整形外科病院で関わる疾患(理学療法士になるまでに勉強すべきPOINT) Vol.1
整形外科病院で関わることの多い疾患(病気)は多岐に渡ります。
※腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、変形性関節症、五十肩、スポーツ外傷など…
その中でも今回は、高齢化が進む現代社会で理学療法士になったら必ずと言っていいほど関わるであろう「関節疾患」について紹介していきます。
①前置き
「関節疾患」というと、「ん? 何?」と思うかもしれませんが、皆さんも日常で多く見かけているはずです。
分かりやすい例でいうとO脚の人、X脚の人のイメージになります。
この場合は、膝の変形により生じている「見た目」になります。
若い人でもO脚の人やX脚になっている人はたくさんいるため、一概に“変形している”という表現はやや不適切になりますが、高齢者の場合は、このO脚やX脚が進行して痛みを生じています。
このように関節の変形の進行により痛みが生じている場合、病院では「変形性膝関節症」や「変形性股関節症」などと診断がつけられます。
その他にも、肩の痛みや首、腰など関節は全身に存在しており、それぞれの関節の問題を総称して「関節疾患」と呼んでいます。
今回はこの関節疾患の中でも、関わる頻度が非常に多い「変形性膝関節症」に絞って理学療法士との関係性について紹介していきます。
②まずおさらいです。関節疾患とは?
関節疾患とは、骨や関節が壊れたり変形したりして生じる病気のことです。関節は、骨と骨の連結部分で、身体の動きをスムーズに行う役割を果たしています。
この関節の間には、隙間があり、クッションの役割をする組織(軟骨・滑液)などが含まれており、この間のクッションの役割をする軟骨がすり減って、徐々に骨と骨の間が狭くなって、変形ないし骨同士がくっついてしまいます。
このような状態を「変形性○○症」などと診断がつけられます。
【例えば…】
・変形性膝関節症
・変形性股関節症
・変形性脊椎症
・変形性足関節症
などと変形性○○といった診断は整形外科分野では割と多く見かけるし、それに対してリハビリの処方(指示)がDr(先生)から出ることが多いです。
ちなみにこの「関節疾患」は“退行変性”といって加齢に伴って出現する問題の一つとして挙げられます。
つまり年を取るほどに出現しやすい問題ということですね。(膝が痛い・腰が痛い・肩が痛いなど…)
退行変性とは、いわゆる老化現象、加齢とともに生じる変化のことを指します。
この関節疾患ですが、1998年の全国調査では、(全国1億2,500万人のうち)腰痛を訴える人は1,160万人、肩こり1,140万人、手足の関節の痛みが680万人となっており、非常に多くの方々が関節の痛みで悩んでいるようです。
そして、高齢化が進む現代では今後さらに増加することが予想されています。
③変形性膝関節症のリハビリについて
膝が変形して痛そうに歩いている高齢者は多く存在しており、整形外科の病院で働いていると本当にたくさん見かけます。
そういった方に対するリハビリとしては「痛みがなく動けるようになること」を目標とすることが多いです。
そのために、筋力トレーニングを行ったり膝回りの柔軟性を出したりと様々なアプローチを行っていきます。
また、日常生活の聴取を行い、「日頃から膝に負担のかかる動作を行っていないか」を確認し、「膝に負担のかからない動作」を指導していきます。
言葉にすると非常に簡単で単純な作業に感じると思いますが、症状の出方や生活のスタイルは人それぞれであるため、リハビリの内容も多種多様になってきます。
対象となる方の問題点を掘り下げて考えていく作業は大変ですが、リハビリに対する効果を感じることが出来たらとてもうれしいし楽しくリハビリを行うことが出来ます。
この辺りが理学療法士としてのやりがいの一つになるかと思います。
④変形性膝関節症の変形が進むとリハビリだけでは限界があり、手術が適応となる
変形性膝関節症の病状が進行すると、手術が勧められます。
手術は、主に人工膝関節といって人工の関節を変形した関節と入れ替える方法が選択されることが多いです。
臨床現場では専門用語として、「TKA」と呼ばれます。
近年では、このTKA以外にも、UKAと言って部分的に人工関節を入れ替える手術も増えてきています。
※トータルなので”全部の関節を入れ替える”という意味で捉えてください。
UKA:人工膝関節単顆置換術(Unicompartmental-Knee-Arthroplasty)
※ユニは”単一の”と略すため”単一の関節(内側か外側か)を入れ替える”という意味で捉えてください。
この人工膝関節ですが、手術後の回復が良いとのことであり、実施件数が右肩上がりで増えています。
これは高齢化が進んでいることの裏付けとしても考えられますが、それと並行して手術の成績が良いことも理由として挙げられると思われます。
このように、整形外科病院で働いていると、変形性膝関節症のリハビリだけでなく、変形性膝関節症に対する手術を行った方へのリハビリも行うことが多くなります。
特に、手術を行っている整形外科病院では、上記で紹介したTKAやUKAの手術後のリハビリを行うことは非常に多くなるため、理解しておく必要があるでしょう。
⑤まとめ
今回は整形外科病院で関わることの多い疾患として、変形性膝関節症をピックアップして紹介していきました。
内容が若干難しい部分もあったかと思いますが、これから理学療法士を目指す方にとって早い段階で知識として頭に入れておいた方がいいと思いまとめていきました。
整形外科病院で理学療法士として働きたい!と思っている方は今回紹介した関節疾患についての勉強は頑張っておいた方がいいと思います。
今回紹介した、関節疾患の一つである「変形性膝関節症」や「TKA」についての記事をこちらにまとめています。
もし興味があればご覧ください。
膝に関する内容を中心に記事を更新しています。整形外科分野で働きたいと思っている方は興味を持っていただければと思います。
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