フィードバックとは

フィードバックは、客観的な情報を得る手段であり、状況を好転させる手法のひとつでもあります。

制御工学から誕生した用語ですが、本来の意味をベースに経営や教育、臨床心理学など各分野で適した意味に変化し、それぞれの手法へと発展しました。

「フィードバック」の根底にある用語の意味を理解し、各分野の意味や手法について確認していきましょう。





フィードバックとは

フィードバックとは、ある行動や反応の結果から得られた内容を次の行動に反映し、より良い状態へと変えていくことです。

仕組み全体を指す場合や、次の行動に反映する行為を指してフィードバックと呼ぶこともあります。

もともとは制御工学の用語ですが、その意味が発展して心理学や教育学などでも使われるようになりました。

企業が事業や組織をより良くしていくための手法としても用いられることから、ビジネスシーンでは一般に使われる用語となっています。

制御工学の「フィードバック」がもつ、もともとの意味

制御工学において「フィードバック」は、システム解析や制御を行う手法のことを意味します。

システムの安定には、インプット(目標値もしくは入力)とアウトプット(出力)を一致させることが必要ですが、インプットとアウトプットが一致するよう、調整の役割を担っているのがフィードバックです。

例えばエアコンの温度設定もフィードバックの仕組みが関係しています。

設定した温度(インプット)になるよう室温を監視し、フィードバックを行って冷風もしくは温風の温度(アウトプット)を調整。

そのプロセスを繰り返すことで、室温を設定温度に合わせる仕組みになっているのです。

現状を把握し、理想の状態とのズレを調整するフィードバック。

制御工学におけるこの機能の意味が転じて、各分野でもフィードバックという用語が使われています。

教育、心理学、企業経営におけるフィードバック

制御工学から生まれた「フィードバック」は、他の分野でみられる現象や手法を指す用語として発展しました。

ここでは代表的な3つの分野におけるフィードバックの意味を紹介します。

教育分野における「フィードバック」

教育分野のフィードバックとは、行動や発言に対する周囲の評価を本人に伝えることです。

評価とは、行動や発言が周囲にはどのように映っているかというもので、本人からはみることが難しい客観的な情報のこと。

人は客観的な情報を得ることによって、自身の行動を把握することができます。

また良いフィードバックは行動を促し、反対に悪い評価には行動を抑制する作用があるため、より良い学習へとつなげるために、フィードバックの仕組みが活かされています。

臨床心理学における「フィードバック」

フィードバックは、心理療法などにも取り入れられています。

臨床心理学の分野では、カウンセラーが相談者に対して、気づきや自己理解を促すことをフィードバックといいます。

具体的には本人の行動や症状のほか、カウンセリングによってもたらされた変化を客観的に伝えることです。

フィードバックは客観的な情報提供を通して相談者の人格を変容させる、カウンセリングにおける重要な技法のひとつとして位置づけられています。

企業における「フィードバック」と「フィードバックループ」

企業では市場の反応や顧客の声をもとに、自社商品やサービスの改善・改良を行っています。

現状の課題だけでなく、前向きな意見も含めた評価を改良のヒントとして、商品・サービスに反映させていくことをフィードバックといいます。

特にフィードバックに重きを置くことで有名な起業手法に、「リーンスタートアップ」があります。

リーンスタートアップでは、実行・結果の計測・学習というサイクルを回してビジネスを開発します。

最初は仮説だったプロダクトに対して、顧客からの学びをフィードバックしながら改良。

何度もフィードバックを繰り返し、必要とされるプロダクトを作り上げるのです。

リーンスタートアップに限らず、フィードバックによってサイクルを循環させていくことを「フィードバックループ」といいます。

フィードバックループで気をつけるポイントをひとつ挙げるとすると、必ずしも良い循環だけではない点です。

悪い方向にフィードバックが繰り返されると、負の循環に陥る可能性もあるので注意しましょう。

また企業におけるフィードバックは、事業開発だけではなく、業務改善や生産性向上のためにも行われています。

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フィードバックの重要性と効果

フィードバックはさまざまな分野でみられ、企業では社員の能力開発にも取り入れられています。

今では改善や改良の手法として広く認められていますが、フィードバックの重要性や効果については、古くから理論の提唱や実験が行われてきました。

ドラッカーも提唱する、フィードバックの重要性

マネジメントの権威として知られる、経営学者のピーター・ドラッカーは、自己の強みや弱みを理解するためには、モニタリングとフィードバックが不可欠であることを提唱しています。

実際に社員の評価にもフィードバックを取り入れ、能力開発に役立てる企業は少なくありません。

社員育成において、フィードバックが一定の役割を果たしていることの現れといえるのではないでしょうか。

一方で、フィードバックの方法については、各企業の管理職などフィードバックを行う人に委ねられているケースが多く、効果が不透明な場合もあります。

社員の能力開発や生産性向上に役立てるためには適切な方法でフィードバックが行われることが重要であり、企業における課題のひとつともいえるでしょう。

フィードバックの有用性を示す実験

心理学の分野でも古くからフィードバックの実験が行われています。

ここでは、作業中に発生するミスの計測からフィードバックの影響を考察する実験について紹介しましょう。

<実験方法>
実験は2つのグループで実施。

作業中にフィードバックを取り入れながら最後まで作業を行うAグループと、フィードバックを途中で中断して、最後まで作業を行うBグループです。

<実験結果>
・Aグループではフィードバックが行われてから作業中のミスが著しく減少した
・Bグループでは、フィードバックの中断後からミスの量が増加した

この実験では、フィードバックが作業の質を高めることが実証されていますが、フィードバックに関する実験は他にもさまざまな試みが行われています。

中でも運動学習においてはアドバイスなどのフィードバックのことを「パフォーマンスの知識」といい、フィードバックの質がパフォーマンスの向上に影響することが分かっています。

この記事のまとめ

「フィードバック」は、社会人の方であれば、仕事で日常的に使う用語かもしれません。

ところが意味を深く理解すると、思っていた以上にさまざまな意味や機能をもつことが分かったのではないでしょうか。

またフィードバックループの仕組みをみると、良い循環でも悪い循環でも、現状は必ず過去から影響を受けていることが分かります。

良い状態へと循環させていくためには、いかに客観的に現状を把握できるか、またそれを活かせるかがポイントとなるでしょう。

客観的な情報を得るには、どのような分野においても第三者からのフィードバックが有効です。

日々の業務やサービスの開発はもちろん、日常生活にもフィードバックの仕組みを活かしてみてはいかがでしょうか。

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