【水中写真家】「何かを表現する仕事がしたい」約20年、海の写真を撮り続けてきた鍵井靖章

(読了時間:5分19秒)

好きを仕事にしてる人を紹介するインタビュー記事。
今回は、約20年間ほぼ毎月海外の海を撮影し続けている水中写真家・鍵井靖章さんからお話を伺います。

「水中写真家」の仕事内容

「水中写真家」とは、どのような仕事なのでしょうか?

海の中で、撮影するのが仕事です。

被写体は「海の生き物」はもちろんですが、「海中風景」なども撮影しています。

多くの人が想像する海の世界を、写真で表現しています。

それ以外に、2011年の東日本大震災のあと、「津波で傷ついた海中」を定期的に撮影する取り組みをしています。

また、雑誌に掲載する写真として、ダイビングを趣味とする芸能人や著名人を撮影するために、一緒に海へ潜ることもあります。

撮影されているお写真はどのように収入へ繋がっているのでしょうか?

約20年間、ほとんどがダイビング雑誌や旅行社、観光局などから依頼を受けて撮影をしています。

撮影した写真を広告などに使用してもらったり、写真集としてまとめたりすることもあります。

ほかにも、服飾や文房具などとコラボレーションすることも。

例えば、昨年から大手通販会社・フェリシモとコラボ商品として、海の写真をプリントした洋服、カーテン、ポーチ、ネイルシール、クッションカバーを作っています。

参照元:フェリシモ

それ以外にも仕事は多岐に渡っていて、カレンダー撮影、フォトセミナー、写真コンテストの審査員など…最近では海の魅力と環境問題をテーマとした講演会も多く開催しています。

水中写真家のスケジュール

海外の海に行かれることもあると思います。どれくらいの頻度で海外に行かれているのでしょうか?

こちらも約20年間ほぼ毎月、海外の海へ撮影に行っています。

多いときには月に2~3回ですね。

滞在期間はさまざまです。

一つの取材で約7日間滞在することが多く、たまに15日間ほど滞在する場合もあります。

海外取材を終えて、成田空港に帰国後、数時間 空港に滞在。

そのまま別の海外取材に向かうことも過去に二度ほどありました。

ただ、そういったスケジュールだと飛行機が遅延する可能性があり、体の疲労も溜まり、機材の故障があったら対応できない…洗濯物も溜まってしまうので、そのような連続取材はなるべく避けるように心掛けています(笑)。

毎月のように海外へ撮影に行っているということは、カメラには毎日のように触れていらっしゃる?

カメラに毎日、触れることはありません。

オンとオフははっきりしています。

カメラを触るのは取材のときだけで、プライベートで写真を撮影するときはiPhoneを使用してます(笑)。

とはいえ、月の半分以上は、取材に出掛けています。

なので、日本にいるときは、なるべく外に出歩くことを避け、写真の整理やプレゼン準備、原稿の執筆などをおこなってます。

水中写真家を志したキッカケ

水中写真家を志したキッカケは?

学生の頃から何かを表現する仕事をしたいと模索していました。ところが、絵は下手、歌唱力もないので、どんなことで表現をする仕事に就こうか…と悩んでいました(笑)。

そして、大学在学中に、水中写真家の伊藤勝敏氏と出会いました。

写真もダイビングもしたことがないのに、直感で「これだ!」と思い、押しかけ弟子となったんです。

フリーのフォトグラファーになったのはいつ頃ですか?

28歳のときに独立しました。

22歳のときに、オーストラリア、伊豆、モルディブへ拠点を移して、約6年間、ダイビングのガイドをしながら、水中撮影の技術を磨き、現在に至る…という感じですね。

水中写真家の楽しさ、つらさ

水中写真家の仕事をする上で、どんな場面に楽しさを感じていますか?

海の中は非日常的で、未知の世界を旅している気持ちになります。

クジラやジンベイザメ、マンタなどの大きな生き物と遭遇したときや、大きな魚群に囲まれたときはこの上ない幸せを感じます。

また、ホオジロザメなどの生き物を撮影するとき、自分が食物連鎖の中に組み込まれます。

自分が自然の生き物の食事の対象になることは、日常生活でないと思うので、おもしろいです(笑)。

逆につらいな、大変だな、と思うことはありますか?

海の中の撮影なので、やはり危険が伴うこともあります。

南の島で美しい魚たちやサンゴ礁を撮影しているばかりではなく、潮の流れ、大深度、コミュニケーションミスなどで生命の危険を感じることが何度かありました。

また、先ほどおもしろいとは言いましたが、海の中では人間も食事の対象になるため、危険です。

常に危険を感じているわけではないのですが、トラブルがあったあとは、命がけで写真を取っているのだと実感しますね。

水中写真家の目標

今後、水中写真家の仕事で目指していることを教えてください。

実は、今、模索中なんです。

これまで、水中写真家で叶えたいことや想いは年齢によって変化してきました。

写真家になりたての20代は、「水中写真が最大の自己表現」と思いながら活動していました。

しかし、年齢を重ねて、環境の変化を身近に感じています。

例えば、2011年の大きな震災を経験したとき、私の写真が自然環境の保全の一つに繋がれば嬉しい、という気持ちが芽生えてきました。

また、私が子どもの頃に見た自然の景色をこれからの子どもたちに残したい、という気持ちも大きいです。

水中写真家で独立してから、がむしゃらに走り続けてきました(笑)。

そろそろ今後の目標を明確にして、これまでの経験・知識を活かして活動していきたいと思っています。

好きを仕事にしたい人に向けてメッセージを

最後に、好きを仕事にしたい方へメッセージをお願いします。

20歳のころに水中写真家を志しました。そのとき、私は「必ず水中写真家になって、生計を立てて、活躍する」と自分を信じ、疑うことなく邁進してきました。

今となっては、「写真でご飯を食べることは、難しいことなのでは?」と思うようになったのですが、志していた当時はそんなことは全く思わず、ひたすら進み続けてきたのです。

全く根拠のない自信を持って生きてきたと思います。

ですが、一度きりの人生ですから、夢に人生を賭けてみても良いと思います。

とにかく3年くらいがむしゃらに進んでみて、振り返ったとき、「若いときの3年くらい大して長い期間じゃないかも」と思えるかもしれないので。

一度は夢に懸命になってみてほしいです。

鍵井さんおすすめの海3選

1. インドネシア・コモド
多種多様な生物に溢れる海。

サンゴやイソギンチャク、ホヤ、カイメンなどが海底をカラフルに彩っています。

私にとって、素晴らしいキャンバスであり、創作意欲を掻き立ててくれる海です。

2. モルディブ
25歳から2年半過ごした思い出の多い海です。

1998年に水中写真家になってからも、毎年2回ほど訪れ、その度に驚きの海中世界を見せてくれます。

子どもが描く海の絵を実写化したような作品が撮影できる海です。

3. 葉山
神奈川県に住む私にとって、一番身近な海でホームグランドです。

ウミウシやダンゴウオなど人気種も多く、季節来遊魚などは陸と同じように季節を感じさせてくれます。

また、人間生活に近い海なので、環境の変化などの影響を受けやすく、今の日本の海の状態も教えてくれる大切な場所です。