建設業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
建設業界とは
建設業界は住宅やビル、学校、工場等の建物を建てる「建築」と、道路や橋、トンネル、水道などのインフラを整備する「土木」の2種類に分けられます。
建築や土木に関する投資は、1992年度の84兆円をピークとして減少しましたが、2011年以降、東日本大震災の復興需要等で増加傾向になっています。
復興需要とともに近年は、都心の再開発需要やインフラ老朽化によるメンテンナンス工事などで建設投資が活発です。
また、アベノミクスにより、公共事業投資が増加したことも影響し、建設業界大手各社の業績は堅調に推移しています。
しかし、建設需要が高い一方で、建築作業を行う職人の高齢化や、若年層の業界離れの影響で、人手不足が顕在化しています。
これらを解消するため、業界全体でロボットによる作業や人工知能、IoT技術を活用し、人手をかけなくても作業ができる仕組みや生産性を向上させるための技術開発を盛んに行っています。
また、人材確保のため働きやすい職場をつくり、新規入職者の確保を積極的に行っている業界でもあります。
建設業界の役割
建築業界に携わることは、人が社会的生活を行う上で必要不可欠となる、「衣食住」の「住」に関わることになります。
住宅、ビル、道路、駅など、建設業界はあらゆる建物の建設に携わっており、それらがなければ私たちは、社会的な生活ができなくなってしまうといっても過言ではありません。
社会生活や経済活動を行う上でも、なくてはならない業界であることから、やりがいは大きい仕事といえます。
また公共施設など、多くの人が長年利用する建造物の建築に携わることができます。
また、近年頻発する自然災害により、甚大な被害を受けた地域を復興するための建築などは、困っている人の生活を助けることができ、社会的にも意味のある仕事といえます。
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建設業界の企業の種類とビジネスモデル
建設業界のビジネスモデルは、大きく開発、建設、販売、管理の4段階に分けることができます。
これは、建物を建てるための土地を選別し建造物を設計、実際に建設工事を行い、それらを販売し保守メンテナンスを継続的に行うという一連の流れになります。
この章では、これら4つのプロセスにおけるビジネスモデルやその特徴、代表企業をご紹介します。
開発
まずは、建造物を建てる土地を選別し、どのような建物を建てるのか企画・設計する「開発」です。
単独の建物の建設計画を立てることもありますが、まちづくりという観点から、広い地域での建築事業の計画、コンセプトを決定し、計画立案する場合もあります。
そのため、数十億円規模のビッグプロジェクトとなることもあり、このプロセスからディベロッパーといわれる企業が関わります。
ディベロッパーは、建設の企画から管理までの全体プロセスに関わることが多い企業で、幅広く対応することから事業規模の大きい会社が多く、三井不動産、三菱地所、住友不動産など有名な大企業が名を連ねています。
建設
建設は、設計図面をもとに基礎工事や内装、外装工事を実際に行うプロセスです。
ここでは、総合建設企業のゼネコンやハウスメーカーなどの企業が、工事現場の監督・管理を行います。
とりわけ、ゼネコンは規模の大きな工事に関わることが多く、時には数千人規模の作業員や職人を取りまとめます。
工事を納期通りに進めるためのスケジュール管理や品質・コスト管理を行うと同時に、作業員の安全確保のための管理も行うため、建設現場では中心的な役割を担います。
ゼネコンの代表的な企業としては、大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店があり、ゼネコン5大企業として圧倒的な売上を誇ります。
販売
販売は、建設された建物を売ることです。建築物の流通方法としては、販売のほかに分譲、賃貸等があり、個人や仲介業者へ営業活動を行います。
このプロセスは、前述したディベロッパーやハウスメーカーが役割を担っています。
ディベロッパーは、商業施設やマンションなどなどの大きな建物や法人・個人幅広く関わることが多く、ハウスメーカーは戸建て住宅の販売をすることが多いです。
ハウスメーカーの代表的な企業としては、ダイワハウス、積水ハウス、住友林業、へーベルハウス、ミサワホームなどがあります。
管理
管理は、建築された建物の清掃、保守、メンテナンス、修繕等を行います。
このプロセスにも、大手ディベロッパーが参入しています。
建築された建物が、長い年月安全に使用されるためには、継続的な保守メンテナンスや修繕が必要になります。
時代の流れとともに経年劣化しますが、常に使いやすい建物にしておくのも、このプロセスの役割となります。
建設業界の職種
建設業界のプロセスをご紹介しましたが、建物や施設が完成し、使用される過程でさまざまな技術や知識を持った人が関わっています。
この章では、建設業界の代表的な職種をご紹介します。
用地仕入、企画設計
ディベロッパー企業の代表的な職種です。
各地の土地情報を入手し、事業計画や、開発コンセプトを決定します。
建物だけでなく、その建物が建っている周りの環境や都市づくりを視野に入れて、その街をどのように発展させたいかを含めて計画を練ります。
開発するための土地を取得した後は、外部の建築事務所などと連携して、具体的な建造物の図面の作成など、プロジェクトの根幹となる重要な役割を担います。
施工管理
ゼネコンの代表的な職種です。
建築プロジェクトがスタートすると、実際の工事や作業のための職人や作業員が現場に入ります。
プロジェクトによっては、数千人規模の人が建設に関わりますので、作業が安全にスケジュール通りに進んでいるか、品質基準が守られ、コストが余計にかかっていないかなど、チェックする人が必要になります。
建築の全体プロセスを管理することになりますので、施工管理は建築作業の肝となる存在です。
営業
営業は、ディベロッパー、ゼネコン、ハウスメーカーなどのすべての事業体に必ずいる職種です。
主に対外交渉を行いますが、例えばハウスメーカーの営業ですと、住宅展示場などの個人で住宅を購入しようとしている人に対し、最適な住まいを提案する役割を担っています。
特に、住宅は「一生に一度の大きな買い物」といわれるように、買う人にとっては重要な決断となります。
お客様の家族構成や、価値観、希望を十分に考慮して、最適な住宅を提案し、時には要望に合わせて建物をカスタマイズする提案を行うなど、住宅購入をサポートする重要な役割を果たします。
建設業界のやりがい・魅力
建設業界の平均年収は650~700万円といわれ、高い傾向にあります。
特に先に紹介した、ゼネコン大手になりますと、給料が800万円から950万円となる人が多く、企業の規模が大きいほど年収がよくなる傾向がわかります。
これは、震災による復興需要や都市再開発需要など、さまざまな建設需要により、大手企業がこれらの事業に多く関わり、企業の業績が良くなっていることが給与に反映されているものと考えられます。
しかし、大手ゼネコンなどの大規模企業を省くと、年収は決して高いといえない状況です。
同時に、建設現場は長時間作業を行ったり、体力が必要となる作業が多い場合もあり、進んでこのような環境で働こうと考える人が減っているのも事実です。
このような状況のため業界の恒常的な人手不足により、各個人の作業負荷が大きくなるケースもあり、今後の労働環境や待遇改善が急がれる業界でもあります。
やりがいとしては、建設業は規模が大きくなるほど工事期間が長くなり、プロジェクトに集中する時間が長くなります。
その分、自分が関わる建築物に対しての思い入れも強くなりますし、それが完成した時の達成感は非常に大きなものになります。
また、後世に残る建物を建築するプロジェクトに関わることができる可能性もありますし、自分が携わった事業の成果が、目に見える建物として残るので大きなモチベーションとなり、やりがいを感じることができるでしょう。
建設業界の雰囲気
建築現場は力仕事や、長時間の作業に対応できる体力が重要となることが多いため、男性が多い傾向にあります。
また、長年建築現場で作業を行っている職人気質の人が「親方」として現場指揮をとることもあり、作業手順や技術は「見て学ぶ」という場面が多いことも特徴のひとつです。
一見すると、気難しい職人ばかりの厳しい業界のようなイメージですが、近年は作業を自動化するためのロボットの投入やICT技術(Information and Communication Technology)を駆使した機械を作業現場に導入するなど新しい試みも進んでいます。
そのため、現場の人手不足を機械で補い、効率的に作業を進める方向に業界が変化してきているともいえます。
加えて、ゼネコンやハウスメーカーなどには、研究開発職や営業職など直接建設現場に入らない職種もあります。
このような職種では、女性も働いており活躍しています。
建設業界に就職するには
就職の状況
建設業への入職者数は、2009年に2.9万人となり、そこから増加に転じ、2014年からは、4万人程度を維持して推移しています。
建設業では、プロジェクトによっては長時間労働や、変則的な勤務、建築現場での力作業などを理由に、年々若い世代の業界希望者が減っている現状があります。
そのため、建築業界、特に建築現場の人材は、年々高齢化しており、定年退職による人材の減少も、人手不足に拍車をかけています。
こういった状況を打開しようと、ディベロッパーやゼネコン、ハウスメーカーの大手企業を中心に優秀な建築業界希望の学生の採用に力を入れている状況です。
就職に有利な学歴・大学学部
建築業界に有利な学部といえば、やはり建築学部や学科です。
建築系の学部を卒業した学生の約8割は、建設業界に就職するといわれています。
ディベロッパーや、ゼネコン、設計事務所、ハウスメーカーへの就職が多く、その他には官公庁や公益公団、不動産業に就職する人もいます。
建築学部では、デザインや都市計画学、近代建築史、設備設計、構造、構造設計、鋼構造、木造構造、RC構造、材料学、地域デザイン、まちづくり、都市工学などの建築にまつわるさまざまな学問を受講できます。
また、専門学校でも、建築やインテリアデザインなどを実技含めて専門的に学べる学校もあり、将来的に携わりたい仕事によって、選択肢がいくつかあります。
就職の志望動機で多いものは
建築業界を志望する場合に、多い志望動機としては、
・建設業を通じて、豊かな社会生活を実現していきたい。
・建設の立場から、都市開発で快適なまちづくりをしたり、安心安全な環境を作り上げていきたい。
等があります。
また、ひとくちに建設業界といっても、さまざまな事業活動を行っている会社があります。
それぞれ得意分野も違いますので、なぜその企業を志望しているのかを明確に記載することが大切になります。
そのためには、業界全体の動向を把握するだけでなく、希望する企業の強みや弱みなど企業自体の研究も必要となります。
複数ある企業の中から、なぜその企業を選んだのかという特別な理由を明確に説明した志望動機があると、面接時も好印象を与える可能性が高くなります。
建設業界の転職状況
転職の状況
前述した通り、建設業界は恒常的な人材不足と高齢化が進んでおり、それを補うための転職求人も安定的にある状況です。
また、今後も、震災の復興需要や公共工事の増加、都市再開発などの建設需要の高まりがあり、建設作業現場を中心に、急激に転職求人が減ることは考えづらく、継続的に企業は中途採用を行うでしょう。
転職の志望動機で多いものは
建設業界への転職志望動機として多いものは、
・他社の優れた建築技術や独自工法、独自技術に惹かれて、今まで培ってきたスキルや知識を活かして、事業に携わりたい。
・今まで、個人住宅など比較的規模の小さい建築に関わってきたが、今後は社会を支えるインフラに携わり、技術者としてさらにスキルアップしていきたい。
など、ビジネスマンとしてスキルアップしていくための環境に身を置きたいと考え、転職を希望する方が多いです。
転職で募集が多い職種
募集が多い職種としては、ゼネコンの施工管理があります。
建設需要が増加していることもあり、各建設現場を管理できる経験と知識、スキルがある人材を求める企業が増えているようです。
また、建築した住宅やマンションをお客様に販売、分譲、賃貸の提案を行う営業職の募集もあります。
新規顧客や既存顧客のフォローまで、お客さまとの信頼関係を築いて受注につなげるためには、豊富な経験と知識が重要となるため、経験者の中途人材採用を考える企業が多いです。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
建設現場を中心に、20代などの若年層に限らず、30、40代の未経験者の募集を行う施工事業者も多い状況です。
そのため、建築現場の作業者であれば、転職のハードルは高くありません。
一方、デベロッパーや大手ゼネコン、ハウスメーカーなどは、実績、スキルを重視する企業があり、一定の業界経験があったほうが有利になります。
また、中途採用の選考条件として、建築士、建築施工管理技士、宅地建物取引主任者等の資格が求められる場合もあります。
建設業界の有名・人気企業紹介
この章では、大手ゼネコンで就職人気の企業を3社ご紹介します。
株式会社大林組
1892年創業で、関西の地盤に強く、トンネル事業に定評のある企業です。
その他にも、大阪城の改修、六本木ヒルズや東京スカイツリーを手掛けるなど、シンボル的な建物を数多く手掛けています。
札幌から福岡まで全国に事業所があるだけでなく、ロンドンやサンフランシスコ、台北などの海外にも多くの拠点を持っています。
大成建設株式会社
1873年創業で、日本だけでなく、世界各国で国家的なプロジェクトの建設を行っています。
トルコにあるアジアとヨーロッパをつなぐトンネルを開通させたり、ベトナムのハノイ空港の建設を大成建設が行いました。
国内でも、横浜ベイブリッジ、東京都庁第一庁舎、九州国立博物館など、多くの大型建造物を手掛けた実績があります。
鹿島建設株式会社
1840年創業、超高層ビルなど最先端の建設事業に定評があります。
ユニークなデザインのフジテレビ本社ビルや国立新美術館も鹿島建設が建設したものです。
それだけでなく、東京駅の八重洲口再開発、丸の内駅舎復原工事による歴史的建造物の保全や、秋葉原地区開発事業など社会インフラを支える建築物の実績も豊富です。
建設業界の現状と課題・今後の展望
災害復興需要や、東京オリンピック、公共事業投資の増加、都市開発需要の増加など、建設需要は高まっている状況にあります。
しかし、今後は、上記のような需要のピークが過ぎ、少しずつ減っていくとともに、日本の人口減が追い打ちをかけて、将来的には建築需要が減っていくと予想されています。
同時に、長時間労働や肉体労働での仕事で、きつい、危険というイメージが先行してる部分があり、あえて建設業界に従事したいと考える若者が減っている状況があります。
これにより、建設現場の高齢化を招き、技術の継承が不十分になることも考えられるのです。
このような状況から、IT技術を駆使した建設機械を導入し、今まで人手を使わないとできないと考えられていた作業を機械に代替させるなどの技術革新を進めている状況です。
このような取り組みは、建設業界では「i-Construction」と呼ばれ、建築の「測量」「施工」「検査」などの作業工程に、ICTを技術を活用して効率化させようとしています。
このような取り組みにより、全体のコストを削減することで、企業は利益率を確保していく考えです。
また、ICT技術の活用と同時に、作業員の待遇を改善するなど、働きやすい環境を整える働き方改革を推進することで、建設業界を希望する人を増やそうとするなど、継続的な人材確保にも力を入れています。
以上のように、さまざまなアプローチにより、業界の長年の課題を解決する方向に各企業が動いています。
しかしながら、内需が今後急激に増えることが考えにくい状況から、企業の収益の柱を、海外の建設事業にシフトしようとしたり、M&Aにより業界再編する動きが加速することも考えられ、継続的に変化する業界ともいえるでしょう。
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