学校司書を目指す人へ「教室と保健室の間にあるような図書室を目指して」
今の小学校では図書の授業があります。
私の職務である「学校図書館指導員」は、担任の先生の「補助として」読書指導することになっていますが、現実問題、ほぼ授業中の指導が委ねられています。
ただ色々な事情で今は、図書の授業が十分行えるわけでもないため、子どもたちには休み時間にふらっと過ごせる「くつろぐ場所として使ってもいいんだよ」と伝えています。
今日は学校司書歴としてはまだまだ浅ーい若造の私ですが、どんな学校図書館を目指しているかをお伝えします。
小学校の図書の授業の現状
1.授業の短縮化
私の勤務する小学校では、午前5時間制を取り入れています。
授業時数を確保するために、午前中に1単位時間40分間の授業を5単位時間実施しています。
さらに新型コロナウイルス感染予防対策として、図書の授業の前後に児童の手洗いが入ります。
40分の授業の中で児童の手洗いを2回行うと、授業時間は正味30分です。
また、これはスムーズなクラスの場合で、児童指導などで移動に時間がかかったり、教科指導を教室で行ってくるクラスもいますので、30分取れない場合も多々あります。
児童の本の貸し借りにかかる時間を動線の効率化によって短縮しつつ、精読時間も含めると図書案内や読書指導、図書室のお知らせや利用のアナウンスに使える時間はわずかです。
また、高学年になるにつれ図書の授業をコンスタントに行うことは難しくなり、クラス単位では学期に1度しか来なかった・・・などと言うこともあります。
こんな状況の中なので、図書分類や図書館利用の単元が最低限説明できるくらいです。
2.担任による重要性の認識の温度差
図書の授業の有用性を理解している先生と、そうでない先生は確実にいます。
同じ学校司書の会やSNSでのみなさんの声を聞いても、先生方とのコミュニケーションや図書の授業のあり方について悩みを抱えているようです。
3.図書担当(司書教諭)との連携不足
私が学校司書で任用される際に、求められたのは、司書または司書教諭の資格ですが、基本的には、小学校の正規教員の中で「司書教諭」を持っている方がその年の図書担当となり、その先生との連携で、図書室運営は成り立っています。
本来は「学校図書館指導員」という立場での任用なので、図書担当(司書教諭)の先生の補助的な役割ですが、実際のところ小学校で図書室を管理運営しているのは「学校図書館指導員」です。
(「学校図書館指導員」がいなければ休み時間の開室や蔵書管理がで難しい。)
今までどの記事も、認知度・汎用性のある「学校司書」という用語でコラムを書いていたため、混乱を生じさせてしまったら申し訳ないのですが、多くの自治体では「学校図書館指導員」という名称が使用されています。
図書担当(司書教諭)の先生も専任ではなく、クラス担任であることが多いので、ほとんど打ち合わせる時間もありません。
最低限の事項を付箋でやり取りしたり、すれ違いざまに話したり。
このような状態に加えて、タブレット端末でのオンライン授業法への研究が着目される中、従来並に今後も、学習・情報センターとしての役割を果たしていけるかは、とても学校司書だけで取り組む問題ではない気がします。
そこで私が、重点的に取り組みたいと思っているのが、文科省が「その他の機能」として示した、
「子どもたちの「居場所」の提供」
「家庭・地域における読書活動」
の支援です。
学校図書室の役割は保健室と教室の間にある
1.図書室を心の居場所に
実際に、図書の授業が全学年に対してコンスタントに行うことがなかなか難く、連絡なしの授業キャンセルや、クラスのバッティング、空きコマに図書室整備のつもりが、急に授業に来られたりとその時々に臨機応変な対応が求められます。
ただ、子どもたちは久しぶりの図書を楽しみにしてきてくれるので、突然の授業でも快く受け入れる体制を整えるように勤めています。
「ただ本を貸し出したり返すだけじゃないの?」と多くの先生方は思っているかと思うのですが、新着本の整理やディスプレイ、感染対策上の工夫、イベントの案内、本の紹介などがきちんとされている状態、ホテルで言うならおもてなしできる状態にまで持っていくのが私たち学校司書の仕事だと思いますので、ダンボールだらけの雑然とした準備中図書室には入ってほしくないのが本音です。
それでも、いつでもなんとか楽しんでもらえる図書の授業、図書室の雰囲気を子どもたちに伝え、休み時間に来てもらえるようにしています。
休み時間は、外で元気に遊んで過ごす方が健全な心身発達上も望ましいのですが、
・お家の人が夜遅くて少し生活時間がずれている子
・クラスの中で頭が良すぎて我道を行くような子
・何かして楽しくすごしたいけど外には出たくない子
など様々な子が読書好きの子に加えてチラホラいます。
そんな、本がすごい好きなわけではないけど、ちょっと教室にも外でも過ごしづらい子のための、心地よい楽しい居場所にしたいと思っています。
2.先生方のガス抜き場
また、図書室では先生方の本音をお話しいただいたり、長期休みの閉館整理中は語りこむ先生もいらっしゃったり。
中立地帯のようになっていることもあります。
3.保健室との連携
保健室との連携では、本の購入希望を取るだけでなく、授業や生活の中で気になった子の情報交換や連絡をしたり、保健室登校の子に図書室の新着本を案内しました。
低・中学年の子どもたちとは、週に1度くらい高学年の子どもたちとは月1度くらいの頻度で合うので、何週にも渡って様子が不調であったり、大きな変化があると、よく分かるのです。
4.本を通じて家庭でのコミュニケーション
保護者に好評の図書通信も、図書室と子どもたちと家庭をつなぐために有力な手段です。
勤務時間中に作成することが難しく、家のPCで作業をしたとしてもデータを学校のPCに転送することができないので、最終的にはA4の手書き原稿を採用しています。
手書きのお便りは今では珍しいので、ご家庭・先生方みなさんに喜んでもらえます。
誰にとってもなんだか落ち着く気持ちのよい居場所に
学習・授業での活用が難しい図書室ですが、休み時間の利用者数の増加や貸出数の増加を見ると、本来の読書の場としては充実してきているのではないかと思います。
小中高生の自殺過去最多という苦しい現実の中で、「図書室は楽しい場所」「本はいつでも自分をどこかに連れて行ってくれる」と、1人でも多くの子どもたちの記憶に残ればいいな、と思いながら今日も仕事をしています。
「あなたが学校司書になったら、どんな学校図書館にしたいですか?」
1人職場で仕事をしていく中での指針にもなりますし、面接でも聞かれましたので、イメージしておくといいかもしれません。
記事をお読みいただきありがとうございました。
参考になれば幸いです。