船舶工学とは? 大学で学ぶことや就職先は?





船舶工学の概要・理念

船舶工学は、造船に関わる技術をはじめ、船舶の運航システムや検査・補修に関する研究を行う学問です。

船舶は小型のものから貿易に使われる大型船、タンカーといった大規模なものまでさまざまです。

大型のものになると、建造物のような巨大なものまであります。

船舶が水に浮かんで進むためには、水の抵抗を最小限に抑えるとともに、過酷な自然環境に耐えうるだけの剛性を兼ね備えたものである必要があります。

そのため、用途や求められる性能に適した材料を選ぶととももに、剛性と低抵抗を両立させる構造にするにはどうすればいいか、さまざまな理論を用いつつ実験を重ねて船舶を生産していきます。

また、船舶に用いられるエンジンは、航空機や鉄道、自動車といった他の輸送機関と比べても燃費がよく、高性能であることが知られています。

今後も大型貨物の輸送や大量の物資輸送において、船舶は重要な役割を担っていくことは確実といえます。

船舶工学は、こうした社会的に重要な役割を持つ船舶の安全性や性能向上に貢献し続けている学問なのです。

船舶工学で学ぶこと

船舶工学では、船体の基本的な構造にはじまり、船舶を構成する材料や運航を管理するシステム、推進力を得るためのエンジンの構造、さらには船舶の船体を効率的かつ丈夫なものにするための方法論などについて、総合的に研究します。

船舶は水に浮かぶものである以上、その設計や生産に携わるからには水の性質について熟知していなくてはなりません。

こうした知識を習得しつつ、実際に船舶を設計し生産していく際に必要とされる理論を学び、実験を通じて技能を体得していきます。

船の模型を製作して理論を検証したり、コンピュータを用いてシミュレーションを行ったりといった手法で検証を進めることもあります。

また、海洋調査に用いられる機器の開発といった領域も海洋工学で扱われるため、調査の実習を通じて機器の改良を進める場合もあります。

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船舶工学の大学での授業科目の例

船体構造

波浪に抗して航走する船体の構造として適した剛性を担保するために必要な知識や技能について研究します。

海洋物理学

潮流・波浪・水塊といった海水の物性について、物理学の観点から詳しく研究を進めます。

構造システム工学

船舶が受ける波浪からの荷重やエンジンなどの推進システムから受ける振動といった、船舶を構成する上で考慮すべき要件について複合的に学びます。

水理学

海水の抵抗を受けて進む船舶の構造を考える上で欠かせない海水の性質について、流体力学の観点から学びます。

海洋開発計画

化石燃料や水産物といった海洋資源の発掘や活用にあたって、適切な開発の進め方や具体的な戦略の立て方について学びます。

船舶工学のレポート・テーマの例

船舶工学では、実際に運行可能な船舶の開発や生産を進めるための実用的な知識や技能について学びます。

そのため、他の工学分野と同様に実習や実験を通じて理論を検証する場面が多く、模型の製作やコンピュータシミュレーションを行った結果からレポートを作成することもめずらしくありません。

  • ・船舶の風波中性能推定と検証
  • ・複合材料製の球状浮体の解析と設計
  • ・省エネ性に優れた次世代船舶について
  • ・海底掘削ドリルパイプの疲労強度
  • ・振動成分が重畳した疲労試験方法

船舶工学と関連する学問

船舶工学は物理学の理論を船舶の製造に応用するための学問分野ですので、土台となる知識については物理学が深く関わっています。

また、研究対象が主に船舶や海洋調査機器になるものの、用いられる手法の基礎となる知識は材料力学や機械力学と共通する部分が多く見られ、関連性の高い学問といえます。

なお、船舶工学で扱われる水理学は、船舶工学や土木工学の分野では水理学と呼ばれるのに対して、機械工学の分野では水力学と呼ばれていることから、両者は基本的に同じ研究内容の学問と考えていいでしょう。

船舶工学を学んで就職に有利な業界・仕事

船舶工学で得た知識を活かせる業界としては、造船業、海運業、重機械工業といった分野が想定されます。

また、重機械を扱う分野という点において、類似産業である建設や航空宇宙産業、輸送機器を扱う業種においても、船舶工学の知識を応用して活躍することができるでしょう。

職種としては、船舶の設計や開発、材料の新素材開発といった研究・開発職や、ものづくりに携わるエンジニアといった道が考えられます。

高度な専門知識を持つ人材が不足する傾向があることから、船舶関係はもちろんのこと、船舶以外の分野におけるものづくりを担う仕事でも活躍できる可能性は十分にあります。

海洋開発など大規模な事業となると、国家戦略に関わってくることもめずらしくありませんので、社会的な影響の大きな仕事に携わる機会を得られることもあるはずです。

ただし、研究開発に携わる研究職の場合、大学院で研究を続けて修士過程や博士課程を修了しておくことはほぼ必須と見なされています。

こうした職種で活躍したい場合、大学院への進学を前提として考えておく必要があるでしょう。

船舶工学の知識は人生でどう役立つ?

大量の物資や燃料の輸出入など、大規模な輸送において船舶は今もなお重要な役割を担っています。

たとえば石油を安全に輸送し、国内のさまざまな産業へと安定的に供給することは、私たちが暮らす社会システムを維持し発展させていく上で欠かせない役割といえます。

その意味において、船舶工学の研究成果は社会の根底を支え続けているといってもいいでしょう。

船舶工学は今後も私たちの生活を支える技術を発展させ、さらに豊かで利便性の高い社会や安心して暮らせる社会の実現を支えていくことになるはずです。

船舶工学で学んだ知識は、こうした社会的に重要な役割を担う産業にとって、なくてはならない知見として今後も重宝され続けていくことでしょう。

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