住宅業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
住宅業界とは
住居や建設に関わる業界は住宅業界のほかに、建設業界や不動産業界などがあります。
一般的に住宅業界という場合は、戸建て住宅を設計、施工し、販売する住宅メーカーのことを指しますが、一部のマンションのデベロッパーが含まれることもあります。
2009年までは、世界的な経済不況の原因となった、リーマンショックなどの影響を受けて、新築住宅の着工数が減少していましたが、2010年からは経済が回復基調となり、着工数も増加しました。
近年は、首都圏を中心としてマンションの価格が高騰していることもあり、戸建て住宅の方が割安と考え、購入を検討する人が多くなっています。
そのため、例えば、トヨタ自動車を親会社に持つトヨタホームや家電量販店大手のヤマダ電機の子会社のヤマダホームズなど異業種から住宅業界へ参入する企業も増加しています。
しかし、今後は少子高齢化による人口減少の影響を受けて、日本国内の新築住宅の着工数が急激に増加する可能性は低く、長期的にみると減少に転ずると予測されている業界でもあります。
住宅界の役割
住宅業界は、人が社会的な生活を送る基礎となる「衣食住」の「住」に関わる業界になります。
人が生きていく上で必要不可欠となる住宅を提供するという意味で、無くてはならない業界です。
近年の住宅の傾向としては、単身世帯の増加や核家族が進行したことで、昔のような広い間取りの家というよりはコンパクトで機能的な住宅が好まれています。
加えて、環境に負荷をかけない建築材料を使用したり、自家発電機能によりエネルギー消費を効率化させた住宅、自然災害に強い安心安全な住宅など、さまざまな需要が高まっています。
このような価値観の多様化に対応した住宅を提供し、人が健康で豊かな生活を送ることができる住環境を提供し続けていくことが住宅業界の役割となります。
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住宅業界の企業の種類とビジネスモデル
住宅メーカーのビジネスモデルは、その企業が採用する工法により大きく4つに分類することができます。
ハウスビルダー、工務店
住宅メーカーは、日本国内の都道府県全域で住宅の設計、施行、販売を行うのに対し、ハウスビルダーや地場工務店は、特定の都道府県で事業を展開しています。
昔から、特定の地域で住宅事業を営んできた企業が多いため、その地域特有の気候や生活習慣を熟知した上で、住宅を提供できるという点で強みを持っています。
プレハブ工法
住宅の建設に必要となる材料を工場でまとめて生産し、建築現場で組み立てるという工法です。
事前に材料をそろえますので工期が短くなり、管理された工場で生産するため、品質が安定するというメリットがあります。
この工法を採用しているのが、大和ハウス工業株式会社や積水ハウス株式会社で、軽量鉄骨の柱や梁などの骨組みを工場で生産し、建設現場で組み立てる方法を採用しています。
在来工法
在来工法は、伝統的な工法とも呼ばれるもので、歴史の長い工務店や住宅メーカーが採用しています。
柱や梁、筋交いといった軸組で建物を支え建設していきます。
この工法を採用するメリットとして、住宅の間取りや構造を自由に決められることがあります。
また、この工法を採用している住宅メーカーや工務店が多いことから、さまざまな条件を加味して依頼先を決めることもできます。
この工法を採用している企業としては、住友林業株式会社や株式会社一条工務店があります。
パワービルダー
パワービルダーとは、床面積30坪程度の一戸建てを建売住宅として建設し、販売する企業のことを指します。
比較的若い世代も購入しやすいように、一戸建てとしては安い価格帯の2千万円台から3千万円台で販売します。
立地条件の良い物件が多く購入数が増えていますが、価格を抑えるために予め決められた仕様で建設されるため、注文住宅のように間取りから決めることは難しいというデメリットがあります。
パワービルダーの代表的な企業は、株式会社飯田産業があります。
住宅業界の職種
住宅が完成するまでには、さまざまな職種の人が関わることになります。
この章では、住宅業界の特徴的な職種をご紹介します。
設計(建築士)
住宅の購入希望者にとって、最適な住宅の設計を行います。
実際に住宅を建設する土地の地質や地盤、状況を踏まえた上で住宅の図面を作成し、営業とともに住宅購入希望者に提案を行います。
住宅は人生において大きな買い物となりますので、予算内で要望をできるだけ具現化できるように設計することが重要な役割となります。
設計内容が決まった後も、図面通り進行しているか状況を確認することもあるため、現場の職人や住宅購入者とも長くコミュニケーションを取りながら仕事を進める職種になります。
施工管理
設計が作成した図面通りに、住宅の建築が進んでいるのか確認、管理する職種です。
着工前の資材の手配や住宅購入者への工事内容の説明、工事期間中は現場の総指揮官として作業員を監督します。
また、工事が遅れないようにスケジュールを管理したり、品質がしっかりと確保されて工事が進んでいるかをチェックすることも重要な業務となります。
工事期間中は、施工管理が住宅購入者と主にやり取りを行い、間違いのないように工事を進めるための重要な窓口の役割を果たします。
営業
住宅メーカーが建設した住宅を購入希望者に紹介し、購入につなげていく職種です。
基本的には、住宅展示場に訪れた人に対して提案営業を行うことが多いようです。
住宅は金額が高い商品のため、一度の営業で成約が貰えるとは限りません。
住宅購入希望者の資金計画や希望の間取りのヒヤリングを丁寧に行い、要望に合った物件を提案します。
何かあったときの対応窓口として、住宅引き渡し後も改築やリフォームの相談を受けることがあるなど、お客さまと長期的な関係を構築する職種です。
住宅業界のやりがい・魅力
住宅業界で働く上でのやりがいは、人の生活の基本となる住居の提供に関わる仕事ができるという点にあります。
一般的に住宅を購入する場合は、数千万の資金が必要となり、25年から30年の長期のローンを組んで購入する場合が多いです。
そのため、住宅購入者にとっても大きな決断であり、後悔しないように自分や家族の要望をできるだけ反映した住宅を購入したいと考えます。
予算の範囲内で、よりより住宅を購入してもらうために、ニーズを反映した住宅を提供してくことが業界全体の役割となります。
住宅業界の平均年収は、600万円ほどといわれています。
国税庁の2017年民間給与実態統計調査から、日本の平均年収は432万円であるのに比べ、不動産業は高い水準であることが分かります。
大手企業に限定すると、平均年収が800万円台後半から900万円ほどになっており、企業の規模により待遇に差もあります。
また、全国展開している企業と特定の地域で事業展開をしている企業では、さらに給与待遇に違いが出る場合がありますので、希望する企業があった場合は、よく確認するようにしましょう。
また、営業職の場合は、成約を取るごとにインセンティブが入ってくるため能力次第ではさらに高額な給与が支給される場合があります。
そのため、若手であっても実力次第で高給を得ることもできます。
その他にも、建築知識、住宅購入の知識など、住宅に関するあらゆる知識とビジネススキルを強化することができる点で成長できる業界ともいえます。
住宅業界の雰囲気
住宅や不動産、建設に関わる業界は「体育会系」といわれることが多く、気合や根性が必要であるといわれることが多い業界です。
この理由には、住宅の建設現場は、体力仕事が多いという点があります。
一般的には、住宅を建設する作業を住宅メーカの社員が行うことは少ないですが、現場の作業員とのコミュニケーションは頻繁にとることになります。
現場は職人気質の人が多く、仕事は背中を見て覚えるという雰囲気の現場も多くあります。
また、営業職はお客さまの時間に合わせて訪問することが多いため、土日勤務となることもあり、こういった状況から、「体育会系」、「体力仕事」「気合」等のイメージが先行したものと推測されます。
しかし、近年は社会全体に働き方改革の考えが浸透し、積極的に業務改善を行う企業が増えていることから、住宅業界にもこの考えが広がってきています。
効率的に働き結果を出すという考えに、業界自体がシフトしている状況です。
住宅業界に就職するには
就職の状況
住宅業界の、新卒採用は毎年定期的に行われています。
前述した通り、マンションや戸建て住宅の着工数が2010年から増加傾向にあり、業績が安定して成長している企業も多く、人材確保を目的として、毎年新卒採用を行っているためです。
住宅業界は、実力主義、営業ノルマが厳しいといわれることが多い業界です。
また、営業職の場合は、お客さまの都合に合わせて対応することが多いため、一般企業のような平日勤務、土日休みのような勤務体系ではない場合もあります。
入社前後でギャップに悩まないように、しっかりと業界研究、企業研究を行い、業界を理解することが大切です。
就職に有利な学歴・大学学部
設計や現場管理といった技術職は、建築や土木系の学部を専攻していることを応募条件としている会社が多くあります。
建築に関する基礎知識を持っている学生を即戦力として、採用したいと考えている企業が多いためです。
もちろん、上記のような学部でなければ就職できないということではなく、未経験者を対象にしたり、学歴不問で広く人材を募集している企業もあります。
しかし、より有利な条件で就職するためには、基礎知識を有していた方が評価される確率が高くなりますので、選択肢を増やすという意味で、大学卒業しておくのがベストです。
一方営業職では、文系理系を問わずに採用する傾向があります。
学歴よりは、コミュニケーション能力や提案力を面接時に見られることが多いからです。
建築系や土木系の学部以外で、住宅業界に携わりたいと考えている人は、営業職を検討してみるのもいいでしょう。
就職の志望動機で多いものは
住宅業界への就職の志望動機として多いものは、
・人生にとって大きな買い物である住宅の購入に携わる仕事がしたい。
・住宅は生活の基本であるが、生活を豊かにしてくれる住環境をつくることができる仕事に携わりたい。
・住宅の建築を通じて、街づくりに関わりたい。
などがあります。
住宅業界で働くことで、豊かな住環境を提供する仕事に携わりたいという志望動機が多くありました。
面接の際は、上記のような業界に対しての志望動機とともに、希望する企業でなぜ働きたいのかという具体的な理由を話せるように、企業研究もしっかりと行っておくとよいでしょう。
住宅業界の転職状況
転職の状況
住宅業界の中途採用は、不定期ですがある状況です。
離職率が高いといわれる業界でもあるため、不足した人材を補うという意味でも、不定期の中途採用を行っている企業が多いです。
前述した通り、住宅業界、特に営業職では、成約件数に応じたインセンティブが給与に追加して支給されるなど実力次第で稼ぐことができるため、年収アップを目的に転職される方もいるようです。
転職の志望動機で多いものは
転職の志望動機として多いのは、
・前職で、パワービルダー系の企業で勤務していたが、今後は高級住宅など、今まで扱ったことのない住宅の販売経験を積みたいと思い転職を決意した。
・同業他社の、住宅の工法に惹かれて、自分も携わりたいと思い、転職を決意した。
などがあります。
いずれも、今までの経験を基に、さらにビジネスマンとしてのスキルアップを目的として転職するケースが多いようです。
転職で募集が多い職種
中途採用の募集が多い職種は営業職です。
新築マンションや、住宅の着工数が増えたことにより、それを提案し販売につなげる窓口となる営業職の人材を各社が必要としているためです。
また、住宅業界の営業職はノルマや残業がある企業も多く、離職率が高い職種といわれています。
人材の流動性が高いため、不足した人材を補うために中途採用を行っているという場合もあります。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
営業の場合は、宅地建物取引主任者、設計の場合は建築士、現場監督の場合は建築施工管理技士等の資格があると、今までの経験やスキルの証明となり評価されやすくなります。
しかし、これらの資格は必須というわけではなく、持っていなくても今までの経験や実績をアピールすることで転職は可能です。
特に、営業職であれば比較的未経験でも転職しやすいといわれています。
初めから専門的な知識が必要というわけではなく、業界未経験者でも対応可能な部分が多いため「未経験者可」での求人募集が多い状況です。
住宅業界の有名・人気企業紹介
大和ハウス工業株式会社
大阪府大阪市に本社を置く住宅総合メーカーで、東証一部上場企業です。
建築に使用する材料の一部もしくは全部を工場で生産し、建築現場で組み立てるというプレハブ工法を採用した住宅を日本で初めて作りました。
また、賃貸住宅事業やマンション事業、リフォーム事業も展開しています。
海外事業も展開しており、中国、アメリカ、ベトナムなどの分譲マンションや工場団地の開発を手掛けています。
積水ハウス株式会社
大阪府大阪市に本社を置く住宅メーカーで、東証一部上場企業です。
住宅の設計、建築、施行や工事管理を主力事業としていますが、他にも日用品雑貨の販売や保育所、有料老人ホームのコンサルティング事業など、さまざまな事業展開をしています。
また、海外にも進出しており、アメリカやシンガポールにも事業所を設立し、市場参入を進めている状況です。
ミサワホーム
東京都新宿区に本社を置く日本の住宅メーカーで、東証一部上場企業です。
2019年5月に、トヨタホームの完全子会社となりました。
住宅の設計から施工、販売を主力として事業展開していますが、他にも高齢者向けの集合住宅施設や医療施設などの建築も行っています。
断熱性、機密性、耐久性に優れた家づくりに強みを持っており、自然災害の頻発する現代で評価されています。
住宅業界の現状と課題・今後の展望
住宅業界は2010年以降の景気回復により、新築住宅やマンションの着工数が増加し、各企業の業績も安定した状態になっています。
しかし、日本国内は今後少子高齢化の影響で人口が減少していくため、住居需要も減少していくと予想され、企業間の競争は激化していくと予想されます。
また、異業種からの参入が増えてきており、参入企業は本業の強みを生かした事業展開で市場シェアを獲得していこうとしています。
例えば、ヤマダ電機系列のヤマダホームズでは、ヤマダ電機の流通網を利用した、お得感のある家電をセットにした住宅の販売を行っています。
そのため、既存の住宅メーカーも住宅を建築して売るというだけでなく、住宅メーカーならではの付加価値を提供していく必要があります。
付加価値として、高齢者が住みやすい住宅を今まで蓄積してきたノウハウを活用して設計したり、震災に強い家づくりを行うなど、高機能住宅を提供する事業を強化しています。
また、新しい動きとして、スマートハウスの建築が盛んになってきています。
住宅の断熱性を高めたり、自家発電装置を設置したり、エネルギーを自給自足できる住宅のニーズが高まっている状況です。
このように、日本国内においては、住宅に対して多種多様なニーズが増えてきているため、それらに応えることができる企業が今後も安定的に業績を伸ばすといえるでしょう。
また、日本にとどまらず、海外に事業を展開し海外の新規市場での地位を確立していくなど、常に変化に対応し企業努力を続けていくことで、業界も成長していくと考えられます。
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