航空保安大学校とは





航空保安大学校とは

航空保安大学校は国土交通省が設置する省庁大学校で、大阪府泉佐野市にあります。

学生の身分は国家公務員採用試験に合格し採用された国家公務員です。

航空保安官の教育訓練を行うことを目的としており、学生だけでなく現役の航空保安職員の研修施設としても利用されています。

学生は原則として全員が学生寮に入寮します。

修業年数は2年間となっており、卒業後は航空保安職員として配属されますが、一般的な大学・専門学校における学位や称号は授与されません。

ただし、人事院規定の俸給規定においては、卒業生は「短大2卒」として扱うことになっています。

一般的には、航空保安大学校の卒業生は短大卒に相当すると考えていいでしょう。

航空保安大学校の学部・学科

航空保安学校には航空情報科・航空電子科のほか、航空管制科(航空管制官基礎研修課程)があります。

航空情報科

2年間の研修を通じて、航空管制運航情報官として必要とされる知識・技能を習得します。

また、航空英語能力証明のための英語を身につけ、実務の基礎を築きます。

航空電子科

2年間の研修を通じて、航空管制技術官として必要とされる電子工学などの知識・技能を習得します。

実務で必要となる航空管制システムの理論や、実技を通じた航空関係業務の知識を身につけます。

航空管制科

航空管制科の本科は2009年に廃止され、現在は航空管制官採用試験の合格者に対して基礎研修課程を実施する課程となっています。

8ヶ月間の研修を通じて、航空管制官になるための基礎的な知識・技能を学びます。

また、無線で指示を出す航空無線通信士としての資格を取得します。

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航空保安大学校の受験・入試科目

航空保安大学校の入試(採用試験)には第一次試験と第二次試験があります。

第一次試験は筆記試験で、基礎能力試験と学科試験があります。

第二次試験では人物試験・身体検査・身体測定が行われます。

一次試験 <基礎能力試験>
公務員として必要な基礎的な能力(知能及び知識)についての筆記試験
・知能分野(文章理解、課題処理、数的処理、資料解釈)
・知識分野(自然科学、人文科学、社会科学)
<学科試験>
・航空情報科
1. 数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学A、数学B(数列、ベクトルの分野に限る。)
2. 英語Ⅰ、英語Ⅱ
・航空電子科
1. 数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学A、数学B(数列、ベクトルの分野に限る。)
2. 物理基礎、物理
二次試験 <人物試験>
人柄、対人的能力などについての個別面接(参考として性格検査を実施)
<身体検査>
主として胸部疾患(胸部エックス線撮影を含む。)、血圧、尿その他一般内科系検査
<身体測定>
・航空情報科
色覚、聴力についての測定
・航空電子科
色覚についての測定

上記の通り、航空情報科は英語が学科試験の必須科目となっているのに対して、航空電子科では物理が必須科目となっている点が異なります。

また、航空情報科・航空電子科ともに色覚に異常がないことが合格基準となっていることに加えて、航空情報科では聴力で失聴がないことも合格基準に含まれます。

航空保安大学校の偏差値・難易度・倍率

航空保安大学校の偏差値の目安としては、航空情報科が64、航空電子科が57となっています。

これは中堅〜やや難関の大学程度の難易度に相当します。

修学年数が2年間であり、卒業後は一般的に短大卒程度となることを踏まえると、難易度としては難しい部類に入ると考えていいでしょう。

参考:マナビジョン

とくに航空情報科の学科試験では英語が必須とされており、航空管制運航情報官として求められる英語力の基礎があるかどうかが問われます。

倍率は2019年度がやや低い結果となりましたが、例年の傾向では航空情報科がおよそ9倍〜10倍前後、航空電子科がおよそ3〜4倍前後となっています。

募集人数は航空情報科が約20名、航空電子科が約30名と狭き門ですが、とくに航空情報科は人気が高く、高倍率となることを覚悟しておく必要があります。

航空保安大学校の学費は? 給料は出る?

航空保安大学校の学生は国家公務員ですので、入学金や授業料といった学費を納入する必要はありません。

また、2020年4月1日時点で月額159,000円程度と、行政職に準じた給与が支給されます。

ボーナスとして期末手当・勤勉手当があり、年間で俸給等の約4.50月分の額を受け取ることができます。

そのほか、扶養親族がある場合は子ども1人につき月額10,000円が支給されます。

このように、学費が必要なく給料を受け取りながら研修を受けられる仕組みになっていますが、こうした待遇は航空保安職員として重要な職務にあたる責任の大きさを物語っていると言えます。

航空保安大学校の志望理由・面接

航空保安大学校の志望動機

航空保安職員は、飛行計画書(フライトプラン)の内容審査や航空機運航の監視を行う、きわめて責任の重い職務です。

航空機に搭乗するすべての人の命を預かる仕事ですので、単に「飛行機が好き」「飛行機に関わる仕事に憧れている」といった理由だけでは志望動機として十分とは言えません。

人命を預かる職務を全うしたいという強い意思や決意が感じられる志望動機になっている必要があります。

職務に対する熱意に加え、航空管制運航情報官や航空管制技術官としての職務内容について基本的な知識を持っていることも重要です。

職務内容をそもそも誤解していると、たとえ採用されても希望する仕事内容とのギャップを感じる可能性があるからです。

志望動機を考える際には、航空保安職員としての職務内容をよく調べておくようにしましょう。

航空保安大学校の志望動機の例文

「私は航空機の安全な運行を守る航空管制運航情報官になりたく、貴校の航空情報科を志望いたします。

私は父親の海外赴任が長かったこともあり、幼少期から旅客機に乗る機会が多いほうでした。

空を飛ぶ乗り物であるにも関わらず、事故の発生率は自動車よりもはるかに低く、安全な乗り物と聞かされ、幼心にも驚いたことを今でも覚えています。

しかしながら、私が生まれる前に起きた日航123便墜落事故についてドキュメンタリー番組を通じて知ったときは、非常に大きなショックを受けました。

幼少の頃から親しんできた航空機が、ひとたび事故を起こせばあのような大惨事につながることを改めて思い知らされました。

今後は社会がグローバル化し、国と国を行き来する人もますます増えていくと考えられます。

これからの旅客機の安全を守る職務に就きたいという強い思いを抱くようになり、航空保安職員を志すことにいたしました。」

航空保安大学校の面接で聞かれること

航空保安大学校の面接試験前に、面接カードと呼ばれる書式が受験生に送付されます。

面接はこの面接カードの項目に沿って行われます。

面接カードには、受験動機、印象に残っている体験、日ごろ興味を持っていること、趣味・特技、好きな学科、自己PRなどの項目があります。

航空保安職員になりたいと思うようになったきっかけや、どのように活躍していきたいかを具体的に伝えられるようにしておきましょう。

そのためには、航空保安職員の職務内容について、基本を理解しておくことも大切です。

実務経験がないことは面接官も理解していますので、詳細に答える必要はありませんが、少なくとも職務内容について大きな誤解がないよう、事前に準備しておきましょう。

航空保安大学校のオープンキャンパス

航空保安大学校のオープンキャンパスは、例年3月に開催されています。

ふだんは目にする機会のない航空管制官の業務や校内の施設を間近で見ることができる貴重な場となっています。

オープンキャンパスでは、飛行場管制、ターミナルレーダー管制、航空路レーダー管制といった各施設の実習室を見学できます。

また、事前申し込み制となりますが、実習体験をすることも可能です。

そのほか、着陸システムシミュレーター着陸体験や、航法システム・通信システム・監視システムなどの説明付きの見学、公開講座や公開授業を体験することができます。

受験相談や現役研修生による受験体験なども用意されており、受験に向けた意識を高めることに役立ちます。

学生寮を見学することもできますので、学生生活の雰囲気を知りたい人はオープンキャンパスに参加することをおすすめします。

航空保安大学校の雰囲気・生活

航空保安大学校の男女比は男子が6割強、女子が4割弱と、やや男子学生が多いもののバランスが取れています。

勤務時間外にはクラブ活動を通じて他学科の学生とも交流がさかんに行われています。

勉学の面では、2年間で航空保安職員としての基礎を学ぶため、習得すべき知識・技能は多岐にわたります。

すべての授業で及第点を取らなければ退学処分となりますので、勉学に対しては皆が真剣な態度でのぞんでいます。

終業後や土日祝は基本的に自由時間となりますが、取得できていない免許がある場合は、この時間を勉強に充てて取得を目指す必要があります。

航空保安大学校の寮生活

航空保安大学校では全寮制を基本としています。

学生寮は1人1室のワンルームマンションのようなつくりになっており、風呂やトイレも自分専用のユニットバスを利用することができます。

朝7時の起床時刻や23時の消灯時刻など最低限のルールは定められていますが、放課後や休日には自由に外出することが認められています。

このように比較的自由度の高い寮生活を送ることができますが、身分としては国家公務員ですので、私用で研修を欠席することは認められていません。

また、アルバイト等の兼業は国家公務員法違反にあたるため禁止されています。

航空保安大学校の就職先・卒業後の進路

航空保安大学校の卒業(修了)生は、日本全国の航空官署に配属されます。

各地で所定の研修を受けたのち、航空管制官・航空管制情報官・航空管制通信官・航空管制技術館として任命されます。

その後は数年おきに異動があり、全国への転勤が基本となります。

航空機の運航は24時間体制のため、航空保安職員の職務も深夜を含む夜間勤務となる場合もあります。

勤務先は空港や航空交通管制部が大半を占めますが、中には国土交通省本省や各地の航空局、国際機関などへ派遣されて活躍する人もいます。

このように、航空保安大学校の卒業生は航空保安職員としての職務に当たることになります。

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