ホテルのカテゴリーの種類・タイプ別の働き方やメリットとデメリットを紹介
ホテリエ貞吉です。現在、40代後半でサラリーマンをしております。
2021年も残すところ1ヶ月。2022年を迎えたら就職活動を迎える大学3年生もいらっしゃるでしょう。
おそらくこちらの文章を読んでくださる方はホテル業界に興味がある、もしくはホテル業界への就職を決めたという方がほとんどのはずです。
しかし、ホテルのタイプによって働き方も変わってくるのはイメージできるでしょうか?
私は東京都内のシティホテル、全国展開するビジネスホテルチェーン、関東圏内のリゾートホテルなど様々なタイプのホテルで勤務をしておりました。
今回はホテル業界でのお仕事に興味がある方に向けて、ホテルのタイプの紹介とともに、タイプ別に想定される働き方についてまとめていきます。
ホテルにはどんなタイプがあるのか?
ホテルのタイプ別の働き方の前に、ホテルにはどんなタイプがあるのかについて触れていきます。
みなさんは「ホテルのタイプは何があるか?」と質問されたらどのように答えるでしょうか?
例えば、
「家族でお祝いの食事で〇〇というラグジュアリーホテルに出かけた」とか、
「関西に旅行に行ったけれど、予算が限られているので駅前にある〇〇というビジネスホテルに泊まった」など、
具体的なホテル名のみならずホテルのタイプも会話の前後につけていますね。
「ラグジュアリーホテル」も「ビジネスホテル」も表現は間違いではないですが、業界では分類の仕方が異なります。
さらに言うと、「ビジネスホテル」は和製英語で海外だと「エコノミーホテル」「バジェットホテル」と言います。
海外では価格別にカテゴリー分けをすると、
・ラグジュアリーホテル(リッツ・カールトン、パークハイアット、マンダリンオリエンタル等)
・アップスケールホテル(ヒルトン、シェラトン、マリオット等)
・ミッドプライスホテル(コートヤードバイマリオット等)
・エコノミーホテル(コンフォートイン等)
・バジェットホテル
と分かれます。
一方日本でのカテゴリー分けは、
・シティホテル(大都市に位置する高級多機能ホテル。例・帝国ホテル、ニューオータニ等)
・コミュニティホテル(地方都市に立地する中規模のシティホテル)
・ビジネスホテル(例・東横イン、アパホテル等)
・リゾートホテル(例・リゾート立地のプリンスホテル)
となります。
海外のラグジュアリーホテルやアップスケールホテルが日本のシティホテルやコミュニティホテルに相当し、海外のエコノミーホテルやバジェットホテルが日本のビジネスホテルに相当します。
今回は日本のカテゴリー分けをベースにして、シティホテルとコミュニティホテル、ビジネスホテル、リゾートホテルの3タイプそれぞれの働き方を紹介します。
ホテルのカテゴリーごとの働き方はどのようなものか?
シティホテル(コミュニティホテル)、ビジネスホテル、リゾートホテルと、同じホテル業界でも施設構成やホテル自体の営業状況(繁忙期や閑散期などの稼働状況)により働き方が変わってきます。
ここからはホテルのタイプごとにどのような働き方が考えられるかをまとめていきます。
シティホテル(コミュニティホテル)
シティホテルは宿泊、レストラン、ウェディングを含めた宴会、スパやフィットネスなど多機能なのが施設の上での特徴。
稼働は曜日や観光や年末年始など多少の影響はありますが、比較的上下幅が小さいです。
シティホテルで働くメリットの1つに「専門性を磨くことができる」ことが挙げられます。
というのは、宿泊部門だとハウスキーピング(客室清掃)、ベルマン、ドアマン、フロント、宿泊予約、コンシェルジュと役割に応じて組織が細分化されているからです。
「お客様の名前と顔を10,000人覚えている伝説のドアマン」や「国内外のVIPの接遇をしたコンシェルジュ」など一つの分野を極めることがしやすい環境にあるので、特定の分野でNo.1になりたいと思っている方や職人気質だと思う方にはピッタリです。
しかし、日本のホテルでは、入社した後で部門間を異動する(宿泊部門からレストラン部門へ社内異動をする)機会はまだ少ないのが現状です。
ホテル全体を知りたいという方は自分の担当の仕事をしながら、行きたい先の勉強をすることや場合によっては部署異動を相談することも必要になってきます。
ビジネスホテル
ビジネスホテルは宿泊特化型ホテルと呼ばれることもありますが、宿泊部門のみでレストランはホテル内に1つ、もしくはレストランがなくラウンジで朝食のみの提供や大手のコーヒーチェーンがテナントで入っているケースもあります。
ビジネスホテルはレストラン、宴会場がないため、入社するとすぐにフロントでの業務をすることが考えられます。
また、シティホテルと異なりお客様対応をフロントが一手に引き受けているので、入社して早い段階で宿泊部門全体の業務を理解することができるメリットがあります。
しかし一方で、セルフチェックイン機の導入等により人的なサービスを省いているのもビジネスホテルの最近のトレンド。
ビジネスホテルで働くとしたら、単に目の前の業務をこなすことだけではなくて、人にしかできないこと、さらにいうと自分にしかできない強みを磨き続けなければなりません。
リゾートホテル
リゾートホテルは、前述のシティホテルのように宿泊、レストラン、ウェディングを含めた宴会、スパやフィットネスなど多機能なのが施設の上での特徴。
スキーリゾートであれば冬、海辺のリゾートであれば夏休みなど特定の季節に稼働が集中するのも他のタイプのホテルと異なる部分です。
筆者がこれまで経験したホテルの中には、夏休み期間で1年の売上の8割を占めるケースもありました。
シティホテルでは宿泊、レストラン等それぞれの役割分担があるとお伝えしましたが、リゾートホテルはフロントなど各々メインの部署がありつつも、夏休みはフロントスタッフがレストランのお手伝いをするなど、自分の専門を持ちつつも他の領域を学ぶ機会があります。
また、ホテルの稼働が低い時期はお休みをとり自分のやりたいことに集中できます。
特に海が好き、山が好きなどアウトドア好きにはいい環境ですね。
しかし、施設の大きさに比して少数精鋭で運営されているケースもあり、一定期間残業が発生することもあります。
ホテルの仕事を通じて自分が何を実現したいのかを考えることが大切
今回はホテルのタイプごとに想定される働き方を書いてきましたが、1番考えてほしいのが「どんな働き方をしたいのか」ということ。
ここで言う働き方とは、自分の望む1日の過ごし方、1ヶ月の過ごし方、1年間の過ごし方です。
ホテルのタイプごとにメリット、デメリットがあり、どんなケースであれデメリットは避けられないからです。
そのため、自分はどこまでは許せて、どこまではできないのかが明確になると就職後に「こんなことにはならなかった」とミスマッチを防ぐこともできます。
せっかく頑張って入社した会社ですから、自分が納得できるように働いてほしいと言うのが筆者の望みです。
この記事をきっかけに、自分がホテルでどんな働き方をしたいのかを考えるきっかけになれば幸いです。
(参考文献)
『ホテル・ビジネス・ブック』(仲谷秀一+杉原淳子+森重喜三雄著 中央経済社)