防衛医科大学校とは





防衛医科大学校とは

防衛医科大学校とは、医官・看護官の養成を目的として防衛省が設置する省庁大学校の1つで、埼玉県所沢市にあります。

文部科学省所管ではなく防衛省所管の学校のため、大学ではなく「大学校」と呼ばれています。

学生は防衛省職員であり、身分としては特別職国家公務員に相当します。

大学としてのシラバスは一般的な医学部や看護学部とほぼ同じですが、自衛隊としての訓練や学生舎での規則正しい集団生活など、防衛医科大学ならではの特色があります。

卒業すれば医官や看護官になれるのではなく、医師または看護師保健師の国家試験を受験し合格する必要があります。

防衛医科大学校の学部・学科

防衛医科大学校には、医学科・看護学科と、一般的な大学院に相当する医学研究科があります。

医学科

医師である幹部自衛官となるべき者の教育訓練を目的として設置されている学科です。

自衛隊医官として総合臨床医となることを目指しており、修業年限は6年間です。

カリキュラムは大きく「進学課程」「専門課程」「訓練課程」の3つに分かれています。

進学課程では基礎科目のほか、一般教養や外国語、保健体育といった授業が行われます。

専門課程では基礎医学と臨床医学を集中的に学び、医師としての専門知識を身につけます。

訓練課程では春季・夏季に行われる定期訓練において、射撃や野営訓練をはじめ、硫黄島研修、部隊実習、スキー訓練、医療機関研修などを行います。

看護学科

防衛医科大学校では、2014年に看護学科が新設されました。

それまで、自衛隊の看護官養成施設としては自衛隊中央病院高等看護学院(陸自看護学生)、防衛医科大学校高等看護学院、自衛隊地区病院の准看護師課程の3つがありました。

現在は防衛医科大学校看護学科に統合され、自衛官コースと技官コースの2コースが設置されています。

自衛官コース

保健師・看護師である幹部自衛官を養成するコースです。

看護自衛官は自衛隊医官と同様、身分としては特別職国家公務員です。

1年次には基礎教養科目を学び、2年次以降は成人看護学、小児看護学、母性看護学、老年看護学、精神看護学を講義・実習を通じて取得します。

4年次には看護師・保健師国家試験に向けた準備が本格的なものとなり、並行して防衛看護学についても学びます。

定期的に部隊での訓練や実習も行われ、自衛官としての基礎的な知識習得や体力づくりに取り組みます。

卒業後は全国の自衛隊病院や衛生科部隊で勤務し、実務経験を積みます。

技官コース

防衛医科大学校病院に勤務する保健師・看護師である技官を養成するコースです。

看護技官は看護自衛官とは異なり、非常勤の特別職国家公務員に相当します。

1年次には基礎教養科目を学び、2年次から成人看護学、小児看護学、母性看護学、老年看護学、精神看護学を講義・演習を通じて習得します。

3年次からは病院や地域の施設での実習が始まり、実践的な看護を学ぶとともに保健医療福祉の連携への理解を深めます。

4年次には看護師・保健師国家試験の準備が本格化し、並行して特殊戦傷病や自衛隊における国際貢献看護についても学びます。

卒業後は防衛医科大学校病院にて、保健師資格を有する看護師として勤務します。

医学研究科

防衛医科大学校の医学研究科は、一般的な大学における大学院に相当します。

自衛隊員として一定期間勤務したのち、自衛隊や防衛省の幹部から推薦を受けた人が進学することができます。

自衛隊の保健・医療水準の向上を目的とした最新鋭の研究が行われています。

卒業すると博士の学位が授与され、自衛隊や関連する医療施設において重要なポジションに就くことになります。

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防衛医科大学校の受験・入試科目

防衛医科大学校は防衛省が設置する省庁大学のため、入試は厳密には国家公務員試験に相当します。

《入試科目》

試験区分 入試科目
一次試験 国語・数学・英語(択一式)
国語、外国語、物理・化学・生物から
2科目選択の理科、数学(記述式)
二次試験 口述試験
面接試験
身体検査

一次試験の択一式問題で合格基準点に達しない場合、記述式問題の採点が行われないことがあります。

入試の実施時期は一般的な大学とは異なり、一次試験が10月頃に設定されています。

受験料も必要ないため、他大学の医学部を志望する受験生が併願するケースが多く見られます。

防衛医科大学校の偏差値・難易度・倍率

防衛医科大学の難易度は全国の医科大学の中でもトップクラスで、東大・京大クラスの医科合格を目指す受験生が併願することでも知られています。

偏差値は医学科で81、看護学科で64となっています。

参考:マナビジョン

倍率に関しては、他大学の医学部と併願する受験生も多いことから高くなりやすい特徴があります。

《防衛大学校の2020年度採用試験倍率》

学部 倍率 募集人数
医学科 16.1 85名
看護学科
自衛官コース
14.2 75名
看護学科
技官コース
6.3 45名

参考:防衛医科大学校 過去の合格状況

防衛医科大学校の学費は? 給料はでる?

防衛医科大学校の学生は防衛省職員であり、特別職国家公務員です。

そのため、授業料をはじめ入学金や受験料を納入する必要はなく、月額115,800円(看護学科技官コースの場合は月額約100,000円)の学生手当(給与)や期末手当(賞与)を受け取りながら学びます。

学生手当や期末手当は将来自衛官として活躍することを前提として支給されます。

卒業後、医学科は9年間、看護学科は6年間の勤務年限に満たない期間で退職した場合、卒業までに要した経費を国庫に償還する必要があります。

しばしば「防衛医科大学校は学費の納入が不要の医学部・看護学部」と言われますが、卒業後は自衛隊に貢献することを約束した上での手当とされている点に注意が必要です。

防衛医科大学校の志望理由・面接

防衛医科大学の志望動機

防衛医科大学校は自衛隊の医官・看護官を養成するための教育機関です。

そのため、防衛医科大学の志望動機においては「なぜ防衛医科大学への進学を希望するのか」がとくに重要なポイントとなります。

他大学の医学部や看護学部ではなく、自衛隊に貢献するために防衛医科大学校を志望する理由が明確になっている必要があります。

とくに面接試験では志望理由が重視され、防衛医科大学校が第一志望であるか、他大学と併願する予定があるか、といった点も聞かれます。

自衛隊の医官・看護官として将来的に活躍したい理由について、具体的なエピソードを交えて伝えることが重要です。

防衛医科大学校の志望動機の例文

「私は災害をはじめとする有事の際、国民の安全と健康を守る医官として活躍したく、貴校の医学科を志望します。

東日本大震災が起きたとき、私は小学生でした。

親類が仙台に在住しており、津波被害こそ免れましたが、原発事故の影響で長期間にわたる避難生活を余儀なくされました。

避難所での生活状況は過酷を極め、持病のある伯父は投薬や治療が満足に受けられない状況下で精神的にも追い詰められていたと聞かされました。

こうした災害は、いずれまたどこかの地域で起こる可能性が十分にあると考えます。

自衛隊の医官であれば、災害や有事の際に最も医療行為を必要とする方々に最前線で貢献することができるはずです。

医師になりたいというのは幼少期からの夢でしたが、東日本大震災をきっかけに自衛隊の医官として貢献する人生を歩みたいという思いを強く抱くようになりました。

以上の理由から医学科にて自衛隊医官を目指したく、貴校を志望します。」

防衛医科大学校の面接で聞かれること

防衛医科大学校の面接では、事前に「面接シート」が送付され、記入・提出しておくことになっています。

面接シートには志望動機のほか、自衛隊の医官・看護官として心がけるべきことなどを項目に従って記載します。

面接で聞かれる質問には面接シートと重複するものも複数あるため、面接シートに記載した内容と矛盾がないように答えることが大切です。

面接では、自衛隊の海外派遣についてどう思うか、任務には危険を伴うものもあるがどう感じるか、といった、自衛隊の任務への理解度を確認する質問をされます。

一般的な医師や看護師ではなく自衛隊医官・看護官を目指したい理由を、自分の言葉で伝えられるように準備しておく必要があります。

また、卒業後に医学科は9年間、看護学科は6年間は退職しないことが前提になっていることについても、確認の意味を込めて質問されることがあります。

防衛医科大学校の雰囲気・生活

防衛医科大学校の学生は、全員が学生舎での共同生活を義務づけられています。

朝6:30の起床に始まり、食事や入浴、就寝の時間帯も厳密に決められており、規則正しい生活を送ることになります。

休日の前日を除き、平日は敷地からの外出は認められておらず、休日・休前日に外出する際は事前に届け出る必要があります。

一般的な大学における部活やサークル活動に相当する「学友会」があり、心身の錬磨と学生同士の親睦を図ることを目的として全員加入が義務づけられています。

このように、防衛医科大学での生活は規律を重んじる厳しい面がある一方で、全国から集まった優秀な学生と共に学ぶ充実した学生生活を送ることができます。

医師・看護師として自衛隊に貢献するという共通の目標がありますので、防衛医科大学校で出会った仲間との結束は固く、卒業後も同窓生とは生涯の友人となるでしょう。

防衛医科大学校での訓練は厳しい?

防衛医科大学校では定期的に自衛官としての訓練が行われます。

ただし、防衛大学校が自衛隊と同等の訓練内容であるのに対して、防衛医科大学校の訓練はそれほど過酷なものではないと言われています。

イメージとしては、自衛隊の訓練がどのようなものであるかを経験しておく程度と考えていいでしょう。

ただし、一般的な医大生や看護学生と比べれば着実に体力づくりをすることが求められますので、一定以上の体力が必要とされるのは事実です。

野営訓練や遠泳訓練といった体力が必要な訓練もありますので、医学や医療に関する研究だけをしていればよいわけではありません。

防衛医科大学校の就職先・卒業後の進路

医学科の卒業生には、自衛隊中央病院において初任実務研修が行われます。

その後、2年間は部隊での勤務を通じて初級幹部自衛官としての教育が施されたのち、さらに2〜3年間の専門研修を行います。

研修を終えた後は、自衛隊医官として国内に留まらず世界の国々で活躍することとなります。

看護科自衛官コースの学生は、卒業後に自衛隊病院や部隊で勤務することになります。

自衛隊員の健康管理をはじめ、国内外の活動を通じて人道的な支援に貢献するなど、自衛隊看護官として活躍します。

看護科技官コースの学生は卒業後、保健師・看護師である技官として防衛医科大学病院で勤務します。

このように、防衛医科大学校を卒業後は自衛隊に関わる医療に従事することが前提となっているのが特徴です。

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