介護業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
介護業界とは
内閣府の「平成30年版 高齢社会白書」によると、65歳以上人口は3,515万人となり、総人口に占める割合も27.7%となりました。
さらに高齢化は進行し続け、平成77(2065年)年には38.4%に達するといわれています。
つまり、国民の約2.6人に1人が65歳以上の高齢者となると予測されているのです。
これに伴い、介護業界の重要性は日に日に増しており、市場が拡大し続けていく状況にあります。
高齢化社会の進行が著しい日本では、今後いかに高齢者を介護しケアしていくかという問題は、早急に解決しなくてはならない問題の1つです。
なぜなら、「少子高齢化が進行する」、「年々労働人口が減少していく一方で介護を必要とする高齢者が増加していく」、「働く世代の経済的・身体的な負担が増加していく」ということが予想されるからです。
介護業務が身体的、精神的に過酷であることや仕事内容に見合う十分な報酬を貰えないなどの業界の現状が、度々ニュースに取り上げられるため、若い世代に敬遠され人手不足になりがちな業界でもあります。
介護業界の役割
前述した通り、高齢者の増加により、今後も需要が確実に拡大してく業界です。
また、介護は家族だけが行うには負担が大きくなる場合が多く、専門の介護スタッフの需要は年々高まっています。
介護を家族で分担したことにより仕事を長期で休まなければいけなくなり、社会生活に影響が出たり、「介護疲れ」で精神的に追い詰められてしまうという現象も起きています。
そのような中、専門的な知識や経験を有した介護スタッフが高齢者の介護をすることで、高齢者自身だけでなく、その家族の負担を減らすことができます。
ですから、介護は社会的にも非常に意味のある業界です。
さらには介護する過程で手が不自由だった人が、手を動かせるようになったり、寝たきりの人が起き上がれるようになったりなど、高齢者の自立を支援できるという面においても、社会的に重要な役割を担っています。
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介護業界の企業の種類とビジネスモデル
介護が必要な高齢者に対して、さまざまな形の支援やサービスを提供するのが介護業界ですが、介護業界のビジネスモデルは大きく分けると2つあります。
ひとつ目は、介護サービスを自宅に住みながら利用できる「居住サービス」です。
ふたつ目は、介護老人福祉施設などに入所して介護を受ける「施設サービス」です。
この章では、この2つのビジネスモデルについて解説します。
居住サービス
居住サービスには、ホームヘルパーといわれる介護のサポートをする人が支援を必要としている高齢者の自宅を訪問して、食事や入浴の支援を行う「訪問介護」があります。
また、介護を必要としている高齢者が介護施設に通い、食事や入浴のサービスを受けることができる「通所介護」があります。
これらの施設はデイサービスといわれることもあり、多くの高齢者が通っています。
そして、食事や入浴のサポートを提供するだけでなく、みんなでレクレーションを行い、高齢者が積極的に施設に行こうと思えるイベントを実施するなどの工夫をしている施設もあります。
近年、居住サービス事業は異業種からの参入が目立っており、大手スーパーのイオンやNTTグループのテルウェル東日本株式会社がデイサービス事業や訪問介護サービスを提供しています。
施設サービス
介護施設サービスには、「介護老人福祉施設」、「介護老人保健施設」、「介護療養型医療施設」という3種類の施設があります。
これらの施設は、被介護者の病状や障害のレベルにより、入所できる施設に制限があります。
重度の障害があり、24時間、食事、排せつ、入浴等の介護が必要となる人が入所するのが介護老人福祉施設です。
また、自宅と施設の中間施設として、病院で治療を終えた高齢者が自宅での自立生活を目指す介護老人保健施設、長期療養が必要な高齢者が医療ケアを継続的に受けるのが、介護療養型医療施設となります。
これらの多くは、社会福祉法人や医療法人が運営しています。
これらの施設とは別に、元気なうちにケアサービスの整った集合住宅に入居する場合があり、これらは有料老人ホームや高齢者住宅と呼ばれています。
これらを運営する企業としては、レオパレス21、ニチイケアパレス、ベネッセスタイルケアなど、異業種の参入が目立ちます。
介護業界の職種
介護業界の職種としては、ホームヘルパー、介護福祉士、ケアマネージャー、理学療法士などがあり、多くの職種は、現場の介護業務に従事しています。
ホームヘルパー
ホームヘルパーは、自宅で介護を受ける高齢者を訪問して日常生活の援助を行う職種です。
あらかじめ必要な介護に関してはケアマネージャー等と相談し、提供サービスの内容を決定、そして、決められた時間に訪問して介護を行います。
外出の機会が減る高齢者にとっては、定期的に訪問してくるホームヘルパーが心の支えになっているという人も多くいるなど、在宅介護のプロフェッショナルとして重要な役割を担う職種です。
介護福祉士
介護福祉士は、ホームヘルパーよりもさらに専門性の高い介護業務に従事し、国家資格を取得しないとなれない職種です。
身体的、精神的に障害があり、介護が必要な高齢者に対して、スムーズな日常生活が送れるように食事、入力、排せつ、歩行などの日常活動の介護を行います。
また、介護者の相談に乗り、精神的な支えともなる役割も担いますし、介護を受ける高齢者の家族やホームヘルパーに、専門知識や技術を指導することもあり、現場のリーダー的な存在となります。
ケアマネージャー
ケアマネージャーは、介護サービス提供に関する計画書を作成したり、関係者と連携し円滑にサービス提供をする管理者です。
介護を受ける高齢者に最適なサービスを受けてもらうために、要介護認定に変化があったときには介護プランを変更し、それを担当者に実施してもらうように指示監督を行います。
ケアマネージャーとして働くためには資格の取得が必要で、介護職での5年以上の実務経験など受験資格が定められており、介護福祉士がステップアップするための目標となる職種でもあります。
理学療法士
理学療法士は医師の指示を基に高齢者のリハビリを行う職種で、国家資格です。
身体が不自由になった高齢者が、通常の日常生活ができるように訓練や適度な運動のアドバイスを行い、日常生活に戻るまでの支援を行います。
身体の自由がきかない高齢者に対して根気強くリハビリを行いますので、高齢者を応援し辛抱強く仕事に取り組む姿勢が重要な職種です。
介護業界のやりがい・魅力
介護業界は、精神的、肉体的に負荷がかかる業務が多いと言われることが多いですが、自分の介護により高齢者を笑顔にできる、やりがいのある仕事です。
要介護者の身の回りの世話をすることで、その人の人生に深く寄り添うことができるという点においても、素晴らしい仕事でもあるのです。
実際に介護職に就いている人たちの体験談や経験を聞くと、この業界でしか味わうことのできない感動や、やりがいがあるという人は数多くいます。
また、人生の先輩である高齢者の話を聞くことにより、自分の人生の参考となる考えに触れることができるなど、高齢者に関わることで学べることが多い業界でもあります。
国税庁の「平均給与実態統計調査(平成28年度版)」によると、医療・福祉分野の平均給与額は389万円でした。
この年の、日本の平均年収が422万円であることから、給与水準が低い傾向にある業界であることが分かります。
この給与水準の低さも、入職希望者が少なく業界界全体が常に人手不足といわれる1つの原因となっています。
しかし、待遇改善を行う企業は年々増加しており、平均給与も業界全体で年々上がっています。
現在のところ、給与面では他の業界より劣ってしまう状況ではありますが、直接人の人生に深く関わることができる職業というのはあまり多くなく、貴重な経験ができる業界です。
また、介護業界のビジネスは、まだ未成熟の部分があり、今後の社会的なニーズに合わせて様々なサービスを創出し、提供できる業界ともいえます。
新しい発想で、力を発揮できる可能性が充分に残っている業界であり、需要も年々高まることから、将来性のある業界といえます。
介護業界の雰囲気
介護業界は、まだ新しい業界です。
2000年に制定された介護保険制度によって民間企業が参入し、介護サービスの提供が開始されました。
それまでは、福祉事業として利益の追求はしないという考えが一般的でしたが、民間企業が参入したことにより、事業の拡大、利益の追求、業務効率化、サービス業という概念が定着しました。
そのため、昔と今では雰囲気が異なる業界です。
民間企業は、ビジネスとして利益を追求し高齢者が満足するサービスを積極的に提供しています。
さらには、利用者の満足度を高めることを目的として事業を展開していますし、異業種からの参入も多いため、革新的なサービスを生み出そうとする意欲や、雰囲気がある企業が多くあります。
また、実際の職場では、介護を通して人の人生に関わる業務に携わりますので、人の役に立ちたいという思いや誠実で真面目な人が多い印象がある業界でもあります。
介護業界に就職するには
就職の状況
前述した通り、介護業界は恒常的な人手不足の状態となっており、新卒者の求人は多い状況です。
各企業は、人手不足を解消するために若い世代の労働者の確保に積極的であり、人材獲得競争が激しい状況です。
職場環境や待遇の改善に力を入れ、従業員が働きやすい環境を整える取り組みも行っています。
また、多くの業界や職種で「大卒以上」という条件を付けているのに対し、介護業界では、高卒で入職する人も多くいます。
また、雇用形態も正社員だけでなく、嘱託社員や、パート、アルバイトなど、さまざまな契約で働いています。
就職に有利な学歴・大学学部
就職に有利な学部、学科としては、介護福祉系です。
福祉系の大学では、介護福祉に関する概論を学べるのはもちろんのこと、福祉施設での実習の機会が多く組まれている場合があります。
座学だけでは学べない、実際の職場の現状を理解することや介護業務を現場で体験するためです。
また、介護知識だけでなく経営学の授業がある場合もあり、経営の視点から、充実したサービスを提供しつつ、利益を確保するにはどうしたらよいのかなど介護業界を研究できる大学もあります。
そして、福祉科がある高校もありますし、介護系の専門学校も多数あり、そういった学校では基礎知識を学びつつ実習を行うことができます。
さらには、国家資格である介護福祉士の資格取得カリキュラムがある学校もあります。
就職の志望動機で多いものは
介護業界への志望動機として多いものは、
・家族が要介護となったのをきっかけに、その時にサポートをしてくれた介護福祉士の人の仕事ぶりに感銘を受け、自分も介護業界に携わりたいと思った。
・医療機関でのボランティアをきっかけに、介護の重要性を実感し、自分も介護業界に貢献したいと思った。
・人とのコミュニケーションが好きで、人の人生に深く関わることができる介護業界で、その能力を活かしたいと思った。
等があります。
自分の身近なところで介護に関わる経験をしたことで、その魅力に気づき希望する人が多いようです。
また、介護を必要とする高齢者やその家族との普段からの会話が重要となる仕事ですので、コミュニケーション能力を活かしたいと考え、志望する人もいるようです。
介護業界の転職状況
転職の状況
前述の通り、介護業界は人手不足の状態が続いているため中途採用の求人も多い状況で、未経験者の募集も積極的に行われています。
そのため、経験に関してのアピール材料が少なくても、意欲を伝えることで採用される可能性が高い状況です。
企業の規模や仕組みによって多少の違いはありますが、一般的に中途採用は、新卒者の募集のような定期採用というよりは、欠員や増員に対して募集を行っています。
介護業者が増加していますので、中途採用数も年々増加しています。
転職の志望動機で多いものは
転職の志望動機として多いのは、
・介護業界の経験者が、他社の介護に対する姿勢、企業理念に惹かれ、よりよいサービスを提供するために、転職する。
・自分の身内に要介護者がいて、家族の介護に携わった経験から、介護業界の重要性に気づき、携わりたいと思い異業種から転職する。
等がありました。
業界経験者は、自分の介護に対する思いと近い企業理念の他社に転職を希望する場合があります。
また未経験者は、身近な介護経験がきっかけで、介護業界に転職を希望する人が多いようです。
転職で募集が多い職種
どの職種も、中途採用の募集が多い状況ではありますが、特に、ホームヘルパー、介護福祉士の募集は多い状況です。
これらは、現場で実際に介護業務を行う職種ですが、高齢者人口の増加に伴い、サポートを行うホームヘルパーや介護福祉士の人数も充分に確保してく必要があり、積極的に募集を行っている状況です。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
介護福祉士や、ケアマネージャーの資格を持っていると転職はしやすい状況にあります。
実務経験と介護の知識を十分に持っているという証明となるため、即戦力として企業が採用したい人材であるためです。
しかし、人手不足を背景に未経験者の採用を積極的に行っている企業も多く、資格取得支援を行っている企業もあります。
未経験から入職した従業員が経験を積み、資格を取得することで、任せられる業務範囲を増やすことができるため、企業としてもメリットがあるからです。
未経験者の採用面接時は、介護業界で活かすことができる自分の強みをアピールするとよいでしょう。
介護業界の有名・人気企業紹介
株式会社ニチイ学館
東京都千代田区に本社がある、総合的な介護サービスを提供する東証一部上場企業です。
介護業界では、売上1位を誇り、居住系の介護サービス、有料老人ホーム、訪問介護サービスなど、幅広く事業を展開しています。
全国的に事業所を展開しており、利用者数も国内最大規模となっています。
高品質な介護サービスを提供することに定評があり、利用者が増加し、業績も順調に伸びています。
株式会社ツクイ
神奈川県横浜市に本社を置き、通所介護事業を主軸とした事業展開をしている企業で東証一部に上場しています。
在宅介護、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、幅広く事業を展開して、横浜県を中心に、全国に事業所を展開しています。
加えて、調剤薬局事業も展開しており、介護と親和性の高い、医療分野にも進出しています。
新しいことにチャレンジすることを推奨する社風があり、新規の事業を立ち上げることにも積極的です。
株式会社ベネッセホールディングス
岡山県岡山市に本社を置く、語学事業、教育事業を主軸として、介護事業も展開する東証一部上場企業です。
グループ会社の事業も含めると、有料老人ホームや高齢者住宅の運営、訪問介護、通所介護を展開したり、介護職の人材派遣業も展開しています。
特に、高齢者住宅では、さまざまなコンセプトの入居施設を展開し、高齢者が楽しく生活できるスペースの提供につとめています。
相手に寄り添うサービスを提供し、コミュニケーションを大切にした業務を重視する社風があります。
介護業界の現状と課題・今後の展望
介護業界の課題は、急速な高齢化を背景に、慢性的に人手不足であるという点です。
この原因として大きいのが、肉体的にも精神的にも負担のかかる介護業務が多いのに対して報酬が低い傾向にあるということです。
そのため理想と現実のギャップを感じ、離職してしまう人が多いという現状があります。
新卒や中途採用で人材を確保しても、このような問題に直面して数年で業界から離れてしまうのです。
ですから、社会問題となる高齢化社会を支える存在である介護職の待遇改善は、国をあげて解決していくべき問題となっています。
また、介護業界は、長い間「利益の追求」という概念が薄い業界といわれてきましたが、大手小売店や、外食産業がこの業界に参入したことをきっかけに、介護をビジネスとして捉える側面が強くなりました。
介護を受ける高齢者を、いかに満足させることができるサービスを提供できるかという観点から、各社の得意分野を応用し、さまざまなサービスの提供が始まっています。
今後も、民間企業を中心に、各種介護事業が展開されることで、サービスの質もさらに向上していくでしょう。
また、不足している人材を補うために、外国人技能実習制度を活用して、外国人を雇い入れて介護人材を確保する動きも盛んになってきています。
加えて、今まで人が行っていた体力を必要とする作業を、ロボットに代替させようという開発も進んでいます。
例えば、介護士が体に装着することで、重いものを持つなどの動作をアシストするスーツなどが研究されています。
今後も、人材不足は続くと予想されますが、業界をあげての労働環境の改善やICT技術の活用など、労働環境が年々改善されていくと予想されます。
参考:介護労働安定センター 介護事
業所における人材確保に関する実態調査・研究
参考:厚生労働省 平成28年度 介護従事者処遇状況等調査結果の概要
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