日々前進!「この先生で良かった」と言われる教師を目指して

日本語教師石坂 友絵さん

1987年生まれ。群馬県出身。國學院大学文学部在学中、日本語教育能力検定試験に合格、東京中央日本語学院「日本語教師養成講座420時間コース」を修了。卒業後は同校で非常勤講師として勤め、2012年8月より専任講師に昇任。

現在のお仕事内容について教えてください。

「東京中央日本語学院」という民間の日本語学校で、外国人に日本語を教えて4年目になります。

また、当校では日本語教師を目指す方向けの養成講座も開講しており、そちらの講義も一部担当しています。

どんなきっかけで、日本語教師を目指そうと思ったのですか?

高校に入ったばかりの頃までは、現代文も古文もすごく苦手だったんです。でも、高校3年生の時に出会った先生の教え方がとても上手で、少しずつ国語が好きになって。「将来は先生になりたいな」と考えるようになりました。

でも、その時はまだ自分が「国語」と「日本語」のどちらを教えたいのか決めきれていなかったので、国語教育と日本語教育の両方を学べる大学に進学しました。

では、大学で勉強する間に進路が固まったのでしょうか。

はい。最初は国語教師になるための教職課程も取っていましたが、日本語の文法や音声学などについて専門的に勉強するうちに、自分が好きなのは「日本語」だとわかってきたんです。

日本文化にも興味がありましたから、「外国人に日本の良さを伝えたい」と思って、日本語教師になる道を選びました。

日本語教師になるのに資格は必要ですか?

基本的には次の3つのうち、いずれかを満たしていることが求められます。

1つは、民間の学校が開講している「日本語教師養成講座」で420時間のカリキュラムを修了すること。次に、日本国際教育支援協会の「日本語教育能力検定試験」に合格すること。そして最後に、大学や大学院の日本語教育科目を履修することです。

就職先となる日本語学校では、この3つのうちどれかをクリアしていることが求められるケースが大半です。

私は日本語教育が主専攻ではありませんでしたが、副専攻として日本語教育の科目を履修していましたし、大学3年の時には日本語教育能力検定試験にも合格しました。

でも、大学ではほとんど理論しか勉強していなかったので、将来「教える」ということを考えると、実技面の不安が大きかったんです。そこで、大学4年生になって周りが就職活動に励んでいる間、私は日本語教師養成講座に通って半年間勉強しました。

大学を卒業したのち、こちらの学校に就職したのですか?

はい。養成講座修了生の一人として、こちらの学校に採用していただくことができました。

当初は非常勤講師でしたので、自分の担当授業がある時だけ、週に2~3日くらいの出勤でしたが、クラス担任を受け持つようになってからは、ほぼ毎日出勤していました。2年半ほど経った頃に専任講師となって、現在もフルタイムで働いています。

専任講師と非常勤講師の違いを教えてください。

あくまで当校の場合ですが、専任になると授業だけではなく、学校運営に関する業務にも携わるようになります。非常勤の時は、自分が受け持つ授業の準備やクラスの管理だけでよかったので、仕事量はだいぶ増えました。

待遇や給与面も違いがあります。授業を受け持った分だけお給料が出る非常勤に対し、専任になると月給として決まった額がいただけるので、専任のほうが安定しているといえると思います。

石坂さんは現在、どんなクラスを担当していらっしゃるのですか?

「中級」のクラスを受け持っています。レベルでいうと、日常会話ができるくらいですね。1クラスの学生の数は20人ちょっとで、10代から30代まで年齢はバラバラ。国籍もさまざまです。

最近は中国やベトナム出身の方が多いですが、このクラスにはベネズエラ出身の方などもいまして、多様な国の学生が集まっています。

ちなみに学校全体でいうと、現在は400人くらいの学生が通っています。4月、7月、10月、1月と年4回の入学期があって、基本的には2年で修了です。

どのクラスも3ヵ月ごとにレベルアップしていくので、それに合わせて担任が変わることもあります。

日本語学習者の方は、どんな目的を持って通学されているのですか?

一番多いのは、日本の大学や専門学校への進学を目指す人ですね。留学生が日本の大学への進学を目指す場合、大学の講義を十分理解できるだけの日本語が求められるので、とても大変です。

また、将来的に日本での就職を見据えて、ビジネスや経営、IT系の専門学校への進学を目指す人も多いですし、中には日本の料理、メイク・ファッションなど、特定の分野に興味を持ち、それに関する学校への進学を目指す人もいます。

でも、留学生ばかりではありません。たとえば、国際結婚をして日本に住むようになり、生活する上で日本語能力が足りないと感じて通学する人もいます。

さまざまなバックグラウンドや目的を持った人が一緒に学ぶので、お互いにいろいろな話をしながら交流を楽しんでいます。

毎日の授業の様子と、授業内容について教えてください。

月曜日から木曜日は教科書を使った「読解・会話・漢字・文法」の授業を行います。金曜日は少し色が違って、作文や会話の練習、またクラスごとに補強が必要だと思うポイントを重視した授業をしています。

授業では全て日本語を使い、学生同士の会話も、どうしてもわからない言葉以外は日本語を使うよう指導しています。

集まるメンバーによってクラスの雰囲気は違いますが、基本的にみんなよく喋りますし、楽しい授業ができた時はワイワイ盛り上がりますよ。

大勢の学生の前に立って授業をするのは、緊張しませんか?

今でこそ慣れましたが、新人時代はとても緊張しました。養成講座で教育実習の経験はあったものの、やはり仕事としての最初の授業は全然違う気分でした。

授業の前に、授業で話すことを一字一句書いた「教案」を作るのですが、研修期間中は先輩に内容をチェックしてもらうんです。それを元に授業に臨むのですが…それでも、ドキドキでしたね(笑)

いろいろな国の方と同時に接するというのも、大変そうに思えます。

授業そのものは日本語しか使わないルールですし、それほど苦労することはないですよ。

日本ならではの考え方、概念を教える時は気を遣いますが、学生も日本のことに興味を持っていますし、違う文化を共有し合えるのはこの仕事の魅力の一つだと思います。

いろんな学生と向き合うのでプレッシャーはありますが、そこで悩んでいても仕方ないですから。少し悩むことがあったとしても、暗い顔をするのは自分一人でいる時だけ。

学校に来たら、いつでも笑顔でいるようにしています!

授業以外で学生との交流はあるのでしょうか?

当校は季節ごとの行事を大切にしていて、春はお花見、年末には忘年会、あと、みんなで旅行する機会もあります。他に、クラスの飲み会や、学生が集まっているところに誘ってもらうことも。

毎日の学校生活でも、授業時間外に学生と話す機会は多いです。ちょっとした悩みを聞いたり、進路相談に乗ったりすることも仕事の一部です。

1日のスケジュールを教えてください。

平日は8時過ぎに出勤し、9:00に授業がスタートします。90分1コマで、一日にだいたい3コマの授業を担当します。授業は16:40に終わり、その後はクラスのまとめや事務作業などをします。

普段は19時くらいに退社することが多いですが、今は学生の受験の時期が近づいているので、遅くなることも多いですね。

土曜日は、日本語教師養成講座で担当する授業があれば出勤しますし、お休みになることもあります。日曜日は毎週お休みです。

オフの日の楽しみはありますか?

ここ1年くらいのマイブームで、よく演劇や舞台を観に行っています。でも、お休みの日も授業のことを考えちゃうことが多いです。

「来週はどんなこと話そうかな?」なんて、通勤中の電車でも、家に帰ってからも、ずっと考えてしまいます。

お仕事でやりがいを感じる瞬間は、どんな時ですか?

授業がうまくいった時です。この仕事は、良くも悪くも学生の反応がその場でわかるので、自分の授業で学生が楽しそうにしていたり、クラス全体が盛り上がったりすると、とてもうれしい気持ちになります。

そんな時は、時間をかけて準備して良かったなと思えますし、「次はもっとがんばろう!」って、ますます張り切っちゃいます(笑)

実際に仕事を始めてから、日本語教育や日本語教師に対するイメージは変わりましたか?

日本人として日本語を勉強しているよりも、外国人に教えることのほうが遥かに大変だということに気付きました。

また授業以外に、進学指導や学生の管理に関する雑務も多いですし、外国人が日本に滞在するのに必要なビザや入管法の知識、大学・専門学校の進学の知識など、日本語そのもの以外の勉強も重要だというのは、仕事を始めてから感じたことですね。

日本語教師として働いているのは、どんな方が多いのでしょう。

この学校に関していえば、20代の女性が多いです。もともと女性が興味を持ちやすい職業というのもあるでしょうし、非常勤から専任になるまでに数年かかるのが普通なので、特に男性の場合、その点に不安を感じる人が多いのかもしれませんね。

でも、この仕事をするのに年齢は関係ないと思いますし、別の業界から転身する人もいますよ。

私も不安がなかったわけではありません。非常勤の頃は、とにかく早く専任になりたかったので、授業はもちろん、事務処理などもできることは何でも率先してやりました。

先輩から「ガツガツしてるね」って言われていたほどです(笑)

日本語教師になるためには主に3つの方法があるということですが、実際、どの方法を選ぶのが一番よいのでしょうか?

日本語学校などの採用条件にもよると思うので一概には言えませんが、「日本語教師養成講座420時間」の場合、理論だけではなく、教育実習等を通して実技までしっかりと学べることが強みだと思います。ただ、養成講座は通学が必要です。

一方、「日本語教育能力検定試験」は通信講座や独学でも取得可能なので、時間やお金がないという方には向いているかもしれません。

早くから日本語に興味を持っているのであれば、日本語教育を主専攻として学べる大学や大学院に進むのもよいのではないでしょうか。知識があって困ることはありませんから。

とはいえ、やはり仕事となると「教えられてナンボ」の世界ですので、実技経験がある人のほうが有利になることが多いとは思います。

今後の目標があれば教えてください。

もっと授業が上手な先生になりたいです。教室に入った時、学生から「今日はこの先生で良かった」と思ってもらえるように、楽しい授業、わかりやすい授業をモットーにがんばっています。

昔は自分のことだけで精一杯でしたが、経験を積んできたからこそ、毎回の授業後に「もっとこうすれば良かったな」と気付けるようになってきました。「先生」と呼ばれるからには、もっと先生らしくならないといけないなと、最近あらためて感じています。

石坂さんの思う「日本語教師に向いている人」とは、どんな人でしょう?

一番は、人とコミュニケーションをとるのが好きな人。それと、いろいろな国の文化に興味がある人や、自分自身の視野を広げたい人ですね。

あと、元気で体力のある人が向いています。授業の準備に時間もかかりますし、授業中、ずっと立ったまま話すのは思っている以上に体力を使うので、いつもハツラツと、健康でいることが大事です!

あらためて、この仕事の魅力はどんなところにあると思いますか?

毎日働いていて思うのが、笑える時間がとても多いということ。

働くことって、みんな何となく「大変」っていうイメージがあるかもしれません。でも、私は楽しみながら仕事ができていて、とても幸せなことじゃないかなって思っています。

それに、日本のことを伝えることで、私自身が日本の良さに気付く瞬間も多いです。

外国の方から日本の良いところや悪いところを指摘されることで、「外国の人にはそんな風に見えてるんだ!」って思ったり、毎日いろんな発見がありますよ。

最後に、日本語教師になろうかどうか迷っている人に、メッセージをお願いします。

この仕事に興味を持つ人は、「日本語や日本文化、外国の文化が好き」「外国の人とたくさん接してみたい」という人が多いと思いますが、その「好き」という気持ちはとても大事です。

それに加えて、「外国の方に日本の良さを知ってもらいたい」という気持ちがあれば、絶対にいい先生になれるはずです。

収入や待遇面について厳しい話を聞くこともあるでしょう。私も最初は少し迷いました。でも、やりたいと思った仕事、好きなことを仕事にしたいという気持ちのほうが勝って必死でがんばった結果、今は専任として働くことができています。

強い気持ちを持って頑張れば道は開けてきますので、ぜひ勇気を持って踏み出してみてください。

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