化学業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説





化学業界とは

働きやすい企業が多く、平均年収も比較的高い水準にあるため、化学業界は就職・転職に人気があります。

実際、化学業界における上場企業の平均年収は650万円ほどであり、会社員全体の平均を上回っています。

平均年収ランキングの上位ともなると、1,000万円の壁を超えている企業もあるのです。

平均勤続年数も20年前後という企業が多数あり、比較的待遇がよく、働きやすい環境も整えられているとみてよいでしょう。

また、化学業界のビジネスモデルは、取引相手の企業数には困りませんし、最終的に作られている商品を消費する人がつきることはないので、安定した需要もあります。

好条件がそろっている分人気があり、優秀な人が集まるので、就職への難易度が高い企業も多いです。

また、化学業界の将来性は安定していると考えられていますが、国内で十分な利益を出せない企業も出始めており、統廃合や海外進出が始まっていることも覚えておきましょう。

化学業界の役割

化学業界は、基本的に各業界のメーカーに素材を提供することで、最終的な消費者が使う商品を作ることに貢献しています。

具体的には、石油や天然ガスといった原材料を仕入れ、樹脂やゴム、合成繊維などを生産するのが役割です。

化学メーカーがないと、洗剤や化粧品、医薬品に電子機器など、極めて多くの商品を作ることができなくなってしまいます。

実際、化学メーカーと一口にまとめられてはいますが、ジャンルは電子材料や樹脂、ガスにインクなど、かなり多岐にわたり、陰ながら日本の産業を支えています。

また、世の中に新しい製品を送り出して、より豊かな社会を実現するためには、新素材の研究開発が欠かせません。

研究開発職が新素材を作り、営業職などが広めることで、世の中がより便利で豊かになるきっかけを作っている業界といえます。

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化学業界の企業の種類とビジネスモデル

化学業界は、製造している商品のジャンルによって、下記のように種類分けできます。

・総合化学メーカー
・誘導品メーカー
・電磁材料メーカー
・その他樹脂やインクなど

特に上位3つが化学メーカーの中心的な存在ですので、それぞれ説明してきます。

総合化学メーカー

ある製品の材料から製造までを一貫して自社でおこなっているのが、総合化学メーカーです。

化学業界は基本的に完成製品の材料を作り、各種メーカーに販売するのが主流ですが、総合化学メーカーでは、最終的な製品まで作っているわけです。

おのずと大手に分類される企業が多くなっています。

総合化学メーカーの代表的な企業は、以下のとおりです。

・株式会社三菱ケミカルホールディングス 
・住友化学株式会社
・旭化成株式会社

誘導品メーカー

基本的な化学素材から、化学反応を起こすことで各種化学製品をつくり、各メーカーに提供するのが、誘導品メーカーです。

たとえば、石けんのメーカーに対して、原料となる水酸化ナトリウムをそもそもの原料である塩化ナトリウムから製造し、販売しています。

総合メーカーとの違いは、最終的な製品を作るところまではやらないことです。

代表的な誘導品メーカーは、以下のとおりです。

・信越化学工業株式会社
・三菱ガス化学株式会社
・株式会社ダイセル

電子材料メーカー

電子材料メーカーは、基本的な原料や誘導品から、いろいろな電子材料を作っている化学メーカーです。

電子材料メーカーで作られる代表的なものは、液晶パネルの電子部品、ハードディスクの基盤などです。

現在の生活を支えている機器類を作れるようにしている重要な企業といえるでしょう。

代表的な電子材料メーカーは、以下のとおりです。

・富士フイルムホールディングス株式会社
・日東電工株式会社
・日立化成株式会社

化学業界の職種

化学業界は、基本的に製品を製造して販売することで利益を上げています。

したがって、職種としては、

生産技術
品質管理
・研究開発
・営業

上記が代表的ですので、それぞれ説明していきましょう。

生産技術

生産技術職は、販売する製品をより効率的に製造することを考える仕事を担当しています。

単純に大量生産して、大量に販売できたとしても、1つ1つの製品が薄利では、化学メーカーとしてやっていけません。

生産技術職の仕事は、利益に直結するものであり、原材料のコストは常に変更してしますので、大事な役割を担います。

研究開発

研究開発職は、新しい商品を作るために、さまざまな実験や分析をしている職種です。

新製品を世に送り出せないと、基本的にいつかは化学メーカーとしてやっていけなくなりますので、企業内でも重要な職種といえます。

各メーカーで優秀な人の採用意欲が高い職種であり、就活生からの人気も高いので、就職へのハードルは高いでしょう。

品質管理

品質管理職は、製造した商品の品質チェックを担当しています。

トラブルなどで品質に問題のある製品ができる可能性は常にあるのが現実です。

納品先に低品質の商品を納めてしまうと、企業の信用低下はもちろん、最終的に作られる商品で問題が起きると、社会的な責任を問われてしまいます。

したがって、企業のセーフティーネットとして、品質管理は重要な役割を果たしているのです。

営業

研究開発職が、どんなに優れた商品を開発しても、認知されなければ存在しないのと変わりません。

そこで化学業界でも営業職が活躍しているのです。

新商品ができた際に、各メーカーに営業するのはもちろん、既存製品の販路を拡大も担当しています。

世の中の需要は常に変化していますから、業界内で商品の訴求や説明をする営業職の役割は、大きなものなのです。

化学業界のやりがい・魅力

やりがい

化学業界で製造販売している製品は、最終的に多くの製品に使われていますから、社会に貢献していると実感しすいでしょう。

実際に自分が関わっている製品が、世の中で多く、しかも多種類販売されているのを見られるのは、化学業界特有のものです。

また、化学メーカーは比較的職種が細分化されており、1つの企業のなかで、各分野の専門家たちと仕事をすることになります。

知識やスキルの相乗効果を感じながらの仕事ができるのも、化学業界のやりがいです。

待遇

化学業界は、給与が高い企業が多く、平均勤続年数も長い企業が多いので、待遇の良さには期待できます。

実際、平均年収ランキングの上位である、三菱ケミカルやウルトラファブリックスなどは、年収1,000万円の壁を超えています。

働き方改革に積極的な企業も多く、平均勤続年数も20年前後という企業も少なくありません。

安心して働いていける業界といえるでしょう。

将来性への期待

国内外の需要が安定してあり、市場規模もとても大きいため、業界自体がなくなることは考えづらいでしょう。

ただし、原料の高騰によって利益が出づらくなり、国内で十分な利益が出せなくなった事業をかかえている企業も多数あり、統廃合が進んでいる側面もあります。

また、国内市場は人口減少の影響で徐々に縮小していくと考えるのが自然ですから、海外に進出をすすめていくのが今後の流れになると考えられています。

化学業界の雰囲気

化学業界は、市場規模の大きさから待遇がよく、勤続年数も長いため、どちらかとういうと穏やかな雰囲気のある業界です。

また、国内の優秀な人材が研究開発職などに集まっていることから、知的でプロフェッショナルな仕事に誇りを持っている人も多くいます。

職種も役割ごとに細分化されていますから、各職種と連携して、高度で最先端な仕事を楽しめる機会も多いことでしょう。

比較的安定した業界のなかで、じっくりと仕事に向き合って、より良い社会を作っていくための役割を果たせます。

一方で、社会のニーズは変わっていくものですし、原料の産出や価格も日々変化するものです。

ルーチンワークばかりではなく、変化に対応していくことも求められる業界だと覚えておいてください。

化学業界に就職するには

就職の状況

化学業界の市場規模は大きいものですが、企業数は多くあり、大手企業も多数あるため、おのずと化学業界全体の採用人数も多くなります。

実際、業界最大手の企業の1つである三菱ケミカルの2020年度採用予定人数は、101~200名です。

しかし、化学業界は就活生から人気の高い業界でもあります。

特に、採用が理系の学部に限られ、優秀な就活生が多数応募する研究職や開発職などは、狭き門だと考えてください。

もっとも、売上高1,000億円を超える企業が、50社以上あるのが化学業界の現状です。

あなた自身の強みと企業が求めるものに接点を見つけられれば、就職への道がひらけることでしょう。

就職に有利な学歴・大学学部

化学業界で求められるのは、ほとんどが大卒以上の学歴です。

もちろん、研究職や開発職といった高度な専門性が求められる職種においては、大学院卒が好まれる傾向もあります。

化学業界の中でも特定のジャンルの企業に就職し、研究開発に携わりたいというのであれば、研究室の選択から就職活動が始まっているといっても過言ではないでしょう。

事実、公に広く募集される採用枠の他に、各大学や研究室用に推薦枠があります。

学生時代からの努力が就職につながるともいえますので、化学業界で働きたいという意思があるなら、早め早めの行動を心がけるといいでしょう。

一方で、営業職や事務職で働きたいというのであれば、学部や学歴の幅はグッと広がります。

就職の志望動機で多いものは

化学業界への志望動機は、理系と文系でアプローチが変わってきます。

まず、研究職に代表される技術職なら、専門分野に興味を持ったきっかけから、企業で何を成し遂げたいかなどをアピールするのが一般的です。

もちろん、企業独自の強みやミッションと自分自身の専門性や想いを結びつけないと、他の就活生との差別化が図れません。

つちかってきた専門性を企業でどう活かせるかをアピールしましょう。

次に、文系で営業職などを志望するなら、世の中を陰ながら支え、より便利にしていくという化学業界のミッションに貢献したいという志望動機が多いです。

これまでの生活で使ってきた製品とあなたのエピソードなどを絡めて、志望する企業で何ができ、何をしていきたいかを志望動機に盛りこみましょう。

化学業界の転職状況

転職の状況

離職率の低い化学業界ですが、常に技術革新を図っている業界であり、海外進出が必要になってきていることも手伝って、中途採用の募集もあります。

ただし、新卒採用時と同様、転職市場でも化学業界の人気は高いです。

他業界からの転職を目指す場合はもちろん、同じ化学業界からの転職を目指す場合でも、多数の優秀な人との競争になる可能性が高いことを覚悟しておきましょう。

転職の志望動機で多いものは

転職市場で多い志望動機としては、やはり転職を目指している企業の製品を広めたかったり、開発に携わりたかったりというものが多いです。

もちろん、企業のミッションを叶えることで、社会に貢献したいという化学業界の根本的な役割にも触れておきたいところです。

業界全体で海外進出をしたい意欲が増してきているので、外国語のスキルや実務経験があるなら、忘れずに盛りこんでおきましょう。

転職で募集が多い職種

化学業界の中途採用で多い職種は、営業職や設備管理職などが多い傾向にあります。

少ないながらも幹部候補やマネージャー職の募集もありますが、基本的には化学業界の経験や高いビジネススキルなどが求められますので、狭き門です。

もっとも、化学業界の専門分野は多岐にわたりますので、自身の専門分野や経験と接点がもてそうなら、挑戦してみる価値は十分あるでしょう。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

業界内での経験は合ったほうが有利ですが、BtoB営業の経験やさまざまな専門職の人達を巻きこんで仕事をしていた経験があれば、転職に有利になると考えられます。

ただし、研究開発職は、前職で経験がないと難しいです。

また、英語のスキルは少なからず歓迎される可能性が高いので、海外進出の情報がホームページなどに乗っていなくてもアピールしておくべきでしょう。

化学業界の有名・人気企業紹介

株式会社三菱ケミカルホールディングス 

化学業界で国内最大手の企業の1つであり、グローバルでも有数の売上高を誇る総合メーカーです。

素材や医薬品、産業のガスといった幅広い分野に参入しており、多くのメーカーを陰ながら支え、利益を上げています。

株式会社三菱ケミカルホールディングス ホームページ

信越化学工業株式会社

塩化ビニルやシリコン、などに強みを持つ誘導品メーカー大手です。

BtoBのビジネスモデルなので、一般的な知名度はさほどないかもしれませんが、多数の安定した事業をもつ優れた企業です。

また、海外展開もうまい企業として知られており、原材料が豊富な山を保有するなど、経営の手腕が光る企業でもあります。

信越化学工業株式会社 ホームページ

富士フイルムホールディングス株式会社

デジタルカメラやオフィス用のプリンター、ヘルスケアに医療機器など、多数の事業を持つ電子材料メーカーの大手企業です。

一般的な知名度ではデジタルカメラが有名ですが、実は売上の8割を別の事業で上げておおり、さまざまなメーカーを支えている企業です。

富士フイルムホールディングス株式会社 ホームページ

化学業界の現状と課題・今後の展望

競争環境

国内で他社との競合ももちろんありますが、減少していく人口を懸念して、海外での競争に勝つ必要性が徐々に出てきています。

また、時代の変化とともに、求められる材料にも変化がありますので、新たな市場に他社よりも早く対応する流れが加速しています。

もちろん、化学業界の企業が新製品を完成させ、一気に売上を伸ばすこともありますので、研究開発の競争も熾烈な状況が続くと考えられています。

最新の動向

原料の高騰による利益の出しづらさが業界全体の問題として出てきています。

既存の事業だけでは、十分な利益が出せない流れが加速し、新たしく利益を保てる商品をつくったり、別の地域に参入したりする必要性が出てきているのです。

外国語ができたり、販路を拡大したりできる人材が活躍することでしょう。

業界としての将来性

化学業界の市場規模は国内で有数のものであり、物が消費される以上、化学業界の需要もあるといえるので、ある程度の安定が見込める業界です。

一方で、2017年以降の成長は微増に留まっており、国内の成長には限界が見え始めている業界でもあります。

材料を作るプラントを停止したり、再編をおこなったりも大手を中心に始まっています。

海外への進出の流れが今後は加速するので、外国語に強い人はチャンスといえます。

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