製薬業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説





製薬業界とは

医薬品の製造販売や新薬の研究開発などをおこない、医療に関わる業界であることから安定しており、就職や転職で人気である製薬業界。

人気の秘密は、労働環境が整っている企業が多く、待遇も高いものだからです。

より生産性を上げて年間所定労働時間を減らしたアステラス製薬など、ワークライフバランスをさらに整えていこうとする動きもあります。

また、全体的に平均年収がとても高い水準にある業界でもあり、平均年収上位10社は、のきなみ1,000万円を超えている状態です。

加えて安定した経営状態から定年まで働く人も比較的多いとされ、それだけに競争率は高い傾向にあるのが実情で、就職は狭き門だと知っておくべきでしょう。

もっとも、一口に製薬業界といっても、医薬品や化粧品、サプリメント、企業によっては食品部門などもあります。

あなたの専門性と強みを活かせば、就職に向けて有利に立ち回れる可能性が十分あることも覚えておいてください。

ただし、2018年の薬価改定により国内市場は縮小傾向にあり、海外展開を積極的に始めたり、国内の人員削減を進めたりする動きも出てきていることを知っておきましょう。

医療に関わる業界なので、引き続き安定した需要はあるものの、合併や統合を繰り返してきている業界でもありますので、今後の業界の動向や展望について、よく知っておくべきです。

製薬業界の役割

人の命や健康に直接関わる医薬品をつくる製薬業界の役割は、なんといっても医薬品を必要とする人へ、すみやかに有効な薬を提供し、健康で安心な暮らしを実現させることです。

実際、より有効で安全な医薬品が開発、提供されるようになると、手術件数の減少や治療日数の短縮などにつながります。

病気の予防や再発を抑えられれば、患者さんの負担が減るだけでなく、国内の医療費の削減にもつながるわけです。

日本は高齢化が進んでおり、医療費の増加が深刻な課題です。

人口は減少する一方で、高齢化率はさらに高まっていくことを考慮すると、製薬業界の重要度はさらに高まると考えられます。

新薬の開発や提供はもちろん、ジェネリック医薬品や一般医薬品の製造販売といった役割も果たすべく、各企業それぞれの役割を十二分に果たすことが求められるでしょう。

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製薬業界の企業の種類とビジネスモデル

製薬業界と一口にまとめられていますが、実際には以下のように複数のビジネスモデルがあり、専業の企業も多数あります。

・先発医薬品
・後発医薬品
・バイオ医薬品
・漢方薬
・OCT医薬品

大企業だと複数のビジネスモデルをやっているところも多く、ジェネリック医薬品の製造販売を小会社でやっているケースもあります。

先発医薬品

より良い効果や負担の少ない薬を求めて、新薬作りにいそしむのが先発医薬品メーカーです。

長い時間と巨額の研究開発費がかかるため、国内外を問わず、基本的に資本力のある大手メーカーが中心になっています。

代表的な企業は以下のとおりです。

・武田薬品工業株式会社
・アステラス製薬株式会社
・第一三共株式会社

後発医薬品

特許が切れた新薬と類似の成分を含有する後発医薬品(ジェネリック医薬品)を製造販売しているメーカーです。

新薬の特許は20年で切れ、その後は3割から7割程度の値引きがされた後発医薬品が出てきます。

国の医療費負担が減るため、国策として推進されている医薬品でもあります。

代表的な企業は以下のとおりです。

・日医工株式会社
・沢井製薬株式会社
・ニプロ株式会社

バイオ医薬品

遺伝子組み換えや細胞培養の技術を駆使してつくるバイオ医薬品は、先行医薬品メーカーも手がけますが、専業のベンチャー企業も出てきています。

というのも、バイオ医薬品は従来の医薬費では満足度が高い治療ができなかった病気やそもそも治療薬のない病気への効果が期待されており、注目を集めているからです。

代表的な企業は以下のとおりです。

・サンバイオ株式会社
・シンバイオ製薬株式会社
・ペプチドリーム株式会社

漢方薬

もしかすると、漢方薬に健康食品のようなイメージをお持ちかもしれませんが、実際には保険薬としてよく処方されるなど、歴史と薬効のあるれっきとした医薬品です。

一方で、第2対医薬品に分類される漢方製剤も多数ありますので、後述するOCT医薬品メーカーを兼ねているケースも多々あります。

代表的な企業は以下のとおりです。

・株式会社ツムラ
・クラシエ薬品株式会社
・三和生薬株式会社

OCT医薬品

OCT医薬品とは、いわゆる市販薬であり、さまざまな健康管理や軽い病気の症状緩和といった用途で使われるものです。

先発医薬品メーカーも販売しているケースも多いですが、専業の企業もあり、代表的な企業は以下をご覧ください。

・ロート製薬株式会社
・エスエス製薬株式会社

製薬業界の職種

製薬業界は製造業にあたりますので、メインの職種は研究開発や営業といったものになります。

代表的な職種をまとめると、以下のとおりです。

・研究
・開発
・営業

研究

製薬業界の研究職は、医薬品の合成や分析などをおこなっています。

研究と一口にまとめられがちですが、業務はさまざまな実験をしたり、分析結果をまとめたりと多岐にわたり、チームで仕事をすすめていくのが基本となります。

大学の研究室のイメージに近いでしょう。

ちなみに、大学で研究を経験していないと就職するのは難しく、また理系で大人気の職種でもありますので、競争率は高い職種です。

開発

製薬業界の開発職はおもに臨床試験、つまり発売前の医薬品を投与して、思うような効果が得られるか確認したり、副作用が起きていないかをたしかめたりするのが仕事です。

もちろん、臨床試験で得られたデータをまとめるのも仕事ですし、医療従事者と仕事をすることも多いので、専門的なコミュニケーションも求められます。

海外のデータや論文を参照することも多く、ときには英語などで会話することもありますから、英語をはじめとした外国語ができないと仕事になりません。

なお、研究職と同じく理系出身でないと就職するのは難しいです。

営業(MR)

製薬業界の営業職はMR(医療情報担当者)ともよばれる自社の医薬品の販売流通を一手に引き受けています。

基本的には、医師に自社の医薬品を処方してもらえるようにするのが仕事ですから、病院やクリニックへ訪問し、継続的な情報提供をすることになります。

自社商品の知識はもちろん、薬学医学に関する知識が必要です。

もっとも、入社時に上記の専門性がなくても問題ないので、営業職にかんしては文系でも就職できるようになっています。

製薬業界のやりがい・魅力

やりがい

製薬業界のやりがいは、なんといっても人々の命や健康を支えられることです。

研究職や開発職であれば、新薬などを世の中に送り出すと、大きな達成感を感じられますし、営業職であれば、医薬品が活用されている声を聞く機会も多いことでしょう。

人口減少と高齢化がすすむ国内において、医薬品はますます重要視されると考えられますから、健康面から社会を支えているというやりがいを感じられます。

待遇

製薬業界は、待遇がいいのも魅力的なポイントです。

医療という需要がなくならない分野であり、経営が比較的安定しているため、社員寮や保養所といった充実した福利厚生が用意されていることが多いです。

また、平均年収も高く、2019年の平均年収トップのソレイジア・ファーマは、1,500万円を超える平均年収となっています。

給与の他にも、住宅手当や扶養手当といった支援にも期待できますので、総じて製薬業界の待遇は高いといえるでしょう。

将来性への期待

景気に左右されることがなく、普遍的な需要があるため、将来性は安定していると考えられます。

もっとも、2018年の4月の薬価改定以降、国内の市場は縮小傾向にあるのも事実です。

またジェネリック医薬品による単価引き下げも無視できないものがありますので、業界全体として海外へ活路を見いだしていく流れが続くでしょう。

製薬業界の雰囲気

医療系の業界であり、人の命と健康にかかわる分野なだけに、堅実でまじめな雰囲気な傾向にあります。

一方で、新たな薬の研究や開発を積極的におこなっているため、風通しが良い企業も多いです。

また、理系の社員が多いためか、効率や生産性を重視し、実際に働きやすい環境を実現できている企業も多いのが、うれしいポイントになっています。

製薬業界に就職するには

就職の状況

製薬業界には、国内有数の大手企業も多数あり、安定した需要から毎年新卒の募集がされています。

アステラス製薬のように、毎年100名近い新卒を採用している企業もありますので、就職のチャンス自体は用意されると考えていいでしょう。

ただし、製薬業界の人気はとても高いものですし、研究職や開発職では大学や研究室のコネクションが影響するのもたしかです。

就職へのハードルは高いものですので、入念な企業研究や志望動機づくりなどが欠かせない業界だといえるでしょう。

ちなみに男女の採用比率は、半々に近い傾向にある業界でもあります。

就職に有利な学歴・大学学部

有名大学出身の人は多いですし、大学院出身の人も多いですから、学歴が高いにこしたことはありません。

もっとも、職種ごとに役割分担が明確な業界でもありますから、職種ごとに優秀だと判断してもらえる素養があれば、十分就職のチャンスはあるともいえます。

したがって、企業研究が重要です。

ただし、研究職と開発職においては、明確に就職できる学部と就職できない学部が存在していることを忘れてはいけません。

具体的には、生物化学系や医歯薬系、獣医系に物理系といった理系の職種でないと、研究と開発に携わるのは難しいです。

営業職にかんしては、入社後に入念な研修がおこなって専門性を身につけさせてくれる企業が多いため、文理の区別なく就職するチャンスがあります。

就職の志望動機で多いものは

製薬業界は、職種によって重要視されることが明確に違いますが、ミッションは医薬品で人々の健康に寄与することです。

したがって、命を救い、QOLの向上に貢献したいという思いが根底にある志望動機が、一般的です。

そして、命と健康に貢献するために、自身の強みや専門性を応募する職種と関連づけましょう。

もちろん、企業ごとに力を入れている分野が違いますので、特定の病気や疾病に思い入れがあるなら、その分野へ注力している企業でアピールしたいところです。

実際に就職できた際に、その企業で実現したいこととと、これまで養ってきたことを上手く結びつけることも忘れないようにしてください。

製薬業界の転職状況

転職の状況

転職の需要は営業職を中心に通年でしていることも多く、狭き門でありながらもチャンスはある状況といえるでしょう。

普遍的な需要がある業界ですので、数年後に製薬業界への転職を計画しても実現する可能性があるほどです。

もっとも海外進出の流れが確実にきている業界でもありますので、英語などのスキルを磨いておく必要はあるでしょう。入社後のつぶしも効くはずです。

転職の志望動機で多いものは

新卒採用とおなじく、転職の志望動機人々の命と健康の維持に寄与する製薬業界で働きたいといった内容が、志望動機として多い傾向にあります。

もちろん、あなたがこれまでに養ってきたスキルや経験を活かして、応募する企業でどのように役に立つかも盛り込む必要があります。

また、待遇や給与がいいだけに、転職市場でも製薬業界は人気が高く、志望動機が弱いと採用が遠のく可能性も十分考えられます。

応募する企業のミッションとあなたがどのような形でその企業に貢献できるかをしっかりとアピールしましょう。

転職で募集が多い職種

製薬業界の中途採用は、営業職を中心としています。

やはり研究や開発ほどの専門性が求められない点が大きいでしょう。

ただし、先発医薬品メーカーともなると、MRの経験数年が必須条件になる場合もあると知っておきましょう。

業界未経験なら、後発医薬品メーカーのMRなどから、先発医薬品メーカーのMRへとキャリアチェンジしていくのが一般的です。

また、入社後の薬学や医学の勉強に耐えられそうかも、あらかじめ考えておいてください。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

MRとしての入社を目指すなら、営業の経験があれば、未経験でも採用される可能性はあり、医療従事者として働いた経験もあれば、高評価してもらえる可能性もあります。

もちろん、製薬企業で働いた経験があったり、MR認定試験に合格したりしているなら、有利に働くのは間違いありません。

また、業界全体として、海外進出に積極的になってきていますので、英語などができると転職しやすいといえます。

研究や開発職の募集もありますが、他企業での研究開発の経験が求められる場合がほとんどです。

製薬業界の有名・人気企業紹介

アステラス製薬株式会社

2019年の「医薬品業界の仕事にやりがいを感じる企業ランキング」トップの企業がアステラス製薬です。

抗がん剤や免疫抑制剤などを特に強みとしており、世界50カ国以上に自社販売網を持ち、海外売上比率が7割を超える企業です。

アステラス製薬株式会社 ホームページ

武田薬品工業株式会社

国内最大手の製薬企業といえば、武田薬品工業です。

主に、消化性潰瘍治療薬や制癌剤などを主力製品とし、医師からの信頼も厚い企業として、知られています。

武田薬品工業株式会社 ホームページ

第一三共株式会社

国内で先に紹介した2社に次いで大手なのが、第一三共株式会社です。

先行医薬品の研究開発もしており、ガンに対して強みを持っていますが、小会社の第一三共ヘルスケアでロキソニンやルル、リゲインなど、多数の有名医薬品の製造販売もしています。

第一三共株式会社 ホームページ

製薬業界の現状と課題・今後の展望

競争環境(国内・国外)

製薬業界の今後は、国内においての競争というよりも、海外での競争が徐々に主戦場になっているといわれています。

実際、2019年に武田薬品工業がアイルランドの製薬大手であるシャイアーを約6兆円で買収し、日本企業としては、過去最大のM&Aをしています。

上記のM&Aを機に、長けた薬品工業は売上高も世界のトップ10に入り、海外での競争力を高めることに成功しました。

最新の動向

新薬開発による、ハイリスクハイリターンな方針から、M&Aにより新薬を企業もろとも買収し、グローバルに展開していこうという動きが強まっています。

1990年前後に開発した新薬の特許が次々と切れた、いわゆる製薬業界の2010年問題から時間がたっていますが、国策でジェネリック医薬品を増やす方針も出てきました。

国内で新薬を開発するリスクを取るよりも、M&Aなどを駆使して、海外で事業を拡大していこうという動向は今後も続くことでしょう。

業界としての将来性

海外で事業の成長を見出そうという動きが強まっていますが、国内で医薬品の需要がなくなることはなく、今後も堅実な経営基盤を持ち続ける業界には違いありません。

国内の人口自体は減っていますが、高齢化と長い寿命を誇る日本において、医薬品の重要度自体は、ますます大きくなっていくことでしょう。

したがって、製薬業界の将来性は、他業界と比べて明るく、堅実であると考えられます。

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