大学に行かない選択はあり? メリット・デメリットを紹介

大学進学率は上昇を続け、平成31年には高校卒業者の実に54.8%が大学に進学しています。

参考:文科省「学校基本調査」

しかし、裏を返せばおよそ半数の人は大学へ行かないという見方もできます。

大学に行かないことで、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

また、大学進学以外にどういった進路の選択肢が考えられるのでしょうか。





大学に行かないことで得られるメリットとは?

大学に進学しない理由としては、学力面や経済的事由など、さまざまな要因が考えられます。

しかし、中には「あえて大学に行かない」という選択をする人もいないわけではありません。

大学に進学するかどうかは個人の自由ですので、進学しないという進路を自ら選ぶこともできるのです。

大学に行かないことで得られるメリットして、主に次の3つが挙げられます。

早く社会に出て働くことができる

大学に進学する場合、短期大学なら2年間、4年制大学なら4年間を大学生として過ごすことになります。

2年もしくは4年という猶予期間が与えられる一方で、その期間は社会に出ることができないという見方もできます。

反対に大学へ進学しなければ、大学進学者よりも早く社会に出て働き、社会人としての経験を得ることができるのです。

たとえば現役で4年制大学に合格し留年することなく卒業した人の場合、30歳の時点で社会人経験は7年となりますが、高卒で働き始めた人の場合は10年以上も社会人を経験していることになります。

就きたい仕事が明確に決まっていて、少しでも早く仕事を始めたい人にとって、この4年間の差は大きい場合があるでしょう。

大学で必要な学費を使わずに済む

大学に進学するにはお金がかかります。

近年では在学中の奨学金を返済するために社会人になってから苦労する人が増えており、大学進学に伴う学費の負担は決して軽くないことが分かります。

経済的な理由で学費を捻出することが難しい場合、大学に進学することなく就職して収入を得たほうが合理的な場合があります。

また、起業など年齢や学歴に関係のない道に進みたいという気持ちが強い人にとって、大学へ進学して学費を納入する意味が見出せないこともあるでしょう。

大学で得られる学びは決して少なくありませんが、4年間で必要な学費に見合うだけの価値を見出せないとしたら、大学に進学しないことで学費を浮かせたほうがメリットが大きいと言えます。

長期の海外旅行などに時期・期間の制限がない

大学生活は高校までと比べて時間的余裕が増しますので、留学や海外旅行など、長期間を要する予定も入れやすくなります。

ただし、大学生の本分は学業ですので、必ず出席しなくてはならない授業が入っていたり、試験の時期があったりと、いつでも不在にできるとは限りません。

この点、大学に進学しないという選択をすれば、自分で立てた予定を阻害するものがなく、長期の海外旅行などにも行きやすいというメリットがあります。

もちろん旅行するためにもお金が必要になりますので、そのためのお金を確保できていることが前提になります。

しかし、アルバイトやフリーランスなど、時間や時期の拘束を受けにくい働き方は存在しますので、大学に進学せずとも何らかの方法で収入を得て長期の旅行に行くことは不可能ではありません。

大学に行かないことで想定されるデメリットとは?

大学に行かないことで得られるメリットがある反面、忘れてはならないデメリットもあります。

大学進学そのものは個人の自由とはいえ、高校卒業者の半数が大学に進む時代です。

大学に行かないことで想定されるデメリットについてもきちんと認識しておく必要があるでしょう。

大学へ進学しないデメリットとして、とくに次の3点が考えられます。

大手企業の正社員採用に応募できないことがある

いわゆる大手企業や有名企業の場合、入社後の待遇が良いなどの理由から、入社を希望する人の数が極めて多くなります。

企業側としても人材を厳選するだけの余裕ができるため、少しでも優秀と思われる人を採用したいと考えるのは自然な成り行きです。

その結果、大手企業の正社員採用枠は大卒以上であることが条件になっていることが少なくありません。

大学に行かなければ最終学歴は高卒となりますので、大卒以上を条件とする求人には応募できなくなります。

社会に出てしまえば学歴は関係ない、といった意見を耳にすることもありますが、少なくとも入社する時点では学歴が条件になっているケースがまだまだ多いのが実情です。

公務員試験も高卒で受けられるものは限られてくる

民間の大手企業については前で述べた通りですが、公務員はどうでしょうか。

結論から言えば、高卒でも公務員になることはできますので、大学に行かなくても公務員を目指すことは可能です。

ただし、公務員になるために必ず受けなくてはならない公務員試験に際して、学歴ごとに区分が決められていることがほとんどです。

地方行政職であれば高卒は「初級」、大卒以上は「上級」と分けられていることがあります。

国家公務員の場合は高卒が「3種」、大卒以上が「2種」「1種」と分けられています。

大卒以上を条件としている試験を高卒者が受験することはできませんので、そもそも受けられる試験区分が限られることになります。

大卒と比べて給与条件が不利な仕事が少なくない

企業や業種によっては、高卒も大卒も採用しているケースがあります。

こうしたケースでは大学に行かなくても大卒者と同じ職場で働くことができますが、就職した時点での給与条件や、その後を長い目で見たときの昇給・昇進の条件が大卒者と比べて不利になることが少なくありません。

公務員においても、3種や初級といった高卒者を対象とした区分の試験で採用された場合、その後ずっと大卒者の給与よりも低い条件になることがほとんどです。

もちろん、成果主義の職場であれば学歴に関係なく評価され、給与条件を努力によって改善していくことが可能な場合もあります。

ただし、日本においては採用された時点での条件をずっと引きずるケースはまだ多く、大学を卒業していないことで不利になりやすいことは知っておく必要があります。

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大学進学以外に考えられる選択肢とは?

大学進学という道を選ばなかった場合、メリットだけでなくデメリットも少なからずあることを見てきました。

では、仮に大学に進学しないとすれば、それ以外にどのような進路の選択肢があるのでしょうか。

大学に進学しない場合の代表的な進路として、次の4つが考えられます。

いずれかの進路を希望するのであれば、あえて大学に行かないという選択もあり得るでしょう。

高卒採用枠で就職する

文科省の調査によれば、平成31年に高校を卒業した人のうち、就業した人の割合は17.6%でした。

これは、大学・専門学校への進学を除いた卒業生の進路としては最も多い割合となっています。

なお、高校卒業時点で就職する場合、高校で就職指導を受けるのが一般的です。

この場合に注意しておきたいこととして、1人1社制と呼ばれる制度があり、就職希望者1人につき応募できる企業は1社のみとなる点が挙げられます。

高校が主導的な役割を果たして就職指導をすることが前提になっているためであり、高卒者の就職先が確保できなくなるのを防ぐことを目的とした制度と言われています。

ただ、高卒で就職する人にとって、この制度は選択の自由が制限される原因にもなっています。

高卒で就職する場合、このように就職先の選択肢が限られるケースがあることは知っておく必要があります。

専門学校・短大に進学する

4年制大学以外にも進学先として専門学校や短大といった選択肢があります。

専門学校・短大ともに2年間で卒業できることから、早く社会に出て働きたい人にとって4年制大学よりも適していると考える人もいます。

前出の文科省による調査によれば、平成31年に専門学校へ進学した人は16.3%であり、大学進学者、就業者に次いで多いことが分かります。

専門学校で専門的な技能や知識を身につけることによって、就職する際に学んできたことをアピールしやすくなります。

短大に関しても、学生の就職支援に力を入れている学校が少なくないことから、高卒で就業する場合と比べて就職しやすくなる可能性があります。

このように、4年制大学以外にも進学という道を選ぶことによって、将来の選択肢を増やすことにつながる場合があるのです。

資格を取得する

大学で学ぶことが必ずしも将来の仕事に直接役立つとは限りません。

このことは、大学の多くの学部・学科において就職先の職種として最も多いのが「営業」であるケースがよく見られることからも分かります。

営業について専門に学んできたわけではない人の多くが、大学での専攻に関わらず営業職に就いているのです。

こうした大学と実社会との非連続性が合理的でないと感じる場合は、大学に行かず将来就きたい仕事に生かせる資格の取得を目指して勉強するという方法があります。

実際、社会に出てからは実務で生かせる資格を持っている人のほうが有利になることは少なくありません。

とくに有資格者でなければ従事することのできない免許制の仕事や、士業など独占業務のある仕事においては、資格を取得していることが必須の場合があります。

アルバイトや個人事業で経験を積む

将来的に独立を考えている人の場合、実務を通じて知識や経験を得ておくと独立するにあたって役立つことがあります。

もちろん会社に就職して仕事をする中で経験を積むこともできますが、最終的なゴールが独立であれば、必ずしも就職という手段にこだわる必要はありません。

アルバイトを通じて実務経験を積むこともできますし、個人事業で仕事を受注して経験を重ねていくこともできるでしょう。

ただし、高卒でアルバイト従業員となり独立の夢が叶わない期間が続くと、そのままフリーターとなることも考えられます。

独立するための手段としてアルバイトや個人事業を考えるのは1つの方法ですが、リスクもある挑戦であることは覚悟しておく必要があります。

起業して実業家になる

フリーランスや会社設立といった起業によって実業家になる場合、年齢や学歴に関係なく活躍できる可能性があります。

実際、高校在学中からビジネスを始めたり、一度大学に入ったものの起業した会社が成功して大学を中退したりする人もいます。

現在活躍している実業家の中には、最終学歴が中卒・高卒という人も少なからずいます。

高学歴であれば起業して成功できるわけではありませんので、起業したいという強い思いがある人にとって、大学へ行くことが無意味に思えてしまうこともあるでしょう。

ただし、大学でできた友人関係がその後の人脈へとつながることもありますので、大学に通いながらチャレンジすることで得られるメリットもあります。

起業には失敗するリスクが常につきまといますので、大学生という肩書きを得た状態でチャレンジすることも検討してみましょう。

年齢を重ねてから大学に入学する

高校を卒業後、現役または浪人して大学に進学するのが一般的と思われていますが、実際には大学に入学する年齢に上限はありません。

社会人になってから大学に入って学び直す人もいれば、定年退職してから大学で学ぶ人もいます。

海外では、大学での学びを年齢によって分けない考え方が一般的になっている国もあります。

年齢を重ねてから大学に入学してもいいのです。

「通う必要性が見出せないけれども、大学に行く人が多いようだから何となく行くことにした」といった漠然とした理由で進学したとしても、得られるものは決して多くはないかもしれません。

もし今現在、大学に通うことに意味を見出せずにいるのであれば、大学に通いたくなったときに入学する、という方法もあるのです。

この記事のまとめ

何らかの事情で大学進学を諦めざるを得ない場合を除いて、あえて大学に行かないという決断をするのは勇気のいることでしょう。

大学に行かないことによるデメリットに注目が集まりがちですが、あえて進学しないことで得られるメリットもないわけではありません。

進学以外の選択肢をしっかりと考えているのであれば、リスクを十分に理解した上で、大学に行かないという選択肢もあり得るのです。

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