銀行業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
銀行業界とは
銀行業界に属する企業では、主にお金に関する「預金業務」や「貸付業務」を行なっています。
日本の銀行業界は「メガバンク」「地方銀行」「ネット銀行」などに分類することができ、これら銀行業界の頂点に位置するのが日本の中央銀行である「日本銀行」です。
日本銀行が2016年に「マイナス金利政策」を発表したことにより、多くの銀行において収益環境の悪化が見られました。
依然として貸出金利の低下は続いており、今後は日本の人口が減少していく点からも、国内市場をメインにした従来通りの方法では収益性を改善してくことは厳しい状況といえるでしょう。
そのような情勢の中、「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」のメガバンク3行については、海外進出に大きく舵をきっています。
また、国内においては地方銀行の再編が進んでおり、銀行同士の合併や統合が度々繰り返されていることも、注目すべきトピックといえます。
今後も地方銀行の再編は続く見通しであり、銀行業界への就職を希望する人は各銀行の動きをよくチェックしておくことをおすすめします。
銀行業界の役割
銀行の持つ社会的な役割として、「金融仲介機能」「信用創造機能」「決済機能」の3つの機能が挙げられます。
「金融仲介機能」とは、お金を借りたい人と貸したい人の「仲介」を行う機能であり、「お金を運用したい個人・企業」と「お金を調達したい個人・企業」を結びつける機能のことです。
2つ目の「信用創造機能」とは、「銀行が企業へ貸し出しを行い、借り手である企業がまた別の企業へお金を支払う」といった過程を繰り返す中で、お金が新しく生み出されていくことを意味しています。
信用創造機能を簡単にいえば、「通貨量を増やす機能」と覚えておくと良いでしょう。
3つ目の「決済機能」とは、銀行の預金口座を利用することによって、現金を手元に準備する必要なく送金や支払いができる機能のことです。
以上3つが銀行の持つ基本的な機能であり、社会で滞りなく経済活動が行われていくために、銀行業界は欠かせない存在であるといえるでしょう。
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銀行業界の企業の種類とビジネスモデル
メガバンク(都市銀行)
銀行業界の代表的な存在として、「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」の3社が挙げられます。
これら3社は、地方銀行とは異なり日本全国の主要都市に店舗を構えていることが特徴で、「3大メガバンク」もしくは「都市銀行」などと呼ばれています。
これらメガバンクは海外進出にも積極的であり、「三菱UFJ銀行」が先駆ける形で海外市場へ乗り出しましたが、国内市場縮小のあおりを受けて、他2行も海外での収益拡大を推し進めています。
地方銀行
地方銀行は各都道府県に本店を構える、地域密着型の銀行です。
日本全国で100を超える地方銀行が存在しており、預金量の多い銀行としては「横浜銀行」「千葉銀行」「福岡銀行」などが挙げられます。
地方銀行はメガバンクとは異なり、地域に根付いた営業活動を行なっていることが大きな特徴といえます。
そのため、地方銀行による「取引先企業に対する海外進出支援」はありますが、「地方銀行自体が海外事業に進出する」という点については、今はまだ積極的な動きを見せていない状況です。
外資系銀行
国内市場には外資系の銀行も参入しており、「ゴールドマン・サックス」「モルガン・スタンレー」「メリルリンチ」などが外資系の代表的な銀行です。
しかし、これらの外資系銀行は、預金などができる一般的な日本の銀行とは少し立ち位置に違いがあるといえるでしょう。
基本的な業務内容は「投資銀行業務」と「証券業務」から成り立っており、これらの領域において、大口顧客や法人向けに対して幅広く事業を展開しています。
これらの外資系銀行は、採用活動に関しては中途採用の比率が高いことも特徴の一つです。
銀行業界の職種
銀行業務を安定的に運営していくために、銀行ではさまざまな職種が必要とされています。
ここでは、銀行業界の代表的な3つの職種について紹介していきます。
営業
個人や企業などに対して、預金や保険商品など、銀行で取り扱うさまざまな金融商品を提案・販売していくことが営業の仕事です。
個人のお客さまに対する営業は「リテール営業」、企業のお客さまに対する営業は「法人営業」と呼ばれています。
法人営業の場合、案件によっては数百万円〜数千万円単位の金額が動く取引を担当する場合もあり、プレッシャーのかかる場面も多いといえるでしょう。
また、地方銀行であれば、その銀行の本店を構える地域をメインに営業活動を行いますが、メガバンクの場合は全国各地、さらには海外も事業範囲として営業を行っています。
融資
融資とは、個人や企業が銀行から資金を調達する際に、どれくらいの金額を貸せるか、返済のスケジュールはどうするかを考える職種です。
個人が銀行から融資を受ける場合、実際の利用として多いものは「住宅ローン」や「教育ローン」などが挙げられます。
これらのローンを組む上で、まずは「貸したお金を返せる見込みがあるか」の審査を行い、お金を貸せると判断すれば、その返済計画の作成までが融資担当の行う仕事です。
また、営業職と同様、企業のお客さまを相手にする場合は銀行内の大きな資金を動かす必要があり、責任も重大な職種であるといえます。
一般職(事務)
一般職は、大きく「窓口事務」と「後方事務」の2つに分かれます。
窓口事務は「テラー」とも呼ばれ、銀行に来たお客さまの口座開設や各種支払いなどに対応する仕事です。
一方、後方事務はテラーの人をサポートしたり、申請書類に不備や記入漏れがないかのチェックなどを行なっています。
こちらはテラーとは異なり窓口には立たないため、直接お客さまと接することは基本的にはありません。
銀行業界のやりがい・魅力
お客さまの夢を叶える手助けができる仕事
ここまで見てきたように、お客さまからお金を預かるだけではなく、お金が必要な時に融資を行うことも銀行の役割です。
例えば「マイホームを建てたい」という場合、それにかかる費用を一括で支払えるような人はごくごく限られていますよね。
マイホームに限らず、「車を買いたい」「学生のうちに留学へ行きたい」「起業したい」といった場面でも、個人の希望や目標を叶える上ではお金が障壁となる場合も多く、そこに手を差し伸べられるのが銀行の仕事です。
このように、銀行は「お客さまの夢を叶える手助け」を行っており、社会的意義の高い存在であるといえます。
地域の活性化につながる仕事
銀行業務を通して地域企業の資金調達をサポートすることで、その地域の活性化に貢献できることも銀行業界の大きな魅力です。
こちらはとくに、地方銀行で働く上でのやりがいといえるでしょう。
企業活動において、どんな事業を始めるにしてもまずは「資金調達」の問題が立ちはだかり、初期投資にかかるお金を工面できなければ事業を始めることさえできません。
そういった企業を「お金」の面で支えるのが地方銀行の役割であり、自分が営業や融資とした関わった企業の事業が成功した際などは、大きなやりがいを感じることにつながるでしょう。
給与水準が高い業界
銀行業界は給与水準が高い点も魅力の一つです。
東京商工リサーチが2018年に実施した調査によれば、国内の銀行91行の平均年収は609万円と発表されています。
メガバンクについてはさらに高い水準となっており、「三井住友銀行」が810万円、「三菱UFJ銀行」が773万円、「みずほ銀行」が738万円と非常に高い年収額となっています。
就職先を考える上で給料の優先順位が高い人にとっては、銀行業界は魅力的な環境であるといえるでしょう。
銀行業界の雰囲気
お金の取り扱いがメインの仕事であることから、「堅実でまじめな人」が銀行業界では求められる傾向があります。
お客さまの立場で考えても、信頼のおけないようない人にお金を預けたいとは思えません。
そのため「期日を守ること」や「お客さまの話を最後までしっかり聞き最適なアドバイスを行うこと」など、相手からの厚い信頼を集められるような人が銀行業界では活躍できるといえるでしょう。
また、銀行内での「上下関係がしっかりしている」という点も銀行業界の特徴です。
基本的には各店舗の「支店長」が大きな裁量権を持っており、店舗運営の方針などに関しては支店長の指示に従って仕事を進めていくこととなります。
このように組織運営の上ではトップダウンの風潮は強く、給与体制については年功序列の制度を採用している銀行がほとんどです。
銀行業界に就職するには
就職の状況
銀行業界は「安定している」「給料が高い」というイメージが強く、学生の就職先としても人気のある業界です。
大手や中堅規模の銀行であれば、ほとんどの企業で毎年採用活動を実施しており、応募条件としては多くの銀行で「大卒以上」の学歴が求められます。
新卒で募集の多い職種としては「総合職」「営業職」「一般職」の採用であり、総合職採用の場合でも、基本的には営業からスタートする銀行がほとんどです。
また、「メガバンク」か「地方銀行」かよっても採用の傾向に違いが見られます。
メガバンクの営業範囲は日本全国にわたるため、採用後の配属も全国転勤が基本となっていますが、地方銀行の場合はその地域に密着して営業を行うことから、転居を伴うような転勤はほとんど起こらないと考えてよいでしょう。
この点から、地方銀行の場合は、その銀行が本店を構える「県内出身者」が採用に結びついているケースが多く見られます。
就職に有利な学歴・大学学部
新卒で募集の多い「総合職」「営業職」「一般職」の3つの職種については、「学部・学科不問」で募集を行なっている銀行がほとんどです。
銀行業界への就職で有利な学部・学科については、「経済」「経営」などの学科であれば、勉強内容が仕事につながる部分もあるでしょう。
しかしながら、「どの学科を出身しているか」という点は、採用への影響はそこまで大きいものではありません。
どの学部・学科の出身者においても、入社後まずは銀行業務で必要な「資格の取得」を命じられるケースも多いため、採用面接の段階で専門的な知識を持っておく必要はありません。
ただし、金融や経済に関する基本的な部分については質問されることも多いので、一般常識の範囲で対策をしておくことをおすすめします。
また、中堅規模の以上の銀行へ総合職・営業職として入社を希望する場合は、「大卒」の学歴は必須であるといえるでしょう。
就職の志望動機で多いものは
銀行業界を受けるときの志望動機としては、「個人から企業まで、さまざまなお客さまと接することができる点に惹かれた」「地域に貢献する仕事がしたい」といった内容が多くなっています。
銀行の仕事は個人・法人問わず、さまざまなお客さまと取り引きがある仕事であるため、幅広く社会に貢献ができる点に魅力を感じて志望する人が多い業界です。
また、地方銀行の場合は地域に根ざした営業活動を行うため、「自分の出身地を盛り上げていきたい」といった想いで入社を希望する人もいます。
銀行業界への志望動機を考える際は、「銀行を志望した理由」で終わってしまうのではなく、「銀行業界の中でも、なぜその銀行を志望したのか」といった部分まで深掘りして考える必要があります。
自分の志望している銀行は他の銀行と比べてどういう違いがあるのか、事前によく調べておくことが重要です。
銀行業界の転職状況
転職の状況
銀行業界では、新卒者を対象とした採用のほか、多くの銀行で中途採用の募集も行なっています。
ただし、新卒の採用枠と比べると少ない人数での募集となるため、大手の銀行であれば高倍率になることも少なくありません。
また、銀行の中途募集は、求人サイトや転職エージェントへはあまり出されないのが特徴で、基本的にはその銀行ホームページの採用情報に掲載されることが多いです。
そのため、銀行業界へ転職を希望する人は、求人サイトなどに加えて各銀行の採用情報もこまめにチェックしておくことをおすすめします。
転職の志望動機で多いものは
銀行業界へ転職を考える人は金融業界の出身であることも多く、「これまでの経験を活かして働いていきたい」という志望理由がよく見られます。
入社後、即戦力として働けることは面接での評価にもつながりやすいため、銀行以外の職歴でも金融業界での業務経験がある場合には、そこをうまくアピールできると効果的です。
ただし、新卒の志望動機と同様に、「銀行業界の中でも、その銀行を志望した理由」が抜けてしまうケースが多いため、その点まで深掘りして内容を考えるようにしましょう。
転職で募集が多い職種
中途採用の場合は「営業職」「一般職」での募集が多く出されています。
メーカーなどの場合であれば「商品の生産」に関わる職種も必要になりますが、銀行の場合は販売しているものが「金融商品」であるため、「金融商品の販売をいかに伸ばしていくか」という点に注力して採用も行われています。
そのため、実際に金融商品の販売部隊となる「営業」や、店舗運営に欠かせない「窓口業務」に関わる多くの人員が必要であり、これらの募集求人が年間を通じて出されています。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
銀行業界へ転職する際、必ずしも同じ銀行業界や金融業界での職務経験は求められていません。
しかしながら、営業職を受ける場合については、同じ金融業界での職務経験を持っている人の方が「即戦力になる」という意味で評価はされやすいといえるでしょう。
ただし、業務経験がない人でも「取引先と良好な関係を築いていける人材である」と面接で判断され、実際に採用されているケースもあります。
学歴については、営業職や総合職を受ける場合は「大卒以上」の学歴が求められることがほとんどです。
銀行業界の有名・人気企業紹介
三菱UFJ銀行
2006年設立、売上高48,640億円、従業員数87,876名(2019年3月期)
3大メガバンクの一角であり、日本最大の商業銀行。
戦略的な海外銀行の買収や、業務効率化においてAI活用の方針を打ち出すなど、新しいトレンドに対しても積極的な姿勢をみせています。
三井住友銀行
2001年設立、売上高33,699億円、従業員数58,527名(2019年3月期)
住友グループの「住友銀行」と三井グループの「さくら銀行」が合併して誕生した、3大メガバンクの一つです。
会議で「ペーパーレス化」を推進するなど業務の効率性を追求し、高い収益性を強みとしています。
横浜銀行
1920年設立、売上高1,865億円、従業員数4,730名(2018年3月期)
神奈川県横浜市に本店を構える、大手地方銀行です。
神奈川県、東京都を中心に200以上の支店を構え、地域に根付いた盤石な営業体制を有しています。
銀行業界の現状と課題・今後の展望
競争環境(国内・国外)
国内市場においては、全国を営業範囲とする「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」の「3大メガバンク」と、各地域に密着して事業を行う「地方銀行」の住み分けが今後も続いていくと考えられます。
その中でも、メガバンクによる「海外銀行の買収」など、大手銀行を中心とした海外市場を取り込む動きには今後も注目が必要です。
また、金融以外の分野で大きく成長してきた国内企業が、銀行業界へ参入する動向も見られます。
2016年にコンビニ大手の「ローソン」が「ローソン銀行」を立ち上げたことや、2018年には「LINE」と「みずほフィナンシャルグループ」が共同で「LINE Bank」を設立することを発表しています。
他業種による銀行業界への参入は今後も増えていくことが予想されており、競争の激化は避けられない状況といえるでしょう。
業界としての将来性
日本で長年続いている貸出金利低下の問題は、今もなお銀行の収益を悪化させる要因となっています。
また、少子高齢化により日本の人口は今後減少していくことから、各銀行においていかに収益を改善させていくかが業界全体の課題となっている状況です。
銀行業界の最新の動向としては、ファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を組み合わせた「フィンテック」と呼ばれる技術が話題となっています。
具体例として、個人向けの資産運用業務に「ビッグデータ」や「AI」の活用が始まっており、人件費などのコストを削減しながらも、より信頼性の高い運用アドバイスを可能としています。
国内市場の拡大が今後見込めない中で、いかに効率性の高い仕組みを構築できるかが、各銀行における直近の課題といえそうです。
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