医師のキャリアアップの流れ / 出世・評価に必要なこととは?
医師と聞いて、外科医と聞いて、どのような仕事を想像しますか?
病院での仕事は健康な皆さんにはあまり縁がなく想像もつかないものかもしれません。
筆者は北海道で整形外科医として勤務しています。
今回はそんな筆者の日常の仕事内容について紹介します。
整形外科医になるまで
受験や学生の頃の生活は今回の記事の本旨とは異なるので割愛しますが、自身の希望する診療科の医師になるまでにも膨大な時間と勉強を必要とします。
医学部受験、6年間の医学部卒業、2年間の全般的な医療を現場学ぶ初期研修医を経て専門の診療科としてそれぞれの後期研修プログラムに参加します。
後期研修プログラムは各大学病院・医療法人グループなどによって定められており、専門診療科を取得するまでの監修をしてくれます。
美容形成外科など保険外診療を専門とする医師を除き、全ての医師は原則として内科・外科など何かしらの専門分野を持つことになります。
筆者の場合は大学病院の整形外科の専門医プログラムを選択し研修を進めています。
専門医取得までは4年程度かかり、医学部・初期研修・後期研修まで含めると最短でも勤務開始まで24歳、専門医取得まで30歳になります。
勤務地について
医師の勤務先はどのように決めるのでしょう?
通常の会社のように就職活動をして病院に就職?一箇所の病院でずっと勤務していく?
あちこちに転勤するイメージがあるという人もいるでしょう。
実は両方のパターンがあります。
前述の通り、多くの医師の場合、「病院に」就職・所属するというよりは「医局に」所属します。
眼科や精神科など場合によっては単独の施設で後期研修を完了できるプログラムを有しており「その病院に就職」しても医師生活を全うできることもあります。
しかしそうではない場合、原則としては所属したそれぞれの医局事情やローテーションにより各病院に派遣されます。
専門医を取得するにあたって各科では必修単位(整形外科の場合、上肢・下肢・脊椎・スポーツ・小児・腫瘍・リハビリ・リウマチなど様々を45ヶ月)を研修して回収していく必要があります。
この必修単位は指導医となる教官医師の有無により回収できる単位が限られているため、必修単位を満たせるように医局に配置・若手医師同士でローテーションされていきます。
診療科や病院により仕事内容・忙しさも異なってきます。
整形外科の場合、忙しい病院も比較的時間に余裕のある病院両方を経験することが多いでしょう。
上記を経て専門医(全般的な意味での「整形外科専門医」など)を習得、そこからさらに自分のサブスペシャリティ(整形外科の中でも上肢専門、下肢専門、脊椎専門など)を磨いて初めて一人前、医師10年目(最短30代半ば)といったところでしょうか。
そのころには多くの医師のプライベートにおいても家族が増えたりそれぞれの志向により大学病院などの医局でスタッフとして残っていく、関連病院のスタッフとして固定される、独立し開業や医局人事と関係ない就職をしていくなどそれぞれの道を歩んでいくこととなります。
医師としての出世・評価
一般的な会社員の方の場合と医師の場合とで「出世・評価」についても世間の認識と乖離があるところです。
業界外の一般の方からすると意外かもしれませんが医師の場合、出世していくためには(他の医師に認められる成績を残していくには)診療患者数や手術件数はあまり関係ありません。
医師は基本的に科学者のうち医学分野を専門とする集団です。
そのため、医師同士の評価は学術発表・論文によってなされます。
この傾向は「白い巨塔」でおなじみの大学医局で特に顕著ですが、市中の病院においても基本的には同様です。
これらの学術活動は個々人の医師が義務で行っている側面もありますが、まじめに日常の診療を行っていると必然的に疑問点や検証してみたい事柄(クリニカルクエスチョン)が発生してくるものです。
そういった検証をまとめ、発表することで日々医療が進歩していきます。
多くの医師は少なくとも1,2年に少なくとも1回はこれらの学術活動を行います。
学会などに参加してお互いに最新の研究をシェアすることで、結果としてより良い医療が患者さんに提供されるサイクルが作られ、結果としてそれぞれの施設での診療患者数や手術件数につながっていきます。