応用化学とは? 大学で学ぶことや就職先は?
応用化学の概要・理念
大学で研究されている化学には、純粋化学と応用化学の2系統があります。
純粋化学とは、理論計算や合成の原理といった理論の追究を主な目的としており、高校までで習った化学をさらに深めていくイメージです。
応用化学は純粋化学が追究してきた原理や理論を応用し、原子・分子の仕組みや物質の性質を使って新たな物質を作り出すことを目指します。
こうした応用化学の研究成果として、化学繊維やプラスチック、半導体、フィルム、ポリマー、薬品といった新しい製品が開発され、世の中で活用されていくのです。
応用化学は化学による具体的なものづくりを実現する学問であり、私たちの暮らしにとって直接的に役立つ製品を開発することに貢献できる分野と言えます。
他にも、化学物質による環境汚染を防ぐための研究が行われていたり、再利用できる物質の開発が進められていたりと、私たちが暮らす社会が持続可能なものとなるような、将来を見据えた研究にも取り組まれています。
応用化学で学ぶこと
化学の分野は「有機化学」「無機化学」「物理化学」「分析化学」の4系統に分類されます。
応用化学はこれらの学問領域で導き出された理論をもとに、無機合成化学、高分子化学、生物科学、機器分析学といった、より実用性の高い応用研究に結びつけるための手法について学びます。
応用化学では理論に留まらず、実験を経て仮説を検証し実証することが求められます。
そのため、あらゆる場面で実験を通した検証が求められるとともに、実験結果が得られてはじめて成果として認められる傾向があります。
実験の基本的な進め方や実験器具の基本操作、レポートのまとめ方など、研究を進める上で欠かせない土台となる知識も学んでいく必要があります。
こうして得られた知識やスキルの積み重ねが、製品化や量産化に結びつき、社会貢献へとつながっていくのです。
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応用化学の大学での授業科目の例
高分子化学
タンパク質やポリエチレンなど、分子量がおよそ1万を超える無機化学物と有機化学物を対象とした研究を行います。
有機合成化学
自然界に存在する化合物を原料として、新たな合成方法を研究することを通じて新素材の開発を目指します。
無機工業化学
酸・アルカリ工業、無機薬品製造、金属工業、セラミックスといった無機物を用いて工業化学製品の基礎素材を開発する研究に取り組みます。
光化学
物質の光が照射された際の挙動について研究し、光と物質の相互作用を探求します。
サステナブル環境化学
持続可能な社会を実現するために役立つ物質や製品の開発を目指して研究を行う学問分野です。
応用化学のレポート・テーマの例
応用化学では実験を通じて具体的な数値測定を行うことで、研究成果として認められます。
レポートにおいても理論のみで完結することはまれであり、必ずと言っていいほど実験を行った経緯と結果をまとめることが求められます。
- ・燃料電池に用いる高機能膜の開発
- ・有機反応による廃天然資源の有効利用
- ・活性酸素消去部位をもつ新ポリマーの合成
- ・フッ素系シリカ源を用いたシリカ複合膜の開発
- ・河川水の有毒重金属や発がん性に起因する化合物の分析
応用化学と関連する学問
応用化学は(純粋)化学の知見や研究成果に根ざした研究を行いますので、化学と深い関連がありますが、理論の追究を主目的とする化学とは異なり、実際の製品づくりといった「ものづくり」に主眼が置かれているという違いがあります。
また、材料工学と応用化学は物質を作り出し製品化を目指すという点においてよく似ています。
一般的に、材料工学は主に金属に関する研究を行うのに対して、応用化学では有機物・無機物・高分子・低分子といった観点から研究を進める点が異なります。
応用化学を学んで就職に有利な業界・仕事
応用化学で学んだ知識や技能は、ものづくりに携わるほぼあらゆる仕事で生かすことができます。
中でも、化学メーカーや製薬会社といった業界では応用化学を学んだ人材が求められていると同時に、応用化学の知見を活かして働きたい人からも人気があります。
近年では食品メーカーにおいても専門性の高い化学的な知見が求められており、応用化学の知識を持つ人材が就職で有利になる傾向があります。
ほかにも、たとえば自動車メーカーでも燃料電池や新しい塗装の手法といった分野が開拓されているように、既存の工業分野において応用化学の新しい知見を求める動きも広がっています。
こうした高度な知識や技能を持つ人材として企業に評価されるためにも、大学院への進学はほぼ必須となっています。
多くの大学において、応用化学を学ぶ人のおよそ8割ほどが大学院へ進学することからも、就職に有利になるだけの専門性を身につけるには、大学院で研究に取り組むことが前提となると考えたほうがいいでしょう。
応用化学の知識は人生でどう役立つ?
現代社会における私たちの暮らしは化学製品に囲まれています。
新たな材料の開発や応用によって、世の中を変えてしまうほどのインパクトをもたらすことも決してめずらしくありません。
また、暮らしをより便利で快適なものにするだけでなく、将来にわたって持続可能な社会の仕組みを構築していく上で、これまでの材料や素材を根本的に見直していくことが求められているケースもあります。
応用化学の知識は、こうした社会を動かす力を持ち、これからの社会をより良いものにしていくためにもますます重要なものになると考えられています。
今現在の便利さだけでなく、長い目で見た安全や安心につながる社会の仕組みを考えていく上で、応用化学の知識を役立てていくことができる場面は少なくないはずです。
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