パン業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
パン業界とは
パン業界では大手製パンメーカーをはじめ、個人経営の街のパン屋さん、チェーン店舗での販売や併設のカフェをメインで運営する会社など全国各地にさまざまなメーカー・店舗が展開されています。
そして、スーパーやコンビニエンスストアで販売されているような比較的安価な総菜パンや、1斤単位での販売がメインの高級食パンなどその種類もさまざまです。
かつて「チーズ蒸しパン」や「ベルギーワッフル」が大ヒットしたように、流行の移り変わりも激しく、メーカー、中・小規模店舗ともに新商品の開発が常に行われている状況です。
2007年から2017年の11年間におけるパン業界の売上推移を見ると、それまで増加傾向にあった売上が2011年から2013年にかけてやや減少したものの、2013年からは再び増加傾向にあります。
こうした背景には若い世代での「コメ離れ」が進んでいること、共働き世帯の増加や高齢化により調理せずに食事がとれるパンが重宝されていることが関係していると考えらえています。
一方で、人口減少に伴う市場の縮小は避けられないともいわれており、今後は海外への積極的な事業展開が期待されます。
パン業界の役割
現在、パンの原材料である小麦は海外から輸入されたものを使用していることがほとんどです。
そのため、輸入小麦の政府売り渡し価格が引き上げられると小麦の価格も高騰し、最終的には商品価格の値上がりに繋がります。
また、農水省による検査により残留農薬の安全性は確認されているものの、消費者の食の安心・安全への関心が高まる昨今、国産小麦を使用したパンが根強い支持を得ていることも事実です。
そのため、今後は人口減少による市場の縮小が予想されるものの、種類が豊富で手軽に食事がとれるパンの需要はこれからも続くことが考えられるため、安定した価格を維持しながら、安心・安全な品質のパンを提供していくことがパン業界の重要な役割であるといえます。
さらに、少子高齢化社会を迎え、高齢世代のパン需要が高まっているため、噛みやすい・飲み込みやすいなど、高齢者向け商品の開発にも期待が高まります。
20代で正社員への就職・転職
パン業界の企業の種類とビジネスモデル
パンメーカー
「山崎製パン」や「敷島製パン」などスーパーやコンビニなどで販売されているいわゆる「市販のパン」を製造・流通・販売している企業で、大手においてはパンの製造や販売だけではなく、原材料の研究開発なども行っています。
国内におけるパンの売上のほとんどはこれらパンメーカーによるもので、工場で大量生産を行うことで安価かつ品質の安定したパンの提供を可能にしています。
その中でも「山崎製パン」は市場の半数を超える圧倒的シェアを誇っています。
チェーン型ベーカリー
「リトルマーメイド」や「アンデルセン」など、店舗でパンを製造・販売しているベーカリーで、焼き立てで本格的なパンを手頃な価格で購入できるのが特徴です。
デパートや大型ショッピングセンター、駅前など全国の様々な場所に出店されており、イートインスペースやカフェが併設されている店舗も多く見られます。
また、近年では「乃が美」に代表されるような高級食パンの専門店も全国に展開されています。
個人店型ベーカリー
個人経営によるいわゆる街のパン屋さんです。
東京・浅草にある「パンのペリカン」など熱狂的なファンが存在する店舗もあり、古くから続くお店や天然酵母にこだわるお店、週数日だけ開店するお店など店舗によってその特徴や価格帯もさまざまです。
最近では「マイクロベーカリー」や「コンパクトベーカリー」と呼ばれる店舗面積10坪前後のごく小さな店舗も増えつつあり、サラリーマンや主婦など他業種から転職して開店するケースも多く見られます。
パン業界の職種
以下ではパン業界の中でも代表的な職種をご紹介します。
なお、個人店型のベーカリーの場合は全てが手作業であったり、原料の調達からパンの製造、販売までを1人もしくは数人のみで行うこともあります。
原料調達
パンを作るための原材料を国内・国外の各地から買い付ける仕事です。
パンの原材料の大部分を占める小麦は、海外から輸入したものを使用することが多く、価格も変動するため、日頃から為替相場などの経済情勢や気候の変動をチェックしておく必要があります。
また、生産地や品種など原材料についての勉強はもちろんのこと、価格交渉なども行うため、コミュニケーション能力も求められます。
研究開発
新商品の開発や、商品に適した材料について研究する仕事です。
新商品の開発では市場調査、試作、ネーミングやパッケージの検討など関わる仕事も多岐にわたり、あらゆる部署と連携をとることが必要となります。
また、研究部門では商品の試作はもちろんのこと、新しい素材の開発を行うこともあります。
生産
パン生地づくりから整形、焼成、包装までを行う、パン業界でメインとなる業務です。
パンに使用される酵母は気温や気候の影響を受けやすいため、機械のデータをチェックしながら調整を行う必要があります。
また、工場で作られるパンには手作業が必要となる部分も多く、それらの作業を行うだけでなく、その作業を管理したり、衛生状態のチェック、生産ラインのトラブル対応など、生産と一口に言ってもその内容はさまざまです。
営業
スーパーなどの量販店、ホテルや外食チェーンなどの店舗に対して、新製品の紹介や店舗で販売する商品の提案などを行います。
また、実際に現場に出向いて売上アップを目指した売り場作りや試食販売を行ったり、現場のニーズを活かした新商品の企画を提案することもあります。
商談を成功させるためのコミュニケーション能力、さまざな場所へ赴き業務を行う体力、消費者や販売店の声に応える企画力や提案力も必要となる仕事です。
パン業界のやりがい・魅力
多くの人に喜びを与えられる仕事
パンは老若男女問わず多くの人から親しまれている食べ物です。
パンメーカーで働く場合は、スーパーやコンビニエンスストアなど、全国各地のあらゆる場所で自社の商品を目にすることができます。
そのため、自分が携わった商品が購入されているのを見た時、SNSで話題になっている様子を目にした時、担当店舗の売上が伸びた時など、さまざまな場面で自社の商品が選ばれる喜びを得ることができます。
また、チェーン型ベーカリーや個人型ベーカリーの場合は、自分が作ったパンを美味しいと言ってもらえること、常連のお客様ができること、迷いながらパンを選んでくれること、焼き上がりの時間を楽しみにしてくれる様子など、お客様の喜ぶ様子をより直接的に感じることができるでしょう。
安定したニーズと無限の可能性
パンはご飯と並び日本人の食文化に根付いている食べ物です。
そのため、常に一定のニーズがあり、特にパンメーカーの場合は食品業界の中でもかなり安定しているといえます。
一方、パン市場はトレンドの移り変わりが激しく、その分、爆発的なヒットも起きやすいという特徴があります。
例えばパンメーカーの場合は、売上だけでなくヒット商品が会社の顔となることもありますし、個人型ベーカリーの場合は、街の小さなパン屋さんに全国からお客様が押し寄せることもあります。
つまり、アイデア次第で大きな夢を掴むことのできる、無限の可能性を持つ市場なのです。
パン業界の雰囲気
パンメーカーにおいては社内での交流イベントが実施されていたり、わからないことも先輩社員が丁寧に指導してくれるなど、比較的風通しがよく和やかな雰囲気であるといえるでしょう。
チェーン型ベーカリーや個人型ベーカリーでは、やはり「パンが大好き」という人が多く働いており、落ち着いた雰囲気の店内で常連の方と言葉を交わしたりと、明るい雰囲気であることが多いようです。
なお、パン業界の仕事、特に生産に関わる仕事においては、パンメーカー・ベーカリー問わず体力が必要となるため、体力に自身がある人が多いという特徴もあります。
パンメーカーの場合は、24時間工場を稼働させていることも少なくなく、二交代制など、深夜に勤務することもあるようです。
また、チェーン型ベーカリーや個人型ベーカリーでも製造の場合は早朝からの出勤が一般的です。
パン業界に就職するには
就職の状況
例年、パンメーカー、チェーン型ベーカリーを中心に新卒採用が行われています。
募集職種は製造、販売、営業、スーパーバイザー、管理部門など多岐にわたり、勤務地も全国各地に及びます。
対象は大学院卒・大卒・短大卒・専門学校卒・高等専門学校卒、さらに業界最大手の「山崎製パン」では高卒の新卒採用も行われており、間口は比較的広い印象です。
パンメーカーでは歴史のある企業も多いため、定年退職をする社員も少なくなく、そのため、新卒採用も当面の間は継続して行われると予想されます。
そして、個人型ベーカリーやチェーン型ベーカリーでは、慢性的にパン職人が不足している状態が続いており、当然ながら求人募集も多く見られます。
その理由としては、早朝からの勤務があること、体力が必要であることなどが考えられます。
就職に有利な学歴・大学学部
基本的には大学院卒・大卒・短大卒・専門学校卒・高等専門学校卒を対象としてることが多いですが、「山崎製パン」のように高卒を対象としている企業も珍しくありません。
なお、パンメーカーの場合、研究開発系の職種では理系の学部や学科、工場の機械を扱うエンジニアリング系の職種では機械系や工学系の学部や学科を対象としていることが多く、就職には有利であるといえます。
一方、生産職や営業職については全学部・全学科を対象としていることが多いようです。
また、個人型ベーカリーやチェーン型ベーカリーなどでパン職人として就職を目指す場合は、専門学校の場合は、調理学校や製菓学校の製パンコースや、多くの学校で製パンについての実習もある製菓コースが非常に有利でしょう。
就職の志望動機で多いものは
パンメーカー、チェーン型ベーカリー、個人型ベーカリーのいずれを目指す場合も、やはりパンが好きであることは共通事項のようです。
パンメーカーの場合はそれに加え、その会社の商品展開が好きだったり、多くの人々の生活に根ざしているものに携わりたい、人を笑顔にするものを作りたい、といった志望動機が多く見られます。
パンメーカーではそれぞれの会社に主力とする商品やこだわりがあるため、パンメーカーを志望する場合はそういった他社との違いを志望動機に盛り込むと良いでしょう。
また、チェーン型ベーカリや個人型ベーカリーなどでパン職人を目指す人の場合は、ものづくりが好きだから、パンが出来上がる工程が好きだから、といった志望動機が多いようです。
パン業界の転職状況
転職の状況
パンメーカー、チェーン型ベーカリー、個人型ベーカリーともに中途採用を行っている企業はありますが、企業ページで大々的に募集を行っていることは比較的少なく、求人サイトなどで募集をしていることの方が多い印象です。
ただ、同じ求人募集が常に出されているわけではないため、パン業界への転職を検討している人は、求人サイトなどをこまめにチェックすることをおすすめします。
また、企業によっては中途採用の選考基準に満たない場合でもパートタイマーなど時給制の有期雇用で入社し、必要な経験を積んだ後、試験に合格すれば正社員登用となるケースもあるようです。
転職の志望動機で多いものは
転職においても、パンが好きであること、食を通じて人を喜ばせることに魅力を感じたといった志望動機が多いようです。
また、パンメーカーを志望する人の場合は、パンは毎日消費されるものなので安定感があるから、前職も食品業界だったからなどといった理由も少なくありません。
さらに、チェーン型ベーカリーや個人型ベーカリーへにパン職人として転職を志望する人の場合は、ものづくりが好きだから、以前から通っていた店だったから、将来自分のお店を持ちたいからといった理由が多く見られます。
転職で募集が多い職種
中途採用の場合は、パンメーカー、チェーン型ベーカリー、個人型ベーカリーともに生産や販売での募集が主流となります。
研究開発系の職種については中途採用での募集はほぼないといえますが、パンメーカーの中には営業の募集を行っている企業もあるため、営業経験を積むなかで商品の企画を提案していくことは可能でしょう。
また、パンメーカーに製造スタッフとして就職する場合も、就職後に製造部門の管理職などを目指すことは十分可能です。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
パン業界に転職を希望する場合はやはり食品業界での勤務経験があるとやや有利といえますが、例えばパン職人になるための特別な資格というものはありません。
しかし、国家資格である「パン製造技能士」や「製菓衛生師」などの資格は、パンやお菓子の製造について一定の知識がや技能があることの証明になるため、転職には有利です。
また、パン職人として就職するのではなく、パンメーカーで生産に関わる場合にも、「食品衛生責任者」の資格があれば衛生面での知識があることをアピールできます。
パン業界の有名・人気企業紹介
山崎製パン
1948年設立。売上高1兆594億円(連結)、従業員数19,478人(2018年12月時点)。
国内トップのシェアを誇る日本最大のパンメーカーで、食パンをはじめ、菓子パン、総菜パン、ケーキ、お菓子類など幅広く展開しています。
「良品廉価・顧客本位」の精神の下作られる、親しみやすい美味しさ・価格の商品が特徴です。
敷島製パン
1920年設立。売上高1,565億1,300万円、従業員数4,104人(2018年8月時点)。
「Pasco(パスコ)」のブランド名で知られる国内第2位のシェアを誇るパンメーカーです。
独自の製法で作られた「超熟」シリーズは同社の顔ともいえるヒット商品となり、国産小麦を使用した製品づくりにも積極的に取り組んでいます。
マーメイドベーカリーパートナーズ
2003年設立。売上高627億円(連結・2016年度)、従業員数120人(2019年4月時点)。
冷凍パン生地を各店舗に供給し、焼き上げる「ベイクオフシステム」を導入し、フランチャイズ形態のベーカリーやなどを展開しています。
トップブランドである「リトルマーメイド」は全国283ヶ所に店舗を構えています(2019年4月時点)。
パン業界業界の現状と課題・今後の展望
競争環境
パン業界における売上のおよそ4分の3程度が大手パンメーカー、残り4分の1がチェーン型や個人店型のべーカリーであるリテールベーカリーによるものといわれています。
そして、国内大手パンメーカーの中でも山崎製パンが市場の半数を超える圧倒的なシェアを誇っており、敷島製パンやフジパングループなど、他メーカーの追随を許さない状況です。
国内においては今後も山崎製パンが業界のトップを走り続けることが予想されます。
しかし、海外市場においてはまだまだ展開の余地が十二分にあるため、今後は海外事業への展開が各メーカーの業績に大きな影響を与えることになりそうです。
最新の動向
現在、国内で製造されるパンの多くは海外から輸入した小麦が使われていますが、近年は日本でも栽培がしやすく、製パンに適した新品種の小麦も増えてきています。
オリジナリティで勝負するリテールベーカリーだけではなく、国内屈指のパンメーカー、敷島製パンでも新品種「ゆめちから」を中心に国産小麦を積極的に使用しており、価格の安定化や消費者の国内産に対する信頼度の高さからも、今後も製パンに適した新品種の開発は続くことが予想されます。
また、最近は「焼き立ての美味しさが味わえる」「日持ちする」「人件費の削減になる」といった理由から冷凍パンも売上を伸ばしており、冷凍技術や業態別の冷凍パンの開発なども進んでいるようです。
業界としての将来性
もはや米と並んで日本の主食ともいえるパン。
市場規模の縮小は懸念されるものの、パン業界自体がなくなることはまず考えにく、将来的にも安定した業界であるといえます。
近年、高級志向や低糖質のような健康志向など、消費者のパンに対するニーズは多様化し続けており、そういった世の中のニーズに応える商品を幅広く展開していくことで、市場規模の縮小に歯止めをかけ、市場拡大に繋げられる可能性もあるでしょう。
また、国産小麦の普及により商品価格の安定だけでなく、ジャパンブランドとして海外市場への展開も期待できそうです。
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