アパレル業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
アパレル業界とは
リーマンショックによる世界的な不況や東日本大震災など、世界経済に悪影響を及ぼす状況が続いたことを背景に、アパレル業界は厳しい状況が続いていましたが、近年は回復傾向にあります。
しかし、アパレル企業の業績を見てみるとマイナスとなっている企業が少なくありません。
これは、企業の中でも勝ち組と負け組がはっきりしている状況を意味しています。
価格が手ごろで、トレンドを反映したファッションアイテムを販売するユニクロやしまむらはファストファッション企業の代表格として、大きな売り上げ規模を誇っています。
その一方、数多くのブランドを展開する昔ながらのアパレル企業は苦戦を強いられています。
また、近年はスマホの普及に伴い、服をECサイトで購入することが増えたことにより、IT化に力を入れる企業も増えており、ビジネスモデルも変化しています。
今後も、なくなることはない業界のため、消費者のニーズをうまく反映することができれば、業界自体も大きな縮小などは起こりづらいのが現状です。
アパレル業界の役割
アパレル業界は、「衣食住」のうち「衣」に関わる業界なので、私たちの社会的な生活に欠かすことができません。
その意味では社会的になくてはならない役割を果たしていますが、電気やガスなどのライフラインと違って、不景気になると買い控えの影響を大きく受ける業界でもあります。
また、これまでは大量生産大量消費を前提とし、アパレルメーカー側が消費者の購買を誘導する業界構造でした。
しかし、近年は価値観やニーズの多様化に伴い、大量生産された商品を購入する消費者が減り、商品のライフサイクルがどんどん短くなっていることから、アパレルメーカーの影響力が低下しつつあります。
今後は、さまざまな人のライフスタイルに合ったアイテムを欲しいタイミングで購入できる供給体制の構築など、従来の商習慣を変えることで価値を見出すなど、業界自体が変革の時期に来ています。
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アパレル業界の企業の種類とビジネスモデル
アパレル業界の構造は、大きく川上、川中、川下の3つの段階に分けることが出来ます。
川上は、羊毛や綿、石油などの原料を紡績して、糸や生地に仕上げるまでの業種のことを言います。
川中は、主にアパレルメーカーが行う分野で、糸や生地の選定、商品デザインの企画、製品を仕上げるまでの工程を担います。
川下は、百貨店や衣服専門店、量販店等の、アパレル製品を消費者に販売する業種のことをいいます。
この章では、それぞれの業種の特徴と、代表的な企業をご紹介します。
川上の業界特徴と代表的な企業
製品の原料となる、糸や生地を提供する企業には、原糸メーカーや生地メーカーがあります。
原糸メーカーは、羊毛や綿、絹といった天然繊維を原料として、紡績して糸に加工する方法と、石油などを人工的に加工し、化学繊維を糸にする方法があり、代表的な企業は、東レ株式会社、帝人株式会社、株式会社クラレなどが挙げられます。
生地メーカーには、原糸メーカーが生地までに仕上げて卸す場合や生地卸商社や問屋が原料から生地を独自開発する場合があり、代表的な企業としては、帝人フロンティア株式会社や、蝶理株式会社があります。
川中の業界特徴と代表的な企業
川中を担うアパレルメーカーは、糸や生地の選定から商品を企画し、それらをパターンに落とし、裁断後縫製して製品まで仕上げています。
生地には、織り地と編み地があり、織り地は、「布帛(ふはく)」といわれ、Yシャツなどになります。
編み地は、ニットといわれ、セーターなどの製品になります。
アパレルメーカーの代表的な企業は、株式会社ワールド、オンワード株式会社などがあります。
川下の業界特徴と代表的な企業
製品化されたアパレルアイテムを販売する役割を担う企業が川下に該当します。
百貨店や衣服専門店、ショッピングセンターなど販売機能を持つ企業が主なものになります。
代表的な企業は、株式会社しまむらや株式会社三越伊勢丹HDなどがあります。
しかし、近年は、川下企業ですが、川上、川中も自社で行う、SPAといわれる業態の企業が台頭してきています。
自社で原料手配し、企画、生産、販売までを一手に担うことができる機能を持っています。
これの業態の代表的な企業は、ユニクロを展開するファーストリテイリングや、外資系のZARAなどがあります。
アパレル業界の職種
アパレル業界の業界構造の中でも川中の製品化に携わる業務と、川下の販売に関わる業務に特徴的な職種がいくつか存在します。
企画から製品の生産、販売までの代表的な職種をご紹介します。
商品開発
糸や生地からアパレルアイテムを企画し、生産に入る前までの工程を担当する仕事です。
アパレル業界における商品企画とは、デザイナーやパタンナーなどの専門知識を有している職種を指すことが多いです。
デザイナーは、洋服のデザインをする職種ですが、多くの場合は素材の選定や生産工場とのコスト交渉など、デザインだけではない幅広い業務を担当することがあります。
パタンナーは、デザイン決定後、それらを型に落とし込む仕事を担当します。
そのため、アパレルアイテムの製品化には、デザイナーとパタンナーが必須となります。
生産管理
生産管理は、製品を生産するための原料の確保や資材の調達、生産工場の確保など、アイテムを製品化するための環境を整えます。
また、アパレル製品は売れるタイミングで店に納品し、販売することが重要になります。
消費者が欲しいと思った時にないと、売れ残りの在庫となってしまうためです。
そのため、生産管理は生産状況をチェックし、スケジュール通り生産が進行しているかの管理を行います。
さらに、品質が安定的に保たれているか、工場の作業員は安全に作業ができているかなど、生産に関わる全般の状況を管理監督する立場にもあります。
バイヤー
バイヤーは商品の買い付けを行う職種です。
アイテムを販売する店が魅力的に見えて消費者が来店してくれるように、トレンドにあったアイテムや適正価格で売れる商品を選んで買い付けを行います。
よく聞かれるセレクトショップは、バイヤーが選び抜いた商品を取りそろえた店のことをいいます。
市場のニーズだけでなく、トレンドを先取りするセンスや柔軟性が必要となる職種です。
アパレル業界のやりがい・魅力
アパレル業界で働くことのやりがいは、自分が関わった商品が世の中に出て販売されるということです。
製品が販売されるまでには、さまざまなプロセスがありますが、その一部に関わり商品化されたものを見たときに、達成感を感じることができます。
また、雑誌やテレビで宣伝されていたり、街中で実際に商品を着用している人を見られるなど、仕事の結果が目で見て確認できるのは、業界に関わるうえでの最大の魅力でしょう。
加えて、アパレル業界を希望する人は元々ファッションに興味がある人が多いです。
自分の好きなファッションアイテムに囲まれて、仕事ができるのも大きな魅力の1つです。
いつかは自分でオリジナルのブランドを作り、多くの人に身に着けてもらいたいという夢を持ちながらアパレル業界で働く人もいます。
服装や髪型が自由である企業もありますので、自分の個性を大事にしながら働きたいという方には適した業界です。
アパレル業界の平均年収は500万円ほどといわれていて、これは、他の業界に比べて決して高い給与ではありません。
しかし、近年アパレル業界は労働力不足と言われており、雇用が増えている傾向になります。
また、一度確保した人材が離職してくのを防ぐために、働き方改革や待遇の見直しを検討している企業もあります。
今後も、このような状況は継続すると考えられており、業界全体で改善する方向に進んでいくと考えられています。
アパレル業界の雰囲気
アパレル業界には、長年経営を続ける企業が多くありますが、このような企業は堅実な雰囲気の会社が多い印象です。
長い歴史があるため、技術、ノウハウ、品質などの面では、日本のものづくりを体現するような企業もあります。
働く人の年齢も比較的高く、変化して企業成長を促進するというよりは、今まで築き上げてきた事業を堅実に守っていくことを事業の中心としています。
それに対し、近年台頭してきたファストファッションや外資系の衣料品店などは、比較的自由な社風の企業が多く、市場環境に合わせフレキシブルに対応することで、業績を伸ばしました。
これらに加えて、近年は、ネットショッピングが、衣料品の購買チャネルとして急成長してきたため、最新のデジタルテクノロジーを活用してくことが課題となっています。
製造、流通、販売といったプロセスに、デジタル技術を活用する企業やICT企業が参入したことで、業界の雰囲気もさらに変化していくことが考えられます。
アパレル業界に就職するには
就職の状況
アパレル業界は、人手不足といわれることが多い業界です。
これは、入職希望者はある程度いますが、途中で退職する人が多いためといわれています。
ファッションが好きで業界に携わりたいという思いから、アパレル企業に就職した人が、現実の雇用条件や体力面で厳しくなり、離職してしまうケースがあります。
そのため、新卒求人に関しては、毎年定期的に行っている企業が多いです。
また、一度アパレル業界に就職した人が短期間で離職しないよう新人教育を強化したり、待遇の改善、働き方改革を進めている業界でもあります。
就職に有利な学歴・大学学部
アパレル業界へ就職するために、必ず卒業しなければならない学部や学科はありません。
文系理系でいうと、文系学部を卒業している割合の方が多い印象がありますが、これは理系出身だと、学んだ知識を活かしやすい業界、例えば機械メーカーやなどに就職する傾向があり、必然的に少なくなるためです。
また、デザイナーやパタンナー志望である場合、高校の被服科やファッション系の専門学校で実技の授業により経験を積んだ方が、即戦力として評価される場合もあります。
また、可能であれば、希望する企業のインターンシップに参加し、実際の職場の雰囲気を把握しておくのもよいでしょう。
アパレル業界は、一見するとおしゃれなイメージが強いですが、業務としては体力が必要になる作業、取引先との交渉や管理業務など、一般的な企業とかわらない地道な業務も多いです。
就職の志望動機で多いものは
アパレル業界の志望動機として多いものは、
・以前からファッションに興味があり、好きなファッションに携わる仕事をしたい。
・人の生活になくてはならない「衣食住」のうちの「衣」に携わり、生活を豊かにするようなアパレル製品を提供したい。
・自分の企画した商品を形にして、お客様に使ってもらいたい。
・以前から好きなアパレルブランドがあり、そのブランドに仕事として関わっていきたい。
上記のような志望動機が多いようです。
服は誰もが着るものですので、普段の生活とも関係の深いアイテムです。
身近なアイテムであるからこそ、自分が普段、服に関して感じていることを商品化という形で表現していきたいと考える方が多いようです。
また、企画した商品が店で販売されるという点で、携わった仕事が目に見えて実感しやすいことから、自分のセンスやデザインを形にしたいと考え希望する方も少なくありません。
アパレル業界の転職状況
転職の状況
前述したように、アパレル業界は恒常的な人手不足といわれています。
そのため、中途採用に関しても、不定期ではありますが「ある」状態です。
多くは、欠員に対しての募集となりますが、その一方で新規市場に参入していくのを目的とした体制強化のための増員募集もあります。
また雇用形態も正社員や嘱託社員、業務委託やパートアルバイトなど、担当する役割により、さまざまな募集がされています。
転職の志望動機で多いものは
転職の希望として多いものは、
・他の企業が行っていない新しい製品の開発体制、ブランド展開戦略など、フレキシブルな事業展開に惹かれ、業務に携わりたいと思った。
・今まで自分が扱ったことのないアパレル製品を扱うことで、知識とスキルを増やしていきたい。
などとなり、今までの知識や経験があるからこそ、他社の魅力や優位性に惹かれて、転職を希望する人が多いようです。
また、自分のスキルアップのため、未経験分野を経験するために転職を希望する人もいるようでした。
転職で募集が多い職種
中途採用が多い職種に、営業があります。
アパレル業界の営業は、新規開拓やルート営業など事業によりさまざまですが、自社の商品を売り込む営業職は売上確保の源泉となるため、どの企業も人材確保に注力しています。
そのため、今までの経験と知識を活かすことができる即戦力の人材を求める企業が多いようです。
また、販売職も募集が比較的多い職種です。
出店する店が増えれば、その分だけ、店を管理する人材が必要となるためです。
店長として、店舗、商品、スタッフ管理など、店の運営に関わる業務を担当する職種の募集が多いようでした。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
どの業界でも未経験者よりも経験者採用に力を入れますが、アパレル業界も例外ではありません。
繊維の知識や服を作るための縫製やパターンの知識があれば、開発職や企画職では歓迎されます。
しかし職種により、未経験者であっても採用を積極的に行うこともあります。
例えば、販売職であれば、服の知識がそれほどなくても、お客さまに最適な服を提案するセンスやコミュニケーション能力があれば、多くの場合務まるからです。
アパレル業界の有名・人気企業紹介
株式会社ファーストリテイリング
株式会社ユニクロなどの衣料品会社を傘下に持つ、持ち株会社で、東証一部に上場しています。
世界のカジュアル衣料品企業の中で、売上第3位に位置しています。
ユニクロは、SPA業態(企画・素材開発・生産・物流・販売までを一貫して行う)として、高品質なカジュアルウエアを手頃な価格で提供し、20カ国に展開しています。
ユニクロの他、ジーユー、セオリー、コントワー・デ・コトニエ、等のブランドも展開しています。
株式会社しまむら
郊外を中心に、店舗展開を行う衣料品チェーンストアを展開する会社です。
国内では、ファーストリテイリングに次ぐ、業界第2位です。
バイヤーが、各アパレルメーカーが提案する衣料品を買入れする方法で、商品ラインナップを決めています。
低価格でバラエティーに富む商品を陳列することに注力し、しまむら商品の支持者も多く、「しまラー」と呼ばれる、しまむら商品を愛用する層がおり、一定の指示を得ています。
株式会社ワールド
東証一部に上場しているアパレルメーカーです。
アパレルメーカーは1社1ブランドの展開としているところも多いですが、ワールドは多ブランドを展開することで、カジュアルからフォーマルまでの広い客層をカバーするブランド戦略を展開しています。
アパレル業界の現状と課題・今後の展望
近年のアパレル業界は回復傾向にあるといわれていますが、企業が全体的に業績を回復させているというわけではありません。
アパレルの中でも業績が好調な企業と、不調な企業がはっきりと分かれている状況です。
主に、低価格でトレンド商品を取り入れ、カジュアル商品を中心に多品種を販売するファストファッション企業が大きく成長しています。
また、外資系企業で日本に参入しているブランドも、同じくファストファッション系のブランドであるZARAやH&M、フォーエバー21などが消費者のニーズに合った商品を手ごろな価格で展開し店舗数を拡大しました。
このような状況の中で、既存のアパレル企業も消費者ニーズに応えられる商品開発や販売手法を模索しています。
中でも、アパレル商品がECサイトで購入される機会が増えたことを受けて、店頭販売だけでなくネット販売にも注力しています。
センスの良い商品を開発販売するだけでなく、売り方に関しても欲しい時に欲しい服が手に入るという利便性を追求した販売方法が求められています。
また、フリマアプリでブランド品の古着を購入する人も増え、若者の高級志向がどんどん薄れています。
これは、昔のようにブランドの服であれば、値段が高くても買うという時代ではなくなってきていることを意味します。
そのため、日本市場だけをターゲットにするのではなく、日本品質を武器に、海外市場の開拓をいかに行うことができるかが、今後のアパレル業界の行く末を決める要素となります。
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