整形外科病院で関わる疾患 (理学療法士になるまでに勉強すべきPOINT) Vol.2
前回も紹介しましたが、整形外科病院で理学療法士が関わることの多い疾患(病気)は多岐に渡ります。
※腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、変形性関節症、五十肩、スポーツ外傷など…
今回は、前回同様に高齢化が進む現代社会で理学療法士になったら必ずと言っていいほど関わるであろう「骨折」について紹介していきます。
若いうちは転ぶことに関してあまり関心がないでしょうが、高齢者にとって「転倒」は大きな問題となります。
転倒すると打ち所が悪い場合、骨折を起こします。
骨折すると、場所によっては手術をしなければならなくなり、手術後に再び通常通りの生活を送るためにリハビリを行っていかなければなりません。
こういったケースが高齢化の進む現代では非常に多く、これから理学療法士を志す方々も理解しておかなければなりません。
今回はそういった観点から、「骨折」について簡単に説明していきます。
そして、学習の一つの指標にして頂ければと思います。
①高齢化が進む現代で多い「骨折」について
高齢者の多い骨折は4つあり、「高齢者に多い4大骨折」として表現されます。
●大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)
●脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)
●橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)
●上腕骨近位部骨折(じょうわんこつきんいぶこっせつ)
この4つになります。
簡単に紹介します。
大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)
股関節の付け根の骨折のことを言います。
付け根の骨折にはもう一つ代表的な骨折があり、「大腿骨転子部骨折」と言います。
大腿骨転子部骨折と大腿骨頸部骨折の大きな違いは骨折部位の違いはもちろんのこと、「骨癒合が得られるか否か」が大きな違いになります。
大腿骨頸部骨折は骨折により血流も阻害されるため、人工関節が選択されます。
逆に大腿骨転子部骨折は、骨癒合が得られやすいため、骨接合術といって骨折部を固定して骨がくっつくのを待つ形になります。
骨との骨がくっつくことを言います。
脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)
脊椎圧迫骨折は、上下方向からの力が加わって生じる背骨の骨折です。
骨折と言っても、イメージするような骨と骨がズレるようなものではなく、「圧迫骨折」の由来の通り、背骨が圧迫されて潰れてしまうものを言います。
高齢化に伴い、骨がもろくなり、尻もちをつくなどの軽い衝撃で背骨は潰れます。
また知らない間に徐々に体の重みを支えきれずに背骨が潰れてしまうことがあります。
圧迫骨折により、猫背になりやすく、高齢者に多い「円背姿勢」がこれに相当します。
円背とは、高齢者の背中や腰が大きく曲がり、固まってしまっている状態のことです。⼀般的には猫背(ねこぜ)とも⾔います。
橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)
転倒の際に、手をついて転んだり、自転車やバイクに乗っていて転んだりしたときに、手首の骨を骨折することを言います。
手首といっても肘から手首までの間の「前腕」と呼ばれる部位に存在する骨の骨折のことを指します。
この前腕には2本の骨が存在します。(橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の2つの骨で前腕を構成しています。
このうち、橈骨側が骨折することを橈骨遠位端骨折と呼びます。
※遠位端というのは、身体の中心部から末梢(遠く)に位置しているため、遠位端と呼ばれます
上腕骨近位部骨折(じょうわんこつきんいぶこっせつ)
橈骨遠位端骨折と同様に、転倒により手をついたり肩を強打した際に受傷します。
上腕骨近位部骨折は、上腕骨の近位部(身体の中心に近い方)の骨折であり、肩の付け根の部分になります。
②骨折に対するリハビリについて(簡単なイメージ)
大腿骨頸部骨折
【手術方法】
人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)(THA)・人工骨頭置換術(じんこうこっとうちかんじゅつ)(BHA)
※基本的に人工の関節に入れ替える手術が選択されます
【リハビリ】
手術後は筋力トレーニングや関節可動域訓練を行い、股関節がスムーズの動くよう訓練していきます。
また歩き方の指導や身体機能の回復に準じて生じる問題に対して対応していき、よりスムーズな回復を補助していきます。
脊椎圧迫骨折
【手術方法】
基本的には保存療法(手術はしない)
【リハビリ】
痛みが強い時期には無理のない範囲でリハビリを行っていきますが、基本的には早期離床を促していきます。
離床するにあたってコルセットの装着が必須になり、自分に合った形に採型してもらいコルセットが完成後、積極的な離床(ベッドから起きる時間を増やす)を進めていきます。
ベッド上や寝床で生活していた人が、徐々に床(ベッド)から離れて生活機能・範囲を拡大していくことをいいます。
橈骨遠位端骨折
【手術方法】
転位(骨折のズレ)が大きい場合は固定術(プレート固定など)を行います
【リハビリ】
手術による固定部に負荷がかかりすぎないよう、配慮しながら手首の関節可動域訓練を行っていきます。
動かす量や頻度などは手術した先生(Dr)の確認しながら決定していきます。
上腕骨近位部骨折
【手術方法】
転位(骨折のズレ)が大きい場合は固定術や人工肩関節が選択されます
【リハビリ】
手術後は三角巾などにより固定する期間が生じるため、痛みに合わせて愛護的に関節可動域訓練を行っていきます。
※関節可動域訓練に関しては段階を置いて、動かしていい角度が広がっていく形となります。基本的に先生(Dr)からの指示があるため、それに準じてリハビリを進めていくことになります。
③まとめ
今回は、整形外科病院で関わることの多い「骨折」に関する内容をご紹介していきました。
骨折については若いうちはそこまで気にすることでもありません。
しかし高齢になると本当に大きな問題となり、骨折が原因で寝たきりになることもしばしばあります。
そのため、骨折後のリハビリも重要な位置づけにあり、患者さんのスムーズな回復を促していくうえで非常に重要となります。
理学療法士や作業療法士を目指すうえで代表的な骨折に対する知識は早いうちから持っていても損はないものと思われます。
これを機に興味を持って少しでも理解しておくと、学校での授業や就職してからのイメージが湧きやすくなりますよ!
専門職向けに膝関節についてのブログを運営しています。
膝に関する内容を中心に記事を更新しており、整形外科分野で働きたいと思っている方は興味を持っていただければと思います。
https://knee-blog.com/