目の前の仕事に全力注入。素直に学び、何でも吸収する心を大切に
消防士柾木 雄太さん
1989年生まれ。新潟県出身。神奈川大学4年時に平成24年度東京消防庁職員採用試験(Ⅰ類)合格、東京消防庁入庁。丸の内消防署に配属され、平成25年10月1日より同消防署の予防課予防係に配属。階級は消防士。
消防官を志したきっかけを教えてください。
大学でラクロス部に所属しており、私が2年生の頃、消防官を目指している4年生の先輩の影響でこの仕事に興味を持つようになりました。
そのときは具体的な将来の目標がまだ見つかってなかったのですが、「人の役に立ちたい」という気持ちは強く持っていました。
そして、消防官について詳しく調べていくうちに、人を救うという明確な目的がある消防組織に魅力を感じ、消防官を目指すことを決意しました。
消防官採用試験に向けて、どのような対策をされましたか?
在学中の大学で、公務員を目指す学生を対象とした学内講座を受講しながら、図書館などを利用して自習に励みました。
消防官採用試験の筆記試験においては、一般常識はもちろん、生物や物理、歴史など出題範囲が幅広いため、まんべんなく勉強する必要がありました。
特に私の場合、数的処理やひらめきを必要とされる分野が苦手でしたので、そこを重点的に勉強しました。採用試験では体力検査も行われるのですが、そちらに関しては部活で身体を鍛えていましたので、さほど心配ありませんでした。
試験内容が気になる方は、早めにホームページなどで確認しておいた方がいいかもしれません。
参考:東京消防庁採用ホームページ
勉強と部活の両立は難しかったのではないでしょうか?
はい。平日は毎朝7時15分から昼12時近くまで部活の練習があり、土日は練習試合が入るため、勉強の時間を作るのは簡単ではありませんでした。
毎日、早起きして練習前の1時間は必ず勉強すると決めて取り組みました。
練習後はとても疲れているため、少し寝てから勉強することが多かったです。大変だと感じることもありましたが、消防官になりたいという思いは日増しに強くなっていたので頑張りました。
大学3年生からの1年間は、人生で最も勉強した時期だと思います。
採用試験合格後の消防学校での生活について教えてください。
消防学校では寮に入り、消防組織の仕事の基礎的な部分を全般的に学びます。毎朝6時のチャイムで起床すると、グラウンドに出て点呼をとります。
訓練の日と座学を受ける日があり、訓練の日は資器材(装備)の準備、座学の日は教科書など必要なものを揃え、朝食後の8時半に始業となります。昼食を挟んで午後は13時に始業し、終業は17時15分です。
その後は夕食や入浴時間となりますが、私が入校した期は同期が600人以上おり、食事等の時間はクラスごとにきっちりと分けられていました。
「時間を守って行動する」ということが、消防学校で最初に厳しく教えられたことの一つです。
それ以外には、消防官の心構えとしてどのようなことを学びましたか?
「挨拶」に関しては、厳しく指導を受けました。たとえば、朝はすれ違う人全員に対し、大きな声で一言ずつはっきりと「おはようございます」ということ。
基本的なことのようですが、消防学校に入るまではルーズになってしまっている部分もありましたので、最初は難しく感じました。
また、機敏に行動することや、身だしなみを整えることも指導されます。「執務服」という、いわゆる制服には毎日必ずアイロンをかけてシワをなくさなければなりません。
消防学校での6ヵ月間を通じて、日ごろから整理整頓に気を遣うようになりましたし、私生活での意識も大きく変わりました。
消防学校で6ヵ月間学んだ後は、どのような流れになっているのですか?
学校を卒業する前に約6ヵ月間消防署へ配属され、実務を経験します。私は丸の内消防署の「予防課」という部署に配属となりました。そこからの4ヵ月間は「毎日勤務」といって、月~金曜日の8時半から17時15分まで働く勤務サイクルで働きました。
予防課内は「防火管理係」「査察係」「予防係」「危険物係」の4つに分かれており、建物の安全性確保や立入検査、火災調査、また防火・防災管理指導等の役割を担っています。
私は1ヵ月ごとに各係を回らせていただき、予防課の基本的な業務を学びました。
4ヵ月間を終えた後はポンプ車に乗り、現場に出動する仕事を2ヵ月間ほど経験しました。予防課の時とは勤務サイクルも異なり、24時間を3つの部に分けて交替しながら働く「交替制勤務」となりました。
ポンプ車に乗って、現場に出た時のエピソードを教えて下さい。
消防学校では消火訓練や救急訓練を行っていましたが、やはり最初は不安がありました。今でも覚えているのは、初めて心肺停止状態の方を目の前にした時です。
上司の小隊長や中隊長は冷静に指示を出してくださるのですが、私は意識がなくなっている方に対して、思うように動くことができませんでした。日ごろの訓練や準備の大切さをあらためて痛感しました。
日々の訓練では、どのようなことをしているのでしょう?
さまざまな訓練がありますが、たとえば火災による出動を想定した訓練の一つとして、防火服を素早く着る訓練があります。防火服を早く着ることができれば、それだけ早く出動できますから。
また、はしごを使った訓練も行っていました。はしごを伸ばして2階に侵入し、倒れている人を下に降ろすという反復訓練です。さまざまな想定の下、どのようにすれば最も確実に救助できるのかといったことを考えながら行っていました。
現在、柾木さんはどのような仕事をされているのですか?
2013年10月より、ポンプ隊から再び予防課の予防係という部署に配属となりました。
予防係では、建物の防火上の安全性や消防用設備等が正しく設置されているかを厳しく確認します。火災を未然に防ぐのが、私たちの役割です。
朝はまず係内の会議に参加し、その日予定している建物の検査や外部から相談に来られる予定など、全体でスケジュール確認を行います。日中は検査に出かけたり、書類審査などの事務処理を行います。
仕事のやりがいを教えてください。
消防官といえば火災現場での消火活動をイメージする方が多いと思いますが、予防課の仕事は「火災を起こさない」ために必要な存在です。
私たちがきちんと建物の設備をチェックできれば、その建物を使う方々が安心して過ごせます。以前、「予防課の仕事も人の命を助けることには変わらない」ということを上司に教わったのですが、日々の業務を通じて実感しています。
特に丸の内は大規模な建物が多数存在する場所です。ここだからこそ学べる予防の知識も多いですので、スキルアップを目指す上でとても恵まれた環境だと思います。
それでは、仕事で大変だと思うのはどんなことですか?
予防課では建築や法律の知識を必要とされるのですが、私は学生時代に建築や法律について専門的に学んだことがなかったため、ゼロから覚えなければならないことばかりです。
仕事を終え、寮に帰ってからも勉強しています。プライベートの時間を使って勉強しなければなりませんが、今はとにかく頑張る時期だと考えています。
予防課はとても忙しい部署ですから、できるだけ自分で知識を身につけて、どうしてもわからないことは上司に教わりながら進めるように心がけています。
のちに現場に戻った時にも必ず役に立つ知識なので、ここでしか学べないことをしっかり吸収していきたいです。
残業もあるのでしょうか?
はい。ちょうど今、管轄内で新しい建物の竣工検査が行われており、始業から終業までずっと外に出る日が多くなっています。署に戻ってから当日届けられた書類の整理や確認を行うため、寮に帰るのは20時や21時になる日もあります。
ただ、仕事を頑張るためには息抜きをすることも大切だと考えています。今でもスポーツが大好きなので、社会人のラクロスチームに入って週に一度は体を動かしています。
大学生の時と現在とで、消防官の仕事に対するイメージは変わりましたか?
大学生の時は現場に出て火を消すイメージを強く抱いていました。
ですが、実際に働いてみると、訓練や管内調査など災害に対応するために必要な準備、活動報告書の作成、建物の火災予防対策のチェックや関係者への指導など、ただ現場に出るだけではなく、思っていた以上に幅広い仕事があることに驚きました。
消防学校で一緒に過ごした同期とはどのような関係ですか?
同期はとても大切な仲間で、いまでも連絡を取り合っています。特に、同じ部屋で過ごした8人は、右も左もわからない状態で一緒に困難を乗り越えていったので、強い絆が生まれました。
同期の性格は、普段は明るいけれどやる時はやる、という真面目な人が多かったです。
私がいたクラスは22歳から29歳までの人が一緒に学んでいたのですが、幅広い世代の人と寝食を共にしながらチームで目標に向かって頑張れるというのも、この仕事ならではの魅力だと思います。
消防官には、どんな人が向いていると思いますか?
「何に対しても本気で取り組める人」だと思います。消防官の仕事は、決して現場に出るだけではありません。最初は何もわからないところからのスタートですし、素直に何でも吸収しようという気持ちが大切です。
私自身、プライドを持つのは一人前になってからだと思っています。
体力面を心配する方もいるかもしれませんが、たとえ運動部に入っていなくても、消防学校に入校し、訓練や体力錬成を重ねるうちに体つきは変わっていくものです。
ちなみに、私がいたクラスは60人中女性が5人いました。女性も訓練の内容は男性と変わらないのですが、みんな頑張って訓練についてきていたので、本当に尊敬しています。
今後の目標を教えてください。
まずは、現在の仕事で一人前になりたいです。将来また消火活動や救助活動を行うとしても、建物の構造や設備の知識を持っていることが、仕事に活かせると思います。どんなことでも前向きに、幅広く学ぼうという気持ちを持っています。
いずれは隊長になりたいとも思っています。隊としてより良い活動をするための方針を考えることや、部下の指導ができる立場になりたいです。
また、救急隊にも興味を持っています。救急の深い知識があれば、たとえ業務時間以外でも、より冷静に、確実に人を助けられる可能性が高まると思いますから。
消防官を目指している人、興味を持っている人に向けてメッセージをお願いします。
消防官は、大きなやりがいを味わえる仕事です。私自身、日々の業務の中で入庁できて本当に良かったと実感しています。
消防組織内では実にさまざまな仕事があるので、法律や化学など、ある分野の専門知識を持っている人が活躍できる場もあります。
採用試験の勉強など苦しい時期もあるかもしれませんが、決して諦めずに頑張ってください。
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