漫画家志望の進路・後編【進学か就職か】
漫画家を目指す上で誰もが理想として思い描くのは、学生のうちに漫画家を目指し、学生のうちにデビューすることではないでしょうか。
そんな中、私が漫画家の夢を目指す決意をしたのは大学3年生の終わりころです。
漫画家志望歴10年。
その間に大学生・家事手伝い・就職・バイト・かけもち…
様々なパターンを経験しています。
今回はそんな私の紆余曲折な経歴と共に 漫画家を目指すための進路を選ぶポイントをまとめていこうと思います。
私と同じようにそもそも目指し始めるのが遅くなってしまった方や、今後の進路に迷ってる方に、サンプルのひとつとして参考にしていただけると嬉しいです。
私が安定した漫画家志望生活をスタートすることができるようになったのは31歳の時です。
(ちなみに2022年現在33歳なのでわりかし最近)
それまではずっとこの3つのポイントのうちの何かが欠けていました
学生時代の方が漫画家を目指しやすいのは、この3つのバランスを安定させやすいからだと思います。
このポイントをふまえながら私の経歴を見ていきましょう。
●前回のあらすじ●
当時、管理栄養士の大学に通っていた溝口楠乃。
大学3年生の時にストーリーが降りてくる。「どうしてもそれをカタチにしたい!」
「今から方向転換するなら漫画家しかない!大学辞めて専門学校に行きたい!」
でもそんなの父が許すはずもなく―…。
大学卒業・資格取得
「大学卒業して管理栄養士の資格さえ取れば後は自分の好きにしていい」
という約束をしました。
父との約束を果たすため。
卒業したら心置きなく漫画家志望生活をスタートさせるため。
大学4年生の1年間は
「漫画家を目指すために、管理栄養士の国家資格を一発合格する」という
謎のモチベーションで受験勉強に専念しました。
結果、合格点ギリギリで合格。(ほんとにいつもギリギリで生きている…。)
「高校卒業の時点で漫画家を目指すことにしていれば…」
当時の私は進路選びを失敗したと後悔ばかりしていました。
もう管理栄養士として働く気がないのに資格を取るなんて無駄だと思っていました。
でも今だから言えることですが大学いっといてよかった!!
①あとから自分で大学に行きたいと思ってもハードルが高い(お金)
②漫画家志望生活につきものな「将来への不安」が軽減される(メンタル)
③大学時代に勉強したことが今の自分の礎になっている(時間)
①もしも保護者の方が大学への進学を進めてくれているのであれば、月並みですが大学に行っておいた方がいいかもしれません。
今の時代、「学歴なんて関係ない!」という流れもありますが、働きながら勉強するのもなかなか難しいので…。
②当時の私は夢と希望にあふれ、今思えばだいぶ楽観的に考えていました。
しかし漫画家志望生活が長くなると「将来の不安」で悩む時期がやってきます。
(この不安を克服した時の事はまた別の機会に)
でもこの資格があることで「もしいつかこの夢を諦める時が来たら、栄養士の資格を活かした仕事をしよう」という、いざという時のお守りのような役割を果たしてくれました。
方向転換する時の選択肢が増えるというのはかなりのメリットです。
③大学生の一番のメリットは時間があることではないでしょうか。
大学の講義以外にも、サークルやバイト、その他の活動で得る学びも多いです。
ちなみに私は当時、栄養学とはまた別に本を読み漁る時期があり、人生を変える本と出会いました。
おそらく働きながらだと読書をする時間を確保できていなかったと思います。
私は大学時代、1作だけ漫画を描きましたが、すぐに国家資格の受験勉強に専念したのでそのメリットを漫画制作に活かせませんでした。
これから進学する方や、卒業までにまだ時間のある方は、ぜひその時間を漫画制作に活かしてください!
生活費の工面ができるかどうか→保護者の方が大半を工面してくれるのなら〇
マンガを描く時間が確保しやすいかどうか→〇
将来への不安が軽減されるかどうか→〇
漫画家になるために、学歴や資格は必要ありません。
でもこの3つのバランスを安定させたり、卒業後もこのバランスを保ち続けるための
準備期間として考えるならやはり大学はオススメです。
その後の経歴
春までもたないと言われていた祖父でしたが、そこから2年間生きてくれました。
その間私は家事手伝いをしながら3~4作投稿しました。
祖父が亡くなってからは一人暮らしを始めて就職するのですが、案の定漫画を描く時間を確保できなくなりました。
病院の栄養士
↓
写真館でバイト
↓
写真館でバイトしながら保育園の栄養士のかけもち
仕事を変えたりかけもちしてみたり、それも全て漫画を描く時間を確保するための試行錯誤だったのですがどれもうまくいかず、仕事だけで精一杯の毎日でした。
中でも写真館でのバイトは自分の中でもやりがいを感じてしまっていました。
(いや、いいことなんですけどね…!)
そんなこんなで漫画が描けない時期が4年も続き、仕事をしながら漫画を描き上げることができたのはたったの1作です。
生活費の工面ができるかどうか→〇
マンガを描く時間が確保しやすいかどうか→△工夫しないと難しいです。
将来への不安が軽減されるかどうか→人によりますが社会経験を積むという意味で〇
諸刃の剣・無職時代
当時私の年齢は28歳。当時は27歳デビューでも遅咲きといわれる世界でした。
デビューどころか賞にも入らない…。
もうギリギリというか完全にアウトなのでは…という気持ちでした。
当時の私は働きながら、ようやく漫画を1作描き上げるのが精いっぱいで、
その漫画のクオリティ自体に全然満足していませんでした。
思い切り漫画が描きたくて、毎日泣いてました。
なんで泣くほど漫画が描きたいのか、自分でもよくわかりません。
当時の自分は「漫画が描けない」ということこそがストレスの原因になっていました。
私は再度親に相談をして、実家に戻り家事手伝いという生活をさせてもらうことにしました。
心身ともに健康。仕事にもやりがいを感じている。
それだけに、夢を追いかけるために無職になるという決断はかなりの覚悟が必要でした。
そしてこの無職になるという選択は、それを受け入れてくれた両親あってこそです。
はたから見たら働かずに夢を追いかけられるなんてラッキーじゃんって思うかもしれません。
でも実際は、この無職時代もなかなかの暗黒期でした。
ちなみに父には漫画家を目指すためという理由は内緒にしていました。
控えめに言って自己肯定感が爆下がりします。
それから、将来への不安にさいなまれ、漫画が手につかない日があったりします。
もしこの選択肢も視野にいれる方がいれば自分の貯金を使うか、期限を決めて長期間にならないようにすることをオススメします…。
生活費の工面ができるかどうか→貯金があるor助けてくれる人がいるなら〇
マンガを描く時間が確保できるかどうか→◎
将来への不安が軽減されるかどうか→✕
漫画を1作描き上げるとわかるのですが、最初のうちは描き上げることだけで精一杯です。
まずは道具選びから始まり、その使い方のマスター、絵の練習、ストーリーの作り方…
継続して漫画が描けるようになる土台ができるまでにそれなりの時間が必要です。
私はこの無職時代を利用してアナログからデジタルに移行しました。
あくまでもその土台を作るためという短期集中・期間限定であれば、ひとつの手段としてアリだと思います。
私の場合、漫画が描けないこと自体にかなりのストレスを感じていたので、あのまま仕事を続けていたとしても崖っぷちだったと思います。
もしあの時両親が私を受け入れてくれなかったとしたら、そのための貯金をしてから仕事をセーブする計画を立てていたんじゃないでしょうか。
漫画家志望として軌道に乗り始める
2ヶ月目・3か月目連続で賞をいただき、ようやくまた父に漫画家への夢を打ち明けることができました。
この2年で漫画家志望としての土台を作ることができ、ようやく仕事をしながら漫画家を目指す自信がついたので、31歳の時に再びひとり暮らしを始めました。
そしてその半年後にデビューです。
今でもその生活は変わっていません。
掲載が決まれば原稿料をいただけますが、ほぼバイトで生計を立てながら漫画を描いています。
まとめ
あなたがもし学生なら、学生のうちに漫画家志望としての土台を作る。
社会人ならどうにか時間を確保して漫画家志望としての土台を作る。
そして
お金・時間・メンタル
この3つのポイントを押さえて考えると
自分に一番適した進路が見えてくるのではないでしょうか。
私自身、現在もこの3つのポイントをおさえた生活をしています。
やはり仕事をしながらだと漫画を描く時間を確保するのは難しいですが 工夫次第でなんとかなります。
次回のコラムでは、この3つのポイントをおさえるため、 具体的にどんな工夫をしているのかをまとめたいと思います。
漫画家志望時代から運営している個人のブログでも様々な発信をしてますので、 こちらもぜひご覧ください!
www.mizoguchinano.work