕事内容
メディアを通して自分の解説や批評を発信
評論家は、どのような仕事をしているのでしょうか。
ここでは、政治の評論家をしている人の仕事内容を見てみましょう。
政治の評論家は、もともと大学で政治学を教えていた人やマスコミで政治部の記者をしていた人が多い傾向があります。
普段から精力的に行っているのは、政界に関する徹底的な情報収集です。
毎朝のニュース番組のチェックはもちろんのこと、新聞や雑誌も全社チェックする人は珍しくありません。
海外の状況を知るために、主要国の政治の状況を勉強することもあります。
さらに、自身の人脈を使って政治の関係者と会い、直接話を聞いてうわさ話や裏話も集めます。
このようにして日々、政治に関する考察や分析をしていると、メディアの関係者から仕事を依頼されます。
「次の選挙の行方を予想をする特番を生放送するので、ゲストとして出演したい」。
「今年一年間の政界の変遷を振り返る特集記事を作るので、寄稿してもらいたい」。
テレビ局や新聞社からの依頼に応じて、テーマに沿ってさらにリサーチを深めていきます。
そして自分なりの考察や解説、批評がまとまれば、メディアを通してそれを発表します。
こうした仕事以外に、ときには講演会を開いたりディスカッションに参加することもあります。
「大学の政治学の授業でゲスト講師として登壇してほしい」。
「市民講座で、選挙の重要性について話をしてほしい」。
それぞれの依頼を受けたら、テーマやターゲットの年齢層、持ち時間を確認しながら原稿を作ります。
最近では、自分のSNSやブログ、動画サイトで意見を発信するという評論家も増えてきています。
仕事の幅はますます広がってきているといえるでしょう。
評論家になるには
専門分野を極めることが夢への近道に
「評論家になりたい」と思ったとき、どのようにして夢を実現すればよいのでしょうか。
まず、前提として、評論家というのは資格や免許が必要な仕事ではありません。
どこかの企業やシンクタンク、大学などに所属する必要もありません。
自分で名刺を作って名乗りさえすれば、誰でも評論家にはなれるというのが実情です。
しかし、実績がなければ自分の主張に耳を傾けてくれる人はほとんどいないでしょう。
メディアに出演する機会もなく、本を出版する機会もなく、講演会に呼ばれる機会もない。
評論家としての仕事を見つけることは非常に難しくなってしまいます。
そのため、まずは特定の分野で実績を作ることが夢への近道となるでしょう。
たとえば、経済の評論家であれば、もともとは民間の大手企業やシンクタンクの第一線で働いていたという人が多くいます。
政治の評論家であれば、テレビ局や新聞社で政治部の記者をしていたという人が珍しくありません。
その後、知識と経験を買われて大学で経済学の講師をするようになり、メディアからの取材も受けるようになる。
そして新聞への寄稿やニュース番組のゲスト出演をするようになり、評論家としての活動が本格化する。
このような流れで、専門分野を極めていくうちに自然と評論家として活躍できるようになることが多いのです。
スポーツの評論家の場合も同じです。
もともとは自分も何らかのスポーツを経験しており、選手や監督としての実績がある。
そのときの経験や人脈を生かしてスポーツの取材や観戦を続けていくうちに、評論家として活動するようになる。
文芸の評論家の場合も、もともとは作家や編集者であることが多いようです。
特定の分野の評論家を目指すのであれば、その分野で活躍している評論家の経歴をしっかり調べてみましょう。
そのうえで、自分の専門知識やスキルを磨くことができる道を探して極めていくとよいでしょう。
評論家の学校・学費
専門性を高められる学部を選択
評論家を名乗るうえでは、学歴は必要ありません。
しかし、専門性の高い職業なので、大学や大学院で専門の知識を身につけておくことがベターです。
経済の評論家であれば経済学部、政治の評論家であれば法学部の政治学科、文芸の評論家であれば文学部。
文系理系に関係なく、自分の興味や関心のある部門の学部学科を選んでおくとよいでしょう。
大学や大学院ではその分野の第一人者ともいえる教授から学ぶことができます。
図書館の蔵書が多く、たくさんの本を読むことができるのは大きな魅力です。
また、同じ学問を志す仲間とのつながりができることも強みになります。
大学によっては、テレビ局や新聞社や出版社など、学生がマスメディアに多く就職する学校もあります。
人脈を作ることも踏まえて、大学ではしっかり勉学に打ち込むことが大切です。
評論家の資格・試験の難易度
それぞれの専門性をアピールできる資格を
評論家は本人の実績が何よりも重視されますが、資格を取得していることで信頼を得られることもあります。
たとえば、経済や経営、金融関係を専門にしている評論家の場合。
MBAと呼ばれる経営学修士の資格や、CFA協会認定証券アナリストという資格は、難関資格として有名です。
この他に、日商簿記一級や税理士、中小企業診断士などの資格もあります。
自分の専門知識やスキルをアピールできるので、資格は取得しておいて損はないでしょう。
一方で、スポーツの評論家や文芸の評論家の場合は、資格よりも実績と知名度が重視されることもあります。
「元メダリスト」や「文学賞の受賞者」という肩書きは、世間にアピールするうえで何よりの強みとなるでしょう。
評論家の給料・年収
実績と知名度によって大きな差
評論家の年収はどのくらいなのでしょうか。
これは、個人の実績や知名度によって大きな差があるのが現状です。
たとえば、メディアにも引っ張りだこで著書もたくさんあるような著名な評論家の場合。
テレビのニュース番組の出演料や新聞に寄稿する際の原稿料は高くなります。
大学の授業のゲスト講師として呼ばれたり、講演会に呼ばれたりする際の報酬も高額です。
さらに自分の著書が大ヒットすると、印税という収入がコンスタントに入ってくることになります。
このような高収入の評論家の場合、年収1000万円を超えることは珍しくありません。
その一方で、まだまだ無名の評論家の場合、出演料や原稿料は微々たる金額ということがあります。
講演会に呼ばれるときも、交通費に少しの謝礼程度の金額ということもあるのです。
実績を積み重ねるまでは、報酬が低いことは仕方がないと割り切ったほうがよいでしょう。
そもそも、評論家の場合はもともと安定した本業があることが多いのです。
大学教授が経済評論家をしているケース。
政治部の記者出身のフリーライターが政治評論家をしているケース。
元アスリートがスポーツ評論家をしているケース。
レストランの有名シェフが料理評論家をしているケース。
こうした場合、本業のほうで安定した収入が入ってくるので、評論家の仕事の収入が少なくてもあまり影響がありません。
評論家の仕事量は不安定なので、これだけで生活していこうと思わずに仕事の幅を広げておくほうが安心です。
評論家の現状と将来性・今後の見通し
個人の力で発信できる時代へ
評論家の活躍の舞台といえば、かつてはテレビや新聞、雑誌などのメディアが代表的なものでした。
報道番組のゲストを務める、新聞に寄稿する、雑誌で連載を持つ。
こうしたことが、世間に評論家として認められている証ともいえたのです。
しかし、最近ではこうした流れが変わってきています。
インターネットの発展とともに、個人サイトやメーリングリスト、SNSのコミュニティで情報発信する評論家が増えてきました。
最近では動画サイトに自分の意見を述べた動画を投稿する評論家も増えてきています。
メディアの力に頼らずとも、発信力や求心力さえあれば、いくらでも活躍ができる時代ともえいえます。
これからますます評論家の仕事のスタイルは広がっていくでしょう。
評論家の就職先・活躍の場
個人事業主として活動する人も
評論家として活動している人のなかで、評論の仕事だけで生活している人はほとんどいません。
教育機関や民間企業に勤めながら、メディアへの出演や執筆活動も並行して行うというケースが非常に多いのです。
教育機関としては、大学や大学院があります。
民間企業の代表的なものとしては、シンクタンクやマスコミなどがあります。
どちらの場合も働きながら学習を進めることができますし、収入が安定しているというメリットがあります。
こうした働き方以外には、個人事業主として働きながら評論家をする人もいます。
たとえば、作家として執筆活動をしながら文芸の評論家をする人。
あるいはスポーツの経験を生かした講演会を行いながらスポーツの評論家をする人もいます。
評論家の就職先や働き方は、まさに人それぞれといえるでしょう。
評論家の1日
講義や打ち合わせ、執筆活動を中心に活動
評論家として活動している人は、それぞれの専門分野や働き方が異なります。
ここでは、大学教授をしながら経済評論家として活躍している人のスケジュールをご紹介します。
評論家のやりがい、楽しさ
自分の意見を世界に発信できる
評論家のやりがいは、自分の解説や主張を世界中に発信することができるということです。
政治や経済、金融や国際問題、音楽や文学、スポーツや料理。
評論家が携わるのは、それぞれが最も得意とする専門分野です。
その分野に関する考察や主張を発信することで、聞いている人に大きな影響を与えます。
「こんな問題に初めて気づかされた」とか「話を聞けて価値観が変わった」という反響が届くこともあります。
ときには世論を動かし、新しい法案や条例などの動きにつながることもあるのです。
これは評論家にとって大きなやりがいを感じられる瞬間でしょう。
世の中に積極的に関わっていきたい人や、社会問題に強い関心がある人にとっては、非常に面白い仕事といえます。
評論家のつらいこと、大変なこと
アンチからの攻撃や炎上のリスク
"評論家というのは、自分の視点で物事を批評するのが仕事です。
政治や経済、国際問題などのデリケートな問題で「ここがおかしい」とか「もっとこうするべき」と社会に問題提起することもあります。
そうすると、当然のことながら反対意見の人も出てきます。
ときにはアンチと呼ばれる反対派に、インターネットの掲示板やSNSで評論家のことを厳しく批判されることもあります。
こうした過激な行動は、評論家にとって不快であり不安を抱かせるものであることは間違いありません。
物事を批判することには、たとえその主張が正しいものだとしても、リスクがつきまとうのです。
周りの目を気にすることなく我を貫くことができる強い人でなければ務まらないのが評論家です。"
評論家に向いている人・適性
ひとつの物事を極められる人
評論家に必要なのは、特定の分野に関する高い専門性です。
大学に通い講義やシンポジウムに参加する。
新聞や雑誌、専門書や資料を読みあさる。
業界内の人脈を築いて関係者から話を聞く。
ときには海外や遠方に足を運んで取材をする。
そんな努力を続けなければ、その分野の第一人者になることはできません。
ひとつの物事を極めることができる人のほうが向いているでしょう。
また、解説や批評をするわけですから、論理的な思考ができることも大切です。
自分の思い込みだけで意見を述べることなく、冷静に判断しなければいけません。
そしてもうひとつ。
物事を批評するというのは、強い精神力がなければできません。
周囲からの反対意見に簡単に屈しない人のほうが向いているでしょう。
評論家志望動機・目指すきっかけ
世の中の人たちに新しい価値観を届けたい
評論家の仕事は、物事を詳しく解説したり、鋭く批評したりすることです。
こうした情報を発信することによって、世の中の人たちに考えるきっかけを届けることができます。
新しい価値観に出会えることもあるでしょう。
「自分の視点で物事を伝えたい」「世論を動かしたい」「世の中をよくしたい」。
そんな思いが動機となって評論家を目指す人が多いようです。
また、専門性の高い職業だけに、ひとつの物事を極めたいという思いがある人が志望することも。
「この分野だけは誰にも負けないほど詳しくなりたい」「第一人者になりたい」。
そんなプライドが夢へのきっかけとなる人もいます。
研究者のなかにはメディアへの出演や原稿の執筆が得意なことから、特技を生かそうとこの仕事を目指すこともあるようです。
評論家の雇用形態・働き方
民間企業の社員や個人事業主として働く
評論家として活躍している人は、それぞれ専門分野が異なります。
仕事量や収入にも大きな違いがあるので、雇用形態や働き方に関しては一概にはいえません。
たとえば、大学教授をしながら政治の評論家をしている人の場合、大学から職員として雇用されています。
シンクタンクに勤めながら経済の評論家をしている人の場合、民間企業の社員になります。
作家として執筆活動を続けながら文芸の評論家として活動している人の場合、個人事業主となります。
評論家は副業としてできる仕事なので、本業の安定した収入がある状態で仕事をしている人も少なくありません。
最近ではインターネットを使って個人で発信することができるので、プライベートを重視しながら自分のスタイルで働く人も増えています。
評論家の勤務時間・休日・生活
出演や執筆で不規則な生活になることも
評論家の仕事は、勤務時間や休日は不規則になることが多いという傾向があります。
大学の講義やシンポジウムに参加することも多いですし、業界内の関係者と打ち合わせや食事に行くこともあります。
図書館や本屋に足を運び、たくさんの資料を読み込む時間も大切です。
また、原稿の依頼があるときには納期に間に合うように執筆もしなければいけません。
原稿執筆中は遅い時間帯に仕事をすることが増え、土日も関係なく机に向かうこともあります。
知名度が高く実績がある人ほど忙しくなり、不規則な生活になることも珍しくありません。
大学教授やシンクタンク職員、作家など、評論の仕事以外の本業がある人はさらに忙しくなります。
ある程度は体力に自信がなければ続けていけない仕事です。
評論家の求人・就職状況・需要
実績と人脈から生まれる仕事
評論家の仕事というのは、求人サイトに情報が出るようなものではありません。
「一日何時間の勤務」とか「時給いくら」というように、労働時間に応じて報酬が決まるものでもありません。
あくまでも本人の実績や人間性、知名度などをもとに条件が決められて、依頼が来るものです。
それぞれの業界のなかで専門性の高い知識やスキルを持っている人に、自然と声がかかるようになって、仕事が生まれます。
ですから、評論家として仕事をしたいのであれば、まずは業界内で人脈を作っておくことが大切です。
特にテレビ局の関係者や新聞社、出版社の社員とコネクションを作ることで、出演や原稿の依頼されやすくなります。
メディアからの依頼を待たずに個人で仕事をしたいという人は、インターネットを活用するとよいでしょう。
専門のブログを立ち上げたり、SNSや動画サイトで自分のアカウントを作ったりして、情報発信することができます。
インターネットで個人的に活動する場合、閲覧や視聴の回数が伸びれば、収入にもつながります。
評論家の転職状況・未経験採用
転職で評論家になる人は多い
自分で名乗れば誰でもなれるのが評論家です。
しかし、大学を卒業したばかりの若者がいきなり政治や経済の評論家を名乗っても、世間からの信用を得るのは難しいでしょう。
ですから、評論家の世界では、何らかのキャリアを積んだあとに評論家になるというのが当たり前のことです。
シンクタンクに勤めていた人が経済や経営の評論家になる。
新聞社で政治部の記者をしていた人が政治の評論家になる。
大学教授が国際問題の評論家になる。
大手出版社の編集者が文芸の評論家になる。
世界大会の元メダリストがスポーツの評論家になる。
このようなケースは決して珍しいことではありません。
評論家には年齢も関係ないので、50代や60代になってからの転職も十分可能です。
焦らずにじっくりキャリアを積み、自分がチャレンジしたいと思ったタイミングで転職を目指せばよいでしょう。
評論家とジャーナリストの違い
「報道する」ジャーナリストと「批評する」評論家
評論家と似ている仕事として、ジャーナリストがあります。
正義感や使命感が必要な仕事であり、どちらも世論を動かすほどの影響力がある仕事でもあります。
「テーマを決めてリサーチする」「メディアを通して世の中に伝える」という点でも同じです。
しかし、この二つの職業の役割は大きく異なります。
ジャーナリストというのは、記者やルポライターのことを指します。
ひとつのテーマを深く取材して事実や真実を見つけて報道するのがジャーナリストの使命です。
これに対して、テーマに対する自分の意見を述べるのが評論家の仕事です。
政治でも経済でも金融でも、解説したり批評したりすることを求められます。
事実を報道するのがジャーナリスト、その報道に基づいて解説や批評をするのが評論家、と考えるとよいでしょう。
評論家とコメンテーターの違い
専門知識と求められる役割に大きな違い
評論家と似ている仕事としてコメンテーターがあります。
どちらもテレビのニュース番組や情報番組に出演しているイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、両者の立場は大きく異なっています。
たとえば、ワイドショーで新しい政策に関する特集をするとき。
政策に関して詳しい解説や批評をするのが、政治専門の評論家の役割です。
もともと大学教授や政治部の記者であることが多く、知識量は誰にも負けません。
これに対して、政策への疑問や期待をぶつけるのが、コメンテーターの役割です。
昨今では、コメンテーターはタレントや文化人などが務める傾向があります。
「視聴者の声を代弁する」とか「視聴者の興味をひく」ということが求められるのがコメンテーターなのです。