大学院とは? 大学との違いや文理の特徴

大学卒業後の進路として就職する人がいる一方で、大学院への進学という道もあります。

大学院は大学の上位に位置する教育機関という漠然としたイメージを持っている人も多いことでしょう。

そこで、大学院に進学する目的や大学との違いや文系理系の違いがより明確になるよう、大学院に関する基本的な知識を整理しておきましょう。





大学院とは?

中学・高校・大学と進学していく場合、より上級の学校へ進むイメージを持っている人が多いはずです。

では、大学から大学院に進学する場合はどうでしょうか。

大学院が教育機関として大学よりも上級であることは間違いありませんが、大学とは仕組みや教育の目的が大きく異なっている面もあります。

まずは大学院の基本的な仕組みや種類、進学する目的について理解を深めましょう。

大学院の基本的な仕組み

大学院の修業課程には、大きく分けて修士課程と博士課程があります。

修士課程を修了すると「修士」、博士課程を修了すると「博士」の学位がそれぞれ授与されます。

修士課程は原則2年制、博士課程は原則5年制が一般的です。

大学院によっては、博士課程を前期2年・後期3年に分けていることもあります。

つまり、修士課程の場合は大学卒業後さらに2年間、修士課程+博士課程の場合は5年間を研究のために充てることになります。

修了するには修士課程で30単位程度、博士課程で20単位程度を取得している必要がありますが、修了できるかどうかは修士論文・博士論文が認められるかどうかで決まります。

論文が審査に合格しない場合、大学院に在籍している年数に関わらず修了することはできません。

大学院に進学する目的

大学院に進学する主要な目的として、大学よりもさらに専門性の高い研究に取り組むことが挙げられます。

下表は大学院生が修士課程に進学した理由を示していますが、「興味を深めたかった」「専門知識を身につけたかった」と回答している人が多いことが分かります。

参考:第9回全国院生生活実態調査 概要報告

自分が取り組みたい研究テーマを掲げ、自発的に研究に取り組むのが大学院と考えていいでしょう。

研究の分野や内容によっては、大学院での研究成果が就職など将来の進路にプラスの影響をもたらすことも考えられます。

学士よりも高い専門性を持つ修士や博士の学位を持つ人材の知見を求めている企業もあるからです。

人によっては、最終学歴を大学院とするために大学院へ進学する人もいます。

大学院入試は大学入試とは性質が異なることから、考え方によっては大学入試よりも入りやすく、出身大学以上のレベルの大学院を最終学歴にできる場合があるからです。

大学院の種類

大学院は学部の大学院、独立研究科、大学院大学、専門職大学院の4つに大別することができます。

学部の大学院

大学での学部組織を持つ大学院のことを指します。

〇〇大学大学院と表記されている大学院の多くが学部の大学院です。

たとえば、文学部がある大学の文学研究科、工学部を持つ大学の工学研究科などがこれにあたります。

大学の学士課程で得た知見を土台として活かしながら、より専門性の高い研究に取り組むための研究機関と考えていいでしょう。

独立研究科

基礎となる学部組織を持たず、独立して研究を行っているのが独立研究科です。

大学での研究をさらに発展させて深めることを目指す大学院とは異なり、特定のテーマについて深く研究したい人を幅広く受け入れることを目的としています。

たとえばビジネス関連の研究科であれば、高い意欲を持った社会人経験者が研究に打ち込んでいることもあります。

一例として、東京大学大学院新領域創成科学研究科、立命館大学大学院先端総合学術研究科などが挙げられます。

大学院大学

大学組織を持たず、大学院単独で設置されている研究機関を大学院大学、または独立大学院と言います。

最新の研究を行うことを主眼に置いているケースが多く、専門性の高い研究に取り組みたい人材を幅広く受け入れる特徴があります。

一例として、北陸先端科学技術大学院大学、奈良先端科学技術大学院大学、政策研究大学院大学などが挙げられます。

専門職大学院

高度な専門性を持つ実務家を育成することを目的とする大学院です。

一般的な大学院が研究そのものを目的としている一方で、専門職大学院はあくまで職業人としての専門性を追究している点が大きな特徴です。

法律家の養成を目的とする法科大学院、教員の養成を目指す教職大学院、公認会計士などのスペシャリストを目指す会計大学院といった専門職大学院があります。

大学院と大学の違い

大学院は大学の延長線上に位置する機関と言われることがありますが、実際には大学とは大きく異なります。

大学と大学院はどのような点が違うかを知ることによって、大学院の目的や特徴がより理解しやすくなる場合もあるはずです。

そこで、大学院と大学の違いについて次の3つの観点から整理してみましょう。

目的の違い

大学では教養科目が必修となっていることからも分かる通り、専攻以外にも幅広い教養を身につける教育機関としての側面があります。

これに対して、大学院では専門性の高い研究に取り組み、深く追究していくことが主眼に置かれます。

大学では講義形式の授業も多く、試験によって単位を取得可能かどうかが判断されるのに対して、大学院ではゼミ形式で自主的に取り組む研究がメインとなります。

取り組む研究内容は学生1人ひとりで異なるため、大学院では主体的に研究テーマを見つけ、自ら研究に打ち込む姿勢が求められます。

このように、大学院では自身の研究を深めていくことが第一の目的とされている点が、幅広い教養と専門性をバランスよく身につけることを目指す大学との大きな違いと言えます。

通う年数の違い

一般的に、大学では4年で卒業できるように履修選択をすることになっています。

取得単位が足りなければ留年することもありますが、基本的には4年間で卒業することを想定したカリキュラムになっています。

これに対して大学院では、修士課程で2年間・博士課程で5年間という修了までの目安が設けられているものの、必ずしもこの年数で修了できるわけではありません。

とくに博士論文は厳格に審査が行われるため、審査に合格することができず6年、7年と研究を続けることも十分にあり得ます。

所定の単位を取得し卒業論文を提出すれば大多数の人が卒業できる大学と違い、人によって通う年数に差が生じることもめずらしくないのが大学院と言えます。

取得が必要な単位数の違い

大学卒業に必要な単位数は、法令上は4年間で124単位以上と定められています。

これに対して大学院では修士課程で30単位程度、博士課程で20単位程度が目安となっており、大学と比べて取得が必要な単位数が少なく設定されていることが分かります。

必須とされる単位数が少ないからと言って、大学院は大学よりも楽というわけではありません。

大学院では自分の意見を求められるゼミやディスカッションが大半を占め、受け身で学ぶ講義形式の授業が少なくなるため、取得単位数も必然的に少なくなります。

このように、大学院では必要な単位数を取得できたかどうかではなく、具体的な研究の成果を上げ、論文に反映させることが最も重要になります。

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大学院の文系・理系の特徴

大学には文系・理系の違いがありますが、大学院では文理の違いがいっそう際立っています。

研究の目的だけでなく、そもそも大学院の意味合い自体が異なる面もありますので、文系大学院と理系大学院のそれぞれの特徴を知っておくことが重要です。

また、文系・理系の両方の特徴を持つ文理融合大学院もあります。

文系・理系・文理融合の大学院が持つ特徴について整理しておきましょう。

理系大学院の特徴

大学の理系学部の中には、大学院への進学を前提にしているケースが多く見られます。

学士課程と修士課程を含めた6年間で研究に取り組むことが基本となっており、さらに専門的な研究に取り組みたい場合は博士課程に進むという位置づけになります。

大学院での研究内容が大学の研究室の延長線上にあり、研究テーマを自分で探すというよりは、研究室や指導教授の方針によって大きな方向性が定められていることもあります。

就職に際しては研究分野に直結する職種へ進む人も数多くおり、指導教授から与えられた推薦枠で内定がもらえることもあります。

理系の研究開発など専門性の高い職種に就く上で、大学院で研究に取んできたことを必須条件にしている企業もあります。

大学院での研究内容と将来の進路が強く結びついているのが理系大学院の特徴と言えます。

文系大学院の特徴

文系大学院の多くは理系大学院ほど専門分野が特化されておらず、研究の自由度が高いのが特徴です。

自分で研究テーマを設定できる裁量が与えられている反面、取り組みたい研究内容をしっかりと定めておく必要があります。

別の言い方をすれば、大学院に進んで取り組みたい研究テーマがある人が文系大学院への進学を選んでいます。

また、研究テーマが必ずしも将来の就職に結びつくわけではないため、大学院を修了していても就職先が限られてしまいがちです。

こうした背景から、文系大学院に進む人の多くが研究そのものに主眼を置いており、就職など先の進路とは切り離して考える傾向があります。

もちろん文系大学院から研究職に就くことも不可能ではありませんが、理系大学院と比べると狭き門となっています。

文理融合大学院の特徴

文系・理系という枠組みを超えて、より学際的な研究を行うことを目的とする文理融合型大学院もあります。

昨今では地球環境や食料資源、エネルギー問題など、従来の文系・理系に区分することが不可能な課題がグローバル規模で発生していることから、文理融合の研究に取り組む大学院も増えています。

理系大学院ほど研究テーマが特化されていないものの、従来の文系大学院と比べると現代的なテーマで研究がなされているのが特徴的です。

特定の学問分野にこだわらず、さまざまな学問の要素を取り入れることによって研究を深める相乗効果が生まれることが期待されています。

あらゆる分野の学問の知識を総動員して研究が行われることから、大学での専攻や研究テーマが限定されておらず、幅広い学部出身者を受け入れています。

この記事のまとめ

大学院は大学の上位に位置する機関ですが、学ぶ目的や研究への取り組み方は大学と大きく異なります。

大学院を大学の延長線上にある機関ととらえるのではなく、研究に打ち込むことに特化した研究機関ととらえることが重要です。

大学以上に研究への主体性が求められますので、自分が取り組みたい研究テーマをしっかりと定めた上で大学院へと進むようにしましょう。

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