学校司書の仕事をしていて感動した瞬間ベスト3
「やこ先生はなんで図書室の先生なの?」よく子どもたちから聞かれる質問がこちら。
いつも「子どもと本と絵を描くことが好きだから」と答えています。
そんな私にとって、小学校の図書室の仕事は今までしたどの仕事よりも、自分に適していると思っています。
「感動」というとすこし大げさかもしれませんが、子どもたちとふれあい、子どもたちの成長を感じられることは、先生と呼ばれる仕事をする人にとって最大のごほうびです。
この記事では、私が学校司書をしていて感動した瞬間をお伝えします。
学校司書に憧れる方の希望になれば幸いです。
感動ベスト1 学校司書1年目の読み聞かせで・・・
今も忘れられない初年度の冬。
ロシアの昔話、内田莉莎子『ゆきむすめ』(福音館書店)を4年生に読み聞かせしていました。
4年生というと、今ではまだまだ子どもに思えるのですが、当時は自分の子も乳幼児、小学校で「先生」と呼ばれる体験にもまだ慣れず、低学年期を終えて少し大人びてくる4〜6年生には、まだ緊張していたのをよく覚えています。
当時は主体的に読み聞かせを楽しんでほしいと思い、読み聞かせの後に、感想や考えを聞いてみることもありました。
『ゆきむすめ』をご存知ない方もいると思うのであらすじを簡単に紹介します。
はやし立てる女の子たちの声の中で、しぶしぶゆきむすめは炎を飛び越えるのですが、ご想像のとおり水蒸気となって、姿を消してしまう。
悲しい余韻のお話です。
ここで、子どもたちにゆきむすめの気持ちを想像してもらったところ、
「おじいさんおばあさんに会えなくて悲しい」
「女の子たちにいじめられてつらかった」
そんな感想が多くを占める中である女の子が、
「いずれ、生きにくい人間世界の中で消えてしまうときが来るのを、ゆきむすめはうすうすわかっていた。大好きなおじいさんおばあさんの見ていないところで彼らを悲しませずに消えたのは、幸せではなかったのか。覚悟していたのでは。」
私は感動しましたね。
もちろん、彼女は優秀な子で後に図書委員としても活躍。よく気のつく働き者ではありましたが。
6年目の今でもその時の風景を覚えています。
これは、学校司書として私が向き合っていくのは、子どもではないと思った瞬間でもあります。
感動ベスト2 毎年増していく図書委員会の人気、そしてその実態とは・・・
学校司書の仕事の中には、通常の授業や図書室運営の他に、図書委員への指導があります。
私が着任した当時は、まさに子どものころの私の記憶の中にある休み時間の図書室。
休み時間の来館者・・・2〜3人。
当番の図書委員・・・遊ぶ、サボる、忘れる、自習する。
それなりのゆるい感じで、今では懐かしくも思うのですが、まさに本好きの人しかこない場所でした。
それが、嬉しいことに年を経るごとに来館者は増え、図書委員は希望者続出。
今では、15分間の休み時間に、平常時30人〜読書推進期間100人超えで、貸し出し・返却が追いつかず、当番でない図書委員が毎日ボランティアで来てくれ、さらにとにかく「何かお手伝いしたい」と申し出てくれる子どもたちが5人前後いたりします。
こんなに盛況なのも、ひとえに図書委員のみんなが図書室・図書委員の楽しさを脈々と伝えていってくれたおかげです。
(現在ではコロナの猛威のため、感染予防対策として、休み時間は学年を曜日ごとに制限しての利用となり、だいぶ落ち着きました。)
図書委員の仕事も多岐に渡り、カウンター業務、POP掲示、新着本の仕分け・整理、書架整理、装飾作り、図書室整備、掃除、イベント準備、とにかくすべて、その日やってほしいことは優先順位をつけて、手書きで指示書を作り、任せています。
私がいなくても図書室運営が正常に行われるように児童を指導し、伝統のように受け継がれることが図書室環境の向上に役立つと考えるからです。
そこで、お待ちかねのベスト2の発表です。
とにかく仕事も来館者も溢れている図書室で、毎回人使い荒く図書委員の仕事を振り分けている私ですが、「AとBの仕事、どっちがしたい?」とある図書委員の男の子に聞いたら「やこ先生が楽になる方で!(僕が大変なほうをやります)」
とにかく、感動しました。目が潤むくらい。
彼以外にも本当に皆気持ちよく、責任感を持って仕事をしてくれ、
毎日感謝と尊敬の念で次の授業に行く図書委員さんの姿を見送っています。
こんな職場(図書室という素敵なお城)はなかなかないと思います。
感動ベスト3 お手紙という一番の宝物
本当はすべてベスト1でもいいのですが、読者の方にちょっとでも楽しく読んでいただきたく、あえて順位をつけさせていただきました。
お手紙や手作りの栞、卒業時のメッセージカードなど子どもたちの心のこもった文章を読むと、本当に心が洗われます。
自分が小学生だったころは、もっと嫌な子どもだったなと思い出し、毎回感心してしまいます。
特に今年、少し文通のようなお手紙のやりとをしている子はとても柔らかで真っ直ぐな心で、大切にしている言葉の一節を紹介してくれたり、質問をしてくれます。
実は私は高校教諭の免許も持っていて、よく昔面接では「先生にならないの?」と聞かれました。
多分、教育者としての生き様に自信がいまだ持てないため、1人でクラスの担任を持ったりすることはおそらく一生ないと思います。
とはいえ、子どもにとっては学校司書も、図書室の「先生」。
人としてあまり恥ずかしくないように生きたいと思いますが、あまりにも出来ないこと、苦手なこと、ダメなところがありすぎるので、子どもたち、先生、補助の先生、ボランティアさん、多くの方々に助けてもらいながら図書室の「先生」をしています。
でも、自分の弱いところを隠さずにお願いすれば、多くの人が助けてくれたり、身近に思って声をかけてくれたりします。
もしこれから学校司書になって、孤独に思うことがあれば、けして一人で何でもしようとせず、そして理想の自分を見せる努力はあまりせず、等身大でチャレンジしてほしいと思います。
図書室にいる人、読書家、そのイメージだけで、もしかしたら「自分はあまり本読めないし・・・仲良くなれないかも」と思われたりするかもしれません。
完璧じゃないソフトな自分もどんどんみせ、試行錯誤しながら楽しく学校司書のお仕事をされることをおすすめします。
子どもたちと同じ目線でいつも楽しく、本の世界へ案内を。
ベスト1は子どもはすごい!と驚いた瞬間、
ベスト2は子どもはやさしい!と嬉しくて泣きそうになった瞬間、
ベスト3は子どもは素敵!と感謝した瞬間でした。
1冊として同じ本がないように、1日として同じ日も、1人として同じ子もいない、素晴らしい職場だと思っています。