自己満足ではなく、患者さんが本当に満足するものをつくりたい
歯科技工士上林 知佳さん
1991年生まれ、埼玉県出身。埼玉歯科技工士専門学校にて歯科技工士免許を取得後、同学校の専攻科に進学。卒業後、株式会社テクニカルセンターに入社。月刊「歯科技工」にレポートを寄稿するなど社外でも活躍。
座右の銘:歳月不待
仕事内容を教えて下さい。
歯科技工所である株式会社テクニカルセンターにて、歯科技工士として働いています。歯科技工士とは、歯科医院から依頼を受け、義歯や入れ歯、詰め物などを作成する仕事です。
具体的な作業としては、歯型の模型の準備、パソコン(CAD、CAM)での設計から削りだし、形成や研磨、製作物の最終調整や納品など、ひと通りのことをしています。
今年の4月に入社したばかりなのですが、手を挙げれば挑戦させてくれる会社ですので、歯科技工に関わる幅広い仕事を担当させていただいています。
1日の仕事の流れはどのようなものでしょうか?
会社に出勤するのは8:30。宅配便でその日に作業するものが届くので、仕分け作業をし、その後、模型の作成をします。
午後はCAD、CAMでの設計をし、15時ごろから金属研磨などを行います。それから先輩に教えてもらいながら作業修正などをして、1日の作業が終わります。
退社するのは定時の17:30ごろが多いです。
歯科技工士は勤務時間が長いというイメージがありますが、定時で帰れるのでしょうか?
もちろん作業が残っているときは残業することもありますが、基本は定時です。
作業量が少ないというわけではなく、会社のみんなが定時で終わらせるという意識をもって、集中して仕事に取り組んでいる結果だと思います。
大きな声では言いにくいですが、私自身も「定時退社」を仕事のモットーにしています(笑)
時間をかければ良い物ができるというわけでもないので、限られた時間内でしっかりと仕事をして、早く帰るのがカッコいいと思っています。
休日はどのように過ごしていますか?
月に6休プラス祝日がお休みなのですが、カメラが好きなので、一眼レフを持ち歩いて景色を撮影したりしています。先輩たちとどこかに出かけることもありますね。
セミナーに出席して勉強することもあります。
歯科技工士になったきっかけを教えて下さい。
私は食べることが大好きなんです。特に甘いモノが好きなのですが、奥歯が虫歯になってしまって、食べたいものが食べられなくなってしまったときがあったんです。
そのとき、かかりつけの歯科医院で歯科技工士さんの立ち会いのもと、詰め物を作成していただきまして。それで完全に回復して、また何でも食べられるようになりました。
食べることが好きな人は、栄養士や調理師を目指すことが一般的ですが、どんなにおいしいものを作っても、食べられなければ意味がないと思ったんです。
それで、食べたいものを食べることができない人を助けることができる歯科技工士になろうと考えました。
また、高校の担任の先生の前歯が差し歯だったのですが、本物とわからないぐらい見事な出来で、「歯科技工士の仕事ってすごい!」と感じたのも、歯科技工士の道への気持ちを後押ししました。
手先が器用だったというのもあるのでしょうか?
いえ、実は細かい作業が苦手で(笑)
でも逆に苦手という意識があったからこそ、学校でもめげずに続けられたというのもあるかもしれません。
手先に自信がある同級生の中には、「こんなはずじゃなかった」と悩む人もいたりしたので。
なかなかうまくいかないときも、専門学校の先生からの「作業は訓練。やればやっただけうまくいく」との言葉を信じてがんばりました。
技術を磨くためには「地道に続けること」と「技術がある人の作業を観察すること」が大事だと考え、今も努力を続けています。
歯科技工士の資格取得後に専攻科に進学されていますが、どのような理由だったのでしょうか?
学生会の会長もやらせていただき、学生生活は充実していたのですが、成績がイマイチだったんです。
「自分が納得できないものを提供したくない」「自信を持って仕事をしたい」と思い、基礎力を上げるために進学をしました。
歯科技工士になるまでに苦労したことはありますか?
苦労とは違うかもしれませんが、在校中に歯科技工士の仕事や待遇についてネットで調べたときに、あまり良いことが書いてなくて少し悩みました。
ですが、知り合いの先生や実際に働く歯科技工士さんの話を聞くと、とてもやりがいがある仕事と言ってくれて。それからは不平不満がある人がネットに書き込んでいるのかもしれないと思って、気持ちが楽になりました。
自分の道を決めるときは、ネットだけでなく、実際に働く人の声を聞くのが大事だと思います。
実際に働いてみてギャップはありましたか?
在校時は自分の手で一から全てできる技工士になりたかったのですが、会社は分業制だったので、イメージと若干違いました。でも、任された仕事を責任を持って行うということは一緒です。
分業制は数をこなすことができるので、より多くの人の役に立てているという感じがしています。
仕事のやりがいや苦労を教えて下さい。
やはり手がけたものが納品できたときは、達成感を感じます。模型作りが素早くできたり、先輩にほめられたときも嬉しいですね。
仕事で苦と思うことはあまりありません。
なかなか思ったとおりに作れなくて悔しい思いをすることはありますが、そんなときは先輩にアドバイスをもらえるので乗り越えられます。
先輩たちとは技術も経験も差があるので早く追いつきたいですね。日々、がんばらなければと思っています。
歯科技工士としての目標はありますか?
歯科技工士は技工所にこもって仕事をすることがほとんどですが、模型の向こう側には患者さんがいることを常に忘れないようにしたいと思っています。
加工をしたり、納品すること自体が目的ではありません。自己満足にならずに、患者さんが本当に満足するものをつくりたいですね。
歯科技工士を目指す人にメッセージをお願いします。
手を動かすのが楽しい、何かをつくることが好きという人にはピッタリの仕事です。
また、取得した資格は一生もので、一度仕事を離れても復帰できるので、女性の方にもおすすめです。技術があれば男性と対等以上に働くこともできますよ。
患者さんと直接接することは少ないのですが、歯科医院の方から「患者さんがよかったと言ってたよ!」と連絡をもらえたときは、本当にやりがいを感じます。
自分のつくったものが人の役に立ち、感謝される仕事です。ぜひ歯科技工士への道を考えてみてください。
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