製紙業界(読了時間:11分19秒)

製紙業界とは

紙・パルプ産業ともいわれる製紙業界。

新聞用の紙やコピー用紙などをイメージするかもしれませんが、近年はデジタル化の波により、さまざまな分野へと手を広げている業界です。

たとえば、紙の原材料であるパルプで別の使い道を模索したり、森林事業を始めたりといった動きが顕著になっています。

なお、一口に紙といっても、ダンボールや板紙、パッケージ用の紙の開発やデザイン作成など、既存の事業の幅も広いものです。

したがって、昔ながらの堅実な雰囲気がある一方で、新規事業に意欲的な雰囲気もあわせ持つ業界だといえるでしょう。

一方で製紙業界の国内市場はすでに頭打ちで、成熟期にあるといわれており、買収や再編などの可能性もあります。

とはいえ普遍的な紙の需要があることも事実で、2017年から2018年にかけては、業界規模が増加しているのも事実です。

ただし、詳しくは後述しますが、海外での売上比率が大きい場合も多くなっていることに留意しておきましょう。

年収については、業界トップの企業ともなると、800万円を超えており、2017年から2018年においてはトップから11位までの企業が平均給与600万円以上となっています。

製紙業界の職種は、営業や開発など一般的な職種も多いですが、生産部門のプラントエンジニアリング職や海外植林職などは、業界特有のものだといえるでしょう。

製紙業界の役割

製紙業界のメインとなる役割は、なんといっても読む書くといった、人が普遍的におこなっている活動を支えていることです。

業界トップの王子製紙などは、1873年の創業以来ずっと紙の安定供給をしており、文化に貢献する会社であることを基本理念としています。

もちろん紙は書いたり読んだり以外にも包装紙やダンボールのように包んだり、トイレットペーパーやキチンペーパー、紙おむつなどように拭いたりといった用途もあります。

上記の商品は、次代の変化とともに製紙業界が提案、普及させ、結果的に世の中に便利なものを普及させてきた結果です。

第4次産業革命のまっただ中である昨今、製紙業界の潜在的な需要、役割を模索していくのも1つのミッションだといえるでしょう。

また、紙の原料となるパルプの生産が欠かせない関係から、森や紙のリサイクルといった環境面への取り組みも積極的にしている業界であることも忘れてはいけません。

製紙業界の企業の種類とビジネスモデル

製紙業界は基本的には、紙を製造している業者のことを指し、販売代理店や二次卸は、専門商社の形態を取っていることが多いです。

具体的な販売代理店の企業としては、日本紙パルプ商事や丸紅紙パルプ商事などが該当します。

そして、製造業中心の製紙企業は、得意分野に集中しているところも多いため、企業の種類が細分化されています。

具体的な企業の種類は、以下が代表的です。

・総合製紙
・家庭紙
・板紙
・専用紙
・パルプ専業
・特殊紙
・紙加工品

なお、業界でも大手の企業は総合製紙業に分類されることが多いので、総合製紙業を中心に解説していきます。

総合製紙

段ボールや書道用半紙、ろ紙、抗菌紙など、幅広い種類の紙を製造しているのが、総合製紙業の企業です。

大手企業が多く、業界トップの王子ホールディングスや2位の日本製紙などが、総合製紙業の企業に該当し、東証一部やJASDAQなどに上場している企業が多いです。

王子ホールディングスなどは、再編や合併を繰り返しおこなって規模を拡大してきた歴史もありますから、業界をリードし、製紙業界全体の価値を高めていく役割を担っているといえるでしょう。

代表的な企業は以下のとおりです。

・王子ホールディングス株式会社
・日本製紙株式会社
・大王製紙株式会社

家庭紙

トイレットペーパーやディッシュペーパー、キッチンペーパー、紙おむつといった巨大な市場を支えているのが家庭紙を生業とした企業です。

市場が大きく、需要が変わらずあることから、総合製紙業に属する大手企業が子会社として多数参入しています。

特定のジャンルの商品や地域で、大きなシェアを持っている企業が多数あるのも特徴です。

代表的な企業は以下のとおりです。

・王子ネピア株式会社
・日本製紙クレシア株式会社
・大分製紙株式会社

板紙

板紙も大きな市場を誇ります。

実際、製紙業界売上3位のレンゴーは、板紙で最大手であるおかげで、連結での年間売上高が、6,000億円を超えているのです。

なお、板紙とはダンボール用や紙器用の原紙のことを指します。

代表的な企業は以下のとおりです。

・レンゴー株式会社
・王子マテリア株式会社
・株式会社トーモク

製紙業界の職種

製紙業界は基本的に製造業ですから、メーカーによくある職種が中心になっており、具体的には以下のとおりです。

・生産
・開発
・営業
・事務

なお、製造は製紙業界特有の仕事も多いので、注意が必要です。

生産

生産職は、製紙業界で中核をなす職種の一つであり、業界の特色が出ている職種でもあります。

具体的には、より生産性の良い植林環境を整えるために、海外での植林をしたり、研究をしたりしています。

また、紙を精算している工場に関わる業務を担当するプラントエンジニアリングの仕事では、設備更新やラインの計画立案やコストなどを計算しています。

業界全体として、新たな需要を常に模索していますので、研究や開発職との密なやりとりをすることも多いです。

開発

製紙業界の開発職は、次代の変化に合わせて既存製品に手を加えたり、全く新しい素材や商品の研究開発を行ったりています。

ペーパーレス化の波は確実に普通紙などの需要を確実に減らしており、新商品や素材の開発に積極的な企業は多いです。

理系の企業で専門的な知識を養っているなら、先進的な仕事ができる機会もあるでしょう。

営業

製紙業界の営業職は、近年外国語が求められる傾向にあります。

なぜなら、事業の拡大を確実におこっていくためには、頭打ち感のある国内市場ではなく、海外市場に目を向けるのが建設的だからです。

実際、2019年に王子ホールディングスが最高益を更新したのは、海外でパルプなどの資源事業を強化してきためであり、海外売上比率が3割を超えています。

今後も海外進出の傾向が続く見込みですので、製紙業界の営業職は外国語の習得が重要になってくるでしょう。

営業事務

事務職においても英文での読み書きや現地の言葉での電話対応などをするケースが増えてきています。

もちろん、製造や販売に関するデータをまとめたり、営業のアシストをしたりといった業務もおこないます。

製紙業界のやりがい・魅力

やりがい

製紙業界の製品は、日常生活でも広く使われているものがとても多く、なにかと目に触れる機会もすくなくありません。

見かけたときに、自分が提案したものや製造したものが、世に出回っていることに実感を持ち、やりがいを感じられます。

また、紙は人間の営みを古来より支えてきたものであり、今なお欠かせないものですから、社会的な必要性と使命感を感じやすいのもポイントです。

待遇

製紙業界の待遇は充実したものだとされています。

実際、売上が業界で上位の企業では、独身寮や賃貸手当、福利厚生代行サービス、保養所などが完備されています。

また、業務のスケジュールを比較的コントロールしやすい業界であり、カレンダー通りの休日が取りやすいです。

年収に関しても先に紹介した通り、平均年収が600万円を超える企業が少なくありませんので、製紙業界の待遇は総じて高いものだと考えられます。

将来性への期待

デジタル化の波はたしかに押し寄せており、ペーパーレス化がさまざまな業界の企業で推進されていますが、それでも紙の需要がなくなることはありません。

ただし、現状のままでは国内市場での成長は、ほとんど見込めないのも事実です。

新たな需要を想像するための研究開発や海外事業の重要度の比率が、さらに増していくのは間違いないでしょう。

根強い需要がありますが、業界全体を縮小させないための努力は欠かせません。

製紙業界の雰囲気

紙には根強く普遍的な需要があることから、どちらかというと堅実で安定している雰囲気の傾向にあります。

一方で、既存事業にだけ注力していても売上が上がらないシビアな現状もあり、積極的な事業展開が求められます。

実際インターネット通販や海外事業に積極的な王子ホールディングスは好調で、方向転換に消極的だった日本製紙は売上がピークの4分の1まで減少しています。

生活用紙を始め国内の需要自体がすぐに消えることはありません。

しかし,紙づくりで栄えてきた町である北海道苫小牧市において、紙の生産から撤退するなど、既存事業だけで売上を維持するのは難しい状況です。

新しい風をふかせられる人材を渇望する雰囲気は、業界全体のものでしょう。

製紙業界に就職するには

就職の状況

製紙業界は採用人数が決して多いとはいえませんので、希望通りの企業へ就職するのは、簡単ではありません。

具体的には、業界最大手である大王ホールディングの関連会社である大王製紙でも、2020年の採用人数は46~50名程度です。

企業の数自体も数百社とあるわけでもありませんので、業界研究と企業研究は入念にすることをおすすめします。

ちなみにおおまかな男女比率は、男性:女性=3:1くらいの割合です。

就職に有利な学歴・大学学部

難関大学や有名大学の採用実績が多数ありますので、学歴は高いにこしたことはないでしょう。

また、学部は幅広く採用されており、事務系や営業系の職種では、さほど学部は重要視されない傾向にあります。

ただし、業界全体として海外進出が目標になっていますので、外国語ができるとプラスに評価してもらえる可能性があります。

就職を希望する企業の海外の売上比率や方針などを確認して、アピールするといいでしょう。

なお技術職では、明確に理系の学部が求められ、具体的には以下の系統の学部が有利です。

・機械系
・電気・電子系
・生物・生命科学系
・化学・物質工学系

就職の志望動機で多いものは

製紙業界は、生活や文化に欠かせない紙を製造していますから、やはり文化や生活必需品を作ったり、広めたりすることにやりがいを感じるという志望動機が多いです。

企業ごとに力を入れている、入れていいきたい事業や地域が異なりますので、企業研究をした上で、志望動機に組み入れる必要があります。

特定の地域の文化に専門性があったり、留学経験があったりするなら、企業と接点が持ていないか模索しましょう。

また、理系の学部で研究テーマと企業の既存事業や力を入れていきたい分野などがマッチしそうなら、アピールしましょう。

製紙業界の転職状況

転職の状況

製紙業界への転職はハードルが高い傾向にあります。

というのも、各企業でコストを押させるべく少数精鋭を目指そうとする動きや配置転換をする動きがあるからです。

勤続年数もおよそ20年近い傾向にありますので、既存事業でのポジションへ常に多くの採用人数が設けられているような業界ではありません。

といっても、ここまでご紹介してきたとおり、他の分野や海外への進出を目指す動きが業界全体にあるのはたしかです。

企業ごとの経営・事業戦略の方向性の変化とともに、転職者の需要自体があるのは間違いありませんので、動向を見守ると良いでしょう。

転職の志望動機で多いものは

企業ごとに得意としている紙や大きなシェアを獲得しているケースが多い業界ですので、見知っている商品に関わり貢献したいといった志望動機が多いです。

また、紙の新たな価値や使いみちの創造に余念がない業界ですので、企業で実現できそうなアイデアや新たに貢献できそうなことがあるなら、ぜひともアピールしましょう。

他にもパルプを使用する関係上、環境保護などをミッションに上げている企業も多く、接点が持てないか考えてみましょう。

転職で募集が多い職種

海外事業に関連した営業や企画といった職種が多い傾向にあります。

さまざまな分野への進出や価値創造が必要な企業が多いので、志望する企業が注力したい分野への専門性や類似の業務経験があれば、業界未経験でもチャンスはあります。

逆に、国内営業などは紙営業士という専門的な資格もあるくらいですので、業界経験がある方が有利な感はいなめません。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

海外への進出を積極的にしていく流れが業界全体にありますので、特定地域での就業経験や関わりたい意欲や言語スキルがあるなら、志望動機として取り入れましょう。

製紙業界の有名・人気企業紹介

王子ホールディングス株式会社

国内で最大手の企業であり、世界の紙パルプ業界においても有数の規模を持つのが王子ホールディングス株式会社です。

近年最高益や国外への進出を積極的にしており、マレーシアの企業をM&Aするなど、なにかとチャレンジングな企業です。

王子ホールディングス株式会社 ホームページ

日本製紙株式会社

王子ホールディングスに次ぐ大手企業であり、三井グループと芙蓉グループに属するのが日本製紙株式会社です。

印刷用紙の生産では国内トップであったり、新聞用紙に大きなシェアをもっていたりし、国内に大きな影響力を持っています。

日本製紙株式会社 ホームページ

レンゴー株式会社

業界第三位に君臨しているのが、レンゴー株式会社です。

段ボールや板紙の分野では業界最大手であり、耐水や防炎などの機能をつけたものを研究開発していることで知られています。

また、デザインチームの採用もあり、デザインのマーケティングやコンサルティング営業などに携われるチャンスもあります。

レンゴー株式会社 ホームページ

製紙業界の現状と課題・今後の展望

競争環境

歴史の長い業界である影響もあり、国内市場は成熟期にあるとされています。

実際、各企業で得意としている分野や地域のすみ分けがされており、国内で競合他社との激しい争いは比較的少ない業界です。

一方で、早急な海外進出が各企業で命題とされていますが、他の業界と比べるとまだまだ進出が遅れており、ロールモデルも少ないのが現状です。

したがって、海外への進出と競争が業界全体に広がっていくと考えられています。

最新の動向

吸収性物品やトイレットロース包装体といった特許技術や弾性フルムや石炭・バイオマス混焼発電といった多分野への事業展開がおこなわれています。

自社開発はもちろん、企業や部門買収をおこなって、さまざまな技術や多分野への進出が続くと考えられています。

したがって、今後どの企業がどの分野に目をつけ、事業を拡大していくか、注目しておく必要があるでしょう。

業界としての将来性

古来より読み書きなどに使われ、今後も使われ続けるのは間違いない紙ですが、新聞業界や出版業界の不振と関連して、売上は落ちている分野も少なくありません。

もちろん生活用紙といった生活必需品が多数あり、ダンボールのように国内でも売上が伸びている分野もあります。

業界全体としては、海外へ活路を見出したり、別の分野へ紙を活かして価値を創造したりすることを重要視されているのを覚えておくべきでしょう。

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