【手芸作家】「モノづくりの先にはいつも届けたい“相手”がいる」趣味がキッカケで仕事に結びついた黒田翼さん

(読了時間:7分3秒)

好きを仕事にしてる人を紹介するインタビュー記事。

今回は、ハンドメイド作品のコンテストの受賞がキッカケで、趣味が仕事に結びついた手芸作家の黒田翼さんからお話を伺います。

手芸作家の活動内容

手芸作家の活動内容について教えてください。

毛糸のぽんぽん(毛糸を巻いて丸くカットしたもの)をベースに作品を制作し、『trikotri』の名前で発表しています。

また、自らデザインした作品のつくり方を紹介するために、書籍や手芸キットを販売したり、ワークショップや教室で生徒さんに教えたりすることもあります。

2019年には、テキスタイル(生地)ブランド「kotorinuno by trikotri」をスタート。

手描きのイラストによる生地の図案制作の仕事もおこなっています。

これまで、どのような作品を手掛けてこられたのでしょうか?

犬や猫の顔をモチーフにしたブローチや、鳥、野生動物などの作品、時には食べ物をモチーフにした作品を制作してきました。

ある程度のリアルさを追求しつつ、毛糸でつくるからこそ表現できる、ぬいぐるみのような可愛らしさも残したいと思いながら制作しています。

作品づくりのスケジュール

一つの作品の制作スケジュールについて教えてください。

作品のクオリティや大きさ、使う色数などによって制作時間は大きく変わります。

基本的に販売用の作品を制作する際は、大体1日に1~2作品を制作するペースです。

ただ、現在は定期的な作品販売をしてはおらず、イベント出展などに応じて制作期間を確保しています。

作家さんは休みなく創作活動をしている印象があります。どのような割合で仕事とお休みの時間を取っていますか?

私の場合、私生活・趣味・仕事の境界線がどうしても曖昧になりがちです。

そのため、自宅とは別に仕事場(アトリエ)を一部屋借りて、生活と仕事で「場所」を分けることにしています。

といっても、何もやることがない日というのはないですし、結局は一日のうち多くの時間をアトリエで過ごしてしまうのですが…。

何か見たい展示があったり会いたい人に会ったりする場合に「今日は休み!」と決めて、アトリエに行かないことはありますね。

また、自分が身につけるアクセサリーや小物、家族や友人へのプレゼントなど、仕事とは全く関係のないモノづくりをすることも好きで、趣味の創作が仕事に活きてくることは多々あります。

なので、余白の時間はいつも確保したいと思っています。

手芸作家になったキッカケ

「こどもの頃から絵を描くことやものづくりに親しむ」とHPで拝見いたしました。幼少期はどのような創作をされていましたか?

2~3歳の頃からお絵描きをすることが好きで、母が仕事をしている間は画用紙とクレヨンさえ渡しておけばもくもくと何か絵を描いていたようです。

ほかにも、粘土で小さな動物やケーキをつくったり、フェルトを縫ってペンケースをつくったり……

昔から、こまかく手を動かすことであれば何でも好きでした。

そこから手芸作家の道を目指すようになったキッカケを教えてください。

目指していた、というよりも漠然と憧れがあった感じなんです。

大学を卒業した頃に、「どうやら私の好きなことはお金を稼いでご飯を食べていくことへ直結しづらいらしい……」と気づき、アルバイトをしたり契約社員として働いたり、迷いながら悶々としていた時間がとても長くありました。

20代後半からは5年半ほど手芸店の販売員としてパート勤めをし、店頭の見本制作や手づくり講習会の講師を務めていました。

そんな経験の中、もともと好きだった手芸がよりおもしろく感じ、ますます夢中になっていきました。

同時期に趣味でつくっていたぽんぽんの動物が、2015年のハンドメイド作品のコンテストで大賞を受賞。

それがキッカケとなって、出版のお話をいただき、2016年の春に最初の著書が出版。

そこから個人事業主の手芸作家として仕事を始めました。

当時コンテストで受賞したぽんぽんの作品が、今の作品のベースになっています。

タイトル『チャップリン(2016年)』

手芸作家のやりがい、つらさ

手芸作家の活動をする上で、どのようなやりがいや楽しさを感じていますか?

ぽんぽんの作品づくりやテキスタイルのデザインといった創作や発表(アウトプット)の場があることによって、身のまわりにあるもの(動物、草花、小さな風景など)のかわいらしさやおもしろさ、魅力に気づくこと(インプット)ができています。

この「アウトプット」と「インプット」の循環がうまくいっていると、日々の暮らしが少し豊かになるような実感があって、しあわせだな、と感じます。

また、私の本の読者の方が作品づくりを楽しんでくださるのは、最高にうれしいです。

「作品を友だちにプレゼントしたら喜んでもらえた!」「不器用だけど完成できてうれしい!」など、SNSを通じてコメントを寄せてくださる方もいます。

うれしすぎて泣いてしまうことも(笑)。

本をつくる過程はとてもハードではありますが、一緒に本を制作してくれるスタッフの方や編集者さんが作品を見て驚いてくれたり、一緒になって知恵を絞ってくれたりするときにも、とてもやりがいを感じます。

結局は、モノづくりの向こうにはいつも届けたい「相手」の存在があるからこそ、夢中になってしまうのだと思います。

逆につらいな、大変だな、と思うことはありますか?

「やりがい・楽しさ」と「苦労・大変さ」は、いつも表裏一体な気がしています。

前述したように、本をつくる過程はハードですが、同時にやりがいを感じます。

一方では、好きなことと仕事がいつも混ざっている状態のため、仕事に没頭し過ぎて生活リズムが乱れ、体調を崩してしまうこともあります。

それはつらいかもしれません。

ごくたまに、ですが(笑)。

趣味とモノづくりの時間が確保できないときにもストレスを感じるので、心身ともにスケジューリングは本当に大切だなと実感しています。

タイトル『マヌルネコ(2018年)』

手芸作家としての目標

どのような想いを持って作品づくりをしていますか?

小さなモノや温度を感じるモノに接したとき、多くの方が「かわいいな」「いとおしいな」という感情を抱くと思います。

私自身、作品をつくりながら、そんな感情に触れています。

できあがった作品のちょっと間の抜けた表情に、心がほぐされる感覚もあります。

なので、私自身が楽しんだり心がほぐされたりしながらつくっている作品が、届いた相手の心を喜ばせたりほぐすことができたり、楽しいエピソードを生むことができたら、何よりもうれしい。

そんなことを思いながら、作品づくりをしています。

今後、手芸作家の活動を通して目指していることを教えてください。

独立してからの4年間、ありがたいことにコンスタントに仕事をいただけています。

その分、今まで必死に駆け抜けてきた感じはあるので、これからは「いかにして自分が心地よい状態でモノづくりを続けていけるか」がテーマかなと思っています。

大きな目標やビジョンではありませんが、とにかく自分自身がワクワクしながら作品をつくり続けられるための体制づくりをしていきたいですね。

具体的には、作品づくりの教室を主催したいと考えています。

しかし、今の状況(コロナ禍)もあるので、現状は教室の開催方法をリサーチしたり必要なものを揃えたりする準備段階です。

好きを仕事にしたい人に向けてメッセージを

最後に、好きを仕事にしたい方へメッセージをお願いします。

「好きなこと」と「食べていくこと」との距離感は、人それぞれでいいと思っています。

好きなことが仕事になって「仕事が大好き」な状態が自分にとって心地よければ、それは最高です。

一方、「好き」と「仕事」を上手く分けて、「好きなことを守る」選択も大いにアリだと感じます。

もし今の段階で、自分の「好き」が分からなくても、どんな状態が自分にとって「心地いいのか」が分かるだけでも十分だと思います。

どんなことを仕事にするとしても情熱さえ失わずにいれば、経験してきたことは必ず将来の糧になります。

いつか「好き」を仕事にするタイミングが来たときの準備をしておくくらいのつもりで、焦らず悩み過ぎず。

日々、目の前のことに向き合えたらいいのではないかな、と思う今日この頃です(いつの間にか自分へのアドバイスになってしまいました…)。

タイトル『ショートケーキ(2020年)』

黒田さんが手掛けた作品お気に入り3選

1.『チャップリン』
販売用・展示用ではなく、「純粋に人の顔をつくってみたい」と思ってつくった作品です。

「あなたが本当に笑うためには、あなたの痛みを取って、それで遊べるようにならなければなりません」という彼の名言も印象に残っています。

2.『マヌルネコ』
マヌルネコのまるまるとした姿形と、ちょっと怖い顔立ちのギャップがたまらず、つくらずにはいられませんでした。

つくってみたら、思っていたよりも間の抜けた顔になってしまったのですが、そこも気に入っています。

3.『ショートケーキ』
苺の断面の配色やスポンジの質感など、ぜひぽんぽんで表現してみたいと思ってつくりました。

美味しそうにできたので気に入っています。

※写真は本文中に掲載されています