【針金造形作家】圧倒的存在感を示す作品を目指してーー針金を用いた造形作品を制作する蔦本大樹さん

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好きを仕事にしてる人を紹介するインタビュー記事。
今回は、高校で美術の非常勤講師をするかたわら針金を用いた造形作品を制作する針金造形作家の蔦本大樹さんからお話を伺います。

針金造形作家の活動内容

針金造形作家の活動内容について教えてください。

主に線材、針金、ワイヤーと呼ばれる金属線を用いて、作品を制作しています。

そして、制作した作品を公募展や百貨店などで作品の展示、販売を行っています。

また、現在はプロモーションの一環でTwitterなどのSNSを活用し、作品や作品制作中の様子を発信しています。

こちらも重要な活動の一つです。

だからといって、売れる作品だけをつくり続けるのではなく、表現者としていつまでも同じ作品に固執せず、常に既視感のない新しい可能性を探求するべきとも考えています。

もちろん売れることは作家として重要な要素でもありますが、私の中で最重要事項は作品を進化させ続けること。

そのためにも、“ワイヤー”という素材の可能性を引き出し、どうにか作品の制作を続けていきたいと思っています。

現在はフリーのアーティストとして活動をされているのでしょうか?

現在は高校で非常勤講師として美術を教えながら作家活動をしています。

まだ作品だけで生活はできていません。

作品が稼ぎに繋がり出したのも1年ほど前から。

公募展で賞をいただいてから、ギャラリー(展示の企画)様からお声がけいただき、百貨店などでの展示・販売をしており、少しずつ稼ぎを得られるようになっている状況です。

これまで手掛けてきた作品数と代表的な作品は?

これから作家として頑張っていこうと決めてから制作した作品数は約30点です。

今までSNSなどで一番評価をいただけた作品は「大蛇」です。

タイトル『大蛇』

作品づくりのスケジュール

一つの作品の制作スケジュールについて教えてください。

先ほどお話した「大蛇」ですと約5カ月。週6日、1日8時間ほど費やして完成しました。

リング状の鱗パーツを少しずつ大きさを変えながらひたすらつくっていく作業です。

当時は大学4年生だったのですが、一つのパーツをつくるのに約3時間はかかっていました。

現在は小さい作品で2~3週間、大型作品は1~2ヶ月程かけて制作しています。

アーティストのみなさんは休みなく創作活動をしている印象があります。どのような割合で仕事とお休みの時間を取っていますか?

基本的に空いている時間のほぼ全てを制作に回しています。

制作以外の時間は非常勤講師の仕事をしているので、生徒に教えたり、話したりすることがリフレッシュになっていると感じています。

そのため、休みの日をつくることはあまりないのですが、作品展示などで遠出をした際には、水族館や美術館などを巡っています。それがいつも楽しみです。

針金造形作家になったキッカケ

幼少期の頃から工作などのモノづくりがお好きだったのでしょうか?

そうですね。子どもの頃から身の回りにあるものを使って、いろいろつくっていた記憶があります。

例えば、折り紙で一番高く飛ぶカエルや一番遠くまで飛ぶ紙ヒコーキを研究したり、輪ゴムで強力な輪ゴム鉄砲をつくったり、何かとずっとつくっていました。

そこまで、器用ではなかったのですが、とにかく何かつくること自体が楽しかったのだと思います。

いつ頃から針金アートの道を目指されたのでしょうか?

アートとして本格的に作品をつくり始めたのは大学に進学してからですが、ワイヤー(針金)に出会ったのは中学時代。

私はソフトテニス部に入部していました。

よく試合で行っていた地元のテニスコートがあるのですが、そこのコートに劣化して千切れたフェンスの欠片が散らばっていたんです。

試合を観ているのがあまり好きではなかった私は暇つぶしにフェンスの欠片を拾い集めて、手で曲げたりねじったりして、小さなドラゴンや棒人間をつくって遊んでいました。

良い生徒とは言えないのですが……。

そうやってつくっていくうちに、もっとたくさんのワイヤーを使って創作してみたくなり、100円ショップで園芸用のカラーワイヤーとペンチとニッパーを購入しました。

それが針金で創作を始めたキッカケです。

タイトル『異形頭』

針金造形作家のやりがい、つらさ

針金造形作家の活動をする上で、どのようなやりがいや楽しさを感じていますか?

自分の頑張り次第で作品のクオリティを上げていけるところです。

新しい作品をつくるたびに新しい課題が見え、新しい表現が生まれる。

つくることを辞めない限り、永遠に楽しめるエンドレスゲームを手に入れた感覚があります。

つくった作品を評価してもらえた時ももちろんうれしいのですが、それだけではなく成長していく作品を身を持って感じ取れることが何よりも楽しいです。

逆につらいな、大変だな、と思うことはありますか?

すべての時間を作品づくりに費やしたいところですが、そうはいかないところです。

これからの自分に期待しています。

針金造形作家としての目標

どのような想いを持って作品づくりをしていますか?

私はワイヤーを用いて「生命力」をテーマに作品を制作しています。

制作過程において針金を積み重ねることによって「密度」と「重み」が徐々に増えていくのですが、「生命」とはそういった作業に時間を積み重ねていくプロセスを示しています。

私の感じる「命」の形を線によって再構成し、圧倒的な存在感を示す作品づくりをしていこうという想いがあります。

今後、針金造形作家の活動を通して目指していることを教えてください。

直近の目標・展望は、納得のいく作品を貯め、個展を実施することです。

そして将来的な目標としては、ワイヤーという素材の技術を洗練させ、世界に新しいジャンルとして確立させることです。

好きを仕事にしたい人に向けてメッセージを

最後に、好きを仕事にしたい方へメッセージをお願いします。

一番大事なのは「楽しい」と思えることです。

何か一つのことを無理して続けるより、自分が楽しいと思えることはとにかく一度やってみる。

それらの経験が混ざり合って、オリジナリティのある本当に好きなこととして見つかっていきます。

「こんなことを続けていても意味はないかもしれない」「もっとすごい人なんてたくさんいる」そんなことは承知の上で、ただただ楽しくて続けていたら、意味のあるものになっていくでしょう。

逆に何をやっても楽しくないと感じる人もいると思います。

そんなときは、本当に些細な自分の好きなことを探してみてほしいです。

「何となくこの色をよく選んでしまうな」「このキャラクターのこういうところが好きなんだよな」そういう些細な“好きポイント”を見つける癖をつけられると、自分を知れて楽しいと思えることが見つかっていきます。

正直、好きなことを仕事にするのはお金や生活面で苦労することも多いです。

しかし、好きなことに触れていればそんなことは気にならなくなるくらいやりがいを感じる仕事になっていくと思うのです。

私自身、まだまだ仕事といえるものになってはいませんが、今が一番楽しいので続けていて悔いはないです。

タイトル『月の心臓/Lunar Heart』

蔦本さんが手掛けた作品お気に入り3選

1.「大蛇」
大学4年生の卒業制作で制作した作品。

これまでつくった作品の中で一番時間をかけて仕上げました。

初めて自分でも「良いものができた」と感じることのできた作品なので思い入れが深いです。

自由に動くので触っていて楽しいです。

2.「異形頭」
モチーフのシュモクザメは水族館で見る生き物の中で一番のお気に入りです。

「シュモクザメを手で持ってみたい」という願望が形になった作品です。

自分がほしいと思ってつくったので、あまり手放したくないですね(笑)。

3.「月の心臓/Lunar Heart」
初めてアートの公募展で賞を受賞することができた作品です。

表現・大きさも今までの作品とは異なり、挑戦的になっています。

モチーフであるクラゲを自分の中で再構成し、圧倒的存在感を表現しました。

写真は本文中に掲載されています