【3Dアーティスト】「多くの人にアートを楽しんでもらいたい」大学中退後、絵一本の道を選んだ 永井秀幸さん
今回は、鉛筆で3Dアートを描く3Dアーティスト(鉛筆画家)・永井秀幸さんからお話を伺います。
3Dアーティスト(鉛筆画家)の活動内容
3Dアーティスト(鉛筆画家)の活動内容について教えてください。
鉛筆で描いた絵がスケッチブックから飛び出して見える3Dアートを中心に制作活動を行っています。
3Dアートの絵本・書籍の執筆や、原画展・ライブドローイングの活動を中心に、近年は ワークショップ、講演、広告用イラスト、特典カード、記念撮影のスポットの作成など仕事の幅を広げています。
他にも、施設のキッズスペース、商品のパッケージ、新聞の見開きページなど、色々な用途で3Dアートを活用したご依頼を頂くので、毎回ご依頼に応じながら仕事を引き受けているという感じです。
錯覚を活かした面白い作品を作って、それを多くの人に楽しんでもらうために活動しています。
YouTubeに実際つくった作品の映像をアップしてますが、3Dアートの錯覚を体験してもらうには、イベントに来てもらって生で見てもらわないと伝わらないアートではあるので、イベントには特に力を入れてますね。
イベントのどのような部分に力を入れているんですか?
3Dアートを描くことの楽しさを知ってもらうために工夫してますね。
絵を仕事にしていくことは難しいイメージがあるかもしれませんが、基本的に紙と鉛筆さえあれば誰でも描くことができます。
原画展やワークショップに来るお客さんは年齢層が様々なので、どの年齢の人たちでもアートを描いて楽しんでもらえるようにイベントの企画は力を入れています。
3Dアーティスト(鉛筆画家)の収入
その中でも、3Dアーティスト(鉛筆画家)の仕事ではどのように収入を得るんですか?
メインの収入源はイベント(原画展・ワークショップ)になります。
また、書籍の印税、講演、広告制作、TV 出演、記念撮影のスポット作成、動画の広告収益など様々な形で収入を得ていますね。
他にも、学校にお邪魔して課外授業を行ったり、映画の寄稿文を執筆したり、3Dアートを描かない例外的な仕事も内容によっては引き受けることがあります。
以前「絵一本で生計を立てているんですか?」という質問を受けたことがあるのですが、それがとても悔しくて…
その質問に悪気はないと分かってはいるものの、「絵=食べていけない」というイメージを持たれることも多いので、今後も積極的に色々な仕事を展開していきたいと思っています。
活動の幅が広いからこそかなり忙しそうなイメージが…。ちゃんとお休みされてるんですか?
休んでますよ!基本的には月~金の間に作業をしてます。
土日は休みを取るようにしてるんです。
というのも、絵を描く仕事は単調な作業が続くため、オンオフをハッキリ分けないとつらくなってしまいます。
そのため、息抜きと作業に集中する時間のバランスにはかなり気を付けていて、不規則な生活にならないようにしています。
平日も日中は打ち合わせや作業に集中しますが、夜はジョギングをしながら、もしくは走り終わった後に歩きながらアイデアを考えることが多いですね。
3Dアーティスト(鉛筆画家)になったキッカケ
なぜ、3Dアーティスト(鉛筆画家)の活動を始めたのでしょうか?
最初は趣味の領域で絵を描いていました。
専門的に習ったことはないのですが、幼少期から自由帳や教科書にも落書きをするくらい絵を描くことが好きでした。
あくまでも趣味だったので、大学は福祉学部で福祉の勉強をしていました。
ところが、大学に入学して半年ほど経った頃、SNSが流行り始めてきたので、YouTubeやFacebookに自分の描いた絵を投稿してみたんです。
そしたら、思いのほか良い反応を頂いて、より驚いてもらえるような感動してもらえるような作品を作ろうと思い始めました。
一番最初は鉛筆でアートを描く鉛筆画家として活動していましたが、もっと人を驚かせたいと思って試行錯誤を重ねていった結果、「スケッチブックから飛び出す3Dアート」を描く3Dアーティストと活動するようになりました。
3Dアートを始めてから、徐々にYouTubeやダウンロード販売で収入を得るようになってきて。
そのタイミングで、大学を一年で中退し、本格的に仕事として取り組むようになり、現在に至ります。
かなり思い切った行動ですね…!
そうかもしれないですね(笑)ただ、3Dアートの活動を始めて仕事が形になっていく過程に凄く面白さを感じたんです。
作品制作以外に自分のホームページや名刺を作ったり、会った人に顔を覚えてもらうために坊主頭にしてみたり…そうやって創意工夫しながら仕事を得ていくのが楽しくて。
やるからには中途半端になるのは嫌ですし、突き詰めてやっていこうと進んでいった結果、いつの間には仕事になっていたという感じです。
3Dアーティスト(鉛筆画家)のやりがい、つらさ
3Dアーティスト(鉛筆画家)の活動をする上で、どのようなやりがいを感じていますか?
試行錯誤の繰り返しにやりがいや楽しさを感じています。
作品づくりに正解はないので、満足する作品を完成させても時間が経てば「次はこうしてみようかな?」という欲が出てきます。
その欲を満たすために試行錯誤することが楽しいですね。
また、仕事の関係で様々な業種の方に出会えるのも刺激になります。
特にイベントは直接お客さんと会話したり、楽しんでいる様子を見る事ができるのでモチベーションが上がります。
あと、1人でいることが好きなので、作業している内に自分の世界に入り込めるところが気に入っています。
逆につらいな、大変だな、と思うことはありますか?
試行錯誤の繰り返しにやりがいや楽しさを感じると答えましたが、逆にアイデアが浮かばないと一気に苦痛へと変わります…(泣)
それに付随してモチベーションを維持することも大変です。
自分の中でとても気に入って描いた作品がクライアントによっては異なる構図や絵柄に変更になることがあったり、自分では微妙かなと思っていた作品がクライアントに見せてみると好評だったりする事があります。
作者の個性も大切ですが、自己満足になってしまわないようにすることも大切。
そのバランスを取ることはとても難しいですね。
3Dアーティスト(鉛筆画家)としての目標
今後、3Dアーティスト(鉛筆画家)の活動を通して目指していることを教えてください。
今後は、今よりさらに積極的にイベントを展開していきたいと思っています。
書籍や依頼制作は作品が1点完成してしまうと終わりですが、イベントは展示内容を考えたり、お客さんに特典カードを配ったりと毎回アイデアが尽きないので面白いです。
音楽業界は不況だけどライブの動員数は伸びていると聞いたことがあります。
ネットや映像では体験できないコンテンツが今後強くなると私自身も思っているので、そういった体験できる場づくりには力を入れていきたいと思っています。
また、絵を描くことに興味を持つ「キッカケ」づくりをしたいです。
学生時代に美術の時間はあるものの、美術系の学校に進まない人はほとんどの場合、受験に美術の成績は必要なく、内申点にも含まれません。
現に、私自身も今まで絵が描けることを褒めてはもらえても、評価にはあまりつながってきませんでした。
そのため、真剣に絵を描いて作品を人前で披露することはなかったんです。
このような環境では、美術や絵を描くことへの関心が上がりづらいのではないかと感じます。
私が今開催しているワークショップには親子参加も多いので、ワークショップを積極的に展開して、一人でも多く、絵を描くことに興味を持ってもらえたらいいなと思っています。
好きを仕事にしたい人に向けてメッセージを
最後に、好きを仕事にしたい方へメッセージをお願いします。
まずは行動をしてみることをオススメします。
好きなことを仕事にしたいと話すと「できるわけがない!」と言う人が多い印象を受けます。
私も実際に言われたことがあります。
しかし、そういう発言をする人は、そもそも原稿を持ち込んだり自分のHPを作ったりして行動に移したこともない人という印象もあって…。
なので、そうならないように私は自分のやりたいことを実際にやってみて判断するようにしています。
傍観して見ていると無理かもしれないと思うことでも、実際にやってみると意外とできてしまうことは多いです。
さらに、今は時代が変わって便利になっていますし、働きながらでも作品を投稿することが可能になりました。
挑戦できる手段は増えてきていますので、とりあえずやりたいことをやってみたら良いと思います。
永井さんに聞く3つの3Dアートの魅力
1. どの角度から見ても面白い
3D アート作品は色んな角度からスマホで撮影して楽しんでもらっています。
作者は角度を気にしつつ頭を悩ませながら描きますが、鑑賞者も同じように色々な角度から観察して楽しめるところが魅力。
作者と鑑賞者共に頭を悩ませながら鑑賞できるところが面白可笑しいです。
2. シンプルな中で騙せる要素がある
3D アートは目の錯覚を生かして描いているだけですので、構造はシンプルです。
そのシンプルな構造で、いかに人の目を騙せるかというところに魅力があります。
3. アナログとデジタルの融合で面白さが引き立つ
画材はスケッチブックと鉛筆でアナログですが、作品を見る時はスマホで撮影をしてSNSに拡散されるという現代のハイテクを利用しています。
そのアナログとハイテクの絶妙な使い方のバランスに魅力を感じています。
現在、永井さんが執筆された絵本「ひみつのちかしつ」が絶賛発売中です。
3Dアートに興味を持った方、錯視アートに興味のある方はぜひお手に取ってみてください!
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