棋士のつらいこと・大変なこと・苦労
棋士のつらいこと・大変なこと
対局に勝てないと収入が上がらない
将棋界のプロ棋士は現在160人ほどいますが、主な収入源は、対局すると支払われる対局料と賞金です。
日本将棋連盟の発表によれば、大きなタイトルを獲得する有名棋士は約1億円前後の収入があります。
さらに有名な棋士になると、対局料や賞金に加え、CMやイベント、講演会などの出演料などの副収入も多くなるのが魅力です。
その一方、対局に勝てない棋士は、収入も低くなります。
賞金も稼げませんし、多くの大会がトーナメントとなるため負けると対局料ももらえません。
一般に対局料や賞金収入が1,000万円を超えるのは、将棋界で約10%といわれており、ほとんどの棋士は年間1,000万円以下の収入です。
新人や収入の少ない棋士の収入は300万円〜400万円といわれているため、プロ棋士になっても勝てなければ、収入は若いサラリーマン並みとなっています。
勝てない棋士はアルバイトに忙しい
将棋の対局で稼げない棋士は、将棋教室を開いたり、企業内サークル、愛好者の集まりなどで指導をするアルバイトに忙しい日々です。
指導の報酬は、1回あたり2万円〜4万円が相場といわれていますが、アルバイトで将棋を教えようと思えば教室を確保したり、会場に出向き、宣伝もしなければなりません。
付き合いも増えて時間も取られるため、自分の腕を磨く時間も少なくなることに注意が必要です。
その結果勝負に勝てなくなり、減ってしまう収入を補うため、アルバイトを辞められなくなるケースも少なくありません。
悪手の棋譜(きふ)が残るのは恥ずかしく悔しい
棋士が将棋を指した手順を記録したものを「棋譜」と呼びますが、棋譜を見ればその棋士がどのような手を使ったのかがわかります。
プロ棋士は、一度の対局をひとつの作品と考えている人もいて、対局に勝つだけでなく、出来るだけ美しい手で勝ちたいとその勝ち方にこだわるのです。
そのため対局に勝っても悪手を使った場合、それが棋譜として残ることが屈辱だと感じ落ち込む人もいます。
ちなみに美しい手で勝っても、相手が終盤で悪手を使った場合、「棋譜が汚れる」とムッとする棋士もいるようです。
20代で正社員への就職・転職
棋士の悩み
棋士の悩みは、長時間柔らかい座布団に座ったまま熟考するため、肩や腰が痛くなることです。
若いころは平気でも、正座の姿勢は血行不良になりやすく、同じ姿勢を繰り返すうちに、年を重ねてから体の不調を感じる人が多数います。
とくに気合が入るときは姿勢を正して正座をすることが多いですが、この正座がつらく、膝やかかとに痛みを感じてしまう人もいるなど、体の不調は棋士の職業病といえるでしょう。
歴代最多勝の羽生善治棋士も、足を酷使するスポーツ選手がよくかかるアキレス腱の炎症を抱えてしまいました。
ほかにも集中しすぎて目の疲れ、首の疲れを感じる人もいます。
仕事中に将棋に集中することも大切ですが、オフの日に軽い運動などで身体をほぐして対局に向けてコンディションを整えるのも大切な仕事といえるでしょう。
棋士を辞める理由で多いものは?
棋士は日本将棋連盟に所属していますが、雇われているのではなく、個人事業主のような扱いです。
そのため退職やクビという制度はなく、辞めるには「引退」という形をとります。
引退には自分の意思で引退する人もいれば、病気や亡くなったことをきっかけに引退という人もいますが、1番多い理由は勝てなくて引退するケースです。
順位戦で成績が残せない場合、「フリークラス」に落ち、10年以内に成績が出なければ引退に追い込まれます。
子どものころから「天才」と呼ばれて将棋に打ち込み、プロ棋士になった人は、とくに勝てない経験が大きな挫折につながってしまうようです。
最近では2017年に現役63年の最年長棋士である加藤一二三九段が竜王戦で負け、現役引退となったことでも注目されました。
このように棋士の仕事は勝てなければ棋士を続けたくても辞めざるを得ない、厳しい勝負の世界です。