高卒で就職か進学か迷ったらどう考えればいい?
周囲の人に相談しても、ある人は「進学するべき」と言い、ある人は「就職してもいいのではないか」と言うなど、人によって考え方はさまざまです。
そこで、就職か進学か迷ったときにどう考えれば進路を決めやすくなるのか、就職した場合と進学した場合のちがいについて解説します。
高校卒業後の進路について迷っている人は、ぜひ参考にしてください。
高卒と大卒の就職率・就職先のちがい
高卒で就職する場合、卒業後すぐに働き始めることになります。
一方、大学に進学する場合、就職するのは短大なら2年後、4年制大学なら4年後になります。
就職する時期がこのように変わることで、就職のしやすさや就職先にどのようなちがいがあるのでしょうか。
高卒と大卒の就職率・就職先のちがいについて確認していきましょう。
高卒でも就職しやすい時代になっている
高卒で就職しようと考えていると話すと、次のようなアドバイスをする人が少なからずいることでしょう。
「高卒で就職しようとしても就職先が確保できなくて苦労する」
「高卒を採用する企業は限られているから不利になりやすい」
しかし、高卒だと就職が圧倒的に不利だったのは、バブル時代など大卒の就職率が高かった頃の話です。
文部科学省の調査によれば、平成31年3月時点で高卒者の就職率は98.2%となっており、就職を希望する人のほとんどが就職できていることが分かります。
参考:文部科学省 平成31年3月高等学校卒業者の就職状況(平成31年3月末現在)に関する調査について
高卒では就職できないのではないか?と心配する必要はそれほどなく、高卒でも就職しやすい時代になっているのです。
もし「就職できるかどうか」が理由で進路について迷っているのであれば、高卒でも就職できるという事実は知っておく必要があります。
大卒の就職率が高いわけではない
高卒で就職できるのなら、大卒はさらに就職で有利になるのでは?と考える人も多いはずです。
厚生労働省の調査によれば、平成31年3月時点で大卒者の就職率は97.6%でした。
このうち、短大卒者の就職率は98.6%、4大卒者の就職率は97.6%という結果になっています。
前で述べた高卒者の就職率(98.2%)と比べると、4大卒者の就職率がやや低いことが分かります。
つまり、大卒だからといって就職率が高いとは限らないのです。
とくに高校生の親世代の場合、自分たちが就職した頃には大卒者のほうが就職率が高かった記憶が色濃く残っているため、大卒のほうが就職しやすいというイメージを今でも持っている可能性があります。
しかし、実際に近年の就職率を確認すると、必ずしも大卒のほうが就職しやすいとも言い切れない現実が見えてくるのです。
就職先の選択肢は大卒のほうが多くなる
では、就職に関して大学へ進学することが全く役に立たないかと言えば、決してそうではありません。
就職率で比べれば高卒でも就職できるという結果になっていますが、就職先をどれだけ選べるかを考えると、大卒のほうが有利です。
高卒で就職する場合、応募できる企業は1社に限られるケースが多いです。
受験で言えば「単願」で受けるしか道がないことになりますので、いろいろな会社に応募した上で比較検討するということができません。
一方、大卒の場合は就活で知られるように数多くの企業に応募し、企業説明会やインターンシップに参加した経験を踏まえて、希望する企業を絞っていくことができます。
また、応募できる職種や業種の幅についても、大卒のほうが幅広くなりやすいのです。
このように、就職先の選択肢の幅広さという点では、高卒よりも大卒のほうが有利と言えるでしょう。
高卒と大卒の初任給・平均年収のちがい
就職する時点においては、高卒が大卒よりも不利とは言い切れないことについて見てきました。
では、就職後の給与についてはどういったちがいが出てくるのでしょうか。
高卒と大卒の初任給と、その後の平均年収を比較しながら考えていきましょう。
初任給は高卒のほうが低くなりやすい
厚生労働省が実施した「賃金基本統計調査(初任給)」によれば、高卒者の初任給平均額は167.4千円、大卒者の初任給平均額は210.2千円となっています。
全体の傾向として、高卒で就職したほうが大卒で就職した場合と比べて初任給が低くなりやすいことが分かります。
ただし、初任給を受け取る年齢は高卒が18歳であるのに対して、大卒の場合は22歳(浪人・留年した場合はそれ以上)となりますので、就業時の年齢による差があることも考慮する必要があります。
高卒と大卒で初任給の差が4万円以上開いていることを考えると、仮に就職してから毎年1万円ずつ昇給したとしても大卒の初任給に追いつかない計算になります。
つまり、初任給だけでなく同年齢の大卒者と比べた場合においても、高卒の場合は賃金の面で不利になりやすいと言えるのです。
平均年収も高卒は不利になりやすい
平均年収についても、同じ年齢帯で比べた場合に高卒者は大卒者よりも不利になりやすい傾向があります。
年齢別に平均年収を見ると、高卒20〜24歳で3,171,400円、30〜34歳で3,910,100円、40〜44歳で4,632,700円、50〜54歳で5,020,000円となっています。
これに対して、大卒の場合は20〜24歳で353,300円、30〜34歳で5,246,700円、40〜44歳で6,777,700円、50〜54歳で8,533,100円となっています。
e-Stat「年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」2018年より作成
このように、高卒と大卒では20代前半までは年収の差があまりないものの、年齢を重ねるに従って大卒者の給与の伸びが大きくなるのに対して、高卒者の給与の伸びはあまり大きくないという特徴があります。
高卒でも高い収入を得られる職種はある
全体的な傾向としては、高卒のほうが大卒よりも賃金の面で不利になりやすいのは事実です。
ただし、職種によっては学歴の差はそれほど関係なく高収入を得られる仕事もあります。
たとえば、営業職のように成果が報酬に直結しやすい職種の場合、成果をあげれば高卒であっても大卒以上の年収を得ることは可能です。
成果主義で営業成績が重視される職場であれば、この傾向はいっそう強くなります。
また、技術職のように実務経験の豊富さが求められる職種であれば、大卒よりも長年にわたって就業することのできる高卒のほうが高い技術を持っていることはあり得ます。
仕事で結果を出すことが前提にはなりますが、職種によっては高卒でも大卒以上の収入を得ることは不可能ではありません。
20代で正社員への就職・転職
高卒と大卒の生涯賃金のちがい
労働者が現役のうちに稼ぐ賃金の合計を生涯賃金と言います。
初任給がほとんど変わらなくても、その後の昇給の度合いによっては長い年月のうちに得られる賃金に差がつくことは決して少なくありません。
その意味においては、初任給や20代までに得られる年収によってのみ賃金の有利・不利を判断すべきではないのです。
高卒と大卒では、生涯賃金にどのようなちがいが生まれるのでしょうか。
生涯賃金は大卒>高卒になりやすい
前項で見た通り、平均年収は大卒の伸びが高卒と比べて年齢とともに大きくなることが分かります。
これは、管理職への昇進などに伴って賃金が上がる人に大卒が多いことも関係しています。
管理職になると管理職手当がついたり、責任が重くなることに伴って賞与が増えたりする傾向があります。
そのため、長い目で見た場合に生涯賃金は大卒のほうが高卒よりも高くなりやすいのです。
もちろん、高卒だと管理職になれないというわけではありません。
仕事の成果や体得してきた業務知識・経験によっては、高卒でも管理職に抜擢される可能性はあります。
ただし、全体的な傾向として大卒のほうが生涯賃金が高くなりやすいことは知っておく必要があるでしょう。
企業規模によっては大卒以上の生涯賃金も可能
就職する企業の規模も生涯賃金に影響することがあります。
例外もあるとはいえ、一般的に大企業のほうが中小企業よりも昇給幅が大きくなりやすく、年齢とともに昇給していく傾向があります。
そのため、大卒で従業員100名以下の企業に就職した人よりも、高卒で従業員1,000人以上の企業に就職した人のほうが、結果的に生涯賃金が高くなることもあり得ます。
就職した当初の学歴や初任給では大卒にかなわなくても、長い目で見ると大企業に就職したことで大卒よりも豊かな暮らしができる可能性があるということになります。
業界内で大手と言われる企業に就職するチャンスを得られれば、高卒であっても大卒と同等かそれ以上の収入を得ることは可能なのです。
引用:企業規模別生涯賃金(独立行政法人労働政策研究・研修機構・ユースフル労働統計 2017)
この記事のまとめ
昔とはちがい、近年では高卒でも就職することは可能な時代になっています。
ただし、就職後の初任給や年収、生涯賃金といった面で大卒よりも不利になりやすかったり、選べる職種・業種の幅が狭くなりやすかったりすることは知っておく必要があります。
賃金の面では、就職後に仕事であげる成果や就職する企業規模しだいで、大卒以上の収入を得ることも可能です。
こうしたちがいを理解した上で、高卒で就職するか、または進学するかを考えてみるといいでしょう。
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