小型機のプロパイロットの実態・世間とのギャップはある?
世間一般の人からプロパイロットとはこんなふうに見られがち。
しかし実際はちょっと違うんですねという例をいくつか挙げました。読者の方に理解を深めていただきたいです。
それで一般的な事実と、私の見解と、心理分析などを含めてみました。
パイロットという職業は本当に面白いです!
「飛行時間を稼ぐ」という考え方
飛行時間
プロパイロットになって行く過程でもなった後でも、当然ながら飛行時間という経験が蓄積されてゆきます。
このことを私達パイロットは「フライトタイムを稼ぐ」といいます。
文字通り飛行時間が手に入る、自分の物として蓄積される、手に入れたいものを手に入れるという意味の「稼ぐ」です。
飛行時間の規定
読者の方も聞いたことがあると思いますが、取得しようとする免許の種類に応じて必要最低限な飛行時間に規定があります。
それは国によって異なることではありません。
例えば、自家用免許を取得するには何十時間以上で、事業用免許を取得するには250時間以上、さらにエアライン免許だと1500時間以上などなど。実際はその時間数の内さらに細分化されて、計器飛行時間、双発機の飛行時間、夜間飛行などなども決められています。
両方を稼ぐ
次に目指す高度な免許を取得するには、どんなコースの過程を経てゆくにしろ飛行時間を稼がなければならないのです。
私の経験のような小型機のパイロット達の何割かは、お金と飛行時間の両方を稼ぐことを目的として働いています。
こういった飛行時間という価値はこの業界では一般パイロットの誰もが認めていることです。
重ねて強調しますが、プロパイロットは一時間飛ぶと、飛行時間1時間と一時間分の賃金を稼げるということです。
これは例え「私は高いレベルの免許取得を目指してないし飛行時間の記録もつけてないので稼ぐのはお金だけだよ!」と主張していても業界の通念では両方を稼いでいるとみなされます。
収入よりも飛行時間
世間一般では、一旦プロパイロットになると、ある程度の収入のある人と見なされるようですが、実際、駆け出しのプロパイロットが稼げる賃金はハッキリ言って低いです。
上を目指さなければ平均年収にも届かないと思います。
このレベルではお金よりも飛行時間を稼ぐことの方が、価値があるからです。
こういった業界と世間との認識ギャップは今も昔も変わりなくあるようです。
飛行時間を稼ぐ価値観はエアラインパイロットとして活躍していても必然的に付きまといます。
具体的に言うと、この路線を飛ぶには何日以内にこういう飛行機で何時間飛行していなければならない、という規定があるからです。
いいように使われているの?
話は変わりますが、社会学などで言われるところの「やりがいの搾取」という言葉があります。
搾取(さくしゅ)というのは、こっちの都合のいいように相手の何かを利用するという自分本位のやり方のことです。
例えば、経営者が従業員の情熱とかやりがいとかを利用して、低い賃金で働かせたり、劣悪な条件で働かせたりということなどです。
それで勘違いをして欲しくないのですが、低賃金で飛んでいるプロパイロットがこれに当てはまると思わないで欲しいのです。
状況にもよりますが、そうかどうかを決めるのはパイロット本人だと私は思うのです。
わかりやすく言うと「修行中の時給は低いよ」というのと似ていますね。
「なぜ?」と考えることが日常になる
その背景
プロパイロット達の思考傾向の一つに「なぜ?」があります。
本人達は気付いてない人もいるかと思いますが、自然にそういう思考になってゆきます。
頭がそうなるようなプロセスを経てきているのです。
訓練の過程で「なぜそうなるの?」「その理由は何?」と教官から聞かれ、答えを導き、また自らもそのような疑問を持つことによって成長してきたからです。
パイロットとしての内面が発達してきた背景が影響しています。
それは単なる個性
さらにその先は「なぜ?」の答えが見つからないとどうなるか、です。
納得のゆく解答を得るための行動をとったり、答えが得られないとモヤモヤが残ったりする性格に近づく可能性があるのです。
良い悪いではなく一つの個性としての一面です。
この個性は日常の生活に良くも悪くも影響するかもしれませんが、幸いなことに、自身や他人にネガティブな影響にならないように思考をコントロールする術も身についているはずだと私は考えています。
まっ、いいか!
そしてここからがポイントです。
プロパイロットになってゆくと、この例の他にもそれなりの性格が傾向として備わってゆきます。
もしというか、めでたく読者がパイロットになり、誰かに「なぜ?」の質問をしたとき、それに答えられない人や約束の時間を守らない人などをどう見るのでしょうか。
これらは一つの例ですが自分の価値観と開きのある人を、まっ、いいか!と受け止めるたりするのも人生を円滑に送ってゆくやり方だと思います。
プロパイロットに限ったことではありませんが大切だなと思いました。
ここまで読んでくれた読者はこれらのことについてどのような印象を抱かれたでしょうか。
「そうだったのか!」
「それはおもしろい!」
「それもそう、納得」
「本当かなー?」
いろいろだと思います。
これら記述したことが読者にとって大きなことか気にしないことかという印象も様々だと思いますので、少しの参考程度と捉えてください。
「パイロットとメンタル」というブログも書いてます
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