ビジョンとは
頻繁に使う言葉ではありませんが、比較的知られた用語のため、意味は知っているという方も多いのではないでしょうか。
ビジョンは企業経営において重要な意味をもつといわれており、外部にむけて発信する企業も以前より多くなりました。
企業とビジョンの関係やビジョンを作るときの方法など、詳しく確認していきましょう。
ビジョンとは
ビジョンとは将来像や未来の理想像です。
数年先、数十年先など、未来に実現したいと考えている構想ともいえます。
時間軸としては中長期。
漠然としたイメージよりも具体的な姿のため、明確に言葉として表現されている場合が多くあります。
企業であれば経営ビジョンや事業ビジョン、個人の仕事で目指す将来像はキャリアビジョンと呼ばれ、他の場合でも「○○ビジョン」と表現することができます。
経営におけるビジョンの重要性
特にビジネスの世界では、ビジョンの重要性が叫ばれるようになって久しくなりました。
なぜ、ビジョンはそれほどまでに重要なのでしょうか。
ビジョンが経営や組織にもたらす意味や価値を考えていきましょう。
ビジョンがもたらす価値
ビジョンは未来のありたい姿であるとともに、進むべき方向性を示すものでもあります。
一緒に仕事をする人たちが同じ方向に向かって取り組める状況があると、能力を発揮しやすく、成果も出しやすい環境が生まれます。
それぞれ異なる考えをもって取り組む場合や、何となく仕事をしている場合と比べると、成果には大きな差が生まれるでしょう。
また仕事をするうえでビジョンが精神的な支えになったり、判断軸になったりすることも少なくありません。
共通の意識をもつ集団は団結する力が強く、物事を推進する力も強大。
組織作りにビジョンが欠かせないのは、企業を成長させるパワーが非常に大きいからに他ならないのです。
ビジョンの浸透
ビジョンがいかに重要であるかはすでに説明の通りですが、ビジョンを決めて明文化するだけでは社員一人ひとりにまで浸透させることはできません。
仮に全員がビジョンを暗唱できたとしても、共通の意識をもっているとは限らないからです。
創業メンバーだけで運営する企業や人数の少ない組織では、ビジョンの共有に悩むことはあまり多くありません。
ところが組織の規模が大きくなれば、異なる考えをもつ人が増えることも考えられます。
ビジョンが形骸化しないよう、組織の拡大に合わせてビジョンの共有や浸透方法も考えていく必要があるといえるでしょう。
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ビジョンと理念の違い
企業経営と密接な関係にある「理念」。
企業によってはオフィスに経営理念を掲示しているケースも多いため、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
「経営ビジョン」と「経営理念」は似た表現であることから、この2つを同じものだと考えている方もいるようです。
ところがビジョンと理念では、少し意味が異なります。
理念の意味を確認し、2つの違いをみてみましょう。
経営理念とは
理念とは根底にある考えや想いのこと。
つまり経営理念は、企業が「どのような会社なのか」を言葉に表したものと考えてよいでしょう。
経営理念の多くは創業者や経営者の想いを反映していることから、企業の価値観や行動の指針として、社員に浸透するよう働きかけを行うケースが多くみられます。
経営ビジョンとは
経営ビジョンは、企業の根底に流れる想いを具現化するための「将来像」を言葉にしたものです。
企業が目指す姿でもあります。
目指す姿は必ずしも企業としての姿だけではなく、「こういう社会を作りたい」といった将来像も含まれます。
ビジョンと理念は同じではありませんが、ひとつずつ独立しているわけでもありません。
2つは関係し合っており、理念の要素としてビジョンが存在しているともいえます。
また企業の理想を実現していくために、経営者の考えや時代によって変化することもあります。
ビジョンとミッションの違い
理念の他にも、ビジョンと混同しやすい言葉があります。
特にビジョンとセットで語られることの多い「ミッション」は、ビジョンと同じ概念で捉えてしまっている人が多いようです。
ミッションの意味を確認し、ビジョンとの違いを理解しましょう。
ミッションの意味とは
ミッションは日本語で「使命」と訳されるとおり、ビジョンを実現するための手段と考えればよいでしょう。
ミッションの時間軸もビジョンと同じく中長期です。
企業の場合、ミッションはビジョンの達成のために何をするか(どのような価値を提供するか)ということでもあるため、企業の存在理由(存在価値)と言い換えることができます。
この2つも別々に存在するわけではなく、互いに関係し合うことで成立しています。
ビジョンはミッションを遂行するために必要なエネルギーの源泉であり、ミッションが遂行されるとビジョンの実現へと近づくことができます。
ビジョンの作り方
最近では投資家から資金調達をして事業を拡大させるベンチャー企業が増えました。
投資家へのプレゼンの際には、分かりやすく心に刺さるビジョンを伝えるケースも多くみられます。
しかし、実際には事業開始時点に明文化されていることは珍しく、軌道に乗り始めたり、社員が増え始めたりしたころから改めて考え直すという会社も少なくありません。
ビジョンは創業時や規模が拡大する前に作っておくことがよいとされています。
すでに説明したとおり、ビジョンは組織運営においてとても重要だからです。
ではビジョンはどのように作られているのでしょうか。ここでは一例を紹介します。
ディスカッション
どの時点でビジョンを策定するかによって異なりますが、すでに事業を開始している場合には、社長をはじめ経営に関わる人や創業メンバーとともにディスカッションをしながら決めていきます。
顧客と事業
・誰をどのように喜ばせたい事業なのか
・どのような社会にしたいのか
・どの点において業界ナンバーワンになるのか
・業界や世の中にどのような変化をもたらすのか
・業界や社会にどう記憶されたいのか
会社運営
・目指す会社の規模はどれくらいか
・会社の規模と影響力では、どちらがより重要か
・どのような雰囲気の職場にしたいのか
・どのような社員が活躍する職場にしたいのか
・社員には仕事を通じてどのように成長してほしいのか
今回は企業におけるビジョンの作り方の一例を紹介しました。
キャリアビジョンなど個人の将来像を描く場合には質問項目が少し変わりますが、「どうありたいか」の部分をさまざまな視点で掘り下げながら考えるとよいでしょう。
実際に企業が掲げるビジョンにはどのようなものがあるのか、具体例をみていきましょう。
企業が掲げるビジョンの例
東洋ゴム工業株式会社
東洋ゴム工業では2020年までに実現したい企業の姿として、長期経営ビジョン「ビジョン'20」を掲げています。
<東洋ゴム工業のビジョン>
・顧客視点をベースに独自技術・マーケティング戦略を持つ存在感ある企業
・CSRをひとりひとりが実践する社会から信頼される企業
・柔軟な発想とチャレンジ精神に富んだ活気あふれる企業
ANAグループ
「ANAグループは、お客様満足と価値創造で世界のリーディングエアライングループを目指します」
ANAグループのビジョンはシンプルにまとめられていますが、ホームページではビジョンに込められた想いについての説明があります。
顧客に選ばれ続ける航空会社であることや、顧客の笑顔と価値を生み出す自立した企業として発展していくこと。
また全社一丸となって、高い品質を追及していく組織を目指す決意がビジョンには込められています。
この記事のまとめ
経済の成長スピードが鈍化し、終身雇用の時代が終わりを告げようとする中、さまざまなシーンでビジョンをもつことの大切さが謳われるようになりました。
企業でもビジョンの明文化や浸透が重要視されるようになり、規模を問わずビジョンを構築する企業が増えているようです。
就職活動などでは、個人のビジョンを語ることが求められるケースもあります。
ビジョンが時代や外部環境の変化に合わせて、変わっていくのは自然なこと。
一度描いたからといって、修正できないわけではありません。
まずはビジョンを描く練習をしてみると、自分自身のこれまでの人生のたな卸しができ、これからどうありたいかを考えるよいきっかけにもなるのではないでしょうか。
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