倉庫業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説





倉庫業界とは

倉庫業界に属する企業では、おもに商品・物資の安全な保管や、それらの物流に関わる事業を展開しています。

日本の倉庫業界の代表的な存在としては、「近鉄エクスプレス」「上組」「三井倉庫ホールディングス」などの企業が挙げられます。

倉庫業はそこに保管される商品によって、「普通倉庫業・冷蔵倉庫業・水面倉庫業」の3種類に分かれています。

幅広い物品を保管できる「普通倉庫業」が倉庫業の大半を占めており、「冷蔵倉庫業」が10℃以下で保管できる倉庫、「水面倉庫業」が河川や海などの水面で保管する倉庫のことです。

業界の動向としては、インターネットやスマートフォンの普及により「ネット通販」が伸びていることから、倉庫の需要も増加しており、市場は右肩上がりで成長している状況です。

今後もネット通販の利用者層は拡大していくことが予想されているため、それに比例して倉庫業のニーズも堅調に伸びていくことが考えられています。

倉庫業界の役割

「倉庫業」という言葉からは「物を保管する仕事」というイメージが強く連想されますが、倉庫業界の役割はそれだけではありません。

検品や在庫管理に加えて、「流通加工」「配送」「輸出入業務」など、物流全体に深く関わっているのが倉庫業界の特徴です。

このように、倉庫業界は「運送業界」と共に物流の中核を担う、社会インフラの一つと捉えることができるでしょう。

また、インターネットの急速な普及を背景にサービスの高度化や技術革新が起こり、それに合わせて倉庫業界の役割も複雑化しています。

とくに従来までは「少品種大量保管」が主流でしたが、現代は消費者のニーズが多様化していることから「他品種少量保管」への対応が各倉庫会社に求められている状況です。

これに対応するために、「IT技術を活用した業務の効率化」を図る動きが業界全体として見られており、今後もこの動きは続いていくことが予想されています。

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倉庫業界の企業の種類とビジネスモデル

国内大手企業

倉庫業界の国内大手企業としては、「近鉄エクスプレス」「上組」「三井倉庫ホールディングス」などが代表的な存在です。

これらの企業は広大な倉庫の敷地面積を保有しており、倉庫事業に加えて港湾運送事業や不動産事業など、幅広く事業を展開していることが特徴です。

また、最近では保管から運送までの物流に関わる全行程を請け負う、「サード・パーティ・ロジスティクス(3PL)」と呼ばれる事業への展開にも積極的な姿勢を見せています。

これ以外にも、海外取引の多い顧客企業に質の高いサービスを提供していくために、海外企業を買収して営業基盤を広げるなど、事業拡大に向けた積極的な投資が各企業で行われています。

国内中堅企業

国内中堅企業には、「安田倉庫」「東陽倉庫」「丸八倉庫」といった企業が挙げられます。

倉庫業界は大手企業から中堅・中小企業まで数多くの企業が存在していることから、同業界内での競争は避けられない環境となっています。

とくに、事業基盤が「首都圏」にあるのか、「地方」をメインにしているのかによっても、企業としての安定性に差が生じていくことが考えられます。

首都圏に土地を持つ倉庫会社であれば今後も安定的な需要を取り込むことが可能ですが、「東京一極集中」などの影響により、地方を事業基盤とした倉庫会社は厳しい競争を迫られている状況です。

そのため、同業界内でのM&Aや、大手企業と同様に海外展開を視野に入れるなど、事業戦略の転換が求められているといえるでしょう。

外資系企業

日本の倉庫業界には、「プロロジス(アメリカ)」「FedEx(アメリカ)」「DHL(ドイツ)」といった外資系企業も多く参入してきています。

こういった外資系企業の多くは、東京やその近郊をメインの事業範囲としていましたが、近年では地方にも事業範囲を広めておりシェアを拡大しようとする動きが見られます。

さらに、最新技術の導入や、新しい施設の開発にも積極的であることから、国内企業にとっても無視できない存在といえそうです。

倉庫業界の職種

倉庫業を安定して運営していくためには、たくさんの人の力が必要になります。

ここでは、倉庫業界の代表的な職種を3つ紹介していきます。

倉庫管理

倉庫管理は、倉庫内での作業をメインに行う職種で、作業内容は大きく「検品」と「梱包」の2つに分けられます。

「検品」は倉庫内にある荷物の所在を確認し、「運び込まれた荷物がどこにいくつあるのか」「荷物に傷や破損などはないか」といったチェックを行います。

倉庫内の物品管理に直接携わる役割であるため、重要なポジションだといえるでしょう。

一方、「梱包」は倉庫に運び込まれた荷物を、次の輸送先に送るための荷造りを行うのが仕事です。

輸送時に傷や破損なく安全に届けるために、梱包は迅速・丁寧な作業が求められます。

倉庫事務

倉庫事務は、倉庫業に関するさまざまな事務的手続きを担当する職種です。

倉庫に届いた荷物の種類や個数をチェックし、「荷物を倉庫内のどの場所に配置するか」といった指示を行うのも倉庫事務の仕事となります。

実際に倉庫内で働く人たちがスムーズに作業できるよう補佐・管理する役目を担っており、縁の下の力持ちのような存在です。

倉庫内の管理以外にも、「契約書類の手続き」や「支払い管理」など、業務内容は多岐に渡っています。

営業

主に法人を相手に、自社サービスの説明・提案活動を行うのが営業の仕事です。

物品の保管・運搬などのアウトソーシングを検討している企業の元へ訪問し、その企業が今抱えている課題に対して的確な改善策を提案することが求められる職種です。

魅力的な提案を行うためには、まずは自社サービスに関する深い知識を身につけなければいけません。

そのため、まずは営業以外の現場の仕事を数年経験し、その後に営業として働くケースも多いようです。

倉庫業界のやりがい・魅力

社会インフラの一つで公共性の高い仕事

企業が原材料を仕入れ、商品開発を行い、最終消費者に届けるといった過程の中で、「倉庫」は必要不可欠な存在です。

倉庫業界は日本の経済活動の中でも重要な役割を担っている「社会インフラ産業」の一つであり、そこに携われることは大きなやりがいにつながるでしょう。

また、倉庫会社は荷物の管理・保管だけでなく「災害時などの緊急事態」にも重要な役割を果たしています。

「東日本大震災」の際には、倉庫業界の企業によって救援物資・支援物資の管理が行われ、適切なタイミングで物資を輸送するといった重要な業務を担っていました。

以上のように、倉庫業界は日本経済を支える上で非常に公共性の高い業務内容を行なっている業界です。

グローバルに活躍できる仕事

倉庫業界の主要な顧客である日系企業の海外進出が活発化していることから、倉庫各社でもグローバル化への対応が求められています。

国内外問わずに物流のグローバルネットワークを強化し、海外進出を推し進める企業へのサービスを拡充する動きが大手倉庫会社を中心に注目されている状況です。

今後もこの動きは加速していくことが予想されており、その点から倉庫業界ではグローバルに活躍できる人材が必要とされています。

大手倉庫会社以外にも海外に拠点を持つ倉庫会社は増えているため、「国際的なビジネスにチャレンジしたい!」という方にはとくにおすすめの業界です。

倉庫業界の雰囲気

倉庫業界は仕事の特性上、「一度取引したお客さまと長く付き合っていく」ことが多い業界です。

そのため、一般的な営業職で求められる「ガツガツとした積極性」よりも、取引相手の要望を汲み取り、それを確実に遂行できる人が倉庫業界では信頼される傾向にあります。

また、法人取引では煩雑な事務手続きが必要になる場面も多いため、書類の作成ミスや納期遅れなどのトラブルに十分注意しながら仕事を進めていける、「慎重な性格」の人が向いている業界だといえるでしょう。

業界全体の男女比率については、まだまだ男性の比率が高い業界です。

しかしながら、「女性の社会進出」が進む近年の就職環境に対応する形で、女性の総合職採用の比率を増やす倉庫会社も実際に出てきています。

倉庫業界に就職するには

就職の状況

倉庫業界は「安定している」「市場が伸びている」という点から、学生の就職先としても注目を集めている業界です。

とはいえ、普段の生活の中で「倉庫」に関わったり、倉庫の中で何が行われているのかを知る機会はそれほど多くありません。

そのため、「航空業界」や「広告業界」などの業界に比べれば学生の馴染みは薄く、大手倉庫会社を除けば、応募者が殺到することはあまり多くないでしょう。

求人の状況としては、大手倉庫会社の場合、新卒採用については毎年実施しているところがほとんどです。

会社の中核を担う存在として幅広い仕事に携わる人材は「総合職」として採用されることが多く、一般的には「大卒以上」の学歴が応募条件として求められています。

事業範囲の広い企業の場合、勤務地は「全国」や「海外」まで含まれていることもあるので、その点もよく確認しておくと良いでしょう。

就職に有利な学歴・大学学部

中堅規模以上の倉庫会社に総合職として入社を希望する場合は、大学を卒業していることが必須条件といえるでしょう。

それ以下の規模の倉庫会社であれば高卒の求人も出ていますが、大卒の求人数と比べると数は少なく、仕事内容が限定されているケースも多いようです。

また、倉庫会社への就職で有利な学部・学科に関しては、ほとんどの倉庫会社で「学部・学科不問」で求人を出している状況です。

そのため、どの学科の出身者であってもチャンスのある業界ですが、普段の生活で馴染みがあまりない職業である分、念入りな業界研究が必要になるといえるでしょう。

就職の志望動機で多いものは

倉庫業界を受けるときの志望動機として多いのは、「日本の物流の一端を担う、社会に必要不可欠な存在である点に魅力を感じた」という内容です。

倉庫会社は企業の経済活動の上でなくてはならない役割を担っており、「倉庫業界で働くことで日本経済に貢献したい」といった内容が多く見られます。

一つ注意点としては、倉庫業界に近い事業内容を行っている「運送業界」も存在するため、そういった業界との違いを明確にする必要がある点を意識しましょう。

倉庫業界ならではの特徴や強みを十分に分析し、「倉庫業界だからこそできること」について自分なりの考えを見出すことが大切です。

倉庫業界の転職状況

転職の状況

倉庫業界では、定期的に行われる新卒採用のほか、多くの倉庫会社で中途採用の募集も行われています。

とくに大手の倉庫会社では従業員数も多く、毎年一定数の定年退職者も出るため安定的に求人が出ている状況です。

ただし、新卒採用と比べると、中途採用に関しては少ない採用枠で募集をかけているケースが全体的に多いようです。

倉庫業界は会社数が多いため、求人サイトなどに加えて、各倉庫会社のホームページもこまめにチェックしておくとよいでしょう。

転職の志望動機で多いものは

新卒の志望動機と同じように、「社会的意義の大きさ惹かれた」「公共性の高い事業内容に魅力を感じた」といった理由で志望する人が多いです。

また、同じ「物流業界」出身者が倉庫業界を受けているケースもあり、その場合は「これまでの物流に関する経験を活かしたい」という志望動機を伝えるケースが多く見られます。

これらの志望動機を考える際には「業界としての特徴・強み」に加えて、同じ業界内で見たときの「その企業の独自性」も盛り込んで内容を考えていきましょう。

転職で募集が多い職種

中途採用で募集が多い職種は、「総合職」「事務職」などの職種です。

倉庫内で検品や梱包などを行う「作業スタッフ」については、正社員ではなくアルバイトとして採用している企業が多くなります。

大手倉庫会社に関しては、事業内容が多岐に渡っていることから「不動産事業」「物流事業」など、それぞれの事業別で採用を行なっているケースも少なくありません。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

倉庫業界へ転職する場合、同じ倉庫業界や物流業界での業務経験は問われないケースがほとんどです。

ただし、長期勤続によるキャリア形成を図るために「35歳未満」などの年齢制限が設けられている場合もありますので、各社の募集事項はよくチェックしておくことをおすすめします。

学歴に関しては、本社勤務となる「総合職」などの場合には、基本的に新卒と同様「大卒以上」の学歴が求められます。

倉庫業界の有名・人気企業紹介

近鉄エクスプレス

1948年創業、1970年設立。連結売上高5,531億円、連結従業員数18,000名(2018年3月期)

日本だけでなく、海外300都市以上に拠点を持つ大手総合物流企業です。

海外展開に積極的であり、中国においては日系企業で最大級のネットワークを有しています。

近鉄エクスプレス ホームページ

上組

1867年創業、1947年設立、連結売上高2,614億円、連結従業員数4,079名(2018年3月期)

兵庫県神戸市に本社を構える、港湾運送業としては日本最大の企業です。

港湾での倉庫業に加えて、港湾運送事業や陸上輸送の自動車運送事業など、幅広い事業展開を見せています。

上組 ホームページ

三井倉庫ホールディングス

1909年設立、連結売上高2,332億円(2018年3月期)、連結従業員数8,813名(2019年3月時点)

東京都港区に本社を構える、三井グループに属する大手倉庫会社です。

倉庫保管業を軸に、都市部の所有地を活用した不動産事業にも強みを持っています。

三井倉庫ホールディングス ホームページ

倉庫業界の現状と課題・今後の展望

競争環境(国内・国外)

倉庫業界各社で、物品の保管や荷役業務を中心とする「倉庫業」から事業領域を広げ、「総合物流企業」としてのポジションを目指す動きが見られています。

それに伴い、事業規模の拡大を目的とした「倉庫会社同士のM&A」が活発に行われている点も倉庫業界のトレンドです。

国内のM&Aに加えて、海外企業を買収する動きも大手企業を中心に見られることから、今後はグローバルな視点で競争が激化していくことが予想されるでしょう。

また、総合物流企業を目指す上では「陸運業界」の存在も無視できず、そのような他業界との競争も視野に入れて企業ブランドを強化していく必要があると言えます。

業界としての将来性

宅配市場の拡大に伴い、倉庫業界の重要性もますます高まっていくとの見方が強いですが、同時に「倉庫会社に対する負担の増加」が懸念されています。

とくに「人手不足」が騒がれる中、膨大な数の物品を適正に管理できるのか、そのための人員をどう確保していくのかが問題の焦点といえそうです。

この問題の解決策として、倉庫管理業務への「AI」などのIT技術の活用が注目されています。

IT技術活用の具体例として、通販バックヤード業務に特化した事業を展開する「アッカ・インターナショナル」では、自社倉庫にAI物流ロボット「EVE」を採用してピッキング作業などの自動化を図っています。

このように、自動化をはじめとした作業の効率化・高速化に取り組む企業は増えており、人手が足りない中でいかに効率的な事業体制を構築できるかが、倉庫業界の各企業に求められているといえるでしょう。

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