医療安全・医療の質向上に寄与する病院薬剤師の仕事とは
薬剤師として病院で仕事をしていると、調剤・服薬指導といった薬剤師業務のみならず、医療安全・医療の質の向上など、より広い視座が必要な仕事も担当することになります。
今回は病院薬剤師のそのような仕事の紹介です。
業務フロー図とは
・一連の業務の流れ、関係者の相互の関係を見える化することで、明確になる
業務の見える化により、
・問題のある手順の抽出
・業務改善
を進めやすくなります。
特に病院での業務は、以下の理由で業務フロー図での見える化が非常に有用です。
・多職種が多部門で並行して業務を遂行している
・変更や追加が日常的におこる
業務フロー図との出会い
2016年頃になりますが、院長から全日本病院協会という病院団体の主催する「業務フロー図作成講習会」に参加せよ、との指示を受けました。
当時は業務フロー図を書いたこともなく、1泊2日で水道橋の全日本病院協会本部でみっちり講習を受けました。
1.自院の現在の業務を業務フロー図で見える化
2.業務フロー図で問題のある業務・改善の余地がある業務を抽出
3.改善後の業務フロー図を作成
4.3に基づいた業務の実施
といった流れだったと思います。
この講習会には20近い病院が参加していましたが、その中から優秀事例に選ばれました。
そして翌年の全日本病院学会に招かれ、事例発表をし、シンポジストとしても事例について話をさせて頂く機会を得ました。
業務フロー図を広める
その後も、院内で業務フロー図を用いて業務改善をすすめました。
また、以前は受講者として参加していた、全日本病院学会の「業務フロー図作成講習会」に助手として呼び出され、全国から集まった病院スタッフに業務フロー図の素晴らしさをお教えする機会も得ました。
この講習会には長年、業務フロー図・業務改善・医療の質向上に取り組んできた有名な先生が数多く講師として参加されており、講習会の前後の打ち合わせ、講習会後の飲み会(コロナ前の話です)で、多くを学ぶことができました。
業務フロー図からRCA、FMEAへ
全日本病院協会では、医療の質向上のツールとして業務フロー図の他に、
・FMEA(故障モード影響解析)
等を扱っていました。
私は、これらについても全日本病院協会の講習会で学び、自院での業務改善に生かすようになりました。
病院の医療安全管理者として
現在私は、自院の医療安全管理者として安全管理業務を行っています。
そこで重宝しているのが、上記の
・RCA(根本原因分析)
・FMEA(故障モード影響解析)
等のツールです。
これらのツールを使うには論理的な思考力が必要で、薬剤師には向いているのでは、と個人的に思います。
実際、病院の医療安全管理者として活躍されている薬剤師の先生方は多く、全国規模で活躍している先生もおられます。
そして、リーダーシップ
医療安全管理者には、医療安全の立場から各部署を管理する能力も必要です。
いみじくも千葉大学医学部附属病院 医療安全管理部の相馬孝博先生が、「ねころんで読める 悩める医療リーダーのための“ほぼ"エビデンス・ベイスト・リーダーシップ」の中で、
・医療安全はボトムアップでもトップダウンでもなく、「関係性」のリーダーシップそのもの
と述べていたとおりで、マネジメント・リーダーシップも必要。
病院に就職し、多職種と協働する経験を積んでいくと、これらの力もある程度は自然に身につきます。
病院薬剤師のすすめ
病院薬剤師には、調剤・服薬指導の他にこのような活躍の舞台もあるのです。
就職先を悩んでいる薬学生・薬剤師の皆さん、病院には、様々な活躍の機会があります。
ぜひ、病院への就職を検討してみてください。