教育業界(読了時間:12分10秒)

教育業界とは

教育業界には、

・学校などの教育機関
・学習塾や資格取得向け講座のような学習サービスを提供する民間企業
・社会のニーズに応える教育サービスを提供する非営利団体

などがあります。

教育機関(幼稚園・小学校・中学校・高等学校・専門学校・大学)は、国が運営する「国立」、地方自治体が運営する「公立」、その他の企業や団体が運営する「私立」に分けられます。

民間企業が提供する学習サービスには、学習塾のような子ども向けのものと、資格取得のためのスクールのような社会人向けのものとがあります。

社会のニーズに応える教育サービスは、団体によってさまざまなテーマに取り組んでいます。

民間企業が提供する学習サービスの市場調査(矢野経済研究所『教育産業白書2018年版』)によると、近年、教育市場は横ばいの傾向にあります。

今後は少子化による市場の縮小が見込まれており、より競争が激しくなることが想定されている業界のひとつです。

教育業界の役割

教育業界の役割は、「人を育むこと」です。

相手が子どもであれ、社会人であれ、教育とはそれを受ける人の進路やキャリアに大きな影響を与えうるものです。

特に、義務教育やその後の高等教育として子どもたちが毎日のように通う教育機関は、子どもたちの将来に与える影響が大きいといえるかもしれません。

幼稚園~高等学校の学習指導要領を定める文部科学省は、「これからの教育課程の理念」として2018年に次のように述べています。

「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な教育内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを明確にしながら、社会との連携・協働によりその実現を図っていく。」(文部科学省『新学習指導要領について』)

文部科学省 新学習指導要領について

「教育=学校などの教育機関が行うもの」と思われがちですが、教育機関だけでなく、民間企業や非営利団体などとも連携しながら人を育む動きが進んでいます。

教育業界の企業の種類とビジネスモデル

教育機関

教育機関は、国や地方自治体が管理する税金と、園児/生徒/学生から集める授業料などで運営されます。

公立の場合、義務教育である小学校・中学校と、2010年に授業料の無償化がはじまった高等学校の運営は、すべて税金でまかなわれます。

公立の幼稚園や大学は、税金ですべての運営費をまかなえないため、園児/学生から授業料を集めることになります。

私立の場合、運営資金のほとんどが園児/生徒/学生から集める授業料です。

そのため、公立に比べて園児/学生が負担する授業料も高くなる傾向にあります。

民間企業

民間企業の学習サービスは、塾や講座の受講生から徴収する授業料が主な資金源となります。

子ども向けの学習サービスには、学習塾や予備校、通信講座や学習アプリなどがあり、「ベネッセホールディングス」や「学研ホールディングス」が代表的な会社として挙げられます。

社会人向けの学習サービスには、資格取得のための講座や語学学校などがあり、「ヒューマンホールディングス」や「TAC」が代表的な会社です。

非営利団体

非営利団体は、サービスの提供先である教育機関などから収入を得ることもありますが、助成金や補助金、寄付金などが運営資金の比較的大きな割合を占めているところに特徴があります。

子どもやその親に経済的な負担をかけずに教育サービスを提供できるため、たとえば家庭の事情で塾などに通えない子どもたちのために学びの場をつくるような活動も可能になります。

「認定NPO法人カタリバ」では、「どんな環境に生まれ育っても未来をつくりだす力を育める社会」を目指し、高校生と大学生が本音で語り合うプログラムなどを運営しています。

教育業界の職種

「教育」という言葉を聞くと、教師・講師をイメージする人が多いかもしれません。

しかし、特に私立の教育機関や民間企業、非営利団体が教育事業を行うにあたっては、さまざまな役割の人が必要とされています。

広報・マーケティング

広報・マーケティングでは、たくさんの園児/生徒/学生や受講者を集めるため、自分たちの組織や教育プログラムの魅力を発信します。

特に民間企業では、園児/生徒/学生や受講生から支払われる授業料などが企業の収入に直結します。

少子化が進み競争が激しくなっている近年、教育業界の広報・マーケティングは重要な役割のひとつだといわれています。

教材の編集・制作

授業やプログラムの実施に向けて、必要な教材の編集・制作を行います。

教員・講師自身が自分で準備するケースもありますが、学習塾や資格学校などでオリジナル教材を作っている場合には、教員・講師とは別の担当者が置かれる傾向にあります。

たとえば学習塾における教材の編集・制作の場合、学校教育に大きな影響を与える文部科学省の指針など必要な情報も確認しながら、生徒のニーズを満たす教材づくりが行われています。

近年、ICT技術やタブレット・スマートフォンなどの発展により、どこでも気軽に映像教材が受講できる「eラーニング」も増えてきています。

それに伴い、eラーニングのシステムや制作技術を持つ会社に、学習教材の編集・制作を依頼しているケースもあります。

教師・講師

教育機関、民間企業、非営利団体といった形態にかかわらず、教育業界で広く求められているのが教師・講師です。

教える場所、教える内容によって、必要とされる資格や経験はさまざまです。

最近はeラーニングの普及に伴い、受講生ではなくビデオを前にして授業を行う教師・講師も増えつつあります。

よりよい学びを提供するために、教育系の学会や勉強会で情報交換を行うこともあります。

教育業界のやりがい・魅力

人の成長に寄り添うことができる

教育業界で働くと、園児/生徒/学生や受講者がどのように変化し、成長していくのかを身近で見ることができます。

これは、教育業界に携わる1つの醍醐味といえるかもしれません。

教育機関では、日々の学校生活を通じて、園児/生徒/学生が知識やスキルを獲得していく様子を見ることができます。

民間企業の学習サービスでは、入試や資格試験の合格など具体的な目標に向けて必要な力をつけ、目標を達成する姿を見ることができます。

また、こうした成長を見られるのは、必ずしも教育をしている期間だけとは限りません。

学校を卒業したり、学習サービスの受講が修了した後でも、同窓会などのかたちで過去の教え子と会う機会に恵まれれば、その後の成長も垣間見ることができるのです。

不景気の影響を受けづらい

少子化による市場規模の縮小が予想されている教育業界ですが、景気の悪化による影響は受けづらい業界だといわれています。

景気が悪くなり不況になると、給料など家計の収入が減り、なるべく出費を抑えようとする動きがみられるようになります。

たとえば、旅行や外食などの娯楽費はその対象となりやすく、不況に伴い業績が悪くなりやすい業界だといわれています。

一方で、教育業界の場合、不況になったからといってすぐに教育費が削られる傾向はあまり見られないため、景気の影響が小さい業界だと考えられています。

その点では、安定した業界であるといえるのかもしれません。

教育業界の雰囲気

教育業界には、人を育むことに興味があり、熱意を持って取り組んでいる人がたくさん働いています。

だからこそ、よりよい教育を届けるために、国内外の教育業界のトレンドや新たな指導法などを日々積極的に学ぼうとする人が多くいるのが特徴です。

これは、教育機関であれ、民間企業であれ、非営利団体であれ、変わりません。

園児/生徒/学生や受講者を第一に想う気持ちが共通しているため、働いている人たち同士の結束力も高くなる傾向にあります。

また近年は、教育機関・民間企業・非営利団体がそれぞれ単独で活動するだけでなく、協働して新たな取り組みをするケースも増えています。

それぞれの得意分野を活かし、苦手な分野を補い合おうと、教育関連のイベントなどに積極的に参加し、学校・企業・団体の垣根を超えたつながりを模索する人たちも多くいます。

教育業界に就職するには

就職の状況

教育機関では、自治体ごとに定められた教員採用試験や独自の採用試験が行われます。

民間企業や非営利団体では、新卒採用及び中途採用が行われていますが、非営利団体では中途採用や非正規雇用の割合が高い傾向にあります。

職種によっても、求められるものが異なります。

広報・マーケティングの場合、「大卒以上」を条件としているところもありますが、学歴不問として広く求人している教育機関や民間企業も多くあります。

教材の編集・制作の場合、広報・マーケティングに比べると「大卒以上」を条件とする求人の割合が高くなります。

教師・講師の場合、教員免許などの資格や教育現場での経験が求められます。

いわゆる正社員にあたる「教諭」や「専任講師」として雇われるケースばかりではなく、「臨時職員」「常勤講師」「非常勤講師」など非正規雇用のケースも数多くあるのが特徴です。

就職に有利な学歴・大学学部

教育業界と最も親和性が高いのは、教育に関する幅広い知識を身につけることができる教育学部でしょう。

ただし、求人の条件として教育学部出身であることを掲げる教育機関・民間企業・非営利団体はほとんどありません。

幼稚園〜高等学校に教員として勤務する場合には、国立・公立・私立を問わず教員免許が必要とされますが、教員免許は教育学部でなくとも取得することができます。

教員を目指す場合には、教員免許を取得するために必要なカリキュラムが整えられた大学・学部であるかを確認するとよいでしょう。

また、外国人に日本語を教える日本語教師のように、特定の試験に合格すれば学歴に関係なく就ける教師・講師の仕事もあります。

就職の動機で多いものは

教育業界を志望する人には、「人を育むことを通じて社会に貢献したい」という強い想いを持つ人が多いようです。

学習塾講師や家庭教師としてアルバイトをした経験が、教育業界への興味につながったという人もいます。

「留学を通じて培った語学力を活かすために語学教師になりたい」というように、自分が身につけてきた知識やスキルを他人に教えたいと考える人もいます。

どのようなきっかけであれ、志望動機を伝えるときには、「なぜ教育業界なのか」「なぜその会社なのか」「自分がどう貢献できるのか」を具体的に示すことが大切なポイントとなるでしょう。

教育業界の転職状況

転職の状況

教育機関で正規雇用されている教職員や民間企業の正社員は、雇用が安定していることもあり、あまり積極的な転職活動は行わない傾向にあるようです。

一方で、非正規雇用の人たちは、よりよい待遇や正規雇用を求めて転職活動を積極的に行うことも珍しくありません。

求人という観点では、これまで教育業界にいなかった企業が新規事業として教育サービスを展開するようになり、新たに人材を募集するケースも増えてきているようです。

転職の志望動機で多いものは

公立の教育機関の場合、勤務先を自分の意志で選ぶことが困難なため、転勤などの少ない私立の教育機関への転職を考える人がいるようです。

一方、私立の教育機関や学習サービスを提供する民間企業に勤務する人は、安定した収益を得るため、教員であっても授業などの傍ら生徒/学生募集に関連した業務を担わなければならないことがあります。

そのため、教える仕事に集中しづらい環境に不満を抱き、転職を考えはじめる人もいるようです。

働き方改革という社会の流れもあり、これまで業務負担が特に大きいとされてきた教員・講師の負担を減らすための取り組みが進められていますが、また十分な対策がされているとは言えない状況のようです。

転職で募集が多い職種

転職の募集は、私立の教育機関・民間企業・非営利団体でよく見受けられます。

ただし、常に求人を出しているのではなく、育産休などで欠員が生じたときや退職者が出たとき、新しい事業や部署を立ち上げるときなどに募集をかけることが多いようです。

興味のある教育機関・民間企業・非営利団体や職種がはっきりしている場合、その組織のホームページや教育関連の転職サイトを中心に、定期的に求人情報を確認する習慣をつけておくとよいでしょう。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

幼稚園・小・中・高校の教員になるためには、教員免許が必須です。

しかし、その他の教育業界の仕事には、教員免許がなくとも就けるものが多々あり、教育業界以外からの転職もオープンに受け入れる傾向にあります。

たとえば、文部科学省が2020年度以降の学習指導要領に小学校での外国語授業とプログラミングの必修科目化を盛り込んだことで、外国語やプログラミングの教員・講師の需要が高まったといわれています。

他にも、学習スクールなどの教室を運営するスクールマネージャーを採用するとき、教育経験よりも、飲食店などでの店舗運営やスタッフをマネジメントした経験を重視する企業も出てきています。

教育業界への転職を考える際は、教育業界での経験に縛られることなく、「自分は何を教えられるのか」や「自分のこれまでの経験が、教育業界のどの職種でどのように生かせるのか」といった視点で捉えることが重要といえるでしょう。

教育業界の有名・人気企業紹介

ベネッセホールディングス

1955年創業、2009年持株会社化により「株式会社ベネッセコーポレーション」より商号変更。

連結売上高4,345億円、従業員数20,387名(2018年3月期)

「こどもちゃれんじ」や「進研ゼミ」に代表される「国内教育」、中国や台湾で「こどもちゃれんじ」を展開する「海外事業」、介護施設や保育施設を運営する「介護・保育」、外国語教育などを展開する「語学」などの事業を行う。

ベネッセホールディングス ホームページ

学研ホールディングス

1946年創業、2009年持株会社化により「株式会社学習研究社」より商号変更。

連結売上高1,070億円、従業員数6,929名(2018年9月期)

学習参考書の開発や「学研教室」の運営を担う「教育事業」、サービス付き高齢者向け住宅などを運営する「医療福祉事業」を行う。

学研ホールディングス ホームページ

NPOカタリバ

2001年設立、2006年に法人格取得。

収益8億円、うち事業収入・行政委託費の合計は約4億円、職員数112名(2017年度)

10代に探究テーマとの出会いやヒントとなるきっかけを与える「DISCOVER」、家庭環境などに課題や事情を抱える10代にサービスを届ける「RESILIENCE」、田舎ならではの教育サービスを開発する「GLOCAL」、被災地の教育を支援する「POSTTRAUMATIC GROWTH」を展開する。

NPOカタリバ ホームページ

教育業界の現状と課題・今後の展望

競争環境

民間企業の教育市場データをみると、近年はほぼ横ばいで推移しています。(矢野経済研究所『教育産業白書2018年版』)

今後は、少子化に伴い、特に子どもを対象とした教育サービスは競争が激しくなるであろうと予測されています。

一方で、子ども1人にかけられる教育関連費用の額は増加傾向にあるともいわれています。

「子どもの将来につながるならば…」と、教育に惜しみなくお金を払う保護者が多くみられるためです。

最新の動向

学校教育だけをみても、小学校での外国語学習やプログラミングの必修化など、これまでの学校教育にはなかった新しい学びが促されるようになっています。

「人生100年時代」といわれ長生きする人が多くなっている現代では、「生涯教育」と呼ばれる大人のための学びの場も増えています。

また、学習方法という観点でも、ICTの発展に伴って開発されたeラーニングが、タブレットやスマートフォンの普及とともに浸透しつつあります。

今後は、住んでいる場所や今いる場所に関係なく、好きなことを学べる環境がさらに発展していくでしょう。

業界としての将来性

約10年に一度のスパンで行われる文部科学省の学習指導要領改訂を機に、保護者は子ども向けの学習サービスに興味関心を抱く傾向があります。

2020年度に行われる学習指導要領の改訂にあたり、小学校での外国語学習、プログラミングの必修化、思考力や表現力を問う大学入試の導入などが教育市場に大きな影響を与えうるといわれています。

しかし、少子化が進んでいるという事実に変わりはなく、1人あたりにかける教育関連費が増加傾向にあるとはいえ、市場の縮小は避けられないという見方が強まっています。

職業カテゴリー